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物損事故とは?人身事故との違いや損をしないために知っておきたいポイントを解説

弁護士監修記事
交通事故
2025年02月17日
2025年02月17日
物損事故とは?人身事故との違いや損をしないために知っておきたいポイントを解説
この記事を監修した弁護士
吉田 大輔弁護士 (吉田大輔法律事務所)
法律的な視点からお悩みや問題の整理をお手伝いし、解決への道を切り開けるようサポートに力を入れています。15年以上の弁護士経験をもとに、今後の見通し、取るべき手段を具体的にお話しします。
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物損事故とは、死傷者が発生していない交通事故のことです。

運転者や同乗者に怪我がないという意味では、人身事故に比べると軽微な交通事故類型に位置づけられます。

ただし、比較的軽微な交通事故類型だからといって、手続きなどが楽になるわけではありません。

物損事故特有の注意事項が数多く存在するので、いい加減な対応をしてしまうと、損傷に対して適切な賠償金を受け取れなくなるリスクが生じます。

そこで本記事では、物損事故の特徴や手続き上の注意事項、弁護士に依頼をするべきケースなどについてわかりやすく解説します。

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目次

物損事故とは? | 死傷者ゼロで物の損害のみ発生した交通事故

まずは、物損事故の内容・特徴に関する基本事項を整理します。

物損事故と人身事故の違い

物損事故とは「交通事故のうち死傷者が発生していないもの(物が壊れただけのもの)」のことです。

一方で、人身事故は「交通事故で死傷者が発生したもの」を意味します。

つまり、物損事故と人身事故は「死傷者が発生しているかどうか」という視点で区別できるということです。

物損事故と人身事故の相違点は以下のとおりです。

項目 物損事故 人身事故
自賠責保険の適用 適用されない 適用される(上限額まで)
行政処分(免許の点数) 減点なし 減点あり
刑事処分 刑事罰なし(事案による) 刑事罰を受ける可能性あり
警察の実況見分 実施されない 実施される
慰謝料の請求 基本的に請求できない 請求できる
損害賠償を請求できる相手 運転者(事案による) 運転者以外の運行供用者にも請求できる可能性あり
損害賠償請求の時効 交通事故から3年(状況による) 交通事故から5年(状況による)

物損事故では自賠責保険が適用されない

自賠責保険は全ての自動車が強制に加入する義務がありますが、保険金が下りる交通事故は人身事故に限られます。

自賠責保険は、怪我・死亡・後遺障害に対する補償を目的とする制度だからです。

つまり、物損事故を起こしたとしても、自賠責保険で損害を補償することはできません

物損事故で生じた損害は、加害者側の任意保険か加害者本人をあてにするしかないのです。

たとえば、物損事故の被害に遭った場合、加害者が任意保険に加入していなければ、加害者本人に対して不法行為に基づく損害賠償請求をする必要があります。

また、物損事故を起こしてしまった場合、任意保険に加入していなければ被害者側からの賠償請求に応じなければいけません。

この際、被害者側からの請求に応じられるだけの経済力がなければ、財産や給与などが差し押さえられるリスクが生じるでしょう。

万が一物損事故を起こしたときに備えて、自動車を運転する以上は、任意保険に加入しておくことを強くおすすめします。

物損事故では一部の例外を除き慰謝料を請求できない

慰謝料は精神的損害に対して支払われるものです。

物損事故は物が壊れただけで肉体的な苦痛は生じていません。

また、物が壊れたとしても、任意保険などから修理費用が支払われて経済的損害は賠償されるので、精神的苦痛は解消されているといえるでしょう。

そのため、原則として物損事故では慰謝料が問題になることはありません

ただし、物損事故でも例外的に慰謝料請求が認められる場合があります。

たとえば、ペットを乗せて自動車を運転していたところ、赤信号で停車中に後続車両に追突された結果、運転者には一切怪我がなかったもののペットに重篤な後遺症が残ったケースが挙げられます。

ペットはあくまでも法律上「物」でしかないため、本件は物損事故に分類されます。

しかし、ペットが家族の一員のようにかけがえのない存在であった場合、ペットが負った後遺症によって飼い主は精神的損害を被るでしょう。

そのため、このような事例では、物損事故でも慰謝料請求が認められる可能性があります。

【参考】名古屋高裁判決平成20年9月30日

物損事故では刑事責任や行政責任に問われない

まず、物損事故を起こしただけでは、免許の違反点数が加算されたり、免許停止・免許取り消しなど行政処分が下されたりすることはありません

物損事故は道路交通法に規定される「交通事故」には該当するものの、行政処分上の「事故」には当てはまらないからです。

たとえば、物損事故を起こしただけではゴールド免許に影響しません。

また、物損事故では刑事責任も問われないのが原則です。

なぜなら、器物損壊罪は故意が認定される場合にしか成立せず、過失犯は不可罰と扱われているからです。

ただし、物損事故を起こした経緯や事故後の流れに問題があるときには刑事責任・行政責任を問われる可能性があります。

たとえば、物損事故を起こしたあと、警察に通報せずに現場から離れたときには、道路交通法の危険防止措置義務違反・報告義務違反を理由に「1年以下の懲役刑または10万円以下の罰金刑」が科される可能性があります。

また、飲酒運転や無免許運転が原因で物損事故を起こしたときには、重い刑事責任・行政責任が問われるでしょう。

物損事故では運行供用者に賠償請求ができない

自動車損害賠償保障法第3条によると、自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときには、これによって生じた損害を賠償する義務を負うとされています。

これは「運行供用者責任」と呼ばれます。

たとえば、従業員に社用車を使用させていた場合、法人は運行供用者に該当します。

ただし、物損事故に関しては運行供用者責任を追及することはできません。

なぜなら、運行供用者責任が生じるのは、「その運行によって他人の生命または身体を害したとき」に限定されているからです。

物損事故では誰も負傷をしていないので、運行供用者責任は問題になりません。

物損事故では警察の実況見分がおこなわれない

実況見分とは、警察が犯罪・交通事故の現場を検証して事実確認・証拠保全をおこなう捜査活動のことです。

交通事故の場合、事故当事者が警察官と交通事故現場に同行をして、事故当時の状況などについて確認がおこなわれます。

ただし、実況見分が実施されるのは人身事故だけです。

物損事故については実況見分が実施されません。

そのため、物損事故では、被害者側で損害に関する証拠を収集する必要があります。

被害に遭った場合は、修理費用やレッカー代などの明細書、ドライブレコーダーの映像などは必ず残しておきましょう。

物損事故では損害賠償請求の時効が短い

交通事故の被害に遭ったときには、加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を行使することになります。

ここで注意を要するのは、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効です。

物損事故と人身事故では、以下のように時効が異なるので注意しましょう。

  • 物損事故:被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から「3年間」行使しないとき
  • 人身事故:被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から「5年間」行使しないとき

物損事故のほうが人身事故よりも消滅時効期間が短いので、交通事故後の対応が遅れると、加害者に対する損害賠償請求が認められない可能性が高いでしょう。

たとえば、当て逃げをされたような事案では、できるだけ早いタイミングで犯人を捜し始めなければ、泣き寝入りを強いられかねないリスクがあります。

物損事故の被害に遭った場合の対処法

ここからは、物損事故の被害に遭ったときの対処法と事故処理の流れについて解説します。

1.まずは警察に連絡する

交通事故の被害に遭ったときには、以下の状況を確認したうえで、速やかに110番通報をしてください。

  • 負傷者の有無を確認する(怪我人がいる場合には119番通報をする)
  • 道路の安全を確認する(破片などが散らばっている場合には安全を確認しながら除去、発煙筒などで対応)
  • 事故を起こした車両を道路脇などに移動して二次災害を予防する(ハザードランプをつける)

交通事故直後は気持ちが昂っているので、冷静になるのは難しいかもしれませんが、110番通報で繋がった警察官が丁寧に対応してくれるので、落ち着いて指示に従いましょう。

2.保険会社へ連絡する

自動車保険に加入している場合には、任意保険会社への報告が必須です。

ほとんどの任意保険会社が365日24時間対応の緊急ダイヤルを設定しているので、お手元の保険証書に記載されている番号へ電話をかけましょう。

とくに、物損事故では自賠責保険が使えないので、被害者側にも一定の過失があると判断された場合には、任意保険から賠償金を捻出しなければいけません。

任意保険会社への連絡を怠ると任意保険を使うことができないので、必ず事故現場ですぐに連絡をしてください。

3.事故の状況を記録しておく

物損事故の現場に到着した警察官からその場でさまざまな事項を聴取されますが、それとは別に、自分でも物損事故状況の記録を残しておきましょう

たとえば、スマートフォンで事故現場の写真・動画を撮影する、自分の車両・相手の車両の損傷箇所の写真をとる、事故当時に出していたスピードなどをメモする、ドライブレコーダーのSDカードを抜いて保存するなどの方法が挙げられます。

4.加害者や目撃者の連絡先を確認

警察官や任意保険会社からも確認をするように促されますが、物損事故の加害者や目撃者の連絡先は必ず交換しておきましょう。

相手方の連絡先がわからない状況だと、あとから示談交渉をする際に調査するのが面倒ですし、場合によっては音信不通になって損害賠償請求ができなくなるリスクが生じます。

6.損害額の算定根拠となる資料を準備する

交通事故の現場対応が終わって修理などの段階に入ったら、相手方に請求するべき賠償項目をひとつずつ整理してください。

修理工場の見積書、代車を頼んだときの領収書などの書類がなければ、損害賠償請求の金額の根拠を示すことができないからです。

7.示談交渉をする

相手方に請求するべき損害項目が明確になった時点で、加害者側との示談交渉をスタートします。

示談交渉とは、過失割合や損害賠償請求の金額・内訳などの和解条件について合意形成を目指すプロセスのことです。

自動車保険に加入しているときには、任意保険会社が示談交渉をおこなってくれます

ただし、過失割合10対0の物損事故で被害者になった場合や、任意保険会社が誠意ある対応をしてくれない場合には、任意保険会社に示談交渉を任せるのが難しいのが実情です。

物損事故で生じた被害を正確に算定して加害者に請求したい場合、任意保険会社に一任するのではなく、交通事故トラブルを得意とする弁護士に相談するとよいでしょう。

物損事故で請求できる損害賠償金の主な種類・内訳

ここでは、物損事故の被害に遭ったときに、加害者側に請求できる代表的な損害賠償項目について解説します。

1.車両の修理費用

交通事故で自分の車両が損傷した場合、「損傷箇所の修理に要する費用」を加害者側に請求できます。

たとえば、パーツ代、板金施工代、取付工賃などが挙げられます。

なお、全ての修理費用を損害賠償項目に計上できるわけではありません。

あくまでも、交通事故と因果関係がある損傷箇所を修理するものであり、かつ、修理方法や修理費用に相当性が認められる場合に限られます。

2.代車費用・修理中の交通費

物損事故でマイカーが被害に遭った場合、修理や買い替えをするまでの期間は、レンタカー・代車を借りたり、別の交通手段を活用したりして生活をしなければいけません。

これらの代車費用や交通費も損害賠償項目に含めることが可能です。

ただし、代車費用・交通費の請求が認められる期間の目安は以下のとおりです。

  • 修理の場合:約2週間
  • 買い替えの場合:約1ヵ月

これらの期間を超えて代車費用などを請求するには、個別具体的な事情を主張する必要があります。

3.買い替え代金|全損扱いになる場合

物損事故の規模次第では、マイカーが全損して修理をするのが不可能になることもあります。

また、物理的に修理をするのは可能な状況であるものの、買い替えをするよりも高額の修理費用を要するケースも少なくありません。

このように、車が全損したケースでは、物損事故の加害者に対して、自動車の買い替え費用を請求することができます。

なお、買い替え費用の目安額は、「物損事故で全損になった被害車両と同程度の車種・グレード・年式・型式・使用状態・走行距離の中古自動車の取得費用」です。

全損した車両よりもはるかに高級な車両に買い替えたとしても、その購入費用全額が買い替え費用として認められるわけではないので注意が必要です。

4.休車損害|営業車両が損害を受けた場合

物損事故で損害を受けた自動車がトラック・タクシー・バス・営業車などの場合、修理や買い替えに要する期間、仕事ができないというケースもあるでしょう。

この場合、物損事故の加害者に対する損害賠償請求の項目に「休車損害」を計上可能です。

ただし、余剰車両を保有しているなどの事情によって営業損害が生じなかったときには休車損害の請求は認められません。

5.評価損|事故によって車の価値が下がった場合

物損事故で車両の一部に損傷を負った場合、修理によって外見上は元通りになったとしても、評価額が下落することがあります。

中古車市場には、事故歴がある車両は値段を下げないと購入者が現れにくいという傾向があるからです。

そのため、物損事故によって「格落ち損害」を被ったときには、加害者側に対して価値の下落分相当額の金銭を請求することができると考えられています。

なお、物損事故当時の段階ですでに年式が経過しているような車両については、元々の評価額が相当低いことが予想されるため、実質的には評価損が生じない可能性があります。

一方で、高級車や新車については、物損事故で大幅に評価額が下落するので、高額の損害賠償請求が認められやすいでしょう。

6.レッカー代|事故によりレッカー移動をした場合

物損事故が起きた場合、交通事故の現場から修理工場まで自走できず、レッカーが必要になることがあります。

レッカー車で修理工場に移動をさせたあとは、廃車にするか修理にするかを決めるまでの間、修理工場などで車両を保管してもらわなければいけません。

このようなレッカー代や保管費用についても、物損事故の損害賠償請求の項目に計上できます。

7.積荷損|車両に積んでいた荷物に損害が遭った場合

物損事故では、車両本体だけではなく、鞄、時計、パソコンなどの車内にあった財物や、運転者や同乗者が身に着けていた衣服や眼鏡などが壊れることがあります。

これらの積載物が壊れた分については、交通事故との因果関係が認められる範囲で、損害賠償請求の項目に計上可能です。

ただし、積荷損については相手方が交通事故との間の因果関係を否定するような反論をしてくる可能性が高いです。

「交通事故前は損傷をしていなかったこと」や「故障の原因が強い衝撃であったこと」などを丁寧に主張立証できるように、弁護士のような専門家のサポートを得ることを強くおすすめします。

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けがをした場合は物損事故から人身事故への切り替えを

事故当初に物損事故として警察に届け出をしたものの、数日が経過したころに痛みなどの自覚症状が出てきたときには、物損事故から人身事故への切り替えが必要です。

ここでは、物損事故から人身事故へ切り替える意味や切り替えるときの流れについて解説します。

物損事故か人身事故かは警察が決める

物損事故・人身事故のどちらで処理をするのかを決めるのは警察です。

通報を受けて交通事故現場にやってきた警察官が、その場の状況・当事者の証言・意向などを総合的に考慮したうえで、物損事故・人身事故のどちらかを最終的に決定します。

当事者の意向だけが全面的に採用されるわけではありません。

警察が交通事故を物損事故・人身事故のどちらで処理をしたのかは、交通事故証明書や任意保険会社からの通知書で確認できます。

物損事故に比べ人身事故では請求できる賠償金の種類が大幅に増える

人身事故に切り替えられる交通事故を物損事故のままにしておくと、以下のように、金銭面で大幅な不利益を被ってしまうことがあります。

  • 治療費、入通院交通費、コルセットなどの装具費用などが支払われない
  • 怪我が原因で仕事ができない期間の休業損害が補償されない
  • 精神的損害を補償するための慰謝料請求が認められにくい
  • 怪我が原因で後遺症が残ったとしても、後遺障害等級認定が通りにくい など

交通事故の場合、単なる物損事故だと思っていても、数日が経過してからむち打ちなどの諸症状が出てくるケースが少なくありません。

事故直後に自覚症状がないからといって、安易に物損事故での処理に同意をするのではなく、人身事故での処理を希望する旨を伝えるべきでしょう。

物損事故から人身事故へ切り替える手順

当初物損事故で処理されたものの、あとから人身事故へ切り替える必要性が生じたときの流れについて解説します。

具体的な手順は、以下のとおりです。

  1. 通院をして診断書を出してもらう
  2. 保険会社に連絡をする
  3. 警察に人身事故への切り替えを申請する
  4. 実況見分などの捜査活動に応じる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.病院へ行き、医師に診断書を作成してもらう

交通事故後に痛み・腫れなどの症状があるときには、できるだけ早いタイミングで病院を受診してください。

医師の診察を受けたうえで、診断書を作成してもらいましょう

診断書がなければ、警察や保険会社に対して人身事故への切り替えを認めてもらえないので注意してください。

なお、むち打ちや打撲などの症状があるときには、整骨院ではなく病院の整形外科を受診する必要があります。

整骨院では、医学的見地に基づく診断を受けられないからです。

2.保険会社に人身事故への切り替えについて連絡をする

物損事故と人身事故とでは、示談交渉をおこなうときの内容が全く異なります。

人身事故への切り替えを希望するのなら、診断書を取得したあと、速やかに自分が加入する任意保険会社にその旨を連絡してください。

こちら側が物損事故から人身事故への切り替えを希望しても、相手方の任意保険会社が切り替え自体を拒絶するケースも少なくありません。

切り替え希望を出す時期が遅れるほど、怪我と交通事故との間の因果関係を主張立証しにくくなるので、できるだけ早い段階で診断書を取得して切り替ることを推奨します。

3.警察署で人身事故への切り替えを申請する

診断書を取得したあとは、警察署に切り替えの申請をしてください。

交通事故の処理をした警察署を訪問するときには、必ず診断書を持参しましょう。

4.警察による捜査の開始

警察署で切り替え申請をすると、その場で任意の事情聴取が実施されます。

事情聴取の際には交通事故に関するさまざまな事項について質問されるので、丁寧に回答をしてください。

また、物損事故ではなく人身事故の場合には実況見分が実施されます。

加害者・被害者が事故現場に立ち会う必要があり、実況見分調書が作成されます。

なお、実況見分調書と診断書は過失割合や慰謝料額などを決定する際に重要な証拠になります。

有利な実況見分調書を作成して欲しいなら、事情聴取を受ける前に弁護士へ連絡をして、警察での対応についてアドバイスをもらうのがおすすめです。

物損事故の示談交渉は保険会社に任せるケースが多い

交通事故に関する示談交渉は、交通事故当事者が加入している任意保険会社が対応することが多いです。

一般的な交通事故では、事故が起きたあと、事故について連絡を受けた任意保険会社が相手方・相手方保険会社と直接連絡を取り合って、当該物損事故の示談条件に関する和解案を作り上げる、という流れがとられます。

当事者本人の意向は任意保険会社の担当者に伝えたうえで、担当者が相手方との交渉にその意向を反映させてくれます。

過失割合が10対0の場合は、被害者側の保険会社に示談交渉を任せられない

物損事故の過失割合が10対0の「もらい事故」の場合には、被害者側は任意保険会社に示談交渉などの対応を任せることができません

過失割合0の当事者を代理して示談交渉などをおこなう行為は「非弁行為」であり、弁護士法に違反してしまうからです。

たとえば、赤信号で停車中によそ見運転をしていた後続車両に追突された場合や、駐車場に止めていたマイカーをぶつけられた場合などが挙げられます。

このような過失割合10対0の物損事故の被害に遭ったときには、被害者本人で加害者側の保険会社と示談交渉・民事訴訟を進めるしかありません。

自分の力だけでは相手方と交渉を進めるのが不安だという人は、交通事故トラブルを得意とする弁護士に相談・依頼をすることを強くおすすめします。

物損事故で弁護士に依頼することが推奨される場合

物損事故では、原則として加害者側に対する慰謝料請求は認められず、壊れた物の修理費用・買い替え費用などの損害賠償請求しかできません。

そのため、賠償額も少額となり、弁護士に依頼することで費用倒れになってしまう可能性も高いでしょう。

といはえ、物損事故でも例外的に弁護士に相談・依頼をしたほうが良いケースは少なからず存在します。

ここでは、物損事故で弁護士へ相談・依頼をするべき例外ケースについて解説します。

1.人身事故に切り替わった場合

交通事故では、事故当時は痛みなどの自覚症状がないのに数日が経過してから痛みなどを感じるようになるケースが少なくありません。

この場合、物損事故として届け出をしたあと、痛みなどを感じた段階で人身事故に切り替えをする必要があります。

人身事故に切り替えをした場合、加害者に対して治療費、入通院交通費、慰謝料などの項目を追加請求することが可能です。

つまり、加害者に請求できる賠償総額が増えるので、弁護士費用を捻出する余裕が生まれるということです。

また、交通事故から数日が経過したタイミングで人身事故に切り替わった場合、被害者が負った怪我と交通事故との間の因果関係が問題になることが多いです。

「被害者は怪我を主張しているが、その怪我が交通事故によってもたらされたとはいえない」と加害者側から主張をされると、反証するための証拠を用意しなければいけません。

素人では事故と怪我の因果関係を証明できず、泣き寝入りになってしまうリスクもあるでしょう。

そのため、物損事故から人身事故への切り替えを要するケースでは、できるだけ速やかに弁護士へ相談・依頼するのがおすすめです。

2.過失割合についてもめている場合

交通事故トラブルでは、被害者と加害者双方に過失が認められる場合が多いです。

その場合、示談交渉または民事訴訟で過失割合を決定したうえで、それぞれの過失割合に相当する賠償額を負担することになります。

ただし、過失割合次第で賠償額が決定するため、被害者・加害者の間で過失割合について意見がぶつかるケースは少なくありません。

過失割合について当事者間で争いが生じたときには、交通事故当時の個別具体的な事情を丁寧に積み上げ、相手方の過失を主張立証する必要があります。

また、相手方が主張する過失割合の算定根拠を崩す証拠を用意しなければなりません。

相手方の任意保険会社や弁護士と過失割合について示談交渉を進めるには、こちら側も交通事故案件を得意とする弁護士の力を借りるべきでしょう。

3.相手方が不誠実である場合

加害者側の対応が不誠実な場合も弁護士に相談・依頼をしたほうがよいでしょう。

たとえば、物損事故を起こした加害者側が任意保険に加入していない場合、加害者本人に対して直接損害賠償請求をする必要があります。

しかし、加害者に連絡を無視されたり、反省の態度を見せずに一切示談交渉に応じようとしなかったりすると、被害者側で民事訴訟を提起しなければいけません。

民事訴訟の結果、勝訴判決を獲得できたとしても、加害者本人が自主的に判決の内容を履行しようとしなければ、強制執行手続きによって財産・給与などを差し押さえる作業が必要です。

このように、相手方が不誠実な態度のままだと、交通事故トラブルが長期化・深刻化しかねず、素人だけではスムーズに対応することができません

相手方とのやり取りに違和感を抱いた時点で弁護士に相談・依頼をし、加害者側の誠実な対応を引き出すべきでしょう。

4.もらい事故で過失割合が10対0の場合

過失割合10対0の交通事故に巻き込まれた場合は、任意保険会社に示談を任せられないので、弁護士へ相談することを強くおすすめします。

本来、もらい事故の場合には被害者側に生じた損害は加害者側が全責任をもって賠償しなければいけないはずです。

しかし、被害者本人が加害者側の任意保険会社に言いくるめられてしまい、充分な賠償額を受け取ることができないケースは多く存在します。

念のために弁護士に相談をして、示談交渉の条件・内容についてアドバイスを求めるべきでしょう。

5.契約している自動車保険に弁護士特約が付帯している場合

弁護士費用特約とは、交通事故トラブルなどについて弁護士に相談・依頼をしたときに発生する費用を任意保険会社が支払ってくれる特約のことです。

自動車保険のプラン次第では、弁護士費用特約が付帯されている場合があります。

弁護士費用特約が付帯されている状態なら、相談料・着手金・報酬金などの経済的負担なしで弁護士に頼ることが可能です。

なお、現在契約中の自動車保険に弁護士費用特約が付帯されていないとしても、初回相談無料サービスを提供している法律事務所に問い合わせをすれば、無料で物損事故に関してアドバイスを提供してくれます。

また、経済的に困窮しているのなら、法テラスの無料法律相談や弁護士費用立替制度を利用できる可能性もあるでしょう。

費用面の不安を抱える人向けのサービスも多いので、「弁護士への相談」を選択肢のひとつとして検討してください。

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物損事故についてよくある質問

さいごに、物損事故についてよく寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。

軽微な物損事故では、警察に通報する必要はない?

「軽微な物損事故だからわざわざ警察に届け出る必要はない」「被害者とその場で話し合って弁償することで納得してもらえたら警察に通報しなくても問題ない」というのは間違いです。

なぜなら、交通事故の形態・大小にかかわらず、交通事故を起こしたときには常に警察への報告義務が課されているからです。

警察への通報を怠ると、報告義務違反を理由に「3ヵ月以下の懲役刑」の刑事罰を科されかねません。

また、警察に通報しなければ交通事故証明書が手に入らないので、任意保険関係の手続きを円滑に進めることができなくなってしまいます。

これでは、物損事故で生じた修理費用などを保険会社に請求できません。

どれだけ軽微な交通事故であったとしても、その場を離れずにすぐに警察に通報して処理をしてもらいましょう。

物損事故で警察を呼ばなかったらどうなる?

物損事故で警察を呼ばずに当て逃げをしてしまうと、以下のようなリスクに晒される可能性があります。

  • 報告義務違反、危険防止措置義務違反を理由に逮捕・起訴される可能性がある
  • 道路交通法違反を理由に有罪判決が確定すると、罰金刑であったとしても前科がつく
  • 交通事故証明書を発行できず、自賠責保険・任意保険から保険金を受け取れない
  • 交通事故から時間が経過して負傷が発覚しても、物損事故から人身事故への切り替えができない
  • 相手方が被った損害を任意保険で賄うことができないと、相手方から直接損害賠償請求などの法的措置を採られる
  • 物損事故の被害者側であったとしても報告義務を怠ると刑事責任を追及されかねない

警察に通報しないことに何ひとつメリットはありません

物損事故を起こしたとき、物損事故の被害にあったときには、その場ですぐに110番通報をして警察官からの指示を仰いでください。

物損事故では加害者から被害者へお詫びに行く必要はない?

物損事故を起こしたからといって、被害者に対して謝罪をする法的義務が課されるわけではありません。

とはいえ、物損事故を起こして迷惑をかけた以上、道義的には直接謝罪をするのが推奨されます。

加害者から被害者に対して誠意のある対応をすれば、賠償額の引き下げなど、有利な示談条件を引き出す可能性が高まるでしょう。

ただし、物損事故の状況次第では、被害者が相当怒りを感じており、直接の謝罪を拒絶することも少なくありません。

被害者側が拒絶の意思を明確にしているのに、無理に謝罪をしようとするのは避けましょう。

かえって反感を買って示談交渉がスムーズに進まないリスクが生じます。

物損事故に関して謝罪をするべきか否か、どのタイミングで謝罪をするのか、謝罪の方法などについては、事前に任意保険会社や弁護士に確認をとることを強くおすすめします。

さいごに|物損事故で不安なことは弁護士に訪ねよう

どれだけ軽微な物損事故であったとしても、交通事故であることに変わりはありません。

「軽微な事故だから当事者での話し合いで済ませて良いだろう」「少しぶつけただけだから警察に連絡するのは面倒だ」などの理由で警察への通報を怠ると、さまざまなデメリットが生じます。

物損事故を起こしたとき、物損事故の被害に遭ったときには、警察への連絡を最優先でおこなってください

そのうえで、弁護士へ相談をすれば、任意保険関係の手続きや加害者側への賠償方法などについて、さまざまなアドバイスを提供してくれるでしょう。

ベンナビ交通事故では、物損事故をめぐるトラブルを得意とする弁護士を多数掲載中です。

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