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遺産分割調停とは?申立から解決までの流れやメリットを解説

弁護士監修記事
遺産相続
2023年03月01日
2024年04月09日
遺産分割調停とは?申立から解決までの流れやメリットを解説
この記事を監修した弁護士
黒井 新弁護士 (井澤・黒井・阿部法律事務所)
2002年 弁護士登録。15年以上の実績のなかで多くの相続問題に取り組み、その実績を活かし、相続分野における著書執筆や不動産の講演・セミナーへ登壇するなど、活動の幅は多岐に渡る。
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親族同士で遺産分割の話し合いをする際、お互いに意見の尊重ができず対立してしまうこともあります。遺産分割調停をおこなえば裁判所での手続きを利用し、円滑に遺産分割を進めることが可能になります。

しかし、遺産分割調停の手続き自体が初めてで、具体的な流れや必要な書類を知らない方が多いのではないでしょうか。

本記事では、遺産分割調停の概要説明やメリット・デメリット、流れ、コツなど、遺産分割調停をする際に必要な内容を解説します。遺産分割をスムーズに進めるため、解説をする内容を参考にしてみてください。

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遺産分割調停とは?

遺産分割調停とは、遺産分割協議で相続人同士が合意に至らなかった際に家庭裁判所への申立てにより利用できる制度です。遺産分割調停では、調停委員会が相続人の間に入り中立な立場で話を整理しながら相続人同士が円満に解決できるよう努めます。

調停委員会は、裁判官1名と調停委員2名以上で構成されています。調停委員は民間から選出される非常勤の裁判所職員で、遺産分割調停では調停委員に男女1名ずつ選ばれる場合が多いです。

調停委員に選ばれる条件は以下のとおりです。

  • 年齢が40歳以上70歳未満
  • 弁護士資格を有する者
  • 民事または家事の紛争に有効な専門知識経験を有する者
  • 社会生活の上で豊富な知識経験を有する者

遺産分割調停の概要

遺産分割調停は、概ね月1回で平日10時〜17時の間におこなわれます。

一般的に1回で終わるケースはなく、相続人同士が合意するか完全に決裂するまで続きます。調停が終わるまでの期間はその時によりさまざまですが、長ければ1年以上続く場合もあります。

調停を行う際は、原則家庭裁判所に出頭して調停をおこないます。相続人同士の居住地が遠いケースはリモート形式での調停も可能になります。

遺産分割調停の申立てに期限はありませんが、調停を検討している方は相続税の申告・納付期限の相続の発生を認知した日から10ヵ月以内に調停をおこなうのが望ましいです。

遺産分割調停の申立人・申立先

遺産分割調停の申立人は、相続人の内の1人または複数が「申立人」、他の相続人を「相手方」として家庭裁判所に申立てをおこないます。

通常、遺産分割調停では、相続人間のトラブルの有無に関わらず、相続人全員が「申立人」か「相手方」として当事者になる必要があります。

遺産分割調停の申立て先は、基本的に相手方の住所を管轄する家庭裁判所です。ただし、相続人全員が合意すれば、どの家庭裁判所でも構いません。

遺産分割調停の申立てに必要な費用

遺産分割調停の申立てに必要な費用は、「収入印紙代(1,200円)」と「相続人の人数分の郵便切手代(1,700円)」です。郵便切手代は、各裁判所によって異なります。

弁護士に依頼する場合は、弁護士費用もかかります。弁護士費用は「着手金」と「報酬額」の2つで構成されており、調停によって得られる経済的利益額によって費用が変わります。

弁護士事務所によって異なりますが、少なくとも30万円以上かかるケースがほとんどです。

弁護士費用は、相手方への請求はできず、依頼者本人が支払わなければなりません。

【関連記事】遺産分割でかかる弁護士費用はいくら?依頼内容別に解説

遺産分割調停の申立てに必要な書類

必要な書類はケースごとにより変わりますが、大まかには以下の5つの書類が必要になります。

  • 申立書
  • 申立書の写し(相手方の人数分)
  • 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票または戸籍の附票
  • 遺産に関する証明書

同じ戸籍謄本や住民票は、1通のみで問題ありません。裁判所に提出する書類は、還付されないものだと考えておきましょう。

また、弁護士に依頼する場合、必要な書類は全て弁護士が準備してくれます。仕事や育児などで時間のない方は弁護士に依頼することがおすすめです。自身の労力を軽減してくれます。

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遺産分割調停をするメリット

ここでは、遺産分割調停をおこなうメリットを紹介します。

冷静な対話ができる

遺産分割調停では、基本的に相続人同士が顔を合わせて話し合いをおこなわないため、冷静な対話が可能です。調停委員会にお互いの主張を話して調停が進んでいきます。

遺産分割の話し合いは、人生で何回もあるわけではありません。お互いが慣れていない中で感情的になり、話し合いが難航するケースもあります。

調停委員会が間に入れば、お互いが感情的にならずにスムーズに話し合いを進められます。

法的に妥当な分割ができる

遺産分割調停は法律の知識をもった調停委員会が出席するため、遺産を法的に妥当な分割ができる可能性が高いです。

「法律の知識に乏しいため、不公平な遺産分割になる」などの心配はいりません。

調停委員会から解決案の提案がなされることも

調停委員会は、相続人同士の間に入るだけでなく、解決案を提案してくれる場合もあります。

当事者では気付かなくても客観的に判断しやすい立場の調停委員会であれば、気付ける解決案があります。調停委員会が介入すれば、早期に解決できる可能性が高まります。

遺産分割調停をするデメリット

ここでは、遺産分割調停をおこなうデメリットを紹介します。

時間がかかる

遺産分割調停は月1回程度おこなわれる場合が多いため、解決までに早くても数ヵ月はかかってしまいます。

お互いが合意するまでの期間はケースによってさまざまです。早い場合であれば数ヵ月で合意に至りますが、基本的には合意までに1年以上かかる場合が多いです。中には3年間話し合いが長引いたケースもあるほどです。

自分に有利になるとは限らない

遺産分割調停になれば、必ずしも申告人の意見が通るわけではありません。

調停では、申告人と相手方の両方の意見を調停委員会が聞き、落としどころを探っていきます。時には相手に譲らなければならない部分も出てきます。

調停に臨む前に、ご自身で譲れる部分と譲れない部分を明確にしておきましょう。

合意できなければ審判へ移行

遺産分割調停で合意できなかった場合、遺産分割審判へと移行します。

調停は裁判所で行うものの、本質は話し合いで、裁判官が決めた分割内容に従うわけではありません。しかし、審判に移行すればお互いの主張や事情などを考慮し、裁判官が遺産の分割内容や割合を決めていきます。

審判の結果に異議の申し立ても可能ですが、基本的に裁判官の審判に従う形になります。

遺産分割調停をするタイミング

遺産分割調停を行うタイミングは主に3つあります。調停が必要なタイミングを理解し、調停の必要性を理解しましょう。

ご自身の状況が当てはまっているか確認し、調停を行うべきか検討してみてください。

遺産分割協議が決裂したとき

遺産分割協議で合意に至らないケースは多々あります。たとえば、「被相続人の生前に介護をしていたから遺産を多くもらうべきだと主張するケース」や「生前に被相続人から大きな贈与を得ているケース」などが挙げられます。

遺産分割協議で感情的になってしまえば話し合いは進みません。相続人だけで話し合うのではなく、調停に移行し調停委員会に介入してもらったほうが合意に至る可能性は高まります。

連絡が取れない相続人がいるとき

連絡が取れない相続人がいる場合は調停に移行するのがおすすめです。

遺産分割協議は、相続人全員が参加しなくてはなりません。連絡が取れない相続人がいれば、話し合いができず遺産分割協議は不成立になります。

遺産分割調停の申し立てをすると、裁判所から通知が送られます。連絡がつかない相続人も裁判所からの連絡であれば応じるケースも多いです。

相続人同士で話し合いができないとき

相続以前から仲が悪く話し合いができるような状況でない場合は、速やかに遺産分割調停の申し立てをしましょう。

調停では相続人同士が直接話し合う機会が少ないため、円滑に話し合いが進められます。

遺産分割調停の流れ

遺産分割調停の流れを解説します。申し立てをする方の中には遺産分割調停を飛ばして遺産分割審判を行うケースもありますが、裁判所の判断によって調停から始めるケースがほとんどです。

解説をする内容を踏まえながら遺産分割調停に向けての準備を進めていきましょう。

相続人の範囲の確定

戸籍謄本などを活用し、相続人の範囲を確定させます。

養子縁組や婚姻の無効を主張する際は、先に家庭裁判所に人事訴訟を提起し有効・無効を確定させなければなりません。

遺言の有無の確認

遺言書の有無を確認します。遺言書がある場合、基本的には遺言書通りに遺産分割をおこなっていきます。

遺言書で細かく遺産分割のやり方が決まっている場合は、基本的に遺産分割調停の申し立てはできないため注意しましょう。

遺産の範囲の確認

調停では遺産目録や添付書類で遺産の内容を確認し、遺産の範囲を明確にします。遺産目録以外に遺産があると主張する場合、裏付けとなる証拠書類が必要です。

調停委員会は遺産が他にないか調査しません。預貯金などのプラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産まで見落としのないようにしておきましょう。

遺産の評価の確認

遺産の評価で意見が一致しない場合は、裁判所が指定する鑑定人に鑑定を依頼する場合があります。鑑定費用は負担しなければなりません。

特別受益と寄与分の確認

遺産分割の際に関わる「特別受益」と「寄与分」を確認します。

特別受益とは、被相続人の生前に被相続人から相続人に対しての贈与や被相続人の死後に遺贈を受けたりして被相続人から特別に受けた利益を指します。

寄与分とは、相続人が生前に被相続人の財産の維持や増加に対しておこなった貢献を指します。

遺産の分割方法の確定

遺産分割の前提情報が整理できれば、遺産の分割方法を確定させます。調停当日は、調整委員にお互いの主張を話し、調整委員は主張の落とし所を探ります。

申立人と相手方の控室は分かれており、順番に調停室へ入室して主張します。基本的に顔を合わせるタイミングはありませんが、最初と最後のみ当事者全員に手続き内容などを説明する必要があるため顔を合わせることがあります。

遺産分割調停が成立・不成立となった場合の流れ

遺産分割調停後の流れを解説します。調停後の流れは、調停の結果が「成立した場合」と「不成立だった場合」の2つのケースがあります。

調停後も相続人はおこなわなければならない手続きが発生する場合があるので、しっかり把握しておきましょう。

遺産分割調停が成立した後の流れ

遺産分割調停が成立すれば、裁判所が合意の内容を証明する書類である調停調書が作成されます。

調停調書は判決と同じ効力があるため、調停調書の内容に従わない相続人がいれば強制的な調停内容の実現が可能です。

調停終了後、1週間前後で調停調書がご自宅に届きます。

遺産分割調停が不成立となった後の流れ

遺産分割調停が不成立になると、遺産分割審判に移行します。遺産分割調停ではあくまで話し合いでの解決を目指していましたが、審判では裁判官がお互いの主張を聞いて審判を下します。

なお、審判中でも相続人同士の話し合いは可能です。審判中に相続人同士の話し合いで解決した場合は調停で解決した扱いになり、調停調書が作成されます。

遺産分割調停を有利に進めるための【4つ】のコツ

遺産分割調停は、お互いの主張の落としどころでの解決を図るため、勝ち負けが重要ではありません。ご自身の要望をいかに結論に反映させるかが大切です。

調停委員会も人間なので心がけ次第で有利に進められるコツがあります。4つのコツを具体的に解説していきます。

客観的な資料を用意

客観的な資料を用意すれば、調停で有利に進められます。

相続人同士の主張が真っ向から対立するのは珍しくありません。もし、相手の主張を客観的な資料による裏付けで否定できれば、調停委員会からの相手への信用が下がります。

信用が落ちれば、相手が新たな主張をしようとも自身の耳に届く前に調停委員会が弾いてくれる可能性が出てきます。

自身の主張に説得力をつけるためにも、客観的な資料は重要です。

感想ではなく正しい法律知識で対抗

遺産分割調停では、自身の主張がいかに法的根拠に基づいているかが重要です。自身の想いが強くても法律に基づいた主張でなければ、調停委員会は納得しません。

調停に参加する前に法定相続分や特別受益、遺産分割の方法などの基本的な知識を身に着けておきましょう。

正直に話す

調停では、隠し事をせずに聞かれた内容に対して正直に答えましょう。調停に不利な事実を隠していても調停中に明らかになるケースは少なくありません。嘘をついたり、隠していたりすると調停委員会からの印象も悪くなり、信用が落ちてしまいます。

また、相手からの信用もなくなり対立が深まりさらに話し合いがまとまりません。隠し事や嘘はやめて正直に話したほうが賢明です。

弁護士に依頼する

弁護士に依頼をすれば調停を有利に進められます。弁護士は、依頼人の代わりに調停に参加できます。調停では依頼人の言い分を法律に基づいた形で主張し、調停委員会に良い印象を与えてくれます。

弁護士へ依頼をすると「着手金」に加え「報酬金」が発生するなど多少の費用はかかりますが、調停の申し立てから調停中の代理参加までおこなってくれるため依頼人の時間と労力の節約ができます。

仕事や家事などで調停に時間の取れない方は弁護士を活用して調停を有利に進めるのがおすすめです。

まとめ l 遺産分割調停をスムーズに進めるために

遺産分割調停の流れやメリット・デメリットを解説しました。遺産分割をおこなえば、法律に則って公平な遺産分割ができる可能性が高まります。また、調停委員会が間に入れば、難航していた話し合いもお互いに冷静に進められるでしょう。

しかし、調停は少なくとも合意に数ヵ月かかる場合がほとんどで、長ければ1年以上調停を行う可能性もあります。調停が長引いた挙句、自身の要望から遠い遺産分割になれば本末転倒です。

調停を有利に進めるためにも弁護士への依頼をするなど自身の負担が減るような対策が必要になります。本記事で紹介した調停の流れやコツを押さえて、遺産分割の早期解決を目指しましょう。

また弁護士へ相談する場合は遺産分割について弁護士に無料相談する方法|弁護士に依頼するメリットも解説をご覧ください。

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本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
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