妻の不倫を理由に離婚はできる?夫が知っておくべき離婚手続きの種類と具体的な流れ
「妻の不倫が発覚してしまい、どう対応すればよいかわからない…」
このように悩んでいませんか?
突然の事態に戸惑ってしまうのは当然ですが、感情的になってしまうと話し合いがうまく進まず、問題の解決から遠ざかってしまうおそれがあります。
まずは事態を冷静に判断し、適切な対応を進めることが重要です。
本記事では、妻の不倫を理由に夫が請求できる権利や離婚手続きの種類、離婚の具体的な進め方について解説します。
今後の対応を検討するうえでの参考としてください
妻に不倫された!その場合に夫側ができる2つの請求
妻の不倫が発覚した場合、夫は「慰謝料」と「離婚」をそれぞれ請求できます。
以下では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1.慰謝料請求|不倫は不法行為に該当する
不倫は、夫婦が平穏に共同生活を送る権利を侵害するものであり、不法行為に当たります。
そのため、夫は妻と浮気相手の両方に対して慰謝料を請求可能です。
ただし、慰謝料を求めるには、請求する側が不倫を証明しなければなりません。
不倫を証明する代表的な証拠としては、以下のようなものがあります。
- ラブホテルに出入りしている写真や動画
- 親密な内容のメールやSNSでのやり取り
- 宿泊記録やクレジットカードの利用明細
また、以下のようなケースでは、慰謝料請求が認められないおそれがあります。
- 長期間の別居などで、不倫以前から婚姻関係が破綻していた
- 夫の暴力などが原因で妻が不倫に至った
なお、不倫の事実と不倫相手を知ったときから3年、または不倫があったときから20年のいずれか早い期間が経過すると、消滅時効が完成するため慰謝料を請求できません
過去の不倫を理由に慰謝料請求を求めるのであれば、できるだけ早めに対応しましょう。
2.離婚請求|不倫は裁判上の離婚事由に該当する
離婚はまず夫婦間での話し合い(協議)で進めますが、合意できない場合は裁判所に離婚を請求できます。
裁判所は、民法770条で定められた「法定離婚事由」があるかどうかを基準に判断します。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用元:民法|e-GOV 法令検索
「不貞行為」は、このうち「配偶者に不貞な行為があったとき。」に該当するため、妻の不倫が不貞行為と認められれば、裁判で離婚が成立する可能性が高いでしょう。
なお、不倫が不貞行為にあたらなくとも、不倫が原因で夫婦関係が破綻したような場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」として裁判上の離婚原因と認められる可能性があります。
妻の不倫を理由に離婚する場合の3つの手続き
妻の不倫が発覚した際に夫がおこなえる離婚手続きは、主に以下の3つがあります。
- 協議離婚
- 調停離婚
- 裁判離婚
まずは夫婦で話し合う「協議離婚」から始まり、それでも合意できなければ「調停離婚」、最終的には「裁判離婚」へと進むのが一般的な流れです。
ここでは、それぞれの手続きの特徴や進め方について解説します。
1.協議離婚|話し合いで離婚を成立させる
協議離婚とは、夫婦間の話し合いによって離婚に合意し、離婚届を提出する方法です。
離婚全体の約9割は協議離婚で占められており、最も多い形式とされています。
協議離婚をおこなう場合の流れは、以下のとおりです。
- 夫婦間で話し合う
- 慰謝料や財産分与、親権、養育費について合意し、離婚協議書にまとめる
- 離婚届を役所に提出する
協議離婚は、手続きが比較的簡素で、時間やコストを抑えられるメリットがありますが、双方の合意が前提なので、冷静な話し合いができるかどうかがポイントです。
また、口頭での合意だけで進めてしまうと、一方が後日に主張をくつがえすリスクが生じるため、合意内容については文書・証拠をきちんと残すことを心がけましょう。
2.調停離婚|裁判所の調停委員を介して離婚を成立させる
調停離婚とは、夫婦だけで話し合いがまとまらない場合に、家庭裁判所で調停委員を介して話し合いを進める方法です。
調停では、調停委員が当事者双方の言い分を丁寧に聴き取り、意見の食い違いを整理しながら、和解案を提示して調整を図ります。
合意が成立すれば調停成立となり、この時点で離婚も成立します。この場合は、調停調書を受け取ってから所定期間内に離婚届を提出します。
離婚調停は非公開で進められるため、第三者は傍聴できません。そのため、安心して自分の意見や夫婦の状況を伝えられるでしょう。
調停離婚の流れは以下のとおりです。
- 家庭裁判所に調停を申し立てる
- 裁判所で調停委員を交えて話し合いを進める
- 慰謝料・財産分与・親権・養育費などについて合意に達する
- 合意内容が「調停調書」として残され、法的効力を持つ
3.裁判離婚|訴訟を提起して法廷で離婚するかどうか争う
裁判離婚とは、協議や調停でも合意に至らなかった場合に、訴訟を提起して裁判所に判断をゆだねる方法です。
裁判離婚が認められるには、法律で定められた「離婚原因」が必要です。
代表的なものには、不貞行為、悪意の遺棄、相手の3年以上の生死不明などがあります。判決で離婚が認められれば、正式に離婚が成立します。
裁判離婚の流れは、以下のとおりです。
- 家庭裁判所に訴訟を提起する
- 裁判で証拠をもとに主張を整理し、離婚原因の有無を争う
- 判決で離婚が認められれば、離婚が成立する
妻の不倫を理由に離婚する場合の具体的な流れ
不倫が原因で離婚を進める際は、以下のような流れで進めるのがよいでしょう。
- 不倫に関する証拠を集める
- 離婚について相手方に切り出す
- 離婚条件などについて話し合う
- 離婚協議書と離婚届を作成する
ここから、それぞれの段階で意識しておくべきポイントを詳しく解説します。
1.不倫に関する証拠を集める
不倫を理由に慰謝料請求や離婚を進めるためには、客観的な証拠が欠かせません。
証拠がなければ、相手に言い逃れをされてしまい、請求が認められにくくなります。
具体的には、以下のような証拠を集めるようにしましょう。
- ラブホテルに出入りしている写真や動画
- LINEやメールのやりとり
- 不倫相手との宿泊先の領収書やクレジットカード明細
- 探偵の調査報告書
証拠の質と量はその後の交渉力を大きく左右します。
たとえば、単なる食事の写真では不倫の証拠としては弱いですが、肉体関係が疑われる内容のLINEやホテルへの出入り記録などは強い証拠となります。
浮気の証拠について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】【弁護士監修】浮気の証拠になるもの15選!自分で集めるときの注意点も解説
2.離婚について相手方に切り出す
証拠が整ったら、離婚の意思を相手に伝える段階に移ります。
離婚を切り出すときは感情的になりやすいですが、感情にまかせて伝えると話がこじれ、相手の強い反発を招く可能性があります。
冷静に対応するためにも、事前の準備が欠かせません。
- 集めた証拠を整理しておく
- 離婚後の住まいや仕事など生活の見通しを立てる
- 財産の全体像を確認しておく
- 慰謝料・親権・養育費など、自分が希望する条件をまとめる
準備を整えてから相手に伝えることで、感情に左右されずに交渉でき、合意に至りやすくなるでしょう。
3.離婚条件などについて話し合う
協議離婚は「双方の合意」が前提となるため、条件を細かく取り決める必要があります。
とくに、以下の条件についてはしっかりと話し合っておきましょう。
- 慰謝料:配偶者の不倫や暴力などによって精神的苦痛を受けた側が請求できる損害賠償金
- 財産分与:婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を清算・分配する仕組み
- 年金分割:婚姻期間中に一方が厚生年金などに加入していた場合、年金を夫婦間で分割できる制度
- 親権:未成年の子どもの監護や教育、財産管理などを担う権限や義務
- 養育費:離婚後に子どもを監護しない親が、子どもの生活費や教育費を負担する金銭
- 面会交流:親権を持たない親が子どもと直接会ったり連絡を取ったりする制度
条件をあいまいにすると、将来的に再び争いが起きる原因になります。「金額はいくら」「支払い方法はどうするか」といった詳細まで明確にしておくことが大切です。
4.離婚協議書と離婚届を作成する
条件に合意できたら、必ず離婚協議書を作成して合意事項を書面に残しましょう。
単なる口約束では、あとから「そんな約束はしていない」と否定されてしまうおそれがあります。
とくに、金銭に関する取り決めは公正証書にしておくと安心です。
公正証書には「強制執行認諾文言」を付けられるため、仮に養育費や慰謝料の支払いが滞った場合は裁判を経ずに差し押さえが可能です。
離婚協議書を作成したあとは、役所に離婚届を提出しましょう。提出が受理されれば、離婚が成立します。
妻の不倫が原因で離婚する場合の3つの注意点
妻の不倫が原因で離婚する場合でも、以下の3点には注意する必要があります。
- 不倫をされても親権獲得や財産分与で有利になることはない
- 親権を獲得できなかった場合は養育費を支払う必要がある
- 妻が弁護士を立ててきて離婚条件で争ってくることがある
以下では、それぞれの注意点について詳しく解説します。
1.不倫をされても親権獲得や財産分与で有利になることはない
妻が不倫をした場合でも、それだけで夫が親権や財産分与で有利になるわけではありません。
不倫は夫婦間の問題であり、親子関係や財産分与の問題とは切り離して判断されるからです。
親権を決める際には、以下の要素が重視されます。
- 子どもへの愛情と監護実績
- 経済力や生活の安定性
- 離婚後に子育てに割ける時間
- 心身の健康状態
- 子どもの意思
妻がこれまで主に育児を担当していた場合や子どもがまだ幼い場合は、親権が妻に認められる傾向があります。
一方で、妻の不倫が子どもへの虐待や育児放棄につながる場合は、裁判所が親権を夫に認める可能性も十分あるのです。
親権や財産分与は、さまざまな要素をもとに決定される点を理解しておきましょう。
2.親権を獲得できなかった場合は養育費を支払う必要がある
たとえ不倫をした妻が親権を持ち、子どもを育てている場合でも、夫は子どもの養育費を支払わなければなりません。
養育費は子どものために必要で、不倫とは切り離して考えるべきだからです。
養育費の金額は「養育費算定表」を参考に、子どもの人数や年齢、両親の収入などを基準に決定されます。
「不倫を理由に負担を減らしたい」と主張したくなる気持ちはわかりますが、不倫の有無が原因で養育費の相場が変わることはほぼありません。
3.妻が弁護士を立ててきて離婚条件で争ってくることがある
不倫を理由に離婚を求めても、妻が弁護士を依頼して条件交渉をしてくるケースがあります。
相手が弁護士をつけると、以下のような不利益が生じます。
- 相手と直接やり取りできなくなる
- 不利な離婚条件を提示されやすい
- 弁護士からの通知に動揺し、不用意な発言や行動が自分に不利な証拠となるリスクがある
- 相手のペースで話が進みやすい
- 調停や裁判の現状や有利・不利の状況が把握しにくい
- 精神的な負担が増す
妻の弁護人が慰謝料や財産分与で有利な条件を主張してきた場合、十分に反論できなければ、そのまま不利な条件での離婚合意となりかねません。
裁判に進んだ際に、証拠提出や調停対応が遅れると、裁判官に不利な印象を与えるおそれもあります。
そのため、妻に弁護士がついた時点で、こちらも弁護士に相談するのがおすすめです。
専門的な知識をもとに交渉を進められるため、不利な条件での決着を防ぎやすくなります。
さいごに|妻の不倫が発覚した時点で弁護士に一度相談しておこう
本記事では、妻の不倫が発覚した場合に夫ができる請求や、離婚手続きの流れについてまとめました。
妻の不倫が発覚した場合、夫は慰謝料請求や離婚請求をおこなえます。不倫が不貞行為に該当すれば裁判上の離婚事由にも該当するため、裁判離婚も可能です。
ただし、不倫の事実があっただけでは親権や財産分与に有利にはならず、親権を得られなければ養育費の支払い義務も残ります。妻が弁護士を立てた場合、不利な条件で合意してしまうかもしれません。
こうした不利益を避けるためには、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
証拠の整理や慰謝料請求の準備、親権や養育費に関する交渉を専門家の視点から進めてもらえるため、冷静に有利な立場を保ちやすくなります。
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妻の不倫が発覚した時点で、ベンナビ離婚を活用して弁護士に早めに相談し、的確な助言を受けながら対応を進めていきましょう。
