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残業代ゼロ法案とは?よくある誤解と対象となる条件について解説

弁護士監修記事
労働問題
2023年06月27日
2024年11月20日
残業代ゼロ法案とは?よくある誤解と対象となる条件について解説
この記事を監修した弁護士
(アシロ 社内弁護士)
この記事は、株式会社アシロの『ベンナビ編集部』が執筆、社内弁護士が監修しました。

残業代ゼロ法案は、働き方改革の一環として導入された高度プロフェッショナル制度の通称です。

しかし、名前だけを聞くと「残業代が出なくなる」「残業ができなくなる」と不安に感じてしまう場合もありますよね。

本記事では、残業代ゼロ法案の詳細について解説します。

対象となる条件やよくある誤解についても紹介しますので参考にしてください。

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「残業代ゼロ法案」とは?

「残業代ゼロ法案」とは、正しくは「高度プロフェッショナル制度」と呼ばれている制度で、2019年4月施行の働き方改革関連法で導入された制度です。

高度な専門知識を有する一部の労働者が対象となり、労働基準法に定められている労働時間や休憩、休日・深夜の割増賃金などの規定が適用されなくなります。

本来であれば、多様で柔軟な働き方を実現することを目的とした労働時間法制の一部ですが、「自分の残業代がなくなるのではないか」と悩んでいる人もいると思います。

高度プロフェッショナル制度の利用には、様々な条件が定められているため、この記事で確認し、誤解をなくしましょう。

高度プロフェッショナル制度の対象となる条件

高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者の条件としては、以下の3つが定められています。

  • 使用者との間の合意に基づき職務が明確に定められていること
  • 使用者から確実に支払われると見込まれる1年間当たりの賃金の額が少なくとも1,075万円以上であること
  • 対象労働者は、対象業務に常態として従事していることが原則であり、対象業務以外の業務にも常態として従事している場合は対象労働者とならないこと

参考:働き方改革 一億総活躍社会の実現に向けて ~|厚生労働省

また、高度プロフェッショナル制度の対象となる業務は、以下の2つの要件にあてはまる業務となります。

  • 対象業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示を受けて行うものではないこと
  • 以下の5つのうちいずれかの業務に該当すること
  1. ①金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  2. ②資産運用(指図を含む。)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務
  3. ③有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務
  4. ④顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務
  5. ⑤新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務

高度プロフェッショナル制度を導入する際には、まず労使委員会を設置し、労使委員会で決議をしたうえ、労働基準監督署への届け出や、対象となる労働者の同意を得ることが必要です。

そのほか、会社は、労働者の健康を守るために健康労働時間の把握や休日の確保等の措置をおこなう必要があります。

高度プロフェッショナル制度の対象となるメリット

残業代が支給されなくなる高度プロフェッショナル制度には、どのようなメリットがあるのか解説します。

自分の裁量で労働時間を調整できる

残業代ゼロ法案の対象となった人は、労働者は一定の範囲内で自分の労働時間を調整することができます。

労働時間を柔軟に調整できるようになることで、プライベートの時間を確保しやすくなり、ワークライフバランスの実現や、仕事と子育ての両立がおこないやすくなります。

仕事の成果によってのみ給与が反映される

残業代ゼロ法案の対象となった人の給与は、業績や成果に応じて決定されます。

残業代が支給されている場合は、長時間働くことが収入に繋がっていましたが、残業代が支給されなくなることで、ダラダラと残業することがなくなったり、短い時間で成果を出そうと業務を遂行することができます。

そのため、企業側・労働者側のどちらにもメリットがあります。

高度プロフェッショナル制度の対象となるデメリット

高度プロフェッショナル制度には導入するメリットがある一方で、デメリットも存在します。

以下では、同制度のデメリットを紹介します。

残業代や休日出勤手当がつかなくなる

高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者は、残業や休日出勤に対する追加の給与を受け取ることができません。

労働時間が増える場合でも、給与には反映されないため、労働者の収入面での不利益が生じる可能性があります。

労働時間が長くなる可能性がある

残業代ゼロ法案の対象となる労働者は、専門的な技術や知識を求められるため、業務量が増え労働時間が増加する可能性があります。

多様で柔軟な働き方を目的に導入された制度ですが、実際の現場では目的に沿わない実態となる可能性も否めません。

給与査定の基準が不明確になる可能性がある

高度プロフェッショナル制度のもとで給与査定がおこわれる場合、給与や評価の基準が不明確になる可能性があります。

労働者の成果や業績の評価が、労働時間以外の基準に依存するため、公平性や透明性に配慮しながら決める必要があります。

高度プロフェッショナル制度に関するよくある誤解

高度プロフェッショナル制度については、下記のような誤解がよくあります。

高度プロフェッショナル制度の対象は一部のみ

一部の報道や情報により、高度プロフェッショナル制度が全ての労働者に適用されるものと誤解されることがあります。

しかし、実際には特定の条件を満たす労働者にのみ適用されます。

本人の同意なしに適用はされない

高度プロフェッショナル制度は、労働者の同意なしに一方的に適用されるものではありません。

法律上、労働者の同意を得た上で適用される必要があります。

そのため、同制度の適用について会社から打診されたとしても、制度の対象となりたくない場合は、同意をしないという選択をすることができます。

会社側による健康を守るための対策が必要

高度プロフェッショナル制度では、労働者の健康と安全を守るための対策が会社側に求められます。

過度の労働時間や負荷を抱えることなく、労働者の健康を守るための措置を講じることが重要です。

まとめ|高度プロフェショナル制度に関するトラブルは弁護士に相談

高度プロフェッショナル制度は、労働者にとってはメリットとデメリットが存在する複雑な制度です。

労働者が自身の権利や労働条件についての疑問やトラブルを抱えた場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

法的な助言や適切なアドバイスを受けることで、権利や利益を保つことができます。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
  • ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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