横領してしまったら?今すぐすべき対処と事件化した際の流れについて解説
- 「つい出来心で会社のお金に手を付けてしまった」
- 「返すつもりだったのに、気付いたら使い込んでいた」
このように横領をしてしまった後悔や不安を抱えながら、本記事にたどり着いた方もいるのではないでしょうか。
横領してしまったとき、どのような責任を問われるのか、会社や警察にはどう対応すべきか、何を優先して行動すべきかがわからず、悩む人は多いはずです。
中には、「もう終わりかもしれない」と思いつめてしまう方もいるでしょう。
しかし、事実を正しく理解し、早い段階で適切な対応を取れば、会社との関係修復や刑事責任の軽減が見込める可能性もあります。
この記事では、横領してしまった人が知っておくべきリスクと対処法、刑事事件化した場合の流れや注意点について、わかりやすく解説します。
今後どのように行動すべきかを明確にするために、参考にしてください。
横領してしまった場合に起こり得る3つのリスク
横領が発覚した場合、法的・社会的に重大な影響が及ぶ可能性があります。
ここでは、実際に起こりうる代表的なリスクを3つに分けて解説します。
1.返還請求をされてしまう
横領によって会社に損害を与えた場合、その損失に対して損害賠償請求や不当利得返還請求を受ける可能性があります。
請求額は横領した金額だけに限られず、利息のほか、発覚までにかかった調査費用や弁護士費用が加算されることも珍しくありません。
損害の規模が大きい場合には、支払いが困難となり、会社側が民事訴訟を提起する事態に発展することもあるでしょう。
さらに、財産の差押えを申し立てられるケースもあり、長期間にわたって生活に大きな影響を与えることにもなりかねません。
なお、横領行為によって生じた損害賠償債務は、破産法上の「非免責債権」に該当する場合があり、仮に自己破産を申し立てたとしても、裁判所から免責が認められないことがある点に注意が必要です。
2.会社を解雇されてしまう
横領行為が発覚した場合、就業規則違反に該当し、懲戒処分の対象となる可能性が高くなります。
中でも「懲戒解雇」は、横領のような金銭的犯罪行為に対して適用される最も重い処分です。
懲戒解雇になると退職金の不支給や再就職時に不利に働くなど、社会的信用を大きく損ないます。
また、在職中であっても退職後であっても、社内記録に残ることから、将来的なキャリアに悪影響を及ぼしかねません。
3.警察に被害届を出されてしまう
横領の事実が会社に発覚し、その内容が重大であると判断された場合には、警察へ被害届を提出されることがあります。
特に刑事責任を追及する姿勢が強まるのは、被害額が大きい場合や、組織的・継続的な不正が疑われる場合です。
被害届が受理されると、警察は関係者からの事情聴取をおこない、必要に応じて家宅捜索や資料の押収といった強制捜査をおこなうこともあります。
その結果、刑事事件として立件された場合は、後述のように刑法上の横領罪が適用される可能性が高まります。
横領罪で有罪になった場合は拘禁刑に処される
横領が刑事事件として起訴され、有罪が確定した場合には、拘禁刑などの刑罰が科されるおそれがあります。
刑法では、横領罪について以下のように規定されています。
(横領)
第二百五十二条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
(業務上横領)
第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の拘禁刑に処する。
引用元:刑法|e-GOV法令検索
業務上横領とは、職務上の立場を利用して占有していた財物を不正に処理する行為を指し、通常の横領よりも重い処罰の対象となります。
起訴された場合の有罪率は高く、たとえ初犯であっても執行猶予なしの実刑となる可能性があるため注意が必要です。
【関連記事】横領罪とは|構成要件・罰則・時効・弁償や示談交渉について解説
横領してしまった場合に今すぐ取れる3つの対処法
横領をしてしまった場合は、早急に正しい対応を取れるかどうかが、その後の展開に大きく影響します。
ここでは、刑事手続きや損害賠償といった重大なリスクを少しでも軽減するために、今すぐ取り組むべき3つの行動について解説します。
1.社長や上司などに横領の事実を報告する
まず取り組むべきは、会社の上司や経営者に対し、横領の事実を正直に報告することです。
事実を隠したまま発覚した場合と比較して、自発的に報告した場合のほうが、企業側に与える印象は大きく異なります。
発覚後に否認や言い逃れをしようとすると、悪質性が強調され、刑事告訴や懲戒解雇に至る可能性が高まるでしょう。
反対に、事実を認め、誠意を持って謝罪する姿勢を示すことで、会社側が柔軟な対応を検討する余地が生まれることもあります。
自分から報告するという行為は精神的に大きな負担を伴いますが、適切な初動対応として非常に重要です。
2.発覚前なら補填することも検討する
まだ横領が発覚していない段階であれば、損害を補填するという選択肢があります。
補填とは、会社に与えた損害と同等の金額を自発的に返済することを指します。
ただし、金銭を返したからといって、横領した事実が帳消しになるわけではありません。
帳簿操作などで事実を隠そうとした場合、むしろ隠蔽と判断され、事態がより悪化するおそれがあります。
補填を検討する場合は、誠実な謝罪や説明と併せておこなうことが大切です。
3.刑事事件が得意な弁護士に相談する
横領してしまった場合、早い段階で弁護士に相談することが極めて重要です。
とくに刑事事件に注力している弁護士であれば、示談の進め方や警察・検察への対応方法など、専門的な観点から助言を受けられます。
自力での対応には限界があり、感情的なやり取りや法的な誤解が事態をこじらせる原因になることもあるでしょう。
一方で、弁護士が間に入れば冷静な交渉が可能となり、会社との信頼回復や不起訴処分の可能性を高められるでしょう。
また、弁護士は本人の代理人として警察・検察とも適切に対応できるため、今後の不安を軽減しながら最善の方策を模索することが可能です。
横領してしまったあとの大まかな流れ|刑事事件化した場合
ここからは、横領が発覚したあと、会社がどのような対応を取り、どのようにして刑事事件へ発展していくのかを確認しておきましょう。
1.会社が横領に気付いて調査を始める
横領の発覚は、帳簿の不一致や内部通報、または取引先からの指摘などをきっかけに始まるケースが多く見られます。
不審な点が生じた場合、会社はまず社内で独自の調査をおこない、証拠となる書類や記録を収集しながら、関係者への聞き取りを進めます。
横領をしたと疑われる従業員が在職中であれば、上司や経営者から事情を尋ねられることがあり、対応の仕方によっては後の判断に大きな影響を及ぼす可能性もあります。
一方、すでに退職している場合、在職中の記録をもとに調査がおこなわれ、本人不在のまま警察へ通報されることもあります。
2.会社が警察に対して被害届を提出する
横領の事実が明らかになった場合、会社は刑事責任の追及を目的として、警察に被害届を提出することがあります。
民事ではなく刑事手続に進む判断が下されやすいのは、損害額が大きい場合や悪質性が高いと判断された場合です。
被害届が受理されると、警察は正式に捜査を開始し、対象者の行動履歴や関係資料の精査をおこないます。
なお、この時点で会社との直接交渉は難しくなり、これ以降は捜査機関とのやり取りが中心になります。
3.場合によっては警察に逮捕されてしまう
警察が捜査を進める中で、証拠が十分にそろったと判断された場合には、逮捕に踏み切られることがあります。
ただし、全ての横領事件で必ずしも逮捕されるわけではありません。
逮捕は、証拠の有無や逃亡・隠蔽の可能性があるかどうかによって判断されます。
初犯でも逮捕されることがあるのは、特に被害額が高額な場合や、業務上の立場を利用した横領など悪質性が高いと判断された場合です。
逮捕後は、警察署での取調べがおこなわれ、48時間以内に事件が検察へ送致されます。
その後、検察が裁判所に勾留を請求すると、最長で20日間ほど身柄を拘束されたまま取調べが続けられることがあります。
4.検察が起訴するかどうかの判断をおこなう
警察での取調べが終わると、事件は検察庁へ送致され、検察官が起訴するかどうかを判断します。
この段階で検討されるのは、収集された証拠や供述内容、被害者との示談状況などです。
もし検察官が「証拠が十分である」と判断した場合は起訴され、刑事裁判へ進むことになります。
一方で、反省の姿勢や被害弁償の有無、示談成立によって被害者が処罰を望んでいないといった事情が考慮されれば、不起訴処分となる可能性もあります。
5.起訴された場合は刑事裁判がおこなわれる
検察官が起訴を決定すると、刑事裁判が開かれます。
裁判では、検察官が提出する証拠や被害者の供述をもとに事実関係が確認され、被告人側は反省や更生の意思、示談の有無などを訴えます。
横領罪の刑罰は、通常の横領で「5年以下の拘禁刑」、業務上横領の場合は「10年以下の拘禁刑」ですが、量刑を決定する際には、被害額の大きさ、犯行の悪質性、反省の度合い、再犯防止の見込みなどが重視されます。
初犯であっても、被害額が高額または長期間にわたる場合は実刑判決を受ける可能性がある点に注意しましょう。
横領してしまった場合に知っておくべき3つの注意点
横領が発覚したあとの対応を誤ると、刑事処分の重さや社会的影響がさらに大きくなるおそれがあります。
ここでは、再発防止や被害拡大の防止という観点から、注意しておくべき3つのポイントを解説します。
1.常習犯になってしまうケースも少なくない
横領は一度でも成功すると「今回だけ」と思いながら繰り返してしまう傾向があります。
最初は少額だったとしても、罪悪感が薄れ、次第に金額が大きくなるケースも少なくありません。
このような常習化は、最終的に高額な被害を生み出し、刑罰が重くなる要因となります。
実際の裁判例でも、少額の横領を繰り返していた事例が「業務上横領罪」として起訴され、実刑判決に至ったケースがあります。
「もう二度としない」という強い意志を持ち、早い段階で専門家に相談することが重要です。
2.「元に戻せばいい」というわけではない
横領によって得た金銭を返済しても、刑事責任がなくなるわけではありません。
被害金を返したとしても、犯罪そのものは成立しており、返済はあくまで情状の一つとして評価されるにすぎません。
また、発覚をおそれて帳簿操作などで「こっそり穴埋め」しようとすると、隠蔽行為とみなされ、かえって悪質と判断されることもあります。
返済行為は反省の証として評価されますが、「返せば罪が消える」という認識は危険です。
3.家族などにも迷惑がかかる可能性がある
横領事件は、加害者本人だけでなく、その家族や周囲の人にも影響を与えます。
逮捕や起訴によって実名報道がおこなわれると、家族が社会的な偏見や精神的負担を強いられることもあるでしょう。
また、身元保証人がいる場合には、損害賠償の一部を請求されるケースもあります。
本人の行為によって、家族の生活や信用が傷つく可能性があることを十分に認識し、早い段階で誠実な対応を取ることが大切です。
さいごに|横領してしまった場合はいち早く弁護士に相談しよう
横領をしてしまったとき、最も重要なのは早い段階で適切な対応を取ることです。
放置すれば、警察への被害届提出や刑事事件化のリスクが高まり、取り返しのつかない状況に陥るおそれがあります。
刑事事件の経験がある弁護士に相談すれば、会社との示談交渉や被害弁償の方法、警察対応の進め方などを具体的にアドバイスしてもらうことが可能です。
弁護士が介入することで、会社との感情的な衝突を避け、冷静な交渉を進められることも大きな利点です。
また、弁護士が代理人として行動することで、被害届の取り下げや不起訴処分につながる可能性もあります。
早期に相談するほど選択肢は広がるため、迷っている間にも時間を無駄にしないことが大切です。
横領という行為は重大な過ちですが、真摯な反省と行動次第で再出発の道を切り開くことはできます。
現状を直視し、信頼できる弁護士とともに、できる限り早く問題解決に向けた一歩を踏み出しましょう。
