職場のモラハラに対処する方法は?訴える手順についても解説
職場でのモラハラに悩む方は少なくありません。
モラハラに関する相談先は複数あるため、状況を改善するためには、まず相談してみることをおすすめします。
なお、職場でのモラハラを理由に裁判を起こせますが、個人での対応は難しく、さまざまなデメリットがあります。
本記事では、職場におけるモラハラの相談窓口や訴える場合の手順などを解説するため、ぜひ参考にしてください。
職場のモラハラで悩んでいるのはわたしだけ?悩んでいる方は意外と多い
「職場でのモラハラに悩んでいるのは自分だけではないか」と思う方もいますが、同様の悩みがある方は少なくありません。
実際に、Job総研の「2023年 ハラスメント実態調査」では、職場でハラスメント感じた経験がある方のうち、36.5%がモラハラを受けたと回答しています。
モラハラで悩んでいるのはあなただけではないことを把握し、状況を改善していきましょう。
職場のモラハラとは | モラハラと認められる基準や定義
モラハラとは精神面への嫌がらせであり、明確な基準や定義はありません。
パワハラ・セクハラと違い、立場・性別に関係なくおこなわれるモラハラには、判断しづらいという特徴があり、被害者・加害者の両方が自覚していないケースも珍しくないのです。
具体的には、以下の行為が、モラハラと認められる可能性があります。
- 容姿をからかう
- 「仕事ができない」などと怒鳴る
- 陰口を言う
- 挨拶を無視する
- 飲み会やランチに対象の人物だけ呼ばない
- 業務に支障が出る嫌がらせをする(メールを無視する・ミーティングがあることを伝えないなど)
- 過剰または過少な仕事を命じる
- プライベートの過ごし方をバカにする
職場でのモラハラは、被害者が精神的苦痛を受けた、人格否定をされたと感じたなどの場合、立証できる可能性があります。
職場でモラハラの被害に遭っているかもしれないと感じた場合は、早めに適切な窓口へ相談することをおすすめします。
職場のモラハラの対処法は?
職場のモラハラを放置すると状況が悪化する恐れがあります。
そこでこの項目では、職場におけるモラハラへの対処法を解説します。
自分の希望や状況に応じて、ベストな対策を選びましょう。
社内外の窓口に相談する
「職場でのモラハラについて相談できる相手が身近にいない」「相談するのが怖い」という場合、社内外の窓口を活用しましょう。
以下にモラハラ窓口の例を4つ、紹介します。
相談先 |
相談できる内容 |
・不当な配置変更や人員配置 ・いじめやモラハラ、パワハラ ・性的な嫌がらせ ・そのほか労働全体に関する問題 |
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・職場でのいじめ、嫌がらせ ・残業代未払い ・不当解雇や退職の引き止め |
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・モラハラやセクハラ、パワハラなどのハラスメント ・差別や虐待 ・暴言や誹謗中傷 |
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・どのような行為がモラハラになるか知りたい ・モラハラの相談先 ・モラハラが原因で退職したので、どのように訴えればいいか ・そもそもモラハラとは何かを知りたい |
会社にハラスメント差止要求書を送る
ハラスメント差止要求書は会社の社長や役員などの責任者に対して、ハラスメントを辞めさせるように要求する書類です。
特定の書式を使わなければならないという決まりはなく、加害者や嫌がらせの内容、希望する結果などを具体的に記載することが大切です。
ハラスメント差止要求書を送る際は、送付した事実を残すため、内容証明郵便の利用をおすすめします。
自分で直接該当者に渡したり普通郵便で送ったりすると、会社にもみ消されてしまうリスクがあるためです。
内容証明郵便は、いつ・誰が・どのような内容の書類を送ったかの記録を郵便局に残せるため、万が一裁判になった場合でも証拠として有効です。
「ハラスメント差止要求書の書き方がわからない」「有効な証拠として残したい」などの場合は、弁護士へ相談しましょう。
退職する
「今の職場でモラハラが解消されると思えない」「時間や労力をかけてまで訴える気はない」という場合、転職や退職も選択肢のひとつです。
モラハラによるストレスを我慢し続け、心身の調子を崩して働けなくなる前に、違う職場で心機一転したほうが自分のためになる可能性があります。
なお、自分だけで新しい職場を見つけられるか不安な場合は、転職サイトや転職エージェントを利用して、サポートを受けつつ仕事を探す方法もあります。
転職先を探す際は仕事内容や給与面だけでなく、職場の雰囲気やコンプライアンスなどを確認して自分に合った職場を見つけましょう。
職場のモラハラを訴える手順4つ
職場でのモラハラを訴える手順は4つのステップに分けられます。
モラハラの内容によっては話し合いや示談ではなく刑事告訴になる場合があり、その際は手続きが複雑になるため、事前に確認しておきましょう。
1.証拠を集める
モラハラについて訴える場合、以下を参考に証拠を集めましょう。
- 現場を録音・録画したデータ
- 嫌がらせの内容がわかるメモ
- 会社や上司から送られてきたメール・LINE・SNS
- 医師の診断書
- 家族や友人、同僚など第三者による証言
- 警察への相談履歴
刑事事件だけでなく民事事件として訴える場合でも、上記の証拠はモラハラを立証するうえで有効です。
たとえば、怒鳴られたり、嫌がらせをされたりしている様子を録音・録画しておくと、モラハラの証拠として有効と考えられます。
できる限り「誰が」「誰に対して」「どのような状況で」「どんなことを言っているか」などが明確にわかる証拠のほうが高い効果を期待できす。
しかし、録音・録画の準備ができた状態でモラハラが起こるとは限らないため、嫌がらせの内容がわかるメモや日記も残しておきましょう。
日記やメモの書き方に決まりはありませんが、モラハラを受けたときからできる限り時間をあけず、具体的に記載することをおすすめします。
モラハラを受けてから記録するまでの時間があくほど、事実と記憶が乖離しやすくなるため、証拠として認められづらくなるからです。
また、同僚や上司からメール・LINE・SNSなどの文面で精神的攻撃を受けた場合も、データを保存したりスクリーンショットをとったりして、残しておきましょう。
ほかにも、モラハラによるストレスで受診した際の診断書や警察への相談履歴など、職場以外の方から証拠を集められることもあります。
被害者本人がモラハラを受けていると気付かないことがあるため、精神的な嫌がらせを受けているかもしれないと感じた際は、すぐに証拠を集め、念のためデータのバックアップをとることをおすすめします。
2.弁護士に相談する
モラハラを自分だけで解決することは容易ではなく、精神的・時間的負担も大きくなるため、弁護士へ相談するとよいでしょう。
弁護士に相談すると、民事訴訟や刑事告訴などの法的措置をとる場合でもサポートを受けられるため安心です。
また、疑問や不安があればすぐに専門家へ相談できる点も、弁護士に相談するメリットです。
モラハラ問題を得意とする弁護士を早く見つけたい場合は、地域や相談内容のほか、「初回の面談相談無料」などの条件を設定して検索できるベンナビ労働問題を活用しましょう。
3.労働審判を申し立てる
モラハラの相談後、当事者だけで和解を目指すほかにも、法的措置をとる方法があります。
法的措置をとる場合、第一段階として労働審判があります。
労働審判は、労働者と会社間のトラブルを解決するための手続きで原則として3回以内で終了する点や、通常の訴訟と比べて時間や労力面の負担を抑えやすい点が特徴的です。
事件の約70%は申し立てから3ヵ月以内に終わっていることから、時間をかけたくない場合、労働審判のメリットを感じられるでしょう。
労働審判委員会の仲介によって、労働者と会社が話し合いで合意を形成できた際に労働審判の手続きが終了となり、裁判上の和解と同じ効力をもつことになります。
ただし、労働審判で合意にいたらず、労働審判委員会が出した結論に異議申し立てがあった場合、訴訟へと進みます。
なお、労働審判は労働者と会社との間のトラブルが対象となるため、上司などの個人を訴えることはできない点をおさえておきましょう。
4.労働審判で解決しない場合は訴訟を申し立てる
労働審判終了から2週間以内に異議申し立てがされた場合、通常の訴訟である民事訴訟に進みます。
労働者・会社間のトラブルが対象となる労働審判と違い、民事訴訟は個人間の法的紛争を取り扱います。
民事訴訟では、「モラハラ被害の精神的苦痛によって心身の調子を崩した」「休職・退職に追いやられた」などを理由に損害賠償を請求できます。
具体的には、うつ病や精神疾患にいたるような重大な影響があった場合、損害賠償請求が認められる可能性があります。
民事訴訟は労働審判と比べて多くの時間や知識が必要となるケースが多いです。
具体的には提出書類や手続きの進め方などが状況によって異なるため、法的知識がないと一人で民事訴訟に対応することは難しいでしょう。
これらの点から、民事訴訟をする際は、弁護士への相談をおすすめします。
行為が悪質であれば刑事告訴も検討する
モラハラが悪質な場合、以下の罪に問われる可能性があります。
- 名誉毀損罪
- 強要罪
- 脅迫罪
- 侮辱罪
刑事告訴でモラハラ加害者の言動が有罪となるか否かは、法的知識がないと判断が難しく、訴えたとしても有罪判決になるとは限りません。
罪が成立するためには、所定の要件を満たす必要があり、法的な知識や経験がないと適切に対応することが難しいなどの点から、刑事告訴を視野に入れる場合は、弁護士の意見を聞いてみましょう。
職場のモラハラについて弁護士に相談・依頼するメリット4選
ここからは、職場のモラハラ対策として弁護士に相談・依頼するメリットを解説します。
相手にプレッシャーをかけられる
内容証明郵便で会社や加害者に対し、個人的にモラハラを受けたことを伝えても、相手が要求に応じるとは限りません。
具体的には、もみ消されたり相手にされなかったりする可能性があります。
しかし、弁護士に内容証明郵便を送付してもらえば、より大きなプレッシャーを相手に与えられます。
相手が弁護士の場合、個人的にモラハラの要求をするより「慎重に対応しなければならない」と受け取られる可能性が高いため、要求に応じてもらえるかもしれません。
このような点から、相手が自分の要求や相談に応じない場合は、弁護士を頼るとよいでしょう。
集めるべき証拠についてアドバイスを受けられる
精神的な苦痛を与えるモラハラは、身体的・性的な嫌がらせと比べて証拠が残りにくい傾向があります。
また、示談や裁判で有利になるためには十分な証拠を集めることが重要とわかっていても、どのように用意すればいいのかわからないケースもあるでしょう。
そんなとき弁護士に相談すると、モラハラ問題を解決するためにどのような証拠を集めるべきかなど、適切なアドバイスを受けられます。
「モラハラ被害を訴えたくても証拠が不十分で立証できない…」という事態を避けるためにも、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
会社との交渉を任せられる
モラハラについて個人で会社に交渉すると、相手にされない可能性がありますが、弁護士に任せると、うまく交渉を進めてもらいやすくなります。
交渉スキルが高く、法的な知識・経験が豊富な弁護士を頼れば、より有利な条件で話をまとめてもらえるでしょう。
また、モラハラの加害者と会わずに交渉を進められる点も、弁護士へ依頼するメリットです。
手間暇も省けるため、モラハラの交渉をうまく進めたい場合は弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
訴訟などの複雑な手続きを任せられる
モラハラについて弁護士に相談・依頼しておくと、交渉がまとまらず訴訟へ進んだ場合に、手続きを任せられる点もメリットです。
民事訴訟や刑事告訴は自分だけでも対応可能ですが、十分な知識や経験がなければ、有利に進めることは難しいでしょう。
たとえば会社や加害者がモラハラを認める可能性が低い場合、証拠集めや交渉という初期段階から弁護士に依頼したほうが有利になりやすいです。
また、相手がモラハラを認めない場合などは裁判が長引き、仕事や私生活への影響が大きくなる恐れもあります。
その点、弁護士に依頼すれば訴訟や刑事告訴に関する複雑な手続きを一任できます。
職場のモラハラについてよくある質問
職場のモラハラに関するよくある質問を4つ紹介します。
職場のモラハラに対する悩みや疑問にはどういったものがあるか、ぜひチェックしてみてください。
職場でモラハラを受けたら会社にどんな対応を求めるべきですか?
職場でモラハラ被害に遭った際は上司や役職者などに相談して、環境の改善を依頼しましょう。
会社が対応してくれる場合は、加害者の懲戒解雇・出勤停止・降格などによってモラハラがなくなるケースもあります。
モラハラの加害者と直接話し合うべきでしょうか?
モラハラ加害者との話し合いはおすすめできません。
その理由は、モラハラ加害者が耳を貸すとは限らないうえ、今後の証拠集めを警戒するリスクが高まるためです。
モラハラについて相談する際は、加害者以外の上司や弁護士などにしましょう。
モラハラの証拠を取得するため、相手に内緒で録音しても問題ありませんか?
モラハラの証拠集めが目的の場合、「社内では撮影禁止」などのルールがあっても証拠として利用することができないわけではありません。
「モラハラの証拠集めの方法が原因で会社から訴えられたらどうしよう…」という場合は、事前に弁護士へ相談しましょう。
モラハラで請求が可能な慰謝料の相場はどのくらいですか?
モラハラ加害者に慰謝料を請求する場合の相場は、数十万円から100万円前後です。
訴訟の手続きを弁護士に依頼した場合の費用相場も同額程度とされているため、慰謝料より費用のほうが大きくなる可能性もあります。
モラハラの慰謝料や弁護士への依頼費用については、弁護士に相談してみることをおすすめします。
さいごに | 職場のモラハラでお悩みの方は弁護士に相談を
本記事では、職場のモラハラに関する相談窓口や、訴える場合の手順などを解説しました。
大勢の前で罵倒されたり、自分だけ仲間外れにされたりした場合、モラハラに該当する可能性があるため、被害を自覚した際は、まず証拠を集めましょう。
「嫌がらせをされていると思うけどモラハラかどうかわからない…」という方は弁護士へ相談してみましょう。
弁護士は法的知識や経験を活かして、解決策の提案・実行などのサポートをしてくれます。
民事訴訟や刑事告訴など、複雑な手続きが必要になる可能性もあるため、一人でモラハラについて悩まず、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
少しでも早く、モラハラ問題を得意とする弁護士を見つけたい場合は、検索機能が豊富なベンナビ労働問題を活用しましょう。