名誉毀損罪の「事実」って何?具体例を確認しながら意味を理解しよう
インターネット上で誹謗中傷をされた場合には、名誉毀損罪や侮辱罪等が成立する可能性があります。
名誉毀損罪が成立するためには、「事実の摘示をされているかどうか」が重要であり、公然と事実を摘示されたことにより、社会的評価が低下した場合、名誉毀損罪が成立します。
しかし、そもそも事実の摘示がどのような意味なのか、どのような書き込みが事実の摘示に該当するかなどがわからない方もいるでしょう。
この記事では、インターネット上で誹謗中傷の被害に遭っている方に向けて、名誉毀損罪の基礎知識、事実の摘示に関する意味・条件・具体例、名誉毀損された場合の対処法などについて解説します。
この記事を参考に誹謗中傷の内容が、名誉毀損罪と侮辱罪のどちらになるかを判断できるようになりましょう。
名誉毀損罪における「事実の摘示」とは
名誉毀損罪の成立要件のひとつは、加害者が「具体的に事実の摘示をしているかどうか」です。
この事実の摘示に関しては、どのような発言だと事実を摘示したといえるのか、公知の事実であっても成立するのかなど、いくつかポイントがあります。
ここでは、名誉毀損罪の「事実の摘示」の意味や方法について詳しく確認しましょう。
具体的な事実を指摘している
名誉毀損罪が成立するためには、具体的な事実を指摘している必要があります。
「具体的な事実」とは実際に起きている事柄のことであり、たとえば、以下のような発言は事実を指摘していると判断されます。
- ○○と△△が不倫している
- ○○は前科持ちの犯罪者だ
- ○○が老婆を殴っている
一方、「○○はすぐ不倫しそう」「将来○○は刑務所に入りそう」などは主観的な意見や感想であり、客観的に事実かどうかを判断することができません。
そのため、事実を指摘しているとはいえず、名誉毀損罪にはならないと考えられます。
ただし、これらの発言により名誉感情が毀損されれば、「侮辱罪」が成立する可能性はあるでしょう。
要するに、「不倫しそうな人間」とか「刑務所に入りそうな人間」だと言われるのは不愉快な気分になるでしょうから、それは名誉毀損罪ではなく、侮辱罪にあたる可能性があります。
公知の事実であっても成立する
名誉毀損罪では、指摘される事実が、公知かどうかは問われません。
すでに公表されている事実であっても、加害者が事実を指摘したことにより、まだその事実を知らない人が知ってしまう可能性があります。
そのため、指摘された内容がテレビや新聞、ネットニュースなどですでに報道されており、公知の事実であったとしても名誉毀損罪が成立する可能性が高いです。
口頭でも書面でも成立する
指摘する方法・手段にも、特別な制限はありません。
口頭で事実を指摘した場合も成立するほか、文書・図画、身振り手振りで事実を指摘した場合も成立します。
メールやSNS、ネット掲示板などに「○○社の△△は部下の××と不倫している」などと書き込んだ場合も、名誉毀損罪が成立するでしょう。
内容は真実でもよい
条文に「その事実の有無にかかわらず」とあるとおり、指摘される事実が虚偽かどうかは問われません。
言が真実であっても名誉毀損罪は成立しますし、当然発言が嘘やデマであったとしても、具体的に事実を指摘している場合は名誉毀損罪が成立します。
名誉毀損罪の「事実の摘示」の具体例
名誉毀損罪は個人(自然人)だけでなく、法人や団体に対しても成立します。
ここでは、具体例を参考にしながらどのような発言・書き込みが事実の摘示に該当するのかを確認しましょう。
個人に対する事実の摘示の具体例
以下のような発言・書き込みをした場合は、個人に対する事実の摘示に該当する可能性があります。
- AとBが不倫している
- Cはムショ帰りの犯罪者だ
- Dが駅で子どもを殴っていた
- Eはオレオレ詐欺をしている
- アイドルFは実は風俗で働いている
- 芸能人Gは大麻を隠し持っている など
会社・お店に対する事実の摘示の具体例
以下のような発言・書き込みをした場合は、会社・お店に対する事実の摘示に該当する可能性があります。
- H店の料理に虫が入っていたから、食べずにすぐ店を出た
- I店はメニューと会計時の料金が異なる詐欺まがいの店舗
- J社は社員をゴミのように扱っているブラック企業でした
- K社はガラクタを高値で売り付けてくるぼったくり悪徳企業
- L社の社長は元ヤクザで、今も暴力団とつながりを持っている など
インターネット上で名誉毀損された場合の対処法
SNSや匿名掲示板、口コミサイトなどで名誉毀損をされた場合は、サイト管理者に対して投稿・書込みの削除依頼を出す、投稿者を特定して損害賠償請求をする、刑事責任を追及するために告訴状を提出することなどができます。
ここでは、インターネット上で名誉毀損された場合の対処法について解説します。
サイト管理者などに削除依頼を出す
SNSや匿名掲示板などには利用規約・ポリシーが用意されており、名誉毀損などの権利侵害を伴う投稿・書き込みをされている場合は削除依頼を出すことができます。
なお、サイト管理者に削除してもらえなかった場合は、送信防止措置依頼を使った削除申請や、投稿記事削除の仮処分命令の申立てなどで対応することになります。
Twitterの削除依頼についてはTwitterの書き込みやアカウントを削除依頼するには?削除依頼の方法を解説もご覧ください。
投稿者を特定して損害賠償請求をする
名誉毀損は民法上の不法行為に該当するため、投稿者に対して損害賠償を請求することができます。
しかし、SNSやネット掲示板などの場合、匿名で投稿されていることも多く、まずは発信者情報開示請求(開示命令の申立て)などで加害者を特定する必要があります。
その後、示談交渉や訴訟などで加害者に対して損害賠償を請求するという流れになります。
発信者情報開示請求については発信者情報開示請求とは|投稿者特定の手続き・注意点・弁護士費用などを解説をご覧ください。
警察に告訴状を出し刑事責任を追及する
名誉毀損は犯罪であるため、捜査機関に告訴状を提出することが可能です。
刑事告訴は、犯罪行為が特定できればおこなうことができ、犯人が特定できているかどうかは問われません。
ただし、氏名不詳の相手方を告訴しても警察に受理してもらえる可能性は高くないため、発信者情報開示請求などで加害者を特定できているほうが、捜査機関が告訴状を受理してくれる可能性は高まります。
名誉毀損に関するよくある質問
最後に、名誉毀損に関するよくある質問・疑問に回答します。
Q.名誉毀損の訴えはいつまで認められる?
名誉毀損罪の公訴時効は、犯罪がおこなわれてから3年間です(刑事訴訟法第250条2項6号)。
この期間を過ぎてしまうと、検察官は公訴できなくなります。
また、名誉毀損罪は親告罪であるため、犯罪を知ったときから6ヵ月以内に告訴する必要があります(刑事訴訟法第235条)。
刑事告訴する場合は、できる限り早くおこないましょう。
Q.SNS上で名誉毀損をしたらどうなる?
SNSや匿名掲示板などで名誉毀損に該当する発言をした場合は、被害者に発信者情報開示請求や損害賠償請求などをされる可能性があります。
このような法的手続きがあった場合、加害者がひとりで対応するのは難しいでしょう。
早めにインターネットトラブルが得意な弁護士に相談し、謝罪や示談などの適切な対応をおこなうようにしましょう。
Q.事実の指摘がないと侮辱罪が成立する?
事実の摘示がなかった場合でも、公の場で他人を侮辱する言動をすれば侮辱罪が成立する可能性があります(刑法第231条)。
侮辱罪の法定刑は、2022年6月の刑法改正にともない「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」に引き上げられています。
まとめ|ネット上の名誉毀損は弁護士に相談を
名誉毀損は、インターネットトラブルの中でも特に多い犯罪のひとつです。
サイト管理者に通報すれば削除などの対応をしてくれる場合もありますが、名誉毀損と認められずに削除されない場合もあります。
また、サイト管理者側は表現の自由を重視する立場にあるので、その判断も厳格な場合が多いです。
そのようなときには、インターネットトラブルが得意な弁護士に相談・依頼して、必要な手続きをおこなってもらうことが重要です。
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