自己破産するには?初心者向けに手続きの流れ・費用・期間をわかりやすく解説


- 「借金の返済が苦しいけど、自己破産を検討したほうがよいの?」
- 「自己破産をするにはどういたらいい?」
借金の返済が難しくなり、自己破産についてこのような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?
自己破産は、借金の返済が困難になった人が生活を立て直すのに効果的な制度です。
しかし、手続きは複雑なうえ、不備があると最悪の場合、自己破産に失敗するリスクもあります。
そのため、自己破産の手続きは弁護士などの専門家に依頼するのが一般的です。
本記事では、自己破産の基本情報や手続きの流れ、費用や期間についてわかりやすく解説します。
自分で手続きを進める場合と弁護士に依頼する場合のメリット・デメリットについても触れているので、ぜひ参考にしてください。
本記事を読めば、自分にとって最適な自己破産手続きの進め方がわかるでしょう。
自己破産をするには?裁判所への申し立てが必要になる
自己破産とは、多額の借金を抱えて返済が困難になった場合に、裁判所に申し立てをすることで、借金の返済義務を免除してもらえる法的な手続きです。
自己破産には、主に同時廃止事件・管財事件少額管財事件の3種類があります。
適用されるケースや費用はそれぞれ異なり、どの手続きがおこなわれるかは裁判所が決定します。
- 同時廃止事件:財産がほとんどない場合に適用される手続き。手続きが最も簡単で費用も抑えられる
- 管財事件:ある程度の財産を持っている場合に適用され、裁判所が選任した破産管財人が財産を管理し、債権者に分配する手続き。手続きの費用は高め。
- 少額管財事件:財産や借金が比較的少ない場合に利用できる、管財事件の簡易版の手続き。費用は管財事件の半分程度。
自己破産をする人向けの条件、費用、期間などの基本情報
自己破産をするためには、一定の条件を満たさなければいけません。
また、自己破産の種類によって、必要な費用や手続き完了までの期間は異なります。
以下に、基本的な情報を簡単にまとめましたので、それぞれ理解したうえで手続きを進めるようにしましょう。
自己破産に関する基本情報 | |
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条件 | ・支払い不能(支払い期日が到来している債務を返済できない状態)であること ・借金理由が「免責不許可事由」に該当しないこと ・借金が「非免責債権(租税や罰金など)」に該当しないこと |
手続き費用 ※弁護士費用を除く |
・同時廃止事件:1万円~3万円程度 ・管財事件:50万円程度 ・少額管財事件:20万円程度 |
手続き期間 | ・同時廃止事件:3ヵ月~6ヵ月程度 ・管財事件:6ヵ月~1年程度 ・少額管財事件:3ヵ月~6ヵ月程度 |
自己破産をするには|返済義務を免除するための5ステップ
自己破産の手続きは、以下のような流れで進みます。
- 地方裁判所に対して申立てをする
- 裁判所で破産審尋がおこなわれる
- 裁判所から破産手続開始決定が出される
- 裁判所で免責審尋などがおこなわれる
- 裁判所から免責許可決定が出される
ここから、各ステップ別に解説します。
1.地方裁判所に対して申し立てをする
自己破産を申し立てるには、債務や財産の状況、破産に至った経緯を整理した申立書を作成し、必要となる主な書類とともに、自分の住民票所在地または現在住んでいる場所を管轄する地方裁判所へ提出します。
自己破産の申し立てに必要な主な書類は以下のとおりです。
【自己破産の申し立てで必要になる主な書類】
- 申出書
- 陳述書
- 家族全員分の住民票・戸籍謄本
- 給与明細書の写し
- 預貯金通帳の取引明細の写し
- 源泉徴収票・課税(非課税)証明書
- 賃貸借契約書の写し
- 資産目録
- 債権者一覧表
2.裁判所で破産審尋がおこなわれる
申し立てが受理されると、破産審尋(はさんしんじん)が実施されます。
破産審尋とは、借金額や自己破産に至った経緯などを確認するための話し合いの場です。
裁判官と申請者本人が話し合いますが、代理人の弁護士を立てていれば、本人は参加しなくてよい場合もあります。
破産審尋は、申立日から3日以内に実施されるのが通常です。
ただし、東京地方裁判所などの一部の裁判所では、破産申立て当日に審尋が実施されます。
3.裁判所から破産手続開始決定が出される
破産審尋後、裁判所が申立人の状況を総合的に判断したうえで、自己破産の条件を満たしていると認めた場合、正式に破産手続きの開始決定が下されます。
一般的に、申し立てから破産手続開始決定までには2週間程度かかりますが、具体的な期間は個別の事情によって前後します。
債権者からの督促が激しいなど、緊急性が高いケースでは、即日または数日以内に開始決定がなされることもあるでしょう。
4.裁判所で免責審尋などがおこなわれる
「管財事件」または「少額管財事件」の場合、破産手続きが開始すると、まず破産管財人との面談を実施します。
破産管財人とは、債務者の代わりに財産の管理または処分の権限を有する人物をいいます。
面談は、破産管財人の事務所で実施され、債務者の財産や債務の内容、免責不許可事由などについて詳細な質問がおこなわれるのが通常です。
そのあと実施される債権者集会にて、破産管財人が債権者に対して財産の換価・処分に関する状況などを説明します。
ただし、実際は債権者が出席することはほぼなく、主に破産管財人と裁判官でやり取りがおこなわれます。
また、債権者集会と同日に免責審尋(めんせきしんじん)がおこなわれることが一般的です。
免責審尋では、裁判所が債務者に対して質問し、免責不許可事由の有無などを確認します。
なお、「同時廃止事件」の場合、財産の処分や債権者への配当が不要なため、破産管財人との面談や債権者集会は実施されません。
破産手続開始決定から約2ヵ月後に、免責審尋がおこなわれるのが通常です。
5.裁判所から免責許可決定が出される
免責審尋が終わると、約1週間で裁判所が免責の可否を決定します。
免責許可決定は官報に掲載され、2週間以内に債権者からの異議申し立てがなければ、債務の免除が正式に確定します。
自己破産は自分でできる?弁護士に任せるべき?
自己破産では、代理人(弁護士)をつけるかどうかは任意です。
そのため、自己破産は自分でおこなっても、弁護士に任せても問題ありません。
どちらの方法でも、以下のようなメリット・デメリットが存在するので、両者を比較したうえで、どちらの方法を選ぶか慎重に検討しましょう。
自分で手続きする場合のメリット・デメリット
自己破産の手続きを自分でおこなう場合の主なメリット・デメリットは、以下のとおりです。
自己破産の手続きを自分でする場合のメリット・デメリット | |
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メリット | ・弁護士費用が発生しない ・自分のペースで手続きを進められる ・手続きに関する知識を習得できる |
デメリット | ・書類作成・裁判官とのやり取りなどを自分でおこなう必要がある ・債権者の把握漏れが生じるおそれがある ・管財事件として取り扱われることで、予納金が高額になってしまうおそれがある |
弁護士に依頼する場合のメリット・デメリット
自己破産の手続きを弁護士に依頼する場合の主なメリット・デメリットは、以下のとおりです。
自己破産の手続きを弁護士に依頼する場合のメリット・デメリット | |
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メリット | ・自己破産で必要な手続きを一任できる ・貸金業者などからの取り立てが止まる ・少額管財事件を利用して、裁判所費用を抑えられる |
デメリット | ・弁護士費用が発生する ・弁護士のサポート内容に差がある ・手続きが予定よりも遅れる可能性がある |
自己破産をするには免責不許可事由に注意する必要がある!
自己破産が認められるためには、「免責不許可事由に該当しないこと」が条件です。
自己破産の制度は、できる限り公平に借金を整理することを目的の一つとしています。
もし自己破産によって全ての借金が無条件に免除されてしまうと、お金を貸した債権者にとって大きな不利益となり、公平な清算とはいえません。
そのため、破産法第252条第1項に定められた「免責不許可事由」に該当するような事実が認められれば、免責を受けることはできないのです。
ここでは、主な免責不許可事由を3つ紹介するので、該当する行為は控えましょう。
1.自分の財産を隠したり、壊したりする
自己破産の手続き前や手続き中に財産を隠したり、壊したりする行為は、免責不許可事由に該当します。
自己破産の際、20万円以上に相当する価値を持つ財産は、裁判所や破産管財人によって売却され、その売却金が債権者に分配されます。
財産を隠したり壊したりすることで売却ができなくなると、債権者に渡るべき配当金が減少してしまうので、免責が認められなくなってしまう可能性が高くなるでしょう。
たとえば、裁判所や破産管財人に売却されたくないので、高級腕時計を友人に極端に安い価格で売ったり、高価な伝統工芸品を壊してしまったりする行為が該当します。
2.一部の債権者に対して借金を返済する
複数の債権者がいる中で、一部の債権者にのみ優先的に借金を返済して、他の債権者に不利益を与えるような行為を「偏頗弁済(へんぱべんさい)」といいます。
偏頗弁済がおこなわれると、債権者の間で公平性が損なわれるので、免責不許可事由に該当します。
3.自己破産の手続き中に新たに借金をする
自己破産の手続きを開始する直前や手続き中に新たに借金をすると、返済の意思がない、または返済能力がないと理解したうえで借り入れをおこなったとみなされるので、免責不許可事由に該当します。
また、借金をする際に、債権者を欺くような悪質な行為があった場合には、免責不許可事由に該当するだけでなく、詐欺罪などの刑事責任を問われることもあるでしょう。
さいごに|自己破産をするなら一度弁護士に相談しておこう
自己破産の手続きをひとりで進める場合でも、弁護士に依頼する場合でも、それぞれメリットとデメリットがあります。
ただ、最も重要なのは、手続きを確実に成功させることです。
手続きに不備があると、自己破産の完了までに時間がかかってしまうだけでなく、免責が認められないかもしれません。
ひとりで進める場合でも、少しでも疑問点が生じたら、弁護士に相談するのがおすすめです。
とくに、債務整理を得意とする弁護士に依頼すれば、ミスなく手続きを進めてもらえるはずです。
もし身近に相談できる弁護士がいない場合は、「ベンナビ債務整理」を活用して、自分にあった弁護士をみつけて相談しましょう。