自己破産のデメリットを徹底解説!家族への影響やほかの債務整理方法も紹介
自己破産とは、借金の返済が困難になった場合に、裁判所に申し立てて借金を帳消しにしてもらう手続きです。
自己破産にはメリットもありますが、デメリットも多くあります。
本記事では、自己破産のデメリットを6つ紹介し、自己破産ができない場合やよくある誤解についても解説します。
また、自己破産した場合の家族への影響や、自己破産以外の債務整理の方法についても紹介します。
自己破産を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
自己破産の6つのデメリット
最初に、自己破産の6つのデメリットについて、詳しく解説します。
①クレジットカードを作れなくなる
自己破産をすると、信用情報機関に債務整理をした事故情報が登録されます。
そのため、自己破産をしてからしばらくの間は、クレジットカードを作ることができなくなります(審査が通りません)。
また、クレジットカードだけでなく住宅ローンや車のローンなども組むことができません(審査が通りません)。
ただし、自己破産して5年~10年経過したら、再びクレジットカードの発行や利用ができるようになります。
②職業選択に制限が出る場合がある
自己破産の手続き中は、職業によって資格を使って就業できなくなる場合があります。
以下は、その主な例です。
- 教育委員会の委員(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第4条3項1号、第9条1項1号)
- 行政書士(行政書士法2条の2 2号)
- 銀行の取締役・執行役・監査役(銀行法7条の2 2項2号)
- 警備員(警備業法14条1項、3条1号)
- 建築士(建築業法8条1号)
- 公正取引委員会の委員長および委員(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律31条1号)
- 公認会計士(公認会計士法4条4号)
- 国家公安委員会の委員(警察法7条4項1号)
- 司法書士(司法書士法5条3号)
- 社会保険労務士(社会保険労務士法5条2号)
- 税理士(税理士法4条2号)
- 宅地建物取引士(宅地建物取引業法18条1項2号)
- 土地家屋調査士(土地家屋調査士法5条3号)
- 不動産鑑定士(不動産の鑑定評価に関する法律16条2号)
- 弁護士(弁護士法7条4号)
- 弁理士(弁理士法8条10号)
ただし、これらの職業については自己破産すると就くことができないのではなく、裁判所での手続き中の3~4ヵ月の間だけ制限がかかります。
そのため、手続きが終われば再び仕事に就くことが可能です。
また、破産手続き中にこれらの資格を取得することは可能です。
③官報に掲載される
自己破産をすると、その情報が官報に掲載されます。
官報とは、国が発行する機関紙です。
官報は個人でもインターネットや図書館などから見ることが可能です。
官報へ掲載される理由は、個人情報を公開することで債権者にもれなく自己破産を申請していることを知らせるためです。
個人情報が掲載されてしまう点については、デメリットといえるかもしれません。
ただし、官報は基本的に、債権者が債務者の情報を確認するためのものです。
そのため、一般的にはそうした情報が知り合いなど債権者以外に知られることはほとんどないと考えられます。
④手続き中の郵便物は破産管財人に送られる
管財事件で自己破産の手続きをする場合、手続き中は郵便物が全て破産管財人に送られます。
破産管財人とは、自己破産者の財産や債務の管理をおこなう者のことで、裁判所から任命された弁護士が担うことが通常です。
破産手続き中の郵便物は、債権者からの通知や請求書などが含まれる可能性があるため、破産管財人が確認する必要があります。
破産管財人へ転送されるのは、破産者本人宛ての郵便物のみであり、家族宛ての郵便物が転送されることはありません。
⑤連帯保証人が借金を背負う場合がある
自己破産をすると、連帯保証人が借金を背負う場合があります。
連帯保証人とは、借金をした本人が返済できなくなった場合に、代わりに返済義務を負う人のことです。
たとえば、親や配偶者、親族や友人などが連帯保証人になっている場合があります。
自己破産をすると、本人の借金は免除されますが、連帯保証人の借金は免除されません。
つまり、連帯保証人は本人の代わりに借金を返さなければならなくなります。
ただし、全ての負債に連帯保証人を立てているわけではありません。
負債を背負う必要があるのは、あくまでも連帯保証人を立てている負債のみです。
⑥高額な財産を処分する必要がある
自己破産をすると、高額な財産を処分する必要があります。
自己破産者は、生活に必要最低限の財産以外は全て手放さなければなりません。
たとえば、価値が20万円以上の車やブランド品や宝飾品などは生活に必要最低限ではないと判断される場合が多く、原則してそれらは全て処分する必要が生じるでしょう。
もっとも、必要最低限の財産は残すことが可能で、総額99万円までの財産は残せることが一般的です。
そもそも自己破産ができない場合がある
自己破産したいと思っていても、そもそも自己破産は誰にでもできるというわけではありません。
本章では、自己破産ができないケースや、自己破産しても免責されないケースについて詳しく解説します。
自己破産できないケース、免責されないケースとは
自己破産ができないケース、原則として免責されないケースとして、主に以下の3つが挙げられます。
- 借金の返済が可能と判断される場合
- 2度目の自己破産で前回の免責から7年以内の場合
- ギャンブル、投資、浪費で借金した場合
自己破産は借金の返済ができない場合の救済措置です。
そのため、不動産等の財産があり借金の返済ができる場合には認められません。
また、すでに一度自己破産をしている方が再度申立てをする場合は、前回の免責から7年以内の場合は原則として免責されません。
さらに、ギャンブル、投資、浪費で借金した場合にも原則として免責されません。
もっとも、免責されないケースも、事情により特別に免責される可能性があります。
免責不許可事由に該当する可能性がある方も、一度、弁護士に相談することをおすすめします。
自己破産しても免責されない借金もある
また、自己破産しても免責されない借金というものもあります。
これは、法律上で免責の対象外とされている借金です。
たとえば、以下のようなものです。
- 滞納している税金や保険料、公共料金
- 養育費や慰謝料
- 罰金
以上に関しては、非免責債権といって自己破産しても免責されないため、自己破産後も引き続き返済しなければなりません。
自己破産のデメリットでよくある誤解10選
自己破産に関する一般的な情報は十分とはいえないため、誤解や間違った情報が広まっていることも少なくありません。
ここでは、自己破産のデメリットでよくある誤解を10個紹介し、実際の事情を解説します。
①年金を受け取れなくなる?
自己破産は、借金の免責を得るための手続きであり、年金の受給資格とは関係ありません。
年金は、一定期間以上働いて納めた保険料に基づいて支払われるものであり、自己破産をしたからといって没収されることはありません。
また、すでに年金で生活している方についても、自己破産によって年金が受け取れなくなることはありません。
②選挙権を失う?
選挙権は、日本国憲法で保障された基本的人権のひとつであり、自己破産をしたからといって失うことはありません。
③戸籍や住民票に自己破産したことが掲載される?
戸籍や住民票は、個人の身分や住所などの基本的な情報を記録するものであり、借金や自己破産といった個人の財務状況とは関係ありません。
そのため、戸籍や住民票によって周りの方に自己破産したことが知られてしまうこともありません。
④海外旅行できなくなる?
破産手続開始決定後は、居住地を離れるためには裁判所の許可が必要となります。
海外出張などの場合は許可がでることが多いでしょうが、プライベートでの旅行は許可がでない可能性があります。
なお、破産手続が終了したあとは、当然何ら制限はなくなりますので自由に海外旅行ができます。
⑤家族もカードを使えなくなる?
自己破産をしても、配偶者などの家族がカードを使えなくなるということはありません。
自己破産をした方の家族は、自分の名義でカードを作ったり使ったりすることができます。
当然、破産者名義のカードは利用できなくなります。
また、破産者名義で作った家族カードも利用できなくなるため、注意が必要です。
⑥一生カードを作れなくなる?
自己破産をすると、一生カードを作れなくなるわけではありません
自己破産をした方は、債務整理が終了してから5年から10年間は信用情報機関に登録されます。
この期間中は、クレジットカードやローンの審査が通らないでしょう。
しかし、期間が経過すれば信用情報機関から抹消されます。
その後は、通常どおりクレジットカードを作ることが可能です。
【関連記事】自己破産後5年以内にクレカは作れる?破産者がカードを作るための条件
⑦自己破産が会社にバレてクビになる?
自己破産をしたことが会社に知られる可能性はゼロではありませんが、それだけで解雇されることは基本的にありません。
会社に自己破産がバレる主なケースとしては、会社が官報を読んで発見した場合と、会社から借金をしていた場合でしょう。
それら以外のケースで破産が知られることはほとんどないと考えられます。
万が一会社にバレてしまったとしても、借金や自己破産を理由とする解雇は原則として不当解雇にあたるでしょう。
もっとも、資格保持者として雇用されている人については、自己破産中の資格制限のために仕事ができないことなどを理由として解雇される可能性がないとは言い切れません。
その場合は個人再生を選択するなど、債務整理の方法を検討したほうがよいでしょう。
弁護士に相談してみてください。
⑧生活保護が受給できない?
自己破産をしたからといって、生活保護が受給できなくなるわけではありません。
生活保護は、生活に必要な最低限の費用が支給される制度です。
自己破産は借金の返済義務を免除されるだけで、生活が保障されることに変わりはありません。
したがって、生活保護の受給要件を満たしていれば、自己破産をしていても生活保護を受けることができます。
⑨賃貸借契約ができなくなる?
自己破産をしたことが理由で、賃貸借契約ができなくなることは基本的にありません。
しかし、賃貸借契約をする際には、家主や不動産会社から審査を受ける必要があります。
家賃保証会社を立てる場合には、信用情報機関に登録されている自己破産の記録が確認され、審査が通らない可能性があります。
破産後に賃貸借契約をする場合には、家賃保証会社を通さないで契約できる物件を探すなどの対策が必要となるかもしれません。
⑩就職や転職ができなくなる?
自己破産をしたことで、就職や転職ができなくなることはありません。
ここまでにも解説したように、自己破産の事実を第三者が知るためには官報を確認するしかありません。
就職や転職をおこなう場合に、企業側が官報を確認することはまずないといってよいでしょう。
ただし、自己破産手続中に制限される職業の場合には注意が必要です。
気になる方は弁護士に相談してみましょう。
自己破産した場合の家族への影響
自己破産をした場合、家族への影響にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、家族への主な影響として6つを紹介します。
破産者名義の持ち家や車がなくなる
自己破産をすると、破産者名義の財産はほとんど換価されます。
その中には、当然持ち家や車も含まれます。
もし、家族と一緒に住んでいる持ち家や、家族が使っている破産者名義の車があれば、それらも手放さなければなりません。
ただし、生活必需品や低額な財産は残される場合がほとんどですし、自動車も価値によっては持ったまま破産できる場合があります。
詳細は弁護士に相談してみてください。
預金も20万円以上は原則として換価される
また、自己破産する場合、預金も20万円以上は原則として換価の対象となります。
これは、家族のための生活費であっても同じです。
複数の銀行口座がある場合、合計で20万円以上が換価の対象となります。
子ども名義で貯金を持っていたとしても、破産者の財産と評価される場合には換価の対象となります。
もっとも、総額99万円までは持ったまま破産が認められる可能性がありますので、該当する可能性がある方は弁護士に相談してみてください。
家族カードが使えなくなる
自己破産をすると、破産者名義のクレジットカードやキャッシングカードは全て使えなくなります。
そのため、家族カードも使えなくなります。
ただし、破産者以外の方は関係ありませんので、自由に新たにクレジットカードを作ることができますし、既に持っているカードの利用に制限もかかりません。
連帯保証人の返済義務は存続する
自己破産しても、連帯保証人になっている家族の保証債務は免除されません。
つまり、家族はあなたの代わりに借金を返済しなければならなくなります。
したがって、自己破産をする前に、家族と連帯保証人の問題について十分に話し合う必要があります。
解約返戻金が20万円以上の保険は原則として換価される
自己破産をすると、解約返戻金が20万円以上の保険は換価の対象となります。
これには、学資保険や生命保険なども含まれます。
解約返戻金が、財産とみなされるためです。
解約返戻金が20万円未満の保険は換価の対象外となりますが、学資保険の解約返戻金は20万円以上の場合が多いため換価されるケースが多いでしょう。
もっとも、総額99万円までは持ったまま破産が認められる可能性がありますので、該当する可能性がある方は弁護士に相談してみてください。
保証人になれなくなる
自己破産し信用情報機関に事故情報が登録されている期間は、保証人になれません(審査が通りません)。
これは、自己破産者は信用力が低下するためです。
家族が住宅ローンや奨学金などを借りる場合、破産者が保証人になることが出来ないため、別の保証人を探す必要があります。
【関連記事】自己破産後の生活はどうなる?|破産者が受ける制限と家族に与える影響
自己破産以外にも債務整理の方法はある
ここまでは、自己破産のデメリットや家族への影響を解説してきました。
債務整理の方法は、実は自己破産以外にも選択肢があります。
ここでは、自己破産以外の債務整理の方法を2つ紹介します。
任意整理|毎月の返済を軽減する手続き
任意整理とは、債権者と直接交渉して、毎月の返済額や利息を減らすことで借金の負担を軽くする手続きです。
任意整理をすると、返済期間が延長されたり、利息がカットされたりすることで、毎月の支払いが楽になります。
任意整理は、裁判所を使わないため、手続き費用も安く済みます。
ただし、任意整理は、安定した収入がある場合や、原則3~5年で返済できる見込みがある場合などが前提となるでしょう。
【関連記事】任意整理とは?基本をわかりやすく解説
個人再生|裁判所に申し立てて借金を大幅に減額する手続き
個人再生とは、裁判所に申し立てて、借金を大幅に減額することで、完済する見込みを立てる手続きです。
減額された借金は、通常3年かけて支払う必要があります。
個人再生の場合は、車や生命保険を残すことも可能です。
そのため、車や持ち家など、一部の財産を残して債務整理したい場合におすすめの方法です。
また、自己破産によって仕事に制限が出る場合にも個人再生を選択するとよいでしょう。
【関連記事】個人再生とは?基本をわかりやすく解説
さいごに
本記事では、自己破産のデメリットと誤解について解説しました。
自己破産は、大きなメリットがあると同時にデメリットもあります。
家族にも影響が出ることもあります。
借金の返済が難しい場合の対処法は、自己破産だけでなく、任意整理や個人再生などの方法もあります。
自分の望む形に最も適した手続きを選択しないと遠回りになってしまいます。
お悩みの方は、まずは一度、弁護士に相談してみてください。
あなたにとって、何が一番良い方法なのかを一緒に考えてくれると思いますよ。