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セックスレスで離婚は可能?離婚が認められるケース・認められないケースを解説

弁護士監修記事
離婚トラブル
2025年12月25日
セックスレスで離婚は可能?離婚が認められるケース・認められないケースを解説
この記事を監修した弁護士
川越 悠平弁護士 (東京桜の森法律事務所)
依頼者様のお気持ちを尊重し、一人ひとりに適したサポートを提供しています。離婚自体を争う事件や財産分与などを争う事件はもちろん、親権や面会交流、養育費などお子さんの関わる事件にも注力しています。
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「セックスレスを理由に離婚したいけれど、そもそもそんな理由で離婚できるのだろうか?」

パートナーとのセックスレスが原因で、このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、セックスレスを理由とした離婚は可能な場合があります

ただし、離婚には大きく分けて「夫婦の話し合いで合意する」方法と、「裁判で離婚を認めてもらう」方法の2つがあり、どちらを選ぶかによって進め方が大きく異なります。

本記事では、セックスレスで離婚が認められるケースと認められないケースの違い、慰謝料は請求できるのか、そして実際に離婚を進めるための具体的なステップについて、わかりやすく解説します。

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目次

セックスレスでの離婚は認められる?

セックスレスを理由に離婚できるかどうかは、夫婦が離婚に合意しているかどうかによって大きく変わります。

以下では、合意ができているケース・できていないケースそれぞれについて、詳しく見ていきましょう。

夫婦の話し合いや調停で合意ができれば離婚は可能

夫婦で合意ができていれば、セックスレスかどうかにかかわらず離婚が可能です。

このように、夫婦の合意によって離婚することを「協議離婚」といい、日本では離婚する夫婦の約9割が選択しています。

この場合、離婚届を役所に提出することで、法的に離婚が成立します

直接の話し合いが難しい場合は、家庭裁判所の「離婚調停」を利用する方法もあります。

これは、調停委員という中立な第三者を交えて話し合いを進める手続きです。

ここでも最終的に夫婦が合意すれば、調停離婚として離婚が成立します。

裁判になった場合は状況によって離婚が認められる可能性がある

夫婦の一方が離婚に合意せず、調停でも話がまとまらなかった場合、最終手段として「離婚裁判」を起こすことになります

ただし、裁判で離婚を認めてもらうためには、法律で定められた5つの「法定離婚事由」のいずれかに当てはまる必要がある点に注意が必要です。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき(不倫・浮気)
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき(生活費を渡さない、一方的に家を出るなど)
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

セックスレスは、この5番目の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまるかどうかが争点となります。

単に「セックスがない」という事実だけでは不十分で、そのセックスレスが原因で「夫婦関係が修復不可能なほどに壊れてしまった」と裁判所に客観的に認めてもらう必要があります。

セックスレスが原因で離婚を考える夫婦は少なくない

「セックスレスで離婚を考えるなんて、自分だけだろうか…」と不安に思うかもしれませんが、決してそんなことはありません。

令和6年の司法統計によると、離婚した夫婦のうち「性的不調和」が原因で離婚に至っている夫婦の数は以下のようになっています。

  全体件数 性的不調和を理由とするもの
男性 15,396名 1,622名(10.5%)
女性 43,033名 2,862名(6.6%)

性的不調和には、セックスレスのほか、性交渉に関わる価値観の違いやEDをはじめとした性交不能も含まれますが、その数は決して少なくないといえるでしょう。

【参考】令和6年司法統計年報(3 家事編)

裁判でセックスレスが離婚事由として認められる主なケース

相手が離婚に同意せず裁判になった場合、どのような状況であればセックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められるのでしょうか。

ここからは、裁判でセックスレスが離婚事由として認められる主なケースを紹介します。

やむを得ない理由がないのにセックスを拒否し続けた

夫婦間の性交渉は、婚姻生活における基本的な要素の一つとされています。

そのため、心身ともに健康で特別な事情がないにもかかわらず、一方的に性交渉を拒否し続けている場合、法定離婚事由に該当する可能性が高いです。

なお、セックスレスの期間に明確な基準はありませんが、一般的には1年~数年以上が目安とされています。

単に仕事が忙しくて数ヵ月間性交渉がなかった、という程度では離婚事由とは認められにくいでしょう。

子作りを拒否した結果セックスレスになった

子作りを望むパートナーの意思を無視して一方的に性交渉を拒否し続けた場合も、重大な離婚事由と判断されやすいです。

裁判所は、このようなケースを単なる性生活の不満以上に、夫婦としての協力義務に違反する行為と捉える傾向があります。

不倫が原因でセックスレスになった

パートナーが不倫(不貞行為)をしており、その結果として家庭での性交渉がなくなった場合、離婚が認められる可能性が高いです。

そもそも、不倫(不貞行為)は法定離婚事由の一つであり、それだけでも離婚は認められます。

また、不倫の証拠があれば、離婚請求だけでなく、慰謝料の請求においても有利に働く可能性が高いです。

裁判でセックスレスが離婚事由として認められない主なケース

セックスレスであっても、それが離婚理由として法的に認められないケースもあります。

以下では、具体的なケースについて詳しく見ていきましょう。

互いにセックスを望んでいなかった

夫婦がお互いに納得のうえで、性交渉のないプラトニックな関係を築いている場合は、離婚理由にはなりません

夫婦の形はそれぞれであり、双方がその関係に満足しているのであれば、法が介入する問題ではないと判断されます。

原因が自分にある

離婚を請求する側(有責配偶者)に、セックスレスの原因がある場合、原則として離婚請求は認められません

例えば、あなたが不倫をしたり、相手に暴言を吐いたりしたことが原因で、相手が性交渉を拒否するようになったとします。

その状況で、あなたが「セックスレスだから離婚したい」と訴えても、裁判所は「原因を作ったのはあなた自身だ」として、請求を退ける可能性が高いのです。

病気など本人の責任とは言えない理由でセックスを拒否していた

性交渉ができないことに、本人の意思とは関係ない正当な理由がある場合も、離婚は認められにくいです。

具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

  • うつ病などの精神疾患や、ED(勃起不全)といった身体的な病気
  • 妊娠中や出産後の体調不良
  • 高齢により、自然な形で性生活がなくなった場合

これらの理由は本人の責任とはいえないため、これを理由に相手を責め、離婚を強制することは難しいとされています。

セックスレスで婚姻生活が破綻したとは言えない

裁判所は、セックスレスという一つの側面だけでなく、夫婦関係全体を見て「婚姻関係が破綻しているか」を判断します。

たとえ性交渉はなくても、日常的な会話があり、協力して家事や育児をおこない、家族として円満に生活していると見なされれば、「婚姻関係は破綻していない」として離婚が認められない可能性が高いでしょう。

セックスレスの程度が軽い

性交渉の頻度が少ないだけで、まったくないわけではない場合も、離婚理由として認められるのは困難です。

例えば、数ヵ月に一度でも性交渉があるのであれば、それを「婚姻を継続し難い重大な事由」と主張するのは難しいでしょう。

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裁判でセックスレスが離婚事由として認められるには証拠が必要

相手が離婚を拒否し、裁判で争うことになった場合、最も重要になるのが証拠です。

特にセックスレスは、「性交渉がなかった」という証明をしなくてはなりません。

単に「拒否されました」と主張するだけでは、相手に「そんな事実はない」と反論されてしまい、水掛け論になってしまいます。

裁判官を納得させるためには、客観的な証拠を積み重ね、セックスレスによって夫婦関係が修復不可能な状態に陥ったという一貫した主張を展開する必要があります。

具体的には、以下のような証拠が有効です。

日記やメモ いつ、どのように性交渉を求めたか、相手がどのように拒否したか(言動や態度)、その時のあなたの気持ちなどを、日付と共に具体的に記録し続けることが重要です。
日常の出来事も併せて記録すると、あとから作ったものではないと信頼性が高まります。
メールやLINEのやり取り セックスレスについて話し合った内容や、あなたが性交渉を求めたメッセージ、それに対する相手の返信などは、有力な証拠になります。
誤って削除しないよう、スクリーンショットを撮るなどして保存しておきましょう。
会話の録音データ 夫婦でセックスレスについて話し合う際の会話を録音することも非常に有効です。
相手が性交渉を拒否している発言や、セックスレスの事実を認めている発言、謝罪している場面などが記録できれば、決定的な証拠となり得ます。
夫婦の生活時間帯がわかる表 お互いの起床・就寝時間、出勤・帰宅時間などを記録した表も役立ちます。
「仕事が忙しくてすれ違いだった」という相手の言い分に対し、「一緒に過ごす時間はあったのに拒否された」と反論する材料になります。

 

これらの証拠は、単に事実を証明するだけでなく、あなたがどれだけ悩み、関係改善のために努力し、それでも状況が変わらなかったという苦しみの過程を示すものでもあります。

裁判官にあなたの状況を理解してもらうためにも、地道に証拠を集めましょう。

なお、証拠の集め方に不安がある場合は、事前に弁護士に相談するのがおすすめです。

セックスレスで相手に慰謝料の請求は可能?

セックスレスが原因で離婚をする際、相手に対して慰謝料を請求したいと考える方は多いでしょう。

ここからは、セックスレスによる離婚で慰謝料を請求できるケースやその相場について、詳しく解説します。

セックスレスが離婚事由になるようなケースであれば可能

慰謝料とは、相手の不法行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償金です。

そのため、セックスレスが原因で慰謝料を請求できるのは、その原因が相手の一方的な責任にある場合に限られます。

具体的には、「正当な理由なく性交渉を拒否し続けた」「不倫が原因でセックスレスになった」といった、裁判で離婚が認められるようなケースです。

夫婦双方に原因がある場合や、病気などやむを得ない理由の場合は、慰謝料の請求は難しいでしょう。

セックスレスで請求が可能な慰謝料の相場

セックスレスを理由とする慰謝料の相場は、一般的に50万円~300万円程度とされています。

ただし、これはあくまで目安であり、個別の事情によって金額は大きく変動する点に注意が必要です。

慰謝料の金額が高くなる要因としては、具体的に以下のようなものが挙げられます。

  • セックスレスの期間が非常に長い(例:3年以上)
  • 結婚してから一度も性交渉がない
  • 相手が不倫をしている
  • 性交渉を拒否する際の態度が悪質(暴言を吐くなど)
  • あなたが若く、子どもをもつ機会を失った

このように、裁判所は単にセックスレスの期間だけでなく、その背景にある裏切りや不誠実な態度を厳しく評価する傾向があります。

なお、自身のケースでどの程度の慰謝料請求の可能性があるかを知るためには、弁護士に相談するのがおすすめです。

セックスレスで離婚したい場合の切り出し方

セックスレスが理由で「離婚したい」と考えているものの、実際にどう伝えればいいのか迷う方は多いのではないでしょうか。

特に、セックスレスは非常にデリケートな問題で、感情的なぶつかり合いにも発展しやすいため、できるだけ冷静に進める工夫が必要です。

以下では、落ち着いて話し合いを進めるための手順をわかりやすくまとめました。

  1. いきなり「離婚したい」と言わず、まずは関係改善の行動をとる
    離婚の意思を伝える前に、まずはこちらから性交渉を求めてみましょう。
    あとから「あなたから求めてこなかった」と反論されるのを防げるほか、自分が関係改善に前向きだったことを示す意味でも重要です。
  2. 拒否された場合は、感情的に責めず理由を冷静に聞く
    拒否されたときに怒りをぶつけてしまうと、話し合いが進みにくくなります。
    「どうしてそう思うのか」「なぜ応じられないのか」を落ち着いて尋ねてみましょう。
    なお、話し合いの場は、落ち着いて話せる安全な場所を選ぶことが大切です。
  3. 相手を責めず、「私」を主語にした伝え方(Iメッセージ)を使う
    批判的な言い方は相手を防御的にさせ、話がこじれやすくなります。
    「あなたが悪い」「あなたのせい」と言うのは避け、「セックスレスが続き、夫婦としてやっていく自信がなくなっている」といった“自分の気持ち”を主語にして伝えましょう。
  4. 話し合いが成立しない場合は、無理に進めず距離を置く
    相手が怒り出したり、会話にならない場合は、その場での進行は避けましょう。
    当事者同士での話し合いが難しいと感じたら、このタイミングで弁護士に相談するのも一つの選択肢です。

問題を解決することはもちろん、将来的な離婚を目指すためにも、まずは自分が主体となって関係改善の行動をとることが大切です。

その後、話し合いをおこないながら、関係を修復するのか、離婚を目指すのかを見極めてみましょう。

自分たちで話し合うことが難しいとわかったら、弁護士などの専門家を間に入れて手続きを進めることも検討してください。

セックスレスで離婚する場合の流れ

セックスレスを原因に離婚する場合、手続きの流れは大きく以下3つのステップに分かれます。

それぞれの流れについて、詳しく見ていきましょう。

1.夫婦間の話し合いでの離婚を目指す

まずは、夫婦二人で離婚について話し合う「協議離婚」を目指しましょう

協議では、離婚すること自体に加えて、財産分与、子どもがいる場合は親権や養育費、面会交流、そして慰謝料など、決めなければならない条件について話し合います。

合意した内容は、のちのトラブルを防ぐために必ず離婚協議書という書面にまとめましょう

特に金銭の支払いに関する取り決めは、強制執行力をもつ公正証書にしておくことを強くおすすめします。

2.話し合いで合意できなければ家庭裁判所に離婚調停を申し立てる

当事者同士の話し合いでは埒があかない場合、家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てます

調停では、裁判官と民間の調停委員が間に入り、夫婦それぞれの言い分を聞きながら、合意に向けた調整をおこなってくれます。

夫婦が直接顔を合わせずに話を進めることも可能です。

ここで話し合いがまとまれば、調停成立となり、法的な効力をもつ調停調書が作成され、離婚が成立します。

3.調停で合意できなければ家庭裁判所に離婚訴訟を提起する

調停でも合意に至らなかった場合、最終手段として「離婚訴訟」を起こすことになります。

裁判では話し合いではなく、法律と証拠に基づいて、裁判官が離婚を認めるか否か、そして離婚条件が判断されます

セックスレスでの離婚についてよくある質問

最後に、セックスレスでの離婚についてよくある質問を紹介します。

セックスレスで離婚したいと切り出すことが子どもの親権に影響しますか?

セックスレスが原因で離婚したとしても、基本的に子どもの親権には影響しません

親権者を決めるとき、裁判所が最も重視するのは「どちらの親と暮らすことが、子どもの幸せや健やかな成長にとって最も良いか」という点です。

具体的には、これまで主に子どもの面倒を見てきたのはどちらか、子どもへの愛情、経済的な安定性、離婚後の養育環境などを総合的に見て判断されます。

セックスレスで離婚する前に別居したほうがよいですか?

別居は、離婚を有利に進めるうえで有効な戦略となる場合があります。

長期間の別居は、「夫婦関係が客観的に見て破綻している」ことを示す強力な証拠となるからです。

そのため、セックスレス自体の証明が難しい場合でも、長期間の別居を経ていれば、裁判で離婚が認められやすくなるでしょう。

ただし、一つ注意点があります。

別居してしまうと、相手の言動を記録したり、家の中にある証拠を集めたりすることが格段に難しくなります。

もし離婚を視野に入れて別居を考えているなら、その前に弁護士に相談し、必要な証拠を確保しておくことが重要です。

さいごに|セックスレスを理由に離婚をしたい場合は弁護士に相談を!

セックスレスを理由とした離婚は、夫婦の合意があれば可能ですが、相手が拒否した場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」であることを認めてもらう必要があります。

これは決して簡単なことではなく、精神的にも大きな負担がかかります。

今、セックスレスで悩み、離婚を考えているのであれば、一人で抱え込まずに、まずは離婚問題を得意とする弁護士に相談してみてください

弁護士は法律の専門家であると同時に、あなたの味方です。

デリケートな問題であっても、必ず秘密を守ります。

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