試用期間に解雇・クビになったらどうする?解雇理由に納得できないときの対処法を解説
新しい職場に就職・転職した際、ほとんどのケースで試用期間が設けられます。
試用期間は、企業側が採用した社員について適性やスキルを判断するための期間として用いられますが、試用期間中に解雇やクビを宣告されてしまい「試用期間中に解雇はできるの?」と悩んでいる方もいるでしょう。
そこで本記事では、正社員を試用期間中の解雇・クビにできるかどうかについて解説します。
不当な解雇理由や納得できないときの対処法にも触れるため、ぜひ参考にしてください。
正社員は試用期間に解雇・クビにできる?
まず、試用期間の法律上の明確な定義があるわけではなく、あくまでもその会社が決めたルールとなります。
一般的に試用期間は本採用前に企業が従業員の適性を判定するための期間です。
試用期間でも正社員という立場ではありますが、万が一、本採用レベルに達しなければ解雇される可能性はゼロではありません。
ただし、会社側は試用期間中の正社員を自由に解雇できるわけではなく、客観的に合理的な理由が求められます。
会社側は試用期間でも自由に解雇・クビにすることはできない
試用期間中、会社側は該当社員の本採用を断る権利がありますが、正当な理由無しに解雇・クビにはできません。
これは試用期間であっても、会社と正社員の間には解約権留保労働契約が成立しているためです。
労働契約は成立している一方で企業側は期間中に労働者を解雇する権利がありますが、試用期間であっても解雇という重い処分を下すためには、客観的に合理的な理由が無ければなりません。
たとえば、本採用後のパフォーマンスが判断できない、社風と合わないといったあいまいな解雇理由は認められないでしょう。
試用期間の解雇・クビが認められる主な理由
試用期間の正社員の解雇・クビには正当な理由であり、客観的に合理的であるかがポイントとなります。さらには、社会通念上相当と認められなければなりません。
たとえば、履歴書に嘘があった場合は、客観的判断が可能かつ社会通念上相当といえるでしょう。
その一方で、会社からの解雇理由の説明が客観的でなく納得できない場合は、受け入れる必要が無いということです。
試用期間で解雇される人の特徴4つ
客観的判断が可能かつ社会通念上相当な理由があれば、正社員でも試用期間中に解雇・クビになる可能性があります。
ここでは、試用期間で解雇される人の主な特徴について紹介します。
①勤務態度が悪く改善されない
試用期間であっても勤務態度は従業員の評価を決める重要なポイントです。特に理由のない遅刻や早退、無断欠勤を繰り返すような態度であれば、解雇される可能性は高いでしょう。
仮に体調不良や身内の不幸というやむを得ない理由であっても、欠勤頻度によっては問題視されます。
また、勤務中の態度も解雇・クビの判断材料となります。業務にまじめに取り組んでいなかったり、居眠りをしていたりすると、会社側からの印象は悪くなるでしょう。
勤怠や勤務態度が悪い場合、数回は注意・指導で済んだとしても、その後の改善意思が見られなければ解雇されるリスクは高まります。
②採用時の経歴・資格に虚偽がある
採用時の経歴・資格に虚偽がある場合、試用期間中に明るみになると解雇・クビになる可能性は高いです。
経歴・資格詐称は解雇やクビだけでは済まず、会社から損害賠償請求をされるリスクもあります。
また、解雇・クビを免れたとしても、会社からの信頼を失ってしまうでしょう。
ほかにも、嘘をついていることで会社にいづらくなり、自分から退職を考える可能性もあります。
③能力が明らかに不足している
試用期間中は上司や先輩から指導されることが前提で、最初はできないことがあっても大目に見てもらえるでしょう。
しかし、あまりにも理解力やスキルが不足していれば、解雇・クビになるリスクもゼロではありません。
特に経歴や資格が優秀で周囲から期待されて入社した方は、より判断基準が厳しくなるでしょう。
何度も同じことで注意されている人や、求められる業務をこなせない人は注意が必要です。
④社会人としての常識が欠けている
求められるスキルや能力があっても、社会人としての常識が欠けている場合も、解雇・クビになりやすいです。
度重なる早退や欠勤といった勤怠に問題がある以外にも、たとえば機密情報の管理が雑だったり、会社の備品を無断で持ち帰ったりするといった常識を疑われる行動をしている方などです。
社会人としての基本的なルール・モラルの欠如は、試用期間中でも解雇される大きな要因でしょう。
また、情報漏えいや備品持ち去りは、最悪の場合は罪に問われる可能性もあります。
試用期間中に解雇予告を受けたときにすべきこと
もし試用期間に解雇・クビを予告され、納得できない場合は黙って従う以外にもできることがあります。
ここでは、試用期間中に解雇予告を受けたときにすべきことについて解説します。
解雇理由証明書を請求する
試用期間中に解雇を言い渡されたら、まずは会社に解雇理由証明書の発行を依頼しましょう。
解雇理由証明書とは、会社がどのような理由で解雇に至ったかという理由が記された書類です。
今後裁判で争う場合、解雇理由証明書は不当解雇を主張するための重要なデータとなります。
また、会社は労働者から解雇理由証明書を依頼されれば、必ず発行しなければなりません。
さらに労働基準法第22条第2項には、労働者が解雇理由証明書の発行を求めた場合、会社は遅延なくこれを発行なければならない旨が定められているため、解雇予告を受けたら早急に依頼しましょう。
話し合いは録音して証拠を残す
解雇理由証明書のほかにも、話し合いでの会話も不当解雇かどうかを争う際に有効な証拠となります。
会話の中で、会社側の発言があいまいで解雇理由に正当性が見られなければ、不当解雇に該当する可能性があります。
あとから発言の有無といったことでトラブルにならないためにも、話し合いはしっかり録音して証拠として残しておきましょう。
【解雇理由別】試用期間中にクビが違法になりうるケース
会社側は正当な理由があれば試用期間中の解雇する権利がありますが、一方で理由によっては試用期間中のクビが違法となるケースもあり、労働者側が訴えれば不当解雇に該当するかもしれません。
ここでは試用期間中のクビが違法となるケースについて解説します。
能力不足が解雇理由の場合
能力不足は会社側が試用期間でも解雇予告できる理由のひとつですが、労働者側の責任とはいえないケースもあります。
たとえば、数カ月しか働いていない従業員には到底無理なノルマを課されている場合や、ほかの社員からの嫌がらせによって業務を妨害されている場合などは、正当な解雇理由にはなりません。
あくまでも能力不足と認められるのは、十分な教育体制のもとで正当な目標を設定している場合です。
また、会社側もいきなり能力不足と判断するのではなく、配置転換や教育方針の変更などの工夫をしてから労働者の能力を見極める必要があります。
病気やけがが解雇理由の場合
早退や欠勤は解雇に繋がる可能性があるため、病気やけがが原因であっても例外ではありません。
しかし、試用期間に病気やけがになったからといって必ずしも解雇されるわけではありません。
その病気やけがが業務に関連している場合、休業期間から30日後までは解雇できないという法律が労働基準法第19条第1項で定められています。
また、勤務中以外の病気・けがであっても、試用期間に解雇できるのは復帰の見込みが無い場合に限ります。
復帰後に再び働けるにも関わらず解雇予告をされた場合、不当解雇になるかもしれません。
ただし、病気やけがの休業の取扱いについては会社独自のルールが設けられているケースがほとんどで、病気やけがが解雇に繋がるかは会社によって異なります。
整理解雇が解雇理由の場合
整理解雇の場合は、会社都合になるので違法になる可能性が高いです。試用期間かどうかに関わらず、そもそも企業にはリストラしないための努力をしたのかどうかが問われます。
本当に整理解雇が必要なのか、人員削減以外の方法は取れないのかという旨以外にも、人選が正当かどうかも問われるでしょう。
試用期間中の労働者は戦力的にも人選として正当と認められやすいですが、企業が整理解雇の回避のために努力していなければ違法になる可能性が高いです。
懲戒解雇が解雇理由の場合
懲戒解雇とは、会社が規定した犯罪行為や不正行為等を理由とした解雇・クビのことです。
懲戒解雇は普通解雇よりも重く、転職や失業保険受給などにおいても不利になるリスクが高いです。
懲戒解雇の規定にそっていれば解雇は仕方ありませんが、会社規定で明確に決まっていない場合や労働者に非がない場合は違法になるかもしれません。
懲戒権の濫用が認められると解雇・クビは無効となるでしょう。
試用期間中の解雇・クビに納得できない場合の対処法
万が一試用期間中の解雇・クビに納得できない場合は、次のような対処法を試しましょう。
労働組合に相談する
労働組合とは、労働者が団結して賃金や労働時間などの労働条件の改善を図るためにつくる団体です。
労働組合は賃金引き上げなどの職場環境の改善を目指すだけでなく、不当解雇などの不当な行為に対しても戦っています。
労働組合が企業と交渉することで、解雇予告が撤回されるケースも十分あり得るでしょう。
各企業が労働組合を作っているケースが多く、自社の労働組合に不当解雇について問い合わせてみることがおすすめです。
労働基準監督署に相談する
労働基準監督署とは、企業が労働基準法や職場の安全を守っているか客観的にチェックする機関です。万が一企業の労働体制に問題があれば指導し、改善を促します。
労働基準監督署は無料で誰でも相談できるというメリットがありますが、現実的に解雇の有効性を争うことについての対応はしてもらえないという点に注意しなければなりません。
労働基準監督署は企業が労働基準法や職場の安全を守っているか客観的にチェックする機関ですが、企業と労働者の個別具体的な紛争に介入することは、原則としてできません。
具体的に解雇の有効性を争うことを考えている場合には、労働基準監督署よりも弁護士に相談したほうがよいかもしれません。
労働審判を申し立てる
労働審判とは労働者と雇用側で起こったトラブルに対して裁判を介入して解決するための手続きです。
労働問題の専門家も参加するため、労働組合や労働基準監督署に比べても、客観的かつ法的な解決を期待できるでしょう。
労働審判は通常の裁判よりも早期解決が見込めるため、早く職場に復帰したい方や裁判のストレスから解放されたい方にもおすすめです。
労働審判によってなされた審判や和解は会社への強制力があり、万が一労働審判での金銭的解決を内容とする審判や和解を無視した場合、会社側は口座差し押さえなどの強制執行を受けるリスクもあります。
有利に不当解雇を訴える場合は、解雇理由証明書や会話の録音などのデータを事前に揃えておきましょう。
弁護士に相談・依頼する
試用期間中の解雇・クビに納得できない場合、弁護士への相談・依頼は非常に効果的です。弁護士は法的な知識も豊富なため、不当解雇を証明するための手段や証拠について効果的なアドバイスをしてくれるでしょう。
また、万が一裁判となった場合には、代理人としてやり取りをしてくれます。裁判の手続きや出向を一任できる点も、弁護士への依頼の大きなメリットです。
ほかにも会社にとって弁護士という肩書きは大きな影響力があります。労働者の主張だけでは動かない企業でも、弁護士に依頼したら解雇を取り消したというケースも珍しくありません。
もしも裁判となった会社で再び働きたくない場合は、弁護士はトラブルを解決したうえでの退職をサポートしてくれます。
裁判中の手続きだけでなく、裁判後のサポートも依頼したい方は、弁護士に依頼してください。
試用期間中の解雇・クビについて弁護士に相談・依頼するメリット
試用期間中の解雇・クビについて弁護士に相談・依頼するメリットについて詳しく紹介します。
まず、自分の解雇が違法かどうかを客観的に判断してもらえます。自分が不当だと思っていても、実は裁判にしないほうがよいケースも教えてもらえるでしょう。
客観的な視点を知れる点は、弁護士に相談するメリットです。そして、訴訟や審判を一任できる利点もあります。
訴訟や審判は専門的な知識や経験がなければ、自分に有利に進められません。また、裁判所に出向く時間や労力も気にせずに済みます。
さらに、会社を辞める場合でも、慰謝料や未払い給与・退職金の請求も依頼できます。
弁護士への相談は依頼料などのコストがかかりますが、裁判に勝てば金銭的な回収も十分見込めるでしょう。
メンタルや時間の負荷を避けたい方や、受け取れるお金を不備なく回収したい方は、弁護士への相談を検討してください。
メリット・デメリットの詳細については不当解雇は裁判で解決できる!メリット・デメリットや実際の裁判例も解説をご覧ください。
まとめ
本記事では、正社員を試用期間中の解雇・クビにできるかどうかについて解説しました。
正社員を試用期間中に解雇・クビにすることは可能ですが、どのような理由でも解雇できるわけではありません。
勤務態度や能力が解雇理由になるケースもありますが、不当な理由と認められれば、違法として会社を訴えられる可能性もあります。
不当解雇を訴えるには、労働組合や弁護士などへの相談という手段があります。
確実に不当解雇を証明したい方や、退職の場合にもお金を回収したい方は、弁護士への依頼が効果的です。