レピュテーションリスクとは?事例と発生理由から考える対策法まとめ
レピュテーションリスク(reputation-risk)とは、企業の評判が下がり業績が悪化する危険性を意味しています。
現代では悪評があるとマスコミやネットにより即座に拡散されてしまう可能性があるため、どんな企業にとってもそのリスクは他人事で済む話ではありません。
本記事では、レピュテーションリスクの事例と対策について紹介しますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
レピュテーションリスクの事例
過去にあったレピュテーションリスクの事例を紹介していきます。
会社で起きている不正の隠ぺい
近年、某有名自動車メーカーが燃費データを正規の測定方法で計測せず、カタログに不正なデータを載せて販売した不祥事がばれて大問題になりました。
不正だと分かっていながらそれを黙認しその事実が発覚した結果、消費者と株主は激怒しその企業の株が大暴落しました。
『売り上げのため意図して消費者を欺き続けた。』という事実が発覚したせいでその企業に対する世間一般の評判はひどいものになりました。
不正を隠ぺいし、それが発覚したときに一気に評判を下げ業績が悪化するといった、正にレピュテーションリスクの典型的なパターンだと言えるでしょう。
サービスの不具合と低品質化
App Storeの売り上げランキングでトップ3を争うほど人気だったオンラインゲームが、1年後には100以下のランキング圏外となりました。
そのゲームの運営会社は大きな不祥事を起こしたわけではありませんが、アップデートの度に発生する不具合や、実際に遊んでいるユーザーでも自覚可能なほどの経費削減によるボリューム量低下などが重なって人離れが加速していきました。
ユーザーが満足できるサービスを維持できず、評判も落ち続け業績の悪化が止められなくなってしまったこの件も、サービスの低品質化が招くレピュテーションリスクの典型例です。
アルバイトによる不祥事
学生アルバイトが業務中にSNSへ投稿した写真が炎上し、店に苦情が殺到し営業停止や倒産に追い込まれるというニュースを一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
職場内での悪戯がネットで一気に拡散され、それがさらにメディアに取り上げられて収拾がつかなくなってしまうといった事件です。
アルバイトのたった1回のSNS投稿によって企業の評判が落ちてしまうという企業にとってはある意味テロ行為です。
しかし、これもアルバイトを管理できず招いてしまったレピュテーションリスクと言えるでしょう。
社員の労働環境問題
『ブラック企業大賞』という不名誉な称号を手にしたばかりに、その企業のお店に足を運ぶ人が減り業績が悪化してしまった会社も存在します。
社員の過労死や長時間労働、残業代未払いバイトのワンオペなどが明るみになって一般からの企業イメージを大幅に損なってしまった例です。
ユーザーが減るだけでなく企業に応募する人材まで少なくなり、業績も急速に悪化しました。
社員の不当な扱いが招いたレピュテーションリスクになります。
レピュテーションリスクが起きる理由
上記の事例通りレピュテーションリスクが起こる要因はさまざまですが、共通点は企業イメージを損なう醜態を世間に見せてしまったという点です。
レピュテーションリスクとは企業イメージを現状より落とすことによって生じる業績悪化なので、普段いいイメージがある企業ほど悪評を出してしまった場合の影響が大きくなります。
主に下記の3つが評判低下による業績悪化を招く原因と言えるでしょう。
企業の情報配信
企業や商品を実際よりもよく見せようと過剰に宣伝をした結果、消費者の期待値が上がり過ぎて、実際に商品やサービスを体験した時のギャップで消費者をがっかりさせてしまうことが原因になることもあります。
また、インタビューや雑誌などのメディアへの発言機会に失言や誤った内容を伝えてしまい、それが元に炎上を招いてしまうケースです。
消費者による口コミ
お店の商品の陳列がばらばらで場所が分かりにくく品揃えも悪く店員の態度も悪かった、など、企業からマイナスの印象を受けた消費者による不満の拡散も原因になります。
口伝いで地域に噂が広がるだけでなくネットでの書き込みで全国にも拡散してしまい収拾がつかなくなってしまうケースもあるでしょう。
マスコミでの情報伝達
ネットなどで企業に対する不満が話題になるとマスコミからニュースとしてそれを大々的に拡散され、苦情が殺到し企業の評判を大きく損ねてしまうケースもあります。
また、その際に情報を脚色して報道されてしまうこともあるため、3つの原因の中で最も影響が出てしまいます。
また後ろめたいことが一切なく真摯に業務に取り組んでいたとしても、自分たちの配信が外部から違う意図で解釈をされたり、マスコミによる情報編集や憂さ晴らしの悪評布教によって、レピュテーションリスクを起してしまう場合もあります。
内部告発
会社内で行われている不正や、会社の実態などを従業員によって告発されてしまうパターンです。
脱税や生産地偽造、悪質な労働基準法違反など、考えられる行為は無数に存在しますが、マスコミを通じてそれが公になってしまった場合、会社の信用が一気に落ちることは避けられないでしょう。
退職した社員による口コミ
退職した社員が匿名掲示板、SNS、口コミサイトに投稿することでレピュテーションリスクが生じます。
投稿の内容が真実かどうかはさておき、『パワハラをする上司がいた』、『サービス残業をさせられていた』などの被害報告は皆信じやすく、読んでいる人の憎悪をあおり、拡散されていきます。
レピュテーションリスクを把握・測定する方法
会社に関わる人間が会社に対してどのような不満を持っているかや、世間が会社に対してどのようなイメージを持っているかをきちんと把握する必要があります。
ここではレピュテーションリスクを把握・測定する方法を紹介します。
ステークホルダーの意見に耳を傾ける
ステークホルダーとは、以下のような会社の利害にかかわる関係者です。
- 従業員
- 顧客
- 株主
- 取引先の会社
従業員や株主がどんなことを感じているかは、直接ヒアリングすることもできますし、顧客や取引先など社外の人間に対してはアンケートをとることもできます。
匿名アンケートにすることでより効果が高まるでしょう。
もちろん、ここで浮かび上がった問題は解決できるように努力することも大切です。
SNS、ネット掲示板での口コミを調査する
SNSや検索エンジンで自身の会社名を検索してみましょう。
根も葉もないうわさ話、誹謗中傷、従業員による社内の実態の暴露などさまざまな意見が出てくるかもしれません。
多くの情報の中から改善すべき問題を洗い出し、リスク回避につなげることができるでしょう。
レピュテーションリスクを回避する方法
レピュテーションリスクを回避するにはどのような方法があるのでしょうか。
評判と現実をなるべく近づける
例えば、品質第一優先の企業が実は外国産の安い費用で商品を生産していたと発覚すれば、間違いなくイメージを損ないます。
しかしあらかじめ低価格第一を公表している企業ならば、同じ状況に陥ったとしてもそこまで大きな痛手にはなりません。
つまり企業の提供サービスと消費者が期待することのギャップをいかに小さくするかが悪評回避のために重要となってくるでしょう。
企業と消費者間でのギャップをなくすためには、消費者の期待に答え続けられるよう企業の能力を高め続けることが大切です。
もしそれが難しい場合には、消費者へのサービスを見直し企業の負担を軽くしていく対応が必要です。
情報開示を怠らない
あらぬ誤解や内部事情発覚による評判悪化を避けるためには、企業から情報配信を行い、自分たちの理念と活動を正しく伝えていく努力が必要になります。
現代ではソーシャルメディアの普及により企業が消費者とコミュニケーションを取ることができるので、これを通じて日ごろから企業としての考え方を伝え続け、外部から誤解を受ける可能性を小さくすることが可能です。
また、レピュテーションリスクで大きな影響がでるのが内部告発なので、企業内の不祥事を内部だけでもみ消さずきっちり公開し謝罪を行うことも大きな評判悪化を招かないため大切になってくるでしょう。
レピュテーションリスクに関しての社内教育をする
従業員によるネット上での投稿が、炎上に繋がる可能性もあります。
本人はあくまで個人的な意見として投稿をしていたとしても、世間からは〇〇社の社員の発言と受け取られる場合があります。
レピュテーションリスクに関して、労働者への教育を進めていきましょう。
社員が真摯に働きやすい環境を
残業代未払いや休日出勤にパワハラなど、社員やアルバイトに対する不当な扱いは絶対に避けるようにしましょう。
社内外の両方からそれが取り上げられ一気に拡散すれば企業の業績に大きな悪影響が生じます。
またアルバイトが店舗を閉店にまで追い込んだケースのように社員の業務関連の情報配信もリスクになるので、常日頃の業務への取り組み方やソーシャルメディアの扱い方への教育は徹底して行う必要があるでしょう。
レピュテーションリスクを避けるためには、雇用者が働きやすい環境作りと真摯に働くための教育の2点を意識していかねばいけません。
まとめ
レピュテーションリスクとは企業イメージの低下が招く業績悪化なので、これを避けるためには現状の企業の評判の把握とその管理が必要です。
そのためには自分たちの情報開示を偽りなく正確に行い消費者にも雇用者にも後ろめたさがない真摯な活動が欠かせません。
一見当たり前ですが、現代での企業の在り方として間違いなく重要になってくると言えるでしょう。