経済的DVとは?チェックリスト・相談先や経済的DVで離婚する流れを解説
- 「夫から生活費をもらえず、独身時代の貯金を切り崩して生活している」
- 「もしかしてこれって、経済的DVかも」
夫婦生活を送る中で、このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
配偶者から十分な生活費をもらえないのは、経済的DVの可能性があります。
そして、もしも経済的DVを受けている場合は、これからの自分の人生のためにもいち早く対策を講じることが大切です。
この記事では、経済的DVのチェックリストや被害の相談先、離婚までの流れなどについて解説します。
本記事を参考に、辛い状況から抜け出す方法を見つけましょう。
経済的DVとは金銭的自由を奪って経済的に追い詰める行為のこと
経済的DVとは、配偶者の金銭的自由を奪い経済的に追い詰める行為のことです。
身体的DVのような暴力被害がない分表面化しにくく、誰にも気づかれぬまま、いつの間にか多大なる精神的ダメージを負ってしまうケースが多いのが特徴です。
経済的DVに明確な定義はありません。
しかし、配偶者から経済的な圧力を受けて困窮しているのであれば経済的DVを受けているといえるでしょう。
【チェックリスト】経済的DVの可能性がある行為とは?
経済的DVには、明確な定義はありません。
しかし、以下で紹介するような行為があれば、経済的DVに該当するかもしれません。
ここからは、経済的DVの可能性がある行為として、以下8つを紹介します。
- 十分な生活費を渡さない
- 収入・貯金額を教えない
- 働けるのに働かない
- 配偶者の仕事を制限する
- 共有の貯金を無断で使用する
- 借金を繰り返す・借金を強要する
- お金に関する暴言を吐く
- 自由に使えるお金を渡さない
ご自身が被害者かどうかわからないという方は、ぜひ参考にしてみてください。
十分な生活費を渡さない
夫婦生活において、十分な生活費を渡さない場合は経済的DVに該当する可能性があります。
たとえば、専業主婦の妻に収入がない場合、生活を送るには夫に頼るしかありません。
そうすると、家庭内で力関係ができてしまいます。
そのような状況で、十分な生活費を渡さない、「誰のおかげで生活ができているんだ」などの高圧的な発言をされるなら、経済的DVだといえるでしょう。
なお、必要な生活費の基準は夫婦によって異なりますが、目安として婚姻費用の金額を参考にしてみましょう。
婚姻費用とは夫婦の生活費のことで、一般的には夫婦の別居時に収入が高い方から低い方へと支払われます。
婚姻費用は、夫婦の収入や子の有無によっても異なりますが、家庭裁判所のホームページに算定表があるので、確認してみましょう。
ただし、相場より低い生活費しかもらっていないのに問題なく生活ができているなら、経済的DVと判断されない可能性もあります。
経済的DVを証明するには、実際にどの程度生活が苦しいのか、明確な状況を伝えることが必要です。
収入・貯金額を教えない
夫婦で生活をしているのに、収入や貯金額を教えない場合も経済的DVに該当する可能性があります。
民法第752条に定められているとおり、夫婦にはお互いに助け合う義務があります。
その点、収入や貯金を隠されると今後の生活設計を立てるのが難しくなるでしょう。
たとえば、子どもの教育費はどうすべきか、自宅は購入できるのかなど先行きが不透明なままで生活を送るのは非常にストレスだといえます。
ただし、単に収入や貯金額を教えないという行為だけでは経済的DVだと断定はできません。
収入や貯金を教えないことがどのように生活に影響しているのかが、経済的DVに該当するかどうかの基準になります。
働けるのに働かない
夫婦のどちらか一方が働けるのに働かない場合も、経済的DVに該当する可能性があります。
たとえば、夫だけの収入では生活が厳しいのに特別な理由もなく妻が働いてくれないのであれば、経済的DVの可能性があります。
ただし、妻に持病があったり子の世話をしなければならなかったりなど、働けない事情がある場合は別です。
また、どちらか一方の収入で十分に生活が成り立っている場合は経済的DVには該当しません。
配偶者の仕事を制限する
配偶者に働く意思があるのに働くことを禁止したり仕事を辞めさせたりといった行為は、経済的DVの可能性があります。
たとえば、妻が夫に働くことを制限された結果、生活を送るには夫に頼るしかありません。
その結果、夫婦間で上下関係ができてしまい、生活費を渡さなかったり、そのほかの日常生活についても制限をされてしまったりするケースもあるでしょう。
ただし、妻が持病を持っているなど、正当な理由があるうえで労働を制限している場合は経済的DVに該当しないこともあります。
共有の貯金を無断で使用する
夫婦の共有の貯金を無断で使用している場合も経済的DVに該当します。
共有の貯金は、本来食費や光熱費、子どもの教育費などの支払いに充てられるものです。
配偶者に黙って勝手に使い込まれては日々の生活が成り立たなくなりますし、将来設計も崩れてしまいます。
夫婦ふたりのものでもある貯金を一方が勝手に使用し、生活を困窮させる行為は経済的DVだといえるでしょう。
借金を繰り返す・借金を強要する
借金を繰り返す・借金を強要するといった行為も経済的DVに該当する可能性が高いです。
ギャンブルや浪費で借金を繰り返す行為は、日常生活に大きな影響を与えます。
また、自分の名義ではこれ以上借金できないからといって配偶者に借金を強要する行為は、配偶者自身の人生にも悪影響を及ぼしかねません。
そもそも、夫婦にはお互いに助け合う義務があります。
一方の借金だとしても、婚姻生活を続けるなら夫婦で返済をしなければなりません。
そのため、どちらか一方の借金によって夫婦の生活が苦しくなった場合、経済的DVだといえるのです。
お金に関する暴言を吐く
お金に関する暴言を吐く行為も経済的DVに該当する可能性があります。
たとえば、お金の話になると高圧的になる、「誰のおかげで生活できているんだ」「俺が養ってるんだ」などの発言がある場合は、経済的DVだといえるでしょう。
自由に使えるお金を渡さない
相手は自由にお金を使っているのに、自分は生活できる最低限の金額しか渡されないといった場合は、経済的DVだといえます。
また、物を買ったら領収書を見せ、相手が認めたものしかお金をもらえないといったケースも経済的DVだといえるでしょう。
経済的DVは離婚の理由として認められることもある
民法第770条では、法定離婚事由として以下の5つを定めています。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用元:民法第770条
経済的DVは、このうち「配偶者から悪意で遺棄されたとき」もしくは「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する可能性があります。
配偶者から生活費を支払ってもらえない場合は「悪意の遺棄」、経済的な抑圧により夫婦生活が成り立たなくなった場合は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるとされ、離婚を認めてもらえるかもしれません。
しかし、経済的DVを立証するのは難しいものです。
経済的DV単体ではなく、その他の要因と合わせて離婚請求したほうが、認められやすいといえるでしょう。
経済的DVを理由に離婚する際の基本的な流れ
経済的DVを理由に離婚したいときは、どのような流れで手続きを進めればよいのでしょうか。
ここからは離婚する際の基本的な流れを解説します。
- できるだけ多くの証拠を集める
- 別居を検討する
- 離婚調停を申し立てる
- 調停が不成立になった場合は離婚裁判を申し立てる
それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。
1.できるだけ多くの証拠を集める
まずは経済的DVを証明するために、できるだけ多くの証拠を集めましょう。
経済的DVは暴力と違って表面化しにくく、証明が難しいといわれています。
しかし、証拠がないと裁判所にも相手にも経済的DVを認めてもらうことは困難です。
少しでもスムーズに手続きするためにも、なるべく多くの証拠を集めるようにしましょう。
なお、経済的DVの証拠として役立つのは、主に以下のようなものです。
- 夫婦の収入がわかる資料
- 生活費の出入金がわかる預金通帳
- 家計簿
- 相手の暴言や、お金に関するメールのやりとり
- 相手の借金の証明書類
- 日々のDVの内容を記したご自身の日記
ご自身のケースでどんな証拠を集めればよいのか、弁護士に相談して確認しましょう。
2.別居を検討する
証拠を集められたら、別居を検討しましょう。
配偶者の高圧的な態度やお金に関する暴言から身を守るため、別居に踏み切るのも方法のひとつです。
新たに家を借りる経済力がないのであれば、親族の家やシェルターなどに、一時的に避難しましょう。
また、別居中は配偶者に対して婚姻費用の請求が可能です。
家庭裁判所のホームページの算定表に基づいて婚姻費用を計算し、相手に請求しましょう。
直接の交渉が難しければ、弁護士へ依頼する、もしくは家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てるなどの方法もあります。
3.離婚調停を申し立てる
続いて、家庭裁判所に離婚調停を申し立てましょう。
離婚調停では、裁判官と調停委員を介して離婚の話し合いを進めます。
相手と直接交渉しなくて済むため、精神的な負担を抑えられるでしょう。
また、調停の際に相手と顔を合わせたくないなら、裁判所待合室のフロアを分けるといった配慮もしてもらえます。
離婚調停は自分だけでも対応できますが、ご自身だけでは不安な場合は弁護士への依頼も検討しましょう。
4.調停が不成立になった場合は離婚裁判を申し立てる
離婚調停が不成立になったら、離婚裁判を申し立てましょう。
離婚裁判では、経済的DVが法定離婚事由に該当すると証明する必要があります。
証拠と書面を用意し、しっかりと経済的DVがあったことを主張しましょう。
ただし、離婚裁判では調停よりもさらに深い法律知識と交渉力が求められます。
離婚裁判に進むことになったら、弁護士へ依頼したほうがよいでしょう。
経済的DVで生活費が足りない場合の主な対処法
経済的DVは、生活の安定を揺るがす行為です。
専業主婦や扶養内で働いているなら、ご自身の収入で生活費を補填するのも難しいでしょう。
では経済的DVで生活費が足りない場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。
以下で詳しく解説します。
夫婦で話し合い生活費の増額を求める
まずは夫婦で話し合い、生活費の増額を求めましょう。
単にお金が足りないというだけでは、相手に深刻さは伝わりません。
日々の収入と支出がわかる資料を提示しながら、相手を説得しましょう。
婚姻費用を請求する
相手が交渉に応じない場合は、婚姻費用を請求しましょう。
一般的には別居中に請求するケースが多い婚姻費用ですが、同居中でも請求は可能です。
請求するには相手との交渉だけでなく、家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てる方法もあります。
実家に支援を求める
離婚を考えているなら一時的に実家に避難し、生活を立て直すのも方法のひとつです。
両親に子どもの面倒を見てもらい、その間ご自身は働くこともできます。
経済的に自立する一歩として、実家を頼ることも検討しましょう。
公的な支援の利用を検討する
実家などの頼る先がないなら、公的な支援の利用を検討しましょう。
児童手当や住宅確保給付金、生活困窮者自立支援制度、生活保護など、利用できる支援があるかもしれません。
ただし、それぞれに利用条件がるため、役所や福祉事務所に相談して確認してみましょう。
経済的DVの相談先は?
経済的DVの相談窓口には、以下のようなものがあります。
| 窓口 | 概要 |
|---|---|
| 配偶者暴力相談支援センター | 配偶者からの暴力を防止し、被害者を保護するための公的機関です。各都道府県に窓口が設置されています。DVに関する相談だけでなく、自立に向けたサポートも受けられます。 |
| DV相談ナビダイヤル・DV相談 + (プラス) | 24時間体制で電話(#8008)やメール、チャットを通じて相談を受け付けている窓口です。専門の相談員が、暴力の種類や被害者の状況に応じて必要な支援を提案してくれます。 |
| 夫婦カウンセラー | 夫婦問題に関する専門家です。経済的DVだけでなく、子育てや価値観など夫婦で揉めがちな問題全般の相談が可能です。 |
| 弁護士 | 法律に基づき、離婚に向けた適切なアドバイスをしてくれます。依頼すれば、相手との交渉や調停、裁判手続きも任せられるので、ご自身での対応が難しい方でも安心です。 |
これらの窓口では、経済的DVに悩む方に寄り添い、真摯に対応してもらえます。
「こんなことで相談してもいいのかな...」という方も、まずは悩みを打ち明けることから始めてみましょう。
経済的DVに関してよくある質問
最後に、経済的DVに関してよくある質問とその回答を紹介します。
経済的DVはどこから?経済的DVと判断できる基準は?
配偶者から経済的に追い詰められ、生活が困窮しているからといって、直ちに経済的DVだと断定することはできません。
それぞれの家庭や収入の状況によっても、経済的DVの基準は異なります。
たとえば、そもそも配偶者の収入が少なく十分な生活費を渡したくても渡せない場合や、配偶者が借金をしているが、生活が困窮するほどの返済額ではない場合などは経済的DVとはいえないでしょう。
経済的DVと判断されるのは、夫婦に協力関係がなく、夫婦が経済的・精神的に対等ではない状態です。
夫に十分な収入があるのに妻に生活費を渡さない、配偶者の就労を制限するといった場合であれば、経済的DVだといえるでしょう。
共働きでも経済的DVになる?経済的DVの対象は専業主婦(主夫)だけ?
共働きでも、経済的DVは起こり得ます。
夫婦の収入に差があり、収入が少ない方が十分な生活費をもらえず生活が苦しいなら、経済的DVといえるでしょう。
ただし、自分の収入だけでも十分に生活できているなら経済的DVとはいえません。
婚姻関係にないカップルでも経済的DVはありえる?
婚姻関係にないカップルでも、経済的DVは起こりえます。
たとえば、デート代を一方に負担させる、お金を貸したのに返してくれないといった行為があれば、経済的DVの可能性があるでしょう。
また、同棲しているカップルで、自分の貯金を勝手に使われた場合も経済的DVといえるかもしれません。
経済的DVを理由に慰謝料は請求できる?
経済的DVを理由に離婚する場合は、慰謝料請求が可能です。
慰謝料請求をするには、経済的DVが法定離婚事由に該当すると認めてもらう必要があります。
ただし、経済的DVは外からは見え辛く、証拠も残りにくいものです。
そして、一口に経済的DVといっても被害の程度は人それぞれなので、全てのケースで慰謝料請求できるとは限りません。
裁判で有効な証拠を集めて相手に慰謝料請求したいなら、DV問題に強い弁護士に相談しましょう。
さいごに|経済的DVで悩んでいるなら、今すぐ弁護士に相談を!
経済的DVとは、パートナーの金銭的自由を奪って経済的に追い詰める行為のことです。
具体的には以下のような行動が、経済的DVに該当する可能性があります。
- 十分な生活費を渡さない
- 収入や貯金額を教えない
- 働けるのに働かない
- 配偶者の仕事を制限する
- 共有の貯金を無断で使用する
- 借金を繰り返す・借金を強要する
- お金に関する暴言を吐く
- 自由に使えるお金を渡さない
経済的DVの相談窓口は「配偶者暴力相談支援センター」や「DV相談ナビダイヤル」などさまざまです。
ただし、被害による慰謝料請求や離婚を考えているなら、今すぐ弁護士に相談しましょう。
弁護士なら法律の専門知識と経験で、少しでもあなたに有利な結果を出せるように動いてくれるはずです。
今の状況から早く抜け出すためにも、弁護士の力を借りてみてはいかがでしょうか。
