知らずに詐欺に加担しても共犯になる?弁護士に相談するメリットとは
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近年の特殊詐欺は巧妙化しており、役割分担が多岐にわたります。
場合によっては自分や家族、知り合いが詐欺に加担している可能性は否めません。
また、自覚がないまま詐欺に加担してしまい、あとで犯罪だと知った方もいるのではないでしょうか。
このようなケースでは、共犯として罪に問われるのか気になりますよね。
ほかにも、悪意がなく詐欺の共犯になったときを想定し、有効な対処法についても押さえておきたいところです。
本記事では、知らずに詐欺に加担しても共犯になるのかを解説します。
また、弁護士に相談するメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
詐欺における共犯の種類
詐欺の共犯は犯罪への関わり方によって種類がわかれます。
詐欺における共犯のおもな種類は次の3つです。
共同正犯 |
共謀して詐欺をする |
共謀共同正犯 |
犯罪を企てる |
幇助犯 |
犯罪を手助けする |
1. 共同正犯(刑法第60条)|共謀し詐欺を実行
共同正犯は刑法で次のように定められています。
(共同正犯)
第六十条
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
引用元:刑法
この条文から、主犯と一緒に犯罪・詐欺行為を実行した場合は正犯になります。
共同正犯の成立条件
共同正犯は二人以上が共同して犯罪を実行した際に成立します。なお、詐欺に加担した実行犯が複数人いる場合、いずれも正犯となります。
また、共同正犯の成立には共同したことが認められる必要があり、そのためには共同実行の意思・共同実行の事実という2つが揃わなければなりません。
たとえば、AとBが詐欺行為を実行する際に役割分担をした場合は、それぞれが協力しているため共同実行の意思があり、実際にだました結果があるのであれば共同実行の事実があると判断されるでしょう。
この共同正犯は犯罪ですが、脅されていて詐欺に加担しないと生命の危険があるといった事情がある場合は罪に問われない可能性があります。
2.共謀共同正犯(刑法第60条)|犯罪を企てる
共同正犯が定められている刑法第60条では、犯罪を企てることで共犯になる共謀共同正犯という解釈も存在します。
詐欺の実行犯だけでなく実行前に謀議があって犯罪を計画した者全員が共同正犯になり、実行犯がひとりだけで計画に参加した者が複数人の場合も全員が正犯になります。
共謀共同正犯の成立条件
共謀共同正犯も共同正犯に含まれ、成立するためには共同実行の意思・共同実行の事実の存在が必要です。特に共謀の事実の有無が重視されています。
また、共同正犯と共謀共同正犯の大きな違いは、実行行為の有無に関係なく謀議に参加していれば全員が正犯になる点です。
3. 幇助犯(刑法第62条)|犯罪の手助けする
幇助とは手助け・援助のことで、正犯の犯罪の実行を支援して容易にする行為を指します。
なお、刑法第62条では次のように定められています。
(幇助)
第六十二条 正犯を幇助した者は、従犯とする。
2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
(従犯減軽)
第六十三条 従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。
引用元:刑法
そして、詐欺行為における幇助には次のようなパターンが該当します。
- 連絡用のデバイスや犯罪ツールを用意する
- 逃走用の車両を用意する
- 詐欺ターゲットのリストを調達する
幇助犯正犯の成立条件
幇助は正犯の犯罪行為を物理的・精神的に手助けしており、支援する意思があった場合に成立します。
また、手助けをしていたとしても正犯が犯罪を実行しなければ幇助になりません。
ほかにも、手助けによって正犯の実行が容易になる必要があります。幇助は刑法第63条で定められているとおり、正犯よりも量刑が軽減される傾向にあります。
詐欺罪が成立する4つの条件
詐欺罪が成立するのは、次の欺罔行為、錯誤、処分行為、占有・利益移転の4つの条件を満たした時です。
欺罔行為 |
人をだますために嘘をつくこと (財物交付に向けて虚偽を告げる、真実を告げない) |
錯誤 |
発言していることと内心思っていることが一致しておらず、相手がそのことに気づいていない (欺罔行為の結果、相手が勘違いする) |
処分行為 |
相手自身によって財産の利益を処分させること |
占有・利益移転 |
財産を行為者・第三者に移転させること |
この欺罔行為・錯誤が該当しない場合は詐欺罪は成立しません。
また、欺罔行為・錯誤があり、処分行為、占有・利益移転の2つが該当しないときは詐欺未遂になります。
詐欺とは知らずに加担してしまった場合は共犯になる?
詐欺とは知らず悪意がなくても、加担している場合は共犯者になり得るため注意しましょう。
オレオレ詐欺など特殊詐欺の被害は増加傾向にあり、警察庁のデータによると令和5年の特殊詐欺認知件数は19,033件、被害額は441.2億円にもおよびます。
1日あたりの被害額は1億2,088万円、1件当たりにすると231.8万円です。
また、近年の特殊詐欺は巧妙化・複雑化していて役割分担が多岐にわたるため、知らずに加担してしまうケースは珍しくありません。
これらから、知らずに詐欺へ加担している、共犯として捕まる事例が増えています。
もし知らずに共犯として事件に巻き込まれたときも、被害者からすると詐欺グループの一員であることには変わりないので、自分は悪くないという主張は得策とはいえません。
万が一、詐欺の実態を知らず共犯となった場合は、弁護士に相談・依頼をして被害者へ謝罪・賠償をおこない、無罪や不起訴を目指して証拠を集めましょう。
実際に、詐欺に加担していても犯罪に対する故意が一切なければ詐欺罪は成立しません。
しかし、警察・検察側は捜査により故意であったことを証明できるように動くため、弁護士と協力してくつがえせる証拠を集める必要があります。
オレオレ詐欺(特殊詐欺)では知らないうち共犯になってしまうことが多い
オレオレ詐欺などの特殊詐欺は手法が巧妙化していて、ひとつの事件に複数人が役割分担をして関わっているケースが多くなっています。
その複雑な役割分担から、詐欺とは知らず犯罪に加担している可能性は否めません。
ここからは、知らないうちに共犯になってしまうことが多いケースを紹介します。
1.お金の受け取りを頼まれた| 受け子
受け子とは詐欺によって騙し取ったお金を受け取る役のことです。
被害者のもとへ行き、現金・キャッシュカードを受け取るケースがほとんどです。
被害者に顔を見られてしまうリスクがあるため、詐欺の作戦の全容を知らされていなかったり、組織の末端の人間が使われたりします。
たとえば、「バイト代を出すから〇〇さんから約束のお金を受け取って欲しい」といわれ、実行してしまうことで知らないうちに共犯になる可能性があります。
2. お金の引き出しを頼まれた|出し子
出し子は、受け子が受け取ったキャッシュカードなどを使い現金を引き出す役のことです。
他人のキャッシュカードを不正に入手し現金を引き出すため犯罪になります。
出し子も受け子と同様に、「簡単で報酬がよいバイトがある」などと誘われて加担してしまうケースが多いです。
なお、出し子はコンビニや銀行のATMを直接操作することから設置されている防犯カメラに映りやすいといえます。
被害者のキャッシュカードの記録も残るため、現行犯逮捕・後日逮捕されやすいです。
電話をかけて詐欺をはたらいた|かけ子(正犯)
かけ子は、被害者に嘘の電話をして騙す役割のことです。
欺罔・錯誤に最も関与しているため一連の詐欺の流れの正犯になります。
被害者を騙す役割であるため、受け子・出し子よりも重い処罰が下される可能性が高いです。
また、複数人に対して詐欺を働いている場合、被害額が大きくなることで弁償・示談ができず実刑判決になるケースは少なくありません。
いわゆるテレアポのようにリストに記載された先へ電話をするアルバイトは多くあります。
慎重に判断しなければ自身が詐欺のかけ子として加担する恐れがあるといえるでしょう。
詐欺に加担してしまったかも…という方は今すぐ弁護士に相談を
いずれかの関わり方で詐欺に加担してしまったかもしれないと不安を抱えている場合は、弁護士への相談がおすすめです。
ここからは、詐欺の共犯が考えられる場合の相談先となる弁護士の探し方を紹介します。
オレオレ詐欺が得意な弁護士の探し方
オレオレ詐欺などの特殊詐欺に加担している可能性がある場合、まずは詐欺を得意とする弁護士を探す必要があります。
特殊詐欺は年々巧妙化していることから、事件解決の実績が多い弁護士のほうが任せやすいでしょう。
また、法律事務所の多くは自社のホームページをもっているため、インターネットを使い効率よく探せます。
インターネット検索で探す
インターネットで探すときは「特殊詐欺 共犯 弁護士」などのキーワードで検索しましょう。
自分が関係しているかもしれない犯罪のキーワードを検索時に含めることで、それを得意とする弁護士を見つけやすくなります。
また、弁護士に依頼すると何度かやり取りが必要になるため、アクセスがよい法律事務所を選びましょう。
インターネットで検索する際は、キーワードとして現住所や勤務先などの地域名を入力することでヒットしやすくなります。
ベンナビ刑事事件で探す
弁護士を効率よく探すときは、弁護士の情報を集めたベンナビ刑事事件のようなポータルサイトの利用がおすすめです。
ベンナビ刑事事件では、性犯罪・暴行罪・窃盗・詐欺などの刑事事件を得意とする弁護士が登録しています。
住まいの近くにいる弁護士へ相談したいときは、トップページで地域を選択のうえ相談したい内容を詐欺罪に設定して検索します。
このとき、詳細検索で初回相談無料の法律事務所の絞り込みも可能です。
ほかにも、弁護士刑事事件では詐欺罪に関するコラムを多く掲載しているため、自分の状況に近い犯罪について調べられます。
詐欺の共犯を弁護士に相談するメリット4つ
詐欺の共犯になってしまった場合、弁護士に相談するおもなメリットは次の4つです。
1.今後どのように行動したらいいかアドバイスがもらえる
詐欺の共犯として逮捕されたあとに何もしなければ、そのまま起訴され有罪になる可能性が高まります。
そうした事態を避けるためには弁護士に相談し、今後の行動についてアドバイスを受けましょう。
悪意がなく詐欺の共犯になってしまった場合であれば、弁護士から今後の行動についてアドバイスがあり、次の弁護活動を受けられます。
- 勾留請求に対する準抗告
- 不起訴に向けた弁護活動(示談など)
- 保釈請求
- 公判手続きの準備、対応(良い情状に関する主張など) など
2.取調べに対するアドバイスがもらえる
取調べは警察・検察によっておこなわれ刑事裁判の証拠として使われます。
取調べ時の発言によって無罪・有罪がわかれる可能性は十分に考えられます。
不用意に供述してしまうと、裁判で不利な状況に追い込まれかねないので事前の準備は欠かせません。
弁護士に相談すると、取調べ時の心構えや注意点、いってはいけないことなどのアドバイスを受けられます。
詐欺の共犯として逮捕されたときは直後から取調べが実施されるケースが多いため、早めに弁護士へ依頼しましょう。
3.被害者への謝罪・示談により不起訴を目指すことができる
詐欺の共犯として逮捕されてしまったとき、そのまま起訴されると有罪になる可能性が高まります。
このとき、弁護士に依頼することで被害者への謝罪と示談交渉を進めやすくなります。
謝罪と交渉により被害者の処罰感情が和らぎ、そこから被害の弁償をして示談が成立すれば厳しい刑事処分を回避しやすくなるでしょう。
事件に加担した本人だけでは謝罪や交渉ができない場合でも、弁護士を間に挟むことでスムーズかつ適正な水準で示談をまとめやすくなります。
4.「再犯のおそれ」に対する有効な対策を考えてもらえる
特殊詐欺に一度関わると、犯罪グループから抜けられずに再び加担してしまう可能性があります。
そのため、裁判官が量刑を判断するとき再犯のおそれを重視することが多いです。
たとえ「もう二度としません」と宣言しても、それが信用できるものでなければ不利になるでしょう。
このとき、弁護士に依頼することで有効な対策を考えてもらえます。なお、再犯防止の対策には次のようなものがあります。
- 特殊詐欺グループなどの組織や関係者との交流を断つ
- 定職に就き、闇バイトなどの勧誘を避ける
- 家族・友人などに監視してもらう など
もちろん詐欺の状況によって変わりますが、弁護士に相談することで最適な提案をしてもらえるでしょう。
オレオレ詐欺の共犯の弁護を弁護士に依頼した場合の費用の概要
詐欺の共犯として逮捕されたとき、弁護士に弁護を依頼した場合に発生する費用の内訳は次のとおりです。
- 相談料
- 着手金
- 報酬金
- そのほかの費用
これらの費用は各法律事務所によって設定額が異なります。
たとえば、相談料は30分あたり5,000円前後が相場ですが、初回無料で利用できるケースも少なくありません。
着手金は弁護士へ正式に依頼するときに発生する費用で、刑事事件の相場は22万円から55万円程度です。
報酬金は弁護活動により依頼人に利益が出た場合に支払われる費用で、詐欺の弁護であれば不起訴・無罪になったときや、求刑よりも量刑が軽減されたときが該当します。
こちらは弁護士と協議のうえで決まりますが、相場は着手金と同じく22万円から55万円程度です。
そのほかの費用には、日当や実費などが該当します。たとえば、法廷に出席してもらったときなど弁護士を拘束することになった場合は日当が発生します。
そして、被害者に支払う示談金や弁護士が出張する際の交通費、書類を郵送する郵送費などがそのほかの費用として発生します。
まとめ
本記事では、知らずに詐欺に加担しても共犯になるのかについて解説しました。
近年の特殊詐欺では、電話で騙す「かけ子」、現金などを受け取る「受け子」、キャッシュカードからお金を引き出す「出し子」などが存在します。
たとえば、簡単で割のよいバイトがあると紹介され、かけ子・受け子・出し子になる可能性は十分に考えられるでしょう。
それぞれの役割や詐欺の全容を知っているかによって正犯・従犯になるかがわかれますが、いずれの場合も詐欺の共犯として逮捕される可能性があるため注意しなければなりません。
もし詐欺の共犯として逮捕された場合は、早期に弁護士へ相談しましょう。
弁護士に相談することで今後の行動についてアドバイスをもらえたり、不起訴・示談に向けてサポートしてもらえたりします。
仮に自分が詐欺に加担してしまった場合は、状況にあった弁護士を探し相談してみてください。