当て逃げした場合の罰則内容!問われる3つの責任と事故後の対処法とは
交通事故を起こした場合、どのように対応すればよいかパニックにおちいりますよね。しかし、どれだけ混乱してもその場から逃げてはいけません。
車などにぶつかって、そのまま逃走することを当て逃げといい、起こしてしまった場合は刑事、行政、民事とさまざまな面で責任を問われます。
本記事では、当て逃げした場合の罰則、問われる責任について解説します。また、当て逃げした場合の対処法ついても触れていくので、ぜひ参考にしてください。
当て逃げすると問われる3つの責任
当て逃げをした場合、さまざまな罰則や賠償をしなければなりません。具体的にどのような責任を負うのか、刑事、民事、行政の面からそれぞれ解説します。
1. 刑事責任|懲役や罰金などの刑事罰が課せられる
刑事責任については、罰金のほか懲役刑に処せられる可能性があります。
交通事故を起こした場合、ドライバーには適切な措置を講じる義務があり、加えて警察へ報告しなければなりません。
仮に当て逃げをした場合は、適切な措置を講じているとはいえません。さらに、警察への報告義務も果たしていないので罰則が与えられるわけです。
2. 民事責任|物損の弁償が必要になる
民事責任とは当て逃げで相手の物品に損害を与えた場合の損害賠償責任で、車にぶつけたのであれば修理費用や代車費用などの責任を負わなければなりません。
もし、タクシーやバスなど営業車の場合は修理期間中仕事ができないので、休車損害といい車を動かせないために逸した利益の責任を取る必要があります。
なお、民事責任は当て逃げの有無に関係なく、こちらに過失があれば支払い義務があるので注意してください。
3. 行政責任|危険防止等措置義務違反なら5点
当て逃げをした場合は行政責任として違反点数が与えられます。まず、危険防止など措置義務違反に該当するので5点減点されます。
また、物損事故が過失だった場合は安全運転義務違反に該当する可能性があり、2点の違反点数もプラスされます。
仮に2つとも認められた場合の違反点数は7点となり、6点以上であれば免許停止の対象です。
つまり、当て逃げをしたことで一発免停になる可能性があります。なお、事故を起こしたことで違反点数が加算されることはありません。
当て逃げした場合の刑事罰3つ
当て逃げは立派な犯罪なので、刑事罰を受ける可能性があります。
具体的にどのような違反に当たるのか、どのような刑罰が待っているかを解説します。
1. 報告義務違反|現場から逃走した場合
まずは、報告義務違反です。事故を起こした際にドライバーには警察への通報義務があります。
仮に当て逃げをして警察への通報なしにその場から離れると報告義務違反に該当します。
事故の大小に関係なく、警察への報告義務がある点を忘れてはいけません。
3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金
報告義務違反は3ヵ月以下の懲役もしくは5万円以下の罰金です。
懲役の可能性がある違法行為であることを覚えておきましょう。
2. 危険防止等措置義務違反|救護や道路の危険を防止をしなかった
事故を起こしたドライバーには、運転を停止し負傷者の救護や道路の危険防止などの措置をとることが義務付けられています。
当て逃げは道路上の危険防止のための措置をおこなっていないことになります。
つまり、危険防止など措置義務違反に該当する行為と考えられるわけです。
当て逃げは負傷者は出ていないかもしれませんが、道路の危険をそのままにして現場を離れれば違法行為に該当します。
1年以下の懲役または10万円以下の罰金
危険防止など措置義務違反は1年以下の懲役もしくは10万円以下の罰金に処されます。
事故によって道路に危険が生じたと判断されれば、こちらのペナルティを受ける可能性があります。
3. 救護義務違反|ひき逃げの場合
交通事故によって、物だけでなくけがなどの人的被害が生じているにもかかわらず、その場から逃げた場合はひき逃げとなります。
なお、ひき逃げにも該当する行為であれば救護義務違反です。
もし、交通事故を起こして死傷者が出ている場合、運転手はすみやかに救護作業に当たることが義務付けられています。
本人は当て逃げと認識しても死傷者が出ていればひき逃げになります。
また、物損だけでなく死傷者も出した場合、より重たい刑罰を科せられる可能性があります。その点に注意して、事故を起こしたら規模の大小関係なくその場に留まりましょう。
5年以下の懲役または50万円以下の罰金
救護義務違反に当たると判断されれば、5年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金に処せられます。
なお、事故の原因となった運転者に対してはより罰則が重くなり、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。
当て逃げのみの場合と比較しても、格段に重い罰が待っていると理解しておいてください。
当て逃げは器物損壊罪にはならない
当て逃げで他人の物を壊した場合は器物損壊罪に該当すると認識している方は少なくないかもしれません。
当て逃げで器物損壊罪が適用されることはありません。器物損壊罪とは故意に他人の物を壊した場合に適用されます。
当て逃げは故意ではなく過失である場合がほとんどなので、器物損壊罪には該当しないのです。
ただし、状況から意図的にぶつけて壊したと判断されれば、器物損壊罪に問われる可能性もあります。
当て逃げした場合の民事責任|損害賠償が必要
当て逃げは何らかの物を壊す行為で、もし他者の物を壊した場合は損害賠償を請求される可能性があります。
ここからは、どのような損害賠償請求が発生するかを解説します。
車の修理費用|車を傷つけた場合
車同士による衝突事故の場合、自分に過失があれば相手の車の修理費用をもつ必要があります。
ただし、相手にも過失がある場合は過失割合に基づき一部費用を負担する形になるでしょう。
代車費用|当て逃げで相手の車が動かなくなった場合
車同士の物損事故で相手の車が走行不可能な状態になれば、代車を呼ばなければなりません。
仮に自分に過失があり事故になった場合、この代車費用は自分で負担することになります。
積荷損|積載していた荷物が破損した場合
トラックなどの営業車に衝突した場合、車両だけでなく積載していた商品などにも損害が発生する可能性があります。
この場合、荷物の破損した金額を賠償しなければなりません。
ただし、全額負担する必要のない場合もあり、請求される金額はケースバイケースとなるので弁護士など専門家の助言を受けて交渉しましょう。
休車損害|タクシーやバスなどを傷つけた場合
タクシーやバスなどの営業車と衝突し破損した場合、修理期間中は営業不可の状況に陥ります。
これを逸失利益といい、事故がなければ利益に繋がるはずであったことから、収入に対する賠償金が請求される可能性があります。
車の評価損|当て逃げにより車の市場価値が下がる場合
事故によって車がダメージを受け、市場価値が低下する可能性も考えられます。
事故と市場価値の減少との因果関係が立証されれば、減少分の賠償を請求されるかもしれません。
当て逃げした場合の行政罰で加算される点数
当て逃げをした場合は行政責任も生じ、これはいわゆる違反点数を受けるペナルティのことです。
当て逃げをした場合は危険防止措置義務違反と安全運転義務違反に該当する可能性があり、それぞれの違反点数は5点と2点です。
なお、両方とも該当すると認められれば7点の違反点数になります。
これにより、過去に行政処分を受けたことがない方でも30日間の免許停止になってしまうほどの重たいペナルティが課せられるので、当て逃げは決して起こしてはいけません。
当て逃げをした場合にするべき対処法4つ
当て逃げにより物損事故を起こしてしまった場合、必ず現場にとどまるべきです。
しかし、なかには気が動転して、その場を立ち去ってしまう方もいるでしょう。
このような当て逃げをした場合でも、おこなうべき対処法があります。
当て逃げをしたあとに誠意ある対応をすれば、ペナルティも軽くなる可能性があるので、次の行動を参考にしてください。
1. 自分で警察に連絡をする
当て逃げをしてしまっても、事故を起こした自覚があればすみやかに警察に申告してください。
なお、その際に通報する先は事故現場を管轄している警察署です。もしかすると、当て逃げが発生したあとで警察が捜査を始めている可能性があります。
自分から当て逃げを申告すれば、逃亡や証拠隠滅の意図はないことを警察に伝えられます。
なお、当て逃げを起こすと場合によっては逮捕される可能性がゼロではありません。
しかし、逃亡や証拠隠滅の意思がないと判断されれば、在宅捜査で進み逮捕は免れられるケースもあるのです。
2. 保険会社に連絡をする
物損事故の場合、自分の車も何らかのダメージを受けている可能性があるでしょう。もし、任意保険に加入しているのであれば保険会社とすみやかに連絡を取ってください。
保険会社に連絡をすれば、事故証明書の取得など警察署との連絡を代行してくれます。
また、当て逃げ被害が出ていれば被害者も特定でき、保険会社に賠償などの交渉も全て任せられます。
仮に任意保険に加入していないと、このような対応を任せることもできないので、加入していない場合はすぐに自動車保険の契約を締結してください。
3. 被害者と示談交渉をおこなう
当て逃げが事件化されていれば、警察に連絡することで被害者を特定できます。そこで、被害者とコンタクトを取って示談交渉を進めることも大事です。
被害者と和解できれば、被害届を取り下げてもらえる可能性があり、示談が成立すれば被害者側に誠意ある対応をしたと判断され、刑事罰を受けずに済むケースもあります。
もし、被害者が特定できなければ弁護士に依頼しましょう。
弁護士に依頼をすることで警察を介して情報収集することができ、法的に妥当な示談金で交渉をおこなってくれます。
4. 弁護士に連絡をする
当て逃げしたかもしれないと思い当たる節があれば、交通事故を得意とする弁護士に一度相談してください。
弁護士に相談すれば、法律の専門家の見地からいろいろとアドバイスを受けられます。
具体的には警察への申告方法などのアドバイスを受けられ、一人で心細い場合は出頭に同行してくれることもあります。
場合によっては事情聴取を受けることもありますが、何に気をつければよいかというアドバイスもしてくれるためたいへん心強いです。
また、警察が逮捕を前提に捜査を進める可能性もあります。
このような状況でも弁護士経由で事故を申告すれば逃亡や証拠隠滅の恐れなしと判断され、逮捕されずに済む可能性も出てきます。
当て逃げした場合に弁護士に依頼するメリット4つ
当て逃げをしてしまった場合、弁護士に相談することは有効な対策です。
弁護士に相談すれば、今後の問題解決に向けてさまざまなサポートが受けられます。
ここからは、弁護士に依頼をする4つのメリットについて解説します。
1. どのように対応したらいいか適切なアドバイスがもらえる
当て逃げについて弁護士に相談するメリットとして、法的観点からさまざまなアドバイスが受けられる点は見逃せません。
たとえば、弁護士からは自首するようにアドバイスされるケースがありますが、犯人が誰かが発覚していない場合には、自首すると刑事処罰を受けることになったとしても刑罰が減刑される可能性があります。
これは、自ら事故があったことを申告することで、刑事処罰を受ける意思表示ができるためです。
当て逃げを起こした場合、刑事以外に民事や行政の責任も生じます。
このような責任に対して、どのように対処すべきか適切なアドバイスを受けられる点もメリットのひとつです。
自分ではどのように対処すべきかわからない場合、法律に精通している弁護士へ相談することで起こすべき行動について指示を仰げます。
2. 被害者と代わりに示談交渉をしてくれる
弁護士に依頼すると代理人として被害者と示談交渉し、仮に示談が成立すると起訴されずに済む可能性が高まります。
交通事故に注力している弁護士に依頼をすれば示談交渉に関するノウハウを豊富に持っています。
被害者側も納得できる範囲で話しをまとめてくれることでしょう。
とくに、示談書のなかで加害者を許す、もしくは刑事罰を求める気はないなどの文言が入っていれば不起訴になる公算は大きいといえます。
保険会社はこのような文言を示談書に入れるまでのサポートはしてくれないかもしれません。
弁護士であれば今後の刑事手続きを有利に進めるために、このような文言を入れてくれるでしょう。
3. 逮捕を回避できる可能性が高くなる
弁護士による当て逃げ事件に関するアドバイスのなかで、自首するように求める場合があります。
これは、自首することで刑罰が軽くなる可能性がある、あるいは逮捕を回避できるかもしれないためです。
しかし、自首すべきと説得されても、なかなか一人で警察に出頭することは一般の方にとってハードルが高いでしょう。
ためらっている間に捜査が進み、犯人が特定され逮捕される恐れもあります。
その点、弁護士に相談すれば自首する際に同行してくれる場合があり、さらには捜査員に口添えしてくれることも期待できます。
当人は反省していること、証拠隠滅や逃亡をする気はないといった旨を説明してくれるでしょう。
また、自首すると家族に当て逃げの事実を知られるため、抵抗がある方もいるでしょう。
弁護士に依頼すれば、身元引受人になってくれることで家族に連絡がいかないよう対処してくれる場合もあるため安心です。
4. 早期の保釈が実現できる
たとえ逮捕されてしまった場合でも、弁護士に依頼すれば早期保釈を勝ち取れるかもしれません。
当て逃げの疑いで逮捕・勾留されて起訴されるまで勾留が続いた場合、起訴された後も勾留は続き、
公判期日まで拘置所にいなければなりません。
そうなると、相当長期間身柄を拘束されてしまうので、社会復帰がますます遠のきます。
弁護士に依頼すると起訴処分が出た段階で保釈請求を含む法的手続きを進めてくれます。
このとき、保釈金の準備などのアドバイスがあるので、指示に従って準備を進めてください。早く社会に出るためにも、弁護士の力を借りることは得策といえます。
当て逃げに関するよくある質問
最後に、当て逃げに関するよくある質問について紹介します。
接触に気づかなかった場合はどうなる?
衝突に気づかずその場を去ってしまったものの、車の傷で疑いをもった場合はすぐに警察に届けてください。
相手が被害届を出す前であれば、警察に出頭して接触したことに気づけなかった旨を主張することで、刑事責任は問われずに済む可能性があります。
すでに相手が被害届を出している場合は、相手に連絡を取ってください。
そのうえで、たとえ気づかなかったとしても相手に損害を与えているので謝罪することが大事です。
そして、誠実に示談交渉を進めれば相手も受け入れてくれる可能性があります。
昔の当て逃げについて罰則が課せられる場合はある?
刑事事件には時効があるので、公訴時効を経過した当て逃げ事件に関しては処罰を受けることはありません。
なお、当て逃げの場合は事故が発生して逃げた時点から3年経過すると時効となります。
よって、3年以上前に起こした当て逃げで、のちに起訴・処罰されることはありません。
ただし当て逃げをした自覚があれば、警察に通報すべきという点は必須です。
まとめ
当て逃げは刑事事件に発展する立派な犯罪で、悪質と判断されれば懲役刑に処される可能性があります。
たとえ刑事罰を逃れたとしても、行政や民事での責任を問われるでしょう。
行政責任の違反点数は一発免停になる恐れがあるほど大きなものなのです。
事故を起こしたかもしれない場合は、その場に留まり救護措置や危険回避の対応をとりましょう。
それでもその場で事故に気づかず走り去ってしまった場合は、事故を起こしたかもしれないと認識した段階で警察や弁護士に相談しましょう。