養育費を簡単に計算できる!養育費算定表と自動計算機を使う方法を解説
養育費の金額は、離婚や別居後の生活設計に大きく影響します。
しかし「うちの場合はいくらくらいが妥当なの?」と感じても、正確な計算方法がわからない方も多いでしょう。
実は、養育費は家庭裁判所が公表する「養育費算定表」を使えば、おおよその相場を簡単に確認できます。
さらに最近では、年収や子どもの人数を入力するだけで金額がわかる自動計算機も多くのサイトで無料公開されています。
本記事では、養育費算定表を使った養育費の計算方法や自動計算機の使い方、養育費が相場より高くなる可能性があるケースについて、詳しく解説します。
また、養育費の金額を決めるための話し合いや調停の流れ、弁護士に依頼するメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
養育費の相場を簡単に計算する2つの方法とは?
養育費の相場を計算する代表的な方法は次の2つです。
- 養育費算定表を使う方法
- 養育費自動計算機を使う方法
ここからは、それぞれの方法の概要と特徴を見ていきましょう。
調停や裁判でも参考にされる「養育費算定表」を使う方法
養育費算定表とは、家庭裁判所が養育費や婚姻費用を決める際に参考にしている公式資料のことです。
支払う側と受け取る側の年収、子どもの人数や年齢などをもとに、標準的な生活水準を保つための目安額を一覧で確認できます。
また、養育費算定表は調停や裁判でもそのまま根拠として使われるため、法律的な信頼性が高いのがメリットです。
ただし、特別な教育費や医療費が必要な場合などは、算定表の金額がそのまま適用されないこともあります。
算定表の金額はあくまで目安であり、具体的な金額は個別の事情を考慮して決定されることを覚えておきましょう。
自動計算機で簡単に養育費のシミュレーションをする方法
算定表を使った養育費の計算よりも簡単な方法として、養育費の自動計算機を使う方法も挙げられます。
自動計算機は、支払う側・受け取る側の年収や子どもの人数・年齢を入力するだけで、瞬時に目安額を算出してくれるオンラインツールです。
法律事務所や法律相談サイトなど、さまざまな企業や事務所が無料で提供しています。
ただし、自動計算機であれば何でもOKというわけではありません。
利用する際は、弁護士が監修しているかどうかや信頼できる企業が運営する計算機かどうかを確認してください。
なお、養育費の自動計算機の使い方については「自動計算機で養育費を計算する手順」で詳しく解説します。
養育費算定表の見方・算定表を使った養育費の計算手順
養育費算定表は、条件さえわかれば誰でも簡単に利用できますが、正しい手順を踏むことが大切です。
ここでは、調停や裁判で実際に用いられている算定表を使って、養育費を計算する手順を以下の2ステップで紹介します。
- 子どもの年齢・数に関する条件にあう算定表をダウンロードする
- 養育費を支払う側・受け取る側の年収をもとに養育費の金額を確認する
それぞれ順を追って、見ていきましょう。
1.子どもの年齢・数に関する条件にあう算定表をダウンロードする
まず、裁判所のホームページから自分の家庭構成に合った算定表を選んでダウンロードしましょう。
子どもの人数や年齢によって使用する算定表は異なるので、注意してください。
■ダウンロード先:裁判所|平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
2.養育費を支払う側・受け取る側の年収をもとに養育費の金額を確認する
該当する算定表をダウンロードしたら、次は支払う側と受け取る側の年収を確認します。
以下のように、算定表の縦軸には「養育費を支払う側の年収」、横軸には「受け取る側の年収」が記載されているので、該当する箇所をチェックしてください。
なお、年収は源泉徴収票や確定申告書の金額をもとに、給与所得者か自営業かを区別して確認しましょう。
そして、縦軸と横軸の交差部分に書かれた金額が、その家庭の標準的な養育費の目安額(月額)となります。
例えば、支払う側が年収500万円の会社員、受け取る側が年収200万円の会社員で、子どもが1人(0〜14歳)の場合、算定表では月額4〜6万円が目安です。
ただし、この金額はあくまで基準である点に注意しましょう。
子どもについて、私立進学や医療費負担などの特別な事情があれば、話し合いや調停によって金額が調整されることもあります。
自動計算機で養育費を計算する手順
次に、弁護士ポータルサイト「ベンナビ離婚」が提供している養育費自動計算機を例に、実際の使い方を紹介します。
【養育費の自動計算機の使い方】
- 養育費をもらう側の年収と収入形態(給与所得者・自営業)を入力する
- 年齢ごとの子どもの人数を入力する
- 養育費を支払う側の年収と収入形態(給与所得者・自営業)を入力する
- 所在地を選択する
養育費の自動計算機は算定表を見ながら手計算するよりも、短時間で結果がわかるため、初めて養育費を計算する方にもおすすめです。
なお、ベンナビ離婚では自動計算機で算定した養育費について、そのまま弁護士に相談することもできます。無料相談に対応している弁護士もいるので、養育費について不安がある方はぜひ気軽に利用してみてください。
養育費が相場より高くなる可能性があるケース
養育費算定表で示される金額は「標準的な生活水準」を前提としています。
そのため、以下のような特別な事情がある場合、実際の養育費は相場よりも高い金額に設定されることがあります。
- 教育費が高額な場合
私立学校への進学や海外留学など、通常よりも高い学費がかかるとき。
- 医療費が継続的に必要な場合
持病や障がいがあり、医療費や通院費が多く発生するケース。
- 支払う側が高収入の場合
支払う側の年収が算定表の上限を超える場合、実情に応じて高額に設定されることがある。
- 当事者間で高額支払いに合意した場合
将来の教育方針や生活環境を守るため、相場以上で合意するケース。
- 支払い期間を延長する合意がある場合
大学卒業まで、または成人後も支払いを続けると決めた場合。
こうした条件に当てはまる場合は、算定表だけでなく、事情を踏まえて金額を決めることが重要です。
ただし、相場を大きく超えた養育費を請求する場合、相手と合意に至らずもめるケースも少なくありません。
「相場よりも多く養育費をもらいたい」と考えている場合や、反対に「相場よりもかなり高額な養育費を請求されて困っている」という場合は、弁護士へ相談して対応を検討しましょう。
養育費の金額を決める方法
養育費の目安や相場は、算定表や自動計算機を使うことで計算できますが、実際に養育費の金額が決まるまでには、以下のようなステップを踏む必要があります。
- 話し合いで決める
- 話し合いで決まらない場合は調停をおこなう
- 調停で決まらない場合は、審判・裁判で決める
ここからは、養育費の金額を決めるまでの流れについて、詳しく見ていきましょう。
【前提】養育費の金額は養育費算定表を参考に決めるのが一般的
前提として、養育費の金額は「養育費算定表」を参考に決めることを覚えておきましょう。
算定表はあくまでも目安ですが、養育費を決める際の基準として機能します。算定表の金額をベースに、事情を考慮して最終的な養育費を決めていきましょう。
また、算定表を使うことで、感情論に流されず、根拠のある数字をもとに話し合いができるのも大きなメリットです。
まずは夫婦で話し合って決める
養育費の金額は、まず夫婦間で話し合って決めるのが理想です。
お互いの年収や子どもの人数・年齢に応じた金額を提示し、両者が合意すれば、その時点で養育費の金額が確定します。また、お互いが合意していれば、算定表よりも高額または低額な金額であっても問題はありません。
ただし、合意ができたら、その内容を書面にして残すことが重要です。
口約束のままでは、あとから「そんな約束はしていない」と否定されるリスクがあるからです。
とくに、合意内容を公正証書として書類化しておけば、養育費の未払いが発生した場合でも、裁判を経ずに差し押さえなどの強制執行が可能になります。
話し合いで決められない場合は養育費請求調停・離婚調停で決める
夫婦間の話し合いで養育費額がまとまらない場合は、家庭裁判所による調停で取り決めをおこなうことになります。
調停では、裁判官と調停委員が中立の立場から双方の意見を聞き、算定表を基準にしつつ、生活状況や特別な事情を考慮して金額を調整します。
なお、調停での話し合いは非公開でおこなわれるほか、弁護士に依頼すれば代理で出席してもらうことも可能です。
また、調停で合意した内容は調停調書として残り、判決と同じ効力を持つため、未払いが発生した場合に強制執行の根拠として使うことができます。
【関連記事】養育費の請求調停を有利に進める要点8つ
調停で決められない場合は審判・裁判で決める
調停が不成立となった場合、家庭裁判所が審判によって養育費の金額を決定します。
審判では、算定表を基準にしつつ、双方が提出した収入証明や生活状況、特別な事情を踏まえて裁判官が最終的な養育費額を判断します。
さらに、養育費の金額や支払い方法について争いが大きく、法的な根拠や解釈をめぐって意見が対立している場合は、裁判に移行することもあります。
裁判では証拠や主張の裏付けが重要になるため、弁護士を代理人として立てるケースがほとんどです。
審判や裁判で確定した養育費は、法的拘束力があり、未払い時には差し押さえなどの強制執行が可能です。
そのため、最終的に確定した金額は、当事者の合意がない限り基本的には変更できません。
養育費で損をしないために!養育費について弁護士に相談・依頼するメリット
養育費は、金額や支払い期間を誤ってしまうと、長期間にわたって経済的な不利益を被るおそれがあります。
たとえば、相場より低い金額で合意してしまったり、将来の教育費や病気などの特別な出費について考慮しなかったりした場合、あとから条件を変更するのは容易ではありません。
そのため、養育費で損をしないためには、弁護士に相談し、取り決めや金額についてアドバイスをもらうことが大切です。
ここからは、養育費について弁護士に相談・依頼することで得られる具体的なメリットを5つ紹介します。
- 受け取れる養育費の適正額がわかる
- 相手との交渉や調停・裁判手続きまで任せられる
- 必要に応じて養育費以外の対応も依頼できる
- 養育費の未払いや回収についても相談・依頼が可能
- 精神的負担を軽減できる
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
受け取れる養育費の適正額がわかる
弁護士に相談する最大のメリットのひとつは、受け取れる養育費の適正額を明確にしてもらえることです。
養育費算定表を見れば金額の目安はわかりますが、実際には収入の計算方法や特別な事情の反映方法によって金額が変わることも少なくありません。
その点、弁護士であれば、以下のようなケースにおいても法的な視点から収入や事情を正しく評価し、あなたが損をしない金額を算出してくれます。
- 相手の年収を正確に把握できていない
- 子どもの進学予定や医療費など特別な費用がある
- 相手が自営業で収入が不透明
弁護士に相談して自分のケースにおける養育費の適正額を知っておくことで、交渉や調停でも自信を持って主張できるようになるでしょう。
相手との交渉や調停・裁判手続きまで任せられる
養育費の話し合いは、お金の問題であるだけに感情的な対立が起きやすく、当事者同士では冷静なやり取りが難しいことも珍しくありません。
その点、弁護士に依頼すれば、相手との交渉や家庭裁判所での調停・裁判手続きを全て代理で進めてもらうことができます。
また、調停や裁判で弁護士が間に入ることで、以下のようなメリットを得られるでしょう。
- 法的根拠に基づいた金額や条件を提示できる
- 感情的な衝突を避けられる
- 必要な書類や証拠を漏れなく準備できる
とくに調停や裁判では、書面や証拠の提出が重要になるため、専門家のサポートがあるかどうかで結果が大きく変わることも少なくありません。
そのため、話し合いでの解決が難しいと感じた段階で、弁護士へ相談して今後の対応についてアドバイスをもらうとよいでしょう。
必要に応じて養育費以外の対応も依頼できる
養育費の話し合いや調停は、離婚や別居に伴うほかのトラブルと同時に進行することも多いです。
実際、離婚をする際は、財産分与、慰謝料、親権、面会交流の取り決めなど、複数の争点が絡み合うケースも珍しくありません。
そんなときに弁護士に依頼すれば、養育費だけでなく、これらの関連する離婚問題もまとめて対応してもらえます。
全ての問題を弁護士が担当することで、手続きごとの条件のバランスを考慮しながら総合的に有利な解決を目指すことが可能です。
また、弁護士には離婚協議書や公正証書の作成サポートも依頼できるため、将来的なトラブル防止にもつながります。
このように、弁護士という一つの窓口で全ての問題を処理できるのは、大きな安心感にもつながるでしょう。
養育費の未払いや回収についても相談・依頼が可能
養育費は、一度取り決めをしても途中で支払いが滞るケースが多いです。
実際、令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果によると、養育費が支払われている家庭の割合は母子家庭で約28%、父子家庭で約8.7%となっており、養育費を受け取れている家庭は少ないと言わざるを得ません。
もちろん、「そもそも取り決めをしていない」という家庭もありますが、「一度取り決めたのに支払ってもらえない」という家庭が多いのです。
しかし、弁護士に依頼すれば、一度取り決めた養育費について未払いがあった場合でも、公正証書や調停調書に基づく強制執行や、相手の財産・勤務先の調査、支払い条件の変更交渉など、回収に向けた具体的な対応をスムーズに進めてもらえます。
未払いが続くと生活への影響が大きいため、早めに弁護士へ相談し、確実な回収ルートを確保しておくことが重要です。
精神的負担を軽減できる
養育費の交渉や回収は、金銭面だけでなく精神的にも大きな負担となります。
相手との直接交渉や調停でのやり取りは、過去の出来事を思い出すきっかけにもなり、ストレスや不安を感じやすいものです。
その点、弁護士に依頼すれば、相手との連絡や交渉の窓口を全て任せられるため、精神的な負担を大きく軽減できます。
また、法律に基づいた冷静な対応が可能になることで、感情的な対立を避けながら話を進められるでしょう。
以上を踏まえると、安心して日常生活や子育てに専念するためにも、精神的なサポートとして弁護士を活用する価値は高いといえるのです。
さいごに|養育費の交渉について不安があれば弁護士に相談を!
本記事では、養育費の計算方法や決め方について、具体的な流れも踏まえて解説しました。
養育費は、子どもの生活や将来のために欠かせない大切なお金です。
金額や支払い条件を誤ってしまうと、長期間にわたり不利益を被る可能性があり、あとから修正するのは容易ではありません。
そのため、まずは養育費算定表や自動計算機を使って目安額を計算し、自分のケースでどれくらいの養育費がもらえるのかを確認しましょう。
そして、金額交渉や法的手続きに不安がある場合は、早めに弁護士へ相談してください。
弁護士であれば、養育費の適正額を計算することはもちろん、交渉・調停・裁判対応、さらに未払い時の回収までトータルでサポートしてくれます。
なお、ベンナビでは養育費の問題を得意とする弁護士を多数紹介中です。地域や駅名などから無料相談に対応している弁護士を簡単に検索できるので、ぜひお気軽にご活用ください。


