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遺留分の時効はいつまで?時効が迫っているときの対処法を解説

弁護士監修記事
遺産相続
2023年02月28日
2024年04月25日
遺留分の時効はいつまで?時効が迫っているときの対処法を解説
この記事を監修した弁護士
葛城 繁弁護士 (葛城法律事務所)
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遺産相続の際、一定範囲の法定相続人に権利がある遺留分ですが、遺言書の内容や遺留分権利者以外の相続人の行動などでトラブルに巻き込まれる事は多いものです。

トラブルのひとつに、遺留分の請求に時効があることを知らないまま過ごしてしまう場合があります。

遺留分に時効があることを把握している方は少なく、時効に気づいて慌てて行動しても間に合わないこともあります。

この記事では、遺留分の時効や、時効が近づいた際の対処法を紹介します。

自身の遺留分を守るために時効をあらかじめ把握しておきましょう。

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遺留分に時効はある?

生前贈与などで遺産の遺留分を侵害された場合、請求をおこなうことができる期限、すなわち時効があります。

時効が完成してしまうと、遺留分侵害額請求権は行使できません。遺留分の時効について、しっかり把握しておきましょう。

遺留分の時効には2つの種類が存在します。

1年間の消滅時効

何らかの要因で遺留分を侵害された際に請求できる権利を、遺留分侵害額請求権といいます。

遺留分侵害額請求権は被相続人の死亡(相続開始時)および遺留分を侵害する贈与等があったことを知ったときから1年以内に行使する必要があります(民法第1048条)。

遺留分の侵害を死亡直後に知ったにも関わらず、手続きの複雑さなどから1年間放置していたため、本来受け取れていた遺留分の侵害額が受け取れなかったという事例もあります。

このように遺留分の侵害を知ってから1年を過ぎてしまうと時効により消滅してしまい、請求を行えなくなります。

また、遺留分以外の主張で争っており、調停や裁判などが進行している最中にも、遺留分の時効は進行します。

気がつかずに時効を迎えてしまった場合は、遺留分侵害額の請求ができなくなる可能性もあります。

遺留分侵害額請求について詳しくは遺留分侵害額請求とは?期限や方法、遺留分の割合・計算方法を解説をご覧ください。

10年間の除斥期間

遺留分侵害額請求権は、自分の遺留分が侵害されていることを知らなくても、10年経てば権利が消滅してしまいます。

この場合を除斥期間といい、遺留分侵害額請求権の消滅は防ぐことができません。

たとえば、被相続人に前妻とその間に生まれた子がいたものの、離婚後は音信不通で、被相続人と新たに婚姻した妻と子は前妻と子の存在を知らなかった、というケースを考えてみましょう。

本来なら、被相続人が死亡すると前妻の子も相続人であり、遺留分権利者です。

しかし、被相続人が後妻とその子どもに全財産を相続すると遺言を遺して死亡した場合、前妻との子は被相続人が死んだことさえ知らない可能性もあります。

そして、前妻との子が相続の開始を知らないまま10年が経過してしまうと、除斥期間が完成し、遺留分侵害額請求権が消滅してしまうのです。

このように、遺留分の侵害を長期間にわたって知らないままというケースも存在します。

必ず除斥期間も把握しておき、受け取れない遺留分の発生を防ぎましょう。

侵害額請求後の消滅時効

遺留分侵害額請求権の行使によって、遺留分にあたる金銭を請求する「金銭債権」が発生します。

金銭債権は、債権一般の消滅時効が適用されます(民法166条1項1号)。

2020年4月1日より施行された改正民法により、債権一般の消滅時効についてのルールが変更されました。

そのため、遺留分侵害請求権を行使して金銭債権が発生した時期が民法改正の前か後かで、時効のルールが変わります。

  • 2020年3月31日以前に行使:金銭債権発生時から10年
  • 2020年4月1日以降に行使:金銭債権発生時から5年

これらは、民法166条1項1号にて定められています。

遺留分の時効が迫ってきたときの対処法

遺留分侵害額請求権の時効進行を止めるには、1年以内に裁判手続を起こさなければならないわけではありません。

遺留分侵害額請求権は「形成権」の一つなので、相手にただ請求の意思を伝えるだけで、時効の進行を止める法律効果が発生するのです。

ただし、言葉で一方的に伝えただけでは、「言った」「言わない」の争いになってしまうでしょう。

以下では、時効の完成を止める具体的な方法について解説します。

遺留分侵害額請求の内容証明郵便の送付

遺留分請求の1年の時効が迫っている場合は、郵便局へ行って内容証明郵便を送付しましょう。

遺留分侵害額請求権を行使する意思表示は口頭や電話、内容証明郵便など様々な形でおこなっても問題はありません。

しかし、手続きをおこなう上で争って裁判等になった場合に証拠として有効なのが内容証明郵便です。

内容証明郵便なら、受取人に加えて差出人や郵便局も文書を保存しているため、文書の証明になります。

内容証明郵便は、一人に送れば対象になる全員に遺留分請求の意思表示ができるわけではありません。

誰が自分の遺留分を侵害しているか判明している場合はそのまま侵害している人に送りますが、判明していない場合は遺贈を受けた人に送ります。

この場合、法定相続分以上の相続を受けている人が侵害しているケースが一般的です。

相続人や受遺者全員に内容証明郵便を送付する方法もありますが、全く遺留分の侵害について判明していない場合は、速やかに弁護士に相談するのがおすすめです。

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内容証明郵便の内容例

令和◯年◯月◯日

 

受取人住所 : 東京都◯◯区◯◯-◯◯

受取人氏名 : 山田 太郎

差出人住所 : 東京都◯◯区◯◯-◯◯

差出人氏名 : 田中 一郎

 

           

通知書

 

 

被相続人◯◯ ◯◯の令和◯年◯月◯日付自筆証書遺言の内容は私、◯◯◯◯の遺留分を侵害しています。

従って、私は貴殿に対し、遺留分侵害額請求権の行使をおこないます。

                                  

以上

遺留分の時効を阻止したあとの3つの手順

遺留分の時効を阻止できたら、相手側と実際に合意書を交わすための話し合いや手続きをおこなう必要があります。

内容証明郵便を送ることで、遺留分侵害額請求権の時効は止まりますが、この権利の行使によって具体的な金銭を請求する権利が発生します。

遺留分の時効を伸ばしても、それまでに解決できなければ意味がありません。

解説する手順を速やかに実行し、迅速な解決を目指しましょう。

手順1.協議をおこない、合意書を交わす

内容証明郵便の送付をおこなったら、相手側との具体的な内容についての協議が始まります。

互いの主張を提出し、双方が納得のいくまで妥協点を探していくことになります。

任意の話し合いで和解ができたら、内容に従い合意書を交わしておきましょう。

手順2.話し合いでまとまらなければ調停へ

任意の話し合いで、まとまらない場合には、家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停を申し立てる必要があります。

調停では調停委員が双方の主張を尊重し、公平に聞いたうえで解決策を話し合います。

請求した側とされた側の双方が同意すれば調停は成立です。

調停でまとまらなければ、改めて裁判所へ訴訟提起をしなければなりません。

訴訟では、遺留分侵害の有無と金額を争います。

請求する側は、遺留分の遺産の内容や金額などを、証拠によって立証する必要があります。

調停や訴訟に進んだ場合、専門家に頼らず解決するのは大変困難です。

任意の話し合いでまとまらなかったら、弁護士に相談しましょう。

遺留分の時効に関する注意点

遺留分のすべての手続きを行なう際は、いずれも複雑な問題が多いため、弁護士に相談しながら進めるのがおすすめです。

以下で、遺留分の時効に対処する遺留分侵害額請求権を行使する場合に注意するべきポイントを解説します。

遺留分の基礎財産を漏れなく確認する

遺留分侵害額請求権を行使して請求できる金額は、相続財産や遺贈、生前贈与を含む遺留分の基礎財産によって異なります。

相続財産や法定相続人ではない人に対する生前贈与については細かく調べ、どこまで把握できるかが大切です。

調べて把握している内容がそのまま請求額に反映されるため、弁護士などに頼りながら綿密に理解しておきましょう。

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金銭以外の価値を適切におこなう

遺留分として認められる財産には、預貯金や現金などの金銭以外にも非上場株式や不動産なども含まれます。

金銭以外の財産が遺留分に含まれている場合、金銭のように明確な価値が存在しないため、評価方法によって請求額が変わってきます。

少しでも遺留分の請求額を増やすために、弁護士や不動産鑑定士などの専門家に頼って評価方法を選びましょう。

不動産鑑定士に評価を依頼する場合は30〜50万円程度かかるケースがあるため、費用面も請求額を上回ることがないように注意しておきましょう。

請求後の時効を視野に入れておく

遺留分侵害額請求権を行使した後には、債権一般の消滅時効期間が設けられます。

この時効を過ぎてしまうと今までおこなってきた手続きが消滅してしまうため、請求後の時効も視野に入れておきましょう。

請求して放置することないように遺留分の回収を終えるまで気を抜かずに手続きをやり遂げましょう。

まとめ|遺留分の時効を知っておくことで相続問題をスムーズに

遺留分の時効について解説してきました。大切なのは遺留分を損害されていることや具体的にどの財産が侵害されているかなどを把握したうえで、遺留分侵害額請求権を行使することです。

遺留分侵害額請求は、時効期間を把握している場合としていない場合で損害は大きく異なります。

それぞれの時効期間と対処法を理解して遺留分に関する協議や調停の際に情報で不利にならないように意識しましょう。

身内同士の話し合いではトラブルに発展しやすいため、必要であれば弁護士に頼ってスムーズな解決を目指しましょう。

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編集部
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