法人破産は弁護士に依頼すべき?失敗しない探し方・費用・手続きの流れも解説


- 「会社の資金繰りが苦しく、法人破産を検討しているが、弁護士に依頼したほうがよいのか?」
- 「弁護士に相談するベストなタイミングは?」
法人破産を検討するにあたって、弁護士に相談するべきか悩んでいる方も多いでしょう。
法人破産の場合、弁護士に依頼することで享受できるメリットがたくさんあります。
法人破産を得意とする弁護士を選んだうえで、複雑な手続きを適切に進めるのがよいでしょう。
ただし、法人破産を依頼する弁護士を選ぶにあたっては、いくつかポイントや注意点があります。
そこで本記事では、法人破産を弁護士に依頼するメリットや、法人破産に強い弁護士の選び方について解説します。
弁護士費用の相場や手続きの流れについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
法人破産を弁護士に依頼すべき理由・メリット
法人破産を弁護士に依頼することによるメリットはたくさんあります。
以下では、代表的なメリットを5つ紹介します。
法人破産以外で解決できる可能性も検討してもらえる
法人が抱える借金や買掛金の返済が困難な場合、破産のほか、会社の再建を目指して再建型手続きをおこなう方法もあります。
主な再建型の手続きは、以下の4つがあります。
- 任意整理
- 会社更生
- 民事再生
- M&A
弁護士に相談することで、法人破産を選択すべきか、それとも再建型の手続きにするべきか、早い段階でアドバイスをもらうことができるでしょう。
煩雑で専門的な破産手続きを全て任せられる
法人破産を進める際には、必要書類の作成・破産管財人への業務引き継ぎ・会社資産の流出防止対策など、さまざまな手続きをおこなう必要があります。
また、手続きを迅速に進めないと負債がどんどん増えてしまい、経営がより厳しい状況に追い込まれてしまうかもしれません。
弁護士に依頼すれば、複雑な手続きを全て任せることができます。破産処理がスムーズに進むので、経営状態の更なる悪化を防ぐことができるでしょう。
少ない費用で実行可能な少額管財を利用できる
破産手続きは大きく以下の3種類があり、財産状況によってとるべき手続きが異なります。
- 処分する財産がない場合 → 同時廃止
- 処分する財産が多い場合 → 通常管財事件
- 予納金を少なく抑えたい場合 → 少額管財事件
法人破産の場合は、通常管財事件または少額管財事件に割り振られることが一般的です。
弁護士に依頼しなかった場合、法人破産は必ず通常管財事件として処理されることになりますが、弁護士を代理人に立てることで、少額管財事件に分類される可能性が高くなります。
少額管財事件に指定されると、裁判所に支払う費用が抑えられるため、会社の負担を軽減できるでしょう。
また、手続きも迅速かつ簡便化されているため、通常よりも早く法人破産を完了させることが可能です。
受任通知によって厳しい取り立てを止められる
弁護士が代理人となって債務整理を受任すると、債権者に対して「受任通知」が送付されます。
受任通知には、弁護士が債務整理の代理人として受任したこと、今後の借金に関するやり取りは弁護士を通しておこなう旨が記載されます。
受任通知を受け取った金融機関などの債権者は、通知後は弁護士を介して連絡を取らなければなりません。
そのため、受任通知が発送されると経営者や会社に対する直接の取り立てがなくなります。
代表者の債務整理についても相談できる
法人破産の際、代表者が保証人または連帯保証人になっている場合、代表者個人に対しても取り立てが行われます。
このとき、代表者が取るべき主な手段は以下のとおりです。
- 自身で返済する
- 返済の猶予又は分割返済の同意を得る
- 自己破産・債務整理(個人再生や任意整理)をする
それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、破産時点での代表者の財産状況や、法人破産後の収入額などを考慮して、どの手段を選択すべきか検討する必要があるでしょう。
弁護士に相談することで、どの手段を選択するのが最適か、アドバイスをもらうことができます。
法人破産に強い弁護士の失敗しない探し方
法人破産の際には弁護士への相談が不可欠といってもよいでしょう。
ただし、相談する弁護士は誰でもよいわけではありません。
弁護士にも得意不得意な分野があるので、法人破産分野を得意とする弁護士に依頼するのがおすすめです。
なお、法人破産を得意とする弁護士を探す方法としては、主に以下の2つの方法があります。
知人に紹介してもらう
知人や現在取引のある弁護士などから、法人破産に強い弁護士を紹介してもらうことができます。
ただ、交友関係から離れた弁護士に依頼したほうが、本音を話しやすい場合もあるかもしれません。
知人の弁護士への依頼を検討する場合でも、複数の法律事務所で無料相談を利用して、相談しやすい弁護士を確認したうえで正式に依頼するのがよいでしょう。
【推奨】弁護士を検索できるポータルサイトで探す
弁護士のポータルサイトから、法人破産案件が得意な弁護士を検索できます。
ポータルサイトの中でも、「ベンナビ債務整理」の活用がおすすめです。
ベンナビ債務整理では、債務整理に強い弁護士を選りすぐって紹介しています。
また、地域別・相談内容別・業種別に弁護士を検索可能です。
お住まいに近く、法人破産に強い法律事務所を検索して、問い合わせてみましょう。
特に、破産に関しては地域の裁判所ごとに微妙に取り扱いが異なります。
遠方の弁護士に依頼した場合、普段と勝手が違いスムーズに進まないこともありますので、法人所在地や代表者住所近隣の弁護士に依頼することを強くおすすめします。
法人破産に強い弁護士の選び方
ここからは、法人破産に強い弁護士の選び方を解説します。頼れる弁護士に依頼するためにも、以下でポイントを押さえておきましょう。
法人破産の対応実績が豊富
法人破産を弁護士に依頼する際に最も大切なことは、法人破産の実績が豊富な弁護士に依頼することです。
法人破産案件の場合、破産法に基づく複雑な手続きを慎重かつ適切に進めていく必要があるほか、債権者にも的確に対応しなければなりません。
さまざまなケースにも対応できるように、法人破産の対応実績が豊富な弁護士を選ぶべきなのです。
弁護士の対応実績は、法律事務所のホームページから確認ができるので、必ず目を通しておくようにしましょう。
弁護士費用が明確でわかりやすい
報酬体系が不透明な事務所に依頼してしまうと、手続き完了後に高額な着手金や成功報酬を請求されるリスクもあります。
法人破産を依頼する弁護士を選ぶ際は、報酬体系が明確な法律事務所を選ぶことが重要です。
弁護士費用をできるだけ抑えたい場合は、複数の法律事務所で初回無料相談を受け、見積もりを比較したうえで、コストを抑えられる事務所を選ぶのがよいでしょう。
ただし、費用だけで判断することは適切ではありません。
弁護士費用のほか、実績や人柄などを総合的に考慮し、信頼できると判断した弁護士に依頼することを心がけましょう。
話しやすく相性がよい
弁護士が破産手続きに関するアドバイスをするためには、依頼者が現在の会社の状況を正しく伝える必要があります。
また、弁護士も複雑な手続きをわかりやすく依頼者に説明しなければなりません。
そのため、依頼者と弁護士双方のコミュニケーションがとても重要といえます。
そのため、信頼関係を築ける弁護士を選ぶことが大切です。
自分と相性が良いと感じた弁護士を選ぶようにしましょう。
法人破産を弁護士に依頼する際の費用相場
ここからは、法人破産を弁護士に依頼する際の費用を紹介します。
裁判所へ支払う費用とあわせてチェックしておきましょう。
弁護士費用の相場は50万円~300万円 | 規模・難易度によってかわる
法人破産にかかる弁護士費用の相場は、50万円〜300万円です。
幅が広くなっていますが、案件ごとに規模や複雑さが異なることが理由です。
依頼する前に弁護士と十分に打ち合わせをし、依頼者と弁護士の間で弁護士費用の認識の食い違いがないようにしておきましょう。
なお、弁護士費用に影響を与える要素として、以下のような点が挙げられます。
- 会社の財産規模
- 従業員数
- 債権者数
- 支店や営業所数
- 少額管財事件か通常管財事件か
法律事務所によっても差があるので相見積もりをとることが推奨される
弁護士費用の相場は、法律事務所ごとに違う場合がほとんどです。
比較のために、相見積もりをとるのがよいでしょう。
裁判所費用は最低20万円~
裁判所費用は、最低でも20万円程度はかかるケースが多いです。
参考までに、裁判所費用の内訳を掲載しておきます。
費用項目 | 費用目安 | |
申立印紙代 | 1,000円程度 | |
予納郵券(郵便切手代) | 3,000円~5,000円 | |
官報広告金 | 1万3,000円〜1万5,000円 | |
予納金 | 少額管財事件 | 約20万円 |
通常管財事件 | 70万円~ |
費用は裁判所によって若干異なるので、注意が必要です。
なお、弁護士によっては、依頼前に裁判所費用の相場について丁寧に説明してくれることもありますので、事前に確認しておきましょう。
法人破産をする費用が払えない場合は?
弁護士費用・裁判費用の相場からして、法人破産を進めるための費用を確保できそうにない場合もあるでしょう。
その場合でも、法人破産を諦める必要はありません。
以下では、費用を確保できない場合の対処法をお伝えします。
弁護士に依頼したあとに費用を積み立てる | 借金返済の資金は積み立てにまわせる
弁護士に依頼すると、弁護士が債権者に対して「受任通知」という書類を送付します。
通知を受け取った貸金業者などの債権者は、それ以降、債務者と直接連絡を取ることができなくなり、全てのやり取りは弁護士を通じておこなう必要があります。
督促も弁護士を通じておこなわれることになり、実質的に督促が止まることになるでしょう。
督促がなくなることで、返済に使っていたお金を貯金することができ、最終的に破産手続きを進めるための費用を積み立てることが可能です。
なお、受任通知を送ることで、破産の準備をしていることが債権者に知られてしまうので、口座凍結や取引先の混乱が発生する可能性があります。
また、取引先を通じて従業員に破産の情報が漏れ、会社の財産や備品が持ち逃げされるリスクもあるでしょう。
依頼のタイミングや受任通知を発送するタイミングについては弁護士とよく打ち合わせをしてください。
会社の財産・資産を処分して費用を確保する
破産を検討している企業でも、売掛金などの未回収の債権を回収する、会社の財産を売却するなどして現金化する方法も考えられます。
適正額で売却する必要があるなどの点に注意が必要
売掛金などの未回収の債権を回収する、会社の財産を売却するなどで弁護士費用を確保する方法もありますが、不当に財産を流出・隠匿させる行為のほか、特定の弁済者へ弁済する行為(偏頗弁済)は禁じられているので注意しましょう。
なぜなら、破産手続では「債権者平等の原則」に基づき全ての債権者に公平な配当がおこなわれるものの、一部の債権者に返済をすると他の債権者が不利になるからです。
具体的には、以下の行為が禁止されます。
不当に財産を流出・隠匿させる行為 | 特定の弁済者へ弁済する行為(偏頗弁済) |
・会社の預金を代表者や家族の預金口座に移す ・現金や有価証券などの存在を隠す ・会社の資産を時価よりも低額で売却する ・担保を取らずにお金を貸す |
・資産もないのに従業員に退職金を支払う ・破産を決意したあとに世話になった人に多額の御礼やお祝い金を贈与する ・債務超過後に会社資産を担保に入れてしまう ・債権者に代物弁済をする |
たとえば、売掛金や財産売却で得たお金を普段使いの銀行口座に入れておくと、自動引き落としで意図せず支払いがおこなわれてしまうことがあります。
そのため、お金の管理については弁護士と十分に相談し、しっかりと管理することが重要です。
弁護士費用がなるべく安い法律事務所を探す
法律事務所によって費用体系や価格設定は大きく異なります。
また、法人破産の手続き費用は、債権者の数・負債総額・予想される事務作業量などに応じて変動することがあります。
裁判所費用と弁護士費用を合わせた総額については、依頼する法律事務所に事前に確認できますので、契約を結ぶ前に必ず詳細を確認するようにしましょう。
分割払いが可能な法律事務所を探す
予納金などの裁判所費用を納付しなければ破産手続きは開始しませんが、弁護士費用の支払い時期に関する制限は特にありません。
弁護士費用の負担が大きく、裁判所費用を捻出できないという場合には、弁護士費用の分割払いが可能な法律事務所を探すのがよいでしょう。
予納金の分納ができないか確認する
予納金の分割払いができる裁判所は少ないですが、東京地裁では少額管財のケースに限って、4回までの分納が認められています。
管轄裁判所の予納金の取り扱いを確認しておきましょう。
なお、予納金の分納ができるといっても、裁判所が予納金をしばらく預かってくれているという仕組みにすぎません。
破産手続を開始するためには、予納金を全額納付しなければならないので、注意が必要です。
法人破産について無料相談が可能な窓口
弁護士に正式に依頼するかどうか悩んでいる場合には、まずは無料相談してみるものよいでしょう。
以下、弁護士への無料相談が可能な主な窓口を4つ紹介します。
法律事務所 | 初回相談が無料の法律事務所もある
多くの法律事務所では、初回の法律相談を無料としているので、まずは話だけ聞いてみるのがおすすめです。
法律事務所で無料相談を受け付けているかは、Webサイトなどで事前に確認しておきましょう。
なお、ベンナビでは無料相談に対応している法律事務所を多数掲載しています。
お近くの無料相談に対応している法律事務所を探すのに、ぜひご活用ください。
よろず支援拠点 | 国が設置した中小企業のための経営相談所
よろず支援拠点とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構が全国に設置している、中小企業のための経営相談所のことです。
法人破産の相談のほか、多岐にわたるビジネス支援について、さまざまな分野の専門家から何度でも無料でアドバイスを受けることができます。
【参考】よろず支援拠点
弁護士会 | 地域によっては無料相談を受け付けている
地域の弁護士会によっては、個人向けの相談とは別に、法人や事業者向けの相談に関する問い合わせ先が掲載されています。
30分あたり5,000円程度の費用が発生することが多いですが、無料相談を受け付けている地域もあるので、一度調べてみるとよいでしょう。
経営安定特別相談室 | 破産の不安を抱える中小企業のための無料相談窓口
経営安定特別相談室は、破産・倒産の不安を抱える中小企業等のための相談窓口です。
2021年4月1日時点で、185の商工会議所と47都道府県商工会連合会に設置されています。
経営安定特別相談室は、商工調停士をはじめ、弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士、企業再建コンサルタントなど、さまざまな専門家が揃ったチームで構成されています。
企業の経営状況に応じて、最適な支援を提供できるよう、しっかりとした体制を整えています。
法人破産を弁護士に依頼した場合のおおまかな手続きの流れ
法人破産を弁護士に依頼した場合、以下の流れで手続きが進みます。
- 弁護士に相談
- 受任通知の発送
- 従業員解雇/店舗・事務所の明け渡し
- 会社の債務/債権の調査
- 申立書/必要書類の準備
- 裁判所にて法人破産の申し立て
- 破産手続開始決定/破産管財人の選任
- 破産管財人との打ち合わせ
- 予納金の納付
- 破産管財人による資産や負債の調査/換価処分
- 債権者集会
- 債権者への配当
- 破産手続きの終了/法人の消滅
以下では、各手続きの詳細を解説します。
①弁護士に相談
法人破産の申し立ては個人でもできますが、その場合は債権者や従業員、裁判所や破産管財人などの対応を全て一人でおこなわなければなりません。
可能であれば、弁護士に相談するのがよいでしょう。
②受任通知の発送
法人破産を弁護士に依頼すると、弁護士が各債権者に対して受任通知を送付します。
この通知は、破産手続きを進める旨を債権者に伝えるものです。
受任通知が送られたあとは、債権者からの問い合わせなどは全て弁護士を通じておこなわれるため、会社や代表者への直接的な連絡はなくなります。
③従業員解雇/店舗・事務所の明け渡し
従業員がいる場合には、従業員は解雇することになります。
従業員は不安を多く抱えることになるので、法人破産に関して丁寧に説明すべきでしょう。
④会社の債務/債権の調査
会社の財産のうち、不動産など換価可能なものについては、破産手続開始後に破産管財人が売却処分をおこなうことになります。
そのため、会社が保有している財産を把握することが重要です。
現金、金庫、預金、事業で使用していた設備や機器、在庫商品、売掛金や貸付金のリスト、不動産、保有車両、有価証券、保険など、資産に関する資料をできる限り準備しておきましょう。
⑤申立書/必要書類の準備
債権と債務の状況が把握できたあとは、破産手続開始申立書と、裁判所に提出する必要書類の準備をおこないます。
一般的には、以下の書類が必要になります。
- 債権者一覧表
- 債務者一覧表
- 財産目録
- 破産の申立を決定した取締役会の議事録
- 預金通帳
- 決算書・付属明細書
- 帳簿
- 商業登記簿謄本
- 雇用契約書や賃金台帳
- 不動産登記簿謄本や固定資産税評価証明書
- 法人名義の自動車の車検証
- 各種契約書
なお、所有している財産の内容によって用意すべき書類は異なります。詳細は弁護士に確認しましょう。
⑥裁判所にて法人破産の申し立て
申立書や必要書類が揃ったら、裁判所に法人破産の申し立てをおこないます。
⑦破産手続開始決定/破産管財人の選任
裁判所において申立書や必要書類を確認し、債務者審尋などの手続きを経て、要件を満たせば破産手続が開始します。
なお、手続きが開始すると同時に、破産管財人が選任されます。
破産管財人が選任されたあとは、財産の管理処分権は破産管財人へ移るので、債務者は財産を自由に管理又は処分できなくなります。
⑧破産管財人との打ち合わせ
破産手続が開始されると、会社の代表者や代理人弁護士と破産管財人との間で打ち合わせがおこなわれます。
打ち合わせの場で、破産管財人による詳しい事情聴取がおこなわれるほか、処理が必要な会社財産の内容や処分方針について協議されます。
⑨予納金の納付
破産手続きを進めてもらうために必要な予納金を、裁判所へ納付する必要があります。
⑩破産管財人による資産や負債の調査/換価処分
破産管財人が会社の財産調査をおこないます。
財産の内容が把握できるようであれば、財産を売却して換価処分をおこなうことになるでしょう。
債務の総額に届かなくとも、なるべく債権者に弁済ができるよう対応が進められるのです。
⑪債権者集会
破産手続開始決定から数ヵ月後、債権者集会が開催されます。
集会では、破産管財人から管財業務の結果報告がおこなわれ、裁判所が必要な判断を下します。
もし管財業務が未完了であれば、破産手続が継続され、次回の債権者集会の日程が決まるでしょう。
一方で、破産会社の財産処分・換価が完了し、債権者に配当できる原資が確保されている場合は、配当手続へと移行します。
⑫債権者への配当
破産管財人が会社の財産を売却し、その売却代金を債権者への配当として分配します。
⑬破産手続きの終了/法人の消滅
配当が完了すると、破産手続きは終了します。
法人の代表者が個人としても自己破産をしている場合は、免責審尋がおこなわれ、免責許可決定が下されれば、代表者の債務も免除されます。
法人破産を弁護士に依頼する際のよくある質問
以下では、法人破産を弁護士に依頼する際のよくある質問をまとめました。
似たような疑問を持っている方は、ぜひここで疑問を解消してください。
法人破産と代表者の個人破産は同時にできる?/同時にしなければならない?
会社と個人は法律上は別人格と扱われますので、法人破産と個人破産を同時に申し立てる必要はありません。
ただし、法人が破産した場合でも、代表者が法人の保証人または連帯保証人であれば、金融機関はその債務を代表者個人に請求することができます。
そのため、法人の破産が個人の自己破産を引き起こす可能性がある場合には、併せて個人破産の申し立てを行うことになります。
要否について弁護士が判断できますのでご相談の際にご確認されてください。
なお、法人破産・個人破産の両方を申し立てる場合、予納金を節約できることから、同時に申し立てることが推奨されています。
少額管財の手続きを進める場合、たとえば東京地方裁判所であれば、予納金は法人破産と個人破産の両方を合わせて20万円程度で済むでしょう。
法人破産をしたくてもできないケースはある?
支払不能や債務超過といった要件を満たしていても、破産障害事由に該当する場合は法人破産をおこなうことができません。
主な破産障害事由は、以下の3つです。
不当な目的での破産
法人破産の手続きが不当な目的でおこなわれていると判断される場合、法人破産の申し立ては認められません。
不当な目的の具体例には、次のようなケースがあります。
- 法人の資産を別の会社に移転させて経営破綻を装い、破産申し立てをする場合
- 最初から返済する意思がないまま多額の借り入れを繰り返し、返済を逃れる目的で破産申し立てをする場合
予納金が不足している
予納金の支払いができなければ、法人破産の手続きを進めることはできません。
法人破産以外の手続きが開始されている
法人破産は、負債処理の最終手段として位置づけられるので、民事再生や特別清算などの手続きが開始している場合には法人破産の手続きを進めることができません。
法人破産ができないとどうなる?
法人破産を利用できない場合でも、他の手続きを利用できる可能性があるので検討してみましょう。
検討すべき主な手続きとして、以下の3つが挙げられます。
- 特別清算:法人破産と同様の清算型の倒産手続き。株主や債権者の同意が必要であり、費用が比較的安く済む。
- 民事再生:債務を減額し、会社を存続させながら経営を立て直す再建型の手続き。
- 会社更生:民事再生に似た再建手続き。大規模な企業で利用されることが多い。
法人破産について弁護士に相談すべきタイミングは?
破産申立を進める場合には、どの段階で事業を停止し、従業員を解雇するかなどをあらかじめ算段する必要があります。
また、破産申し立てをするためには弁護士費用や裁判所費用が必要になるため、会社の資金がゼロになってしまった状態では進めることが難しくなってしまうでしょう。
会社の資金繰りが厳しくなり資金不足のリスクが予想される段階や、長期間にわたって赤字が続いている段階など、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談することを検討してください。
さいごに | 法人破産については実績がある弁護士へ相談を!
法人破産の手続きは非常に複雑で、個人で全て対応するとなると非常に手間がかかります。
また、手続きを進めていくにあたっては注意点も存在し、不適切な対応をしたことで従業員や債権者に迷惑をかけてしまうおそれもあります。
実際のケースでは、本当に会社にお金が無くなってしまった時点では対応が難しいか、より良い方法での解決が困難になります。
早めの段階で弁護士にご相談いただくことを強くおすすめします。
手続きに適切かつスムーズに対応するためにも、法人破産に実績のある弁護士に相談しましょう。