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給料の減額要請の拒否は可能!拒否の対応方法や減額が許されるケース

弁護士監修記事
労働問題
2024年05月27日
2024年05月27日
給料の減額要請の拒否は可能!拒否の対応方法や減額が許されるケース
この記事を監修した弁護士
杉本 隼与弁護士 (銀座パートナーズ法律事務所)
お話を真摯な姿勢でお聞きすることを大切にしています。単に法的なアドバイスを提供するだけではなく、まずはカウンセラーのように、丁寧にお話を伺うことから始めます。ご遠慮なくお悩みをお聞かせください。
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会社勤めをしていると昇給・昇進することがありますが、反対に給料が減額されることも考えられます。

もちろん、減額の理由に納得できるのであれば問題ありませんが、なかには理不尽に感じ拒否したいと考える方も少なくないでしょう。

本記事では、会社から給料の減額を要請された際の対応方法について解説します。

拒否した場合に生じる影響や、拒否できないケースなどについても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

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会社から給料の減額を切り出されたときに拒否はできる?

会社全体の売上・業績の低下や労働者の勤務態度などが原因で、会社から給料の減額を打診されることは珍しくありません。

しかし、給料減額の理由が不透明であったり納得できない・理不尽なものであったりすれば拒否したいと思うでしょう。

原則として労働者は不当な給料の減額は拒否できますが、必ずしも自身の主張がとおるとは限りません。

原則として従業員(労働者)との合意が必要

基本的に給料の減額は労働条件の変更に該当するため労働契約法(8条・9条)にのっとる必要があります。

第八条

労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

第九条

使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

引用元:労働契約法

こちらにあるとおり、会社側は給料を減額する際には労働者の合意を得なければなりません。

つまり、労働者が給料の減額を打診された際に拒否する権利があるのです。

給料の減額を拒否した場合のその後|考えられるケース3つ

給料の減額は労働者の合意が必要であり拒否できますが、その後に影響する可能性があります。

ここからは給料の減額を拒否した場合、その後に考えられる3つのケースを紹介します。

1. 給料はそのままで現状維持だが今後の昇進・昇給に響く場合も

会社側からの給料の減額を拒否した場合、基本的に現状維持のままになります。何度か減給の打診があっても拒否し続ければ会社側も諦めるでしょう。

しかし、給料の金額を現状のまま維持できても、会社側からの評価は下がる可能性があり、今後の昇進・昇給に響く場合があります。

給料の減額の理由が会社全体の業績不振など本人に責任がなければ、評価が下がりにくいでしょう。

しかし、本人のミスによるものであれば減給を拒否することで評価が下がる可能性が高いです。

2. 拒否を無視して強制的に減給される

給料の減給を拒否した場合でも、状況によっては会社側が従業員の意向を無視して強制的に給料が減額されることがあります。

これは、従業員自体に問題があるなど減給の明確な根拠があれば、会社側は一方的に実行できるためです。

3. 最悪のケースとしては解雇される

給料の減額を拒否した場合、最悪のケースとして不当に解雇される可能性があります。実際に会社側は、従業員に退職を促す目的で減給することがあるためです。

能力不足などが原因で退職を促しても応じなかったり、給料の減額に同意しなかったりすると解雇が強行されることがあります。

ただし、客観的で合理的な理由なしに会社は従業員を解雇できません。正当な理由がなければ不当解雇に該当し、濫用として無効になります。

給料の減額を告げられたときの対応方法3つ

給料の減額を告げられ、その内容が不当であると感じる場合には適切に対応しましょう。

ここからは、給料の減額を告げられたときの3つの対応方法を紹介します。

1. その場での回答は避ける

会社側が給料の減額を告げられた場合は、その場ですぐに回答することは避けましょう。その場で合意すると給料が減額されてしまいます。

まずは、会社側へ減額の理由・背景を確認し、その内容に合理性があるのかを検討する必要があります。

強制的に回答を求められた場合は録音し会話を記録

給料の減額を告げられたとき、場合によってはその場で強制的に回答を求められるケースも考えられます。

このような回答を迫る行為が不当である可能性もあるため、その後のことも考え会話を録音し記録しましょう。

会社側としては従業員の同意を得たいと考えていますが、その手段が不適切であると判断されれば会社に非があることになります。

2. 書面やメールで拒否することを回答

給料の減額を拒否する場合は、口頭ではなく書面やメールでその旨を伝え、記録として残すと有効です。

口頭で拒否してもそれを証明できなければ、会社側に同意したと捉えられる可能性はゼロではありません。

書面やメールで回答することにより、記録として残せるため拒否した旨を証明できます。

3. 解決しない場合は労働問題を得意とする弁護士に相談

給料の減額をめぐって会社側とトラブルに発展した場合や、解決しないときは給与・労働問題を得意とする弁護士に相談するのがおすすめです。

これらの弁護士は労働問題に詳しいことから、従業員の状況に合った提案を受けられるでしょう。また、会社側の対応が不当であるかも適切に判断できます。

そのため、減給の同意を強いられたときや、不当解雇に遭ったときなどにも適切に対応してもらえます。トラブル解決に向けて強い味方になるので、まずは相談してみてください。

労働問題のトラブルを得意とする弁護士の探し方2つ

弁護士に相談する際は、まず給料などの労働問題のトラブルを得意とする法律事務所を探す必要があります。

ここからは弁護士を探す主な方法を2つ紹介します。

1. インターネットで探す

多くの法律事務所は自分たちのホームページを持っているため、インターネットを使うことで今の状況に適した弁護士を探せます。

Webブラウザで「弁護士 労働問題」「弁護士 給与トラブル」などで検索するとよいでしょう。

また、検索する際に地域を入力すると、その近くの法律事務所が検索結果に表示されます。

自宅や勤務地などの地域を入れることで、最寄りの弁護士・アクセスしやすい法律事務所を見つけられます。

2. ベンナビ労働問題で探す

 ベンナビ労働問題は、労働問題が得意な弁護士が集まったポータルサイトです。

給料が減額されたとき以外にも、残業代請求や不当解雇などのトラブルに対応した弁護士をスムーズに探せます。

ベンナビ労働問題には、キーワードや地域、相談内容を入力する項目があるため、そちらを埋めることで条件に合致した弁護士が表示されます。

弁護士を検索できるだけでなく、相談したときの流れや依頼した際の費用相場についても掲載されているため参考になるでしょう。

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給与減額について弁護士に依頼するメリット

自分一人で給与の減額について会社側に交渉しても、場合によっては争うことにも発展しかねません。

その際に、弁護士に依頼して対応してもらうとやり取りがスムーズで希望する形に着地しやすいです。ここからは給料の減額について弁護士に依頼するメリットを紹介します。

1. 法的根拠に基づいて主張できるので交渉に強い

弁護士に依頼した場合、法的な根拠に基づいて主張・交渉できるため希望する結果を実現しやすいです。

たとえば、給料の減額の同意を強く迫られていたり、拒否した結果不当に解雇されていたりした際、適切に手続きを進められるでしょう。

2. 自分で交渉しないのでストレスが少ない

会社側と給与関連でトラブルになった際、自身で対応することも可能ですが、主張や交渉を続けることは精神的に大きな負担になります。

そこで弁護士に依頼すると、会社側との交渉を代行してもらえるため感じるストレスは少ないです。

また、法律や労働問題の専門家である弁護士を味方につけ、適切なアドバイスを受けられることに安心感も得られるでしょう。

3. 給料の減額を拒否できる可能性が高くなる

会社側は不当な理由で給料を減額できません。弁護士に状況を共有し相談することで、減給の拒否が適切なものであるかを判断してもらえるでしょう。

仮に給料の減額の拒否をしても強行される場合であれば、会社側が不当であるかがわかり主張をとおしやすくなります。

4. 裁判になった場合は弁護士が代わりに出席してくれる

給与トラブルで会社側と裁判することになっても、弁護士が本人に代わって裁判所に出席してもらえます。

依頼者の主張や考えを整理し伝えてもらえるだけでなく、出廷する手間もかからないため裁判に発展した際の負担を大幅に軽減できるでしょう。

もし給料の減額にやむをえず同意してしまったら

ここからは、もし給料の減額についてやむをえず同意してしまった際の対処法を紹介します。

やむをえず同意した場合は無効を主張できる

会社側から給料の減額を告げられた際、もし動揺してしまってその場で同意しても無効を主張できる場合があります。

たとえば、次のようなケースでは給料の減額が無効になることがあります。

  • 給料の減額幅が非常に大きい
  • 会社側が減給の同意を強制するような言動があった
  • 減給の理由について会社側から十分な説明がなかった

これらのいずれかに該当する場合は、労働者の自由な意思による同意がなかったと判断されます。

このようなケースでも個人で無効を主張しても、会社側が取り合ってくれない可能性があるため、弁護士によるサポートを受けるのがおすすめです。

最高裁判所による判例

最高裁判所による平成28年2月19日の判例では、給料の減給の同意が「労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否か」という観点から判断されるべき、としています。

この判例では、就業規則で定められた賃金・退職金に関する条件変更について、労働者の自由意思によるものかを、次の状況とあわせて判断するべきとしています。

  • 賃金・退職金に関する変更による労働者が被る不利益の内容や程度
  • 労働者が変更を受け入れるに至った経緯
  • 使用者による労働者に対する説明の内容

これらの事情から労働者の自由意志による同意でないと判断されることにより、給料の減額が無効になる場合があります。

給料の減額を拒否できないケース3つ

給料が減額になる背景によっては拒否できないことがあります。ここからは、給料の減額を拒否できない3つのケースを紹介します。

1. 就業規則が変更された場合

就業規則が変更されたことにより、給料が減額になった場合は拒否できません。

ただし、就業規則の変更によって労働者が不利益を被る場合は、労働契約法第10条により次の要件を満たす必要があります。

  • 変更後の就業規則の内容を労働者に周知する
  • 就業規則の変更が合理的なものであること

つまり、就業規則の変更内容が周知されていなかったり、合理的なものでなかったりする場合は拒否できる可能性があるでしょう。

第十条 

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

引用元:労働契約法

2. 人事評価による場合

人事評価によって給料が減額された場合も拒否することができません。従業員の勤務態度や成果により評価されますが、その内容をもとに昇給・昇進・減給などが決まります。

公平で透明性がある人事評価による減給であれば、正当な理由があると判断されます。

このようなケースで給料の減額に納得がいかない場合は、人事評価の詳細の開示を求めるとよいでしょう。

3. 懲戒処分による場合

人事評価と同様に、懲戒処分が適法なものとして有効であれば、懲戒処分による減給は会社側に正当な理由があると判断されるため、拒否できません。

懲戒処分には次のような種類があります。

  • ・戒告・譴責・訓告
  • ・減給
  • ・出勤停止
  • ・降格
  • ・諭旨解雇・諭旨退職
  • ・懲戒解雇

この懲戒処分のうち、減給・出勤停止・降格になると現在の給料よりも減額される可能性があります。

懲戒処分は何か問題を起こした従業員を処罰するものであるため、基本的には拒否できません。

4. 賞与は会社の売り上げや社員の成績で金額が変わる

賞与については金額が固定されているものではなく、会社の売り上げや従業員の成績が反映されやすいため、減額されても違法にはならず拒否もできません。

ただし、就業規則を無視した減額であったり、入社時に結んだ労働契約と異なる内容であったりすると違法になる可能性があります。

たとえば、入社前の説明で年2回の賞与がある旨を伝えておきながら、入社後に1回も賞与が出なければ問題になるでしょう。

まとめ

本記事では、会社から給料の減額を要請された際の対応方法について解説しました。原則として、労働者の合意なしに給料を減額することはできません。

これは労働契約法に定められているので、会社側から給料の減額を告げられた場合は拒否できます。

しかし、減給を拒否した場合、その後の昇進や昇給などに響く可能性があるため注意が必要です。

もし給料の減額を拒否した結果、会社と争うことになった場合は弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

弁護士に依頼することで、給料の減額が正当なものであるか判断しやすく、裁判になった場合でも精神的な負担を軽減できます。

会社側とトラブルになった場合は、自分に合った弁護士を探してみてください。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
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