養育費を支払っている場合に確定申告は必要?扶養控除で得するためのポイントを解説
- 「養育費を支払っている場合、確定申告が必要になるのか」
- 「扶養控除を利用する場合に注意すべきことは何か」
養育費や扶養控除のルールがよくわからず、このような疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
養育費は基本的に非課税です。
所得にも贈与にもならないため、支払う側も受け取る側も養育費のためだけに確定申告をする必要はありません。
ただし、扶養控除を利用する場合は、確定申告の際に自ら申告する必要があります。
本記事では、養育費を支払っている場合の確定申告の要不要や扶養控除で得するためのポイントを解説します。
手続きに不安がある方は、ぜひ最後まで参考にしてください。
養育費は基本的に非課税!所得にも贈与にもならない
養育費は、支払う側・受け取る側のどちらも原則として非課税です。
所得税法第9条では、学資や扶養義務を果たすことを目的として給付される金品には税金がかからないとされています。
また、相続税法第21条でも、生活費または教育費に充てるために贈与された財産のうち、通常必要と認められるものについては贈与税の課税対象外と定められています。
そのため、通常必要と認められる範囲で生活費・教育費として使っているなら、課税されることはありません。
基本的に支払う側も受け取る側も確定申告の必要はない
基本的に、養育費を支払う側も受け取る側も、養育費のためだけに確定申告をする必要はありません。
確定申告が必要かどうかは、事業所得や不動産所得があるなど、ほかの収入状況だけで判断します。
給与所得が1ヵ所のみで年末調整が済んでおり、副業収入などほかの収入がないなら、養育費の有無にかかわらず確定申告をおこなう必要はありません。
一方、副業や事業による所得が一定額を超える場合は、その所得を申告するために確定申告が必要になることがありますが、それでも養育費そのものの申告は不要です。
なお、養育費を支払う側も受け取る側も、一定の要件を満たせば扶養控除を利用できる可能性があります。
扶養控除を適用する場合は、年末調整やほかの収入を確定申告する際に、扶養控除を含めておこなわなければなりません。
養育費が扶養控除の対象になる場合は確定申告をするべき
扶養控除を適用するには、年末調整や確定申告の際に自ら申告しなければなりません。
要件を満たす場合でも、自動的には適用されないためです。
扶養控除とは、子どもや親を扶養している人が受けられる所得控除で、適用されると所得税や住民税の負担を減らすことができます。
会社員であれば勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出し、個人事業主やフリーランスであれば毎年の確定申告書に扶養控除の記載をすることが必要です。
扶養控除を利用する場合は、以下の流れで手続きを進めます。
- 扶養控除の対象になるかを確認する
- 自分で確定申告が必要かを判断する
- 元配偶者と扶養控除の調整をおこなう
- 翌年、扶養控除を含めて確定申告をする
なお、養育費を支払う側も受け取る側も一定の要件を満たせば扶養控除を適用できる可能性がありますが、ひとりの子どもについて二重には適用できません。
つまり、どちらか一方しか適用できない点に注意が必要です。
以下では、それぞれのステップについて見ていきましょう。
1.扶養控除の対象になるかを確認する
まずは、扶養控除の対象になるか確認しましょう。
扶養控除を受けられるかどうかは、子どもが以下の要件を満たしているかで決まります。
- その年の年末時点で16歳以上
- 年間の合計所得金額が58万円以下(給与のみなら給与収入123万円以下)
- 納税者と生計をともにしている
- 青色申告・白色申告の事業専従者に該当しない
年間の合計所得金額については、令和7年分からは上記の金額になりますが、令和6年までは48万円以下・給与のみなら103万円以下です。
なお、子どもと離れて暮らしている場合でも、養育費を継続的に送金していれば「生計をともにしている」と認められやすく、扶養控除の対象になり得ます。
ただし、子どものアルバイトの収入が多いときや、納税者が事業を営んでおり子どもが事業専従者として給与を受け取っている場合などは要件を満たさなくなるため、事前に収入状況を確認しておきましょう。
扶養控除の詳細な要件については、国税庁のホームページを参考にしてください。
2.自分で確定申告が必要かを判断する
扶養控除の対象となる子どもがいても、自分で確定申告をする必要があるかは納税者の立場によって異なります。
勤務先で年末調整を受けている会社員は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に子どもの情報を記入すれば確定申告の必要はありません。
一方、個人事業主やフリーランスなど年末調整の対象にならない方は、もともと事業所得の申告のために確定申告をおこなう必要があり、その際に扶養控除もあわせて申告します。
ただし、会社員でも以下に該当するときは確定申告が必要になる可能性があります。
- 給与収入が2,000万円を超える
- 2ヵ所以上から給与を受け、年末調整されない給与とほかの所得の合計が20万円を超える
- 副業などの給与・退職所得以外の所得合計が20万円を超える
- 医療費控除やふるさと納税の控除(ワンストップ特例を使わない場合)を受けたい
確定申告が必要かどうか判断に迷う場合は、最寄りの税務署や国税庁の電話相談センター(0570-00-5901)で相談が可能です。
複雑なケースや節税も含めたアドバイスが必要なら、税理士への相談も検討しましょう。
3.元配偶者と扶養控除の調整をおこなう
扶養控除は、父母のうちどちらか片方しか適用できません。
そのため、子どもをどちらの扶養に入れるかについて、養育費の負担状況や双方の収入状況を踏まえたうえで元配偶者と話し合う必要があります。
話し合いをせず双方が扶養控除を申告してしまうと、税務署から修正を求められたり追加の税負担が発生したりするおそれがあります。
どちらが扶養控除を適用したほうが節税効果が高いか、というような税務面の判断については、税理士への相談が有効です。
4.翌年、扶養控除を含めて確定申告をする
扶養控除を適用することが決まったら、翌年の年末調整または確定申告で、実際に扶養控除を含めて手続きします。
会社員の場合は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に子どもに関する以下の情報を記入し、勤務先に提出します。
- 氏名
- 生年月日
- マイナンバー
- 所得見積額
申告書は多くの場合勤務先から配布されます。
近年では社内の人事システムや電子申告に対応したツールを利用して、オンラインで提出できる企業も増えているので、どのように取得できるかは勤務先に確認しましょう。
なお、勤務先で配布されない、紛失したというときは、国税庁のホームページで様式のダウンロードが可能です。
確定申告をおこなう場合は、以下の箇所に必要事項を記載します。
- 第一表の「所得から差し引かれる金額」:扶養控除額(合計)
- 第二表の「配偶者や親族に関する事項」:子どもの情報
子どもの情報とは、氏名や続柄、生年月日、マイナンバーを指します。
確定申告書の書き方がわからない場合は、確定申告時期に開設される税務署の確定申告会場や最寄りの税務署窓口に相談しましょう。
そのほか、税理士に相談して申告内容を確認してもらう方法もあります。
元配偶者と扶養控除について揉めた場合の3つのポイント
元配偶者とどちらが扶養控除を適用するかで揉めたときは、以下の3つの方法で対処しましょう。
- 親権への影響はないことを説明する
- 養育費を上乗せすることを交渉する
- 離婚問題が得意な弁護士に相談する
元配偶者が扶養控除を譲ろうとしない背景には、「親権を取られるのでは」「自分が損をしてしまう」という思いがあると考えられます。
まずは相手の不安を解消し、お互いのメリットを整理したうえで話し合いを進めましょう。
話し合いがまとまらない場合は、弁護士への相談がおすすめです。
なお、扶養控除をどちらが適用するかは、できれば離婚前の協議や調停の段階で決めておくことが望ましいといえます。
離婚後に話し合うと争いが再燃しやすく、調整が難航する可能性があるためです。
協議離婚で公正証書を作成する場合は、その中に扶養控除についての取り決めを記載しておくとトラブルを防ぎやすいでしょう。
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
1.親権への影響はないことを説明する
養育費を支払っている側が扶養控除を適用したい場合、受け取っている側に対して親権への影響がないことを説明しましょう。
子どもの扶養親族として扶養控除を適用すると聞くと、相手は「子どもを取られるのでは」「親権を奪われるのでは」と不安を感じることがあります。
扶養控除はあくまで税法上の制度であり、どちらの親が利用しようが親権や監護権には一切影響しません。
別居親が扶養控除を適用しても、同居親が子どもの親権者であることや日常生活に変化はないことを丁寧に伝えることが大切です。
2.養育費を上乗せすることを交渉する
養育費を受け取っている側が「扶養控除を受けたい」と考えているなら、扶養控除によって手取りが増えた分、養育費に上乗せすることを提案するのもひとつの手段です。
実際にどの程度税負担が軽くなるかは所得によって異なりますが、例えば扶養控除で年間20万円の税負担が軽くなる場合、毎月の養育費を1万円増額しても結果的にプラスになるため双方にメリットがあります。
このように、節税効果の一部を養育費として還元することで、相手が前向きに検討してくれる可能性が高まります。
3.離婚問題が得意な弁護士に相談する
話し合いがまとまらないときや話し合い自体が難しいときは、弁護士への相談を検討しましょう。
離婚問題が得意な弁護士であれば、相手との交渉を一任できるほか、どちらが扶養控除を使うべきか、養育費をどのように調整すればよいかといったアドバイスももらえます。
また、専門知識をもつ第三者が間に入ることで、感情的になるのを避けながら冷静に話を進めやすくなるでしょう。
養育費を支払う側が扶養控除を利用するにあたっての注意点
養育費を支払っているからといって、必ずしも扶養控除を受けられるわけではありません。
支払い方法によっては、扶養控除が認められない場合があります。
また、申告の仕方次第では、税務署から追徴課税を受けることもあるため注意しましょう。
ここでは、扶養控除を利用する前に知っておくべき注意点について解説します。
1.一括払いだと扶養控除は認められない可能性がある
養育費を一括で支払った場合、原則として扶養控除は認められない可能性があります。
扶養控除は、子どもを日常的に扶養していることを前提とした制度であるためです。
一括払いをすると、税務上はまとまった金銭を渡しただけという扱いになり、継続的な扶養関係があるとは判断されにくくなります。
扶養控除を受けたいなら、月に1回など定期的に養育費を送金する必要があります。
すでに一括で支払ってしまった場合は、扶養控除の適用は難しいと考えておきましょう。
なお、信託契約など特別な方法で養育費を管理する方法もありますが、扱いが複雑であるため、検討するときは信託銀行や弁護士、税理士などの専門家に相談してください。
2.夫婦で重複していた場合は追徴課税のリスクがある
元配偶者と話し合わず、双方が同じ子どもを扶養親族として申告してしまうと、税務署から重複を指摘され、どちらか一方が追徴課税を受ける可能性があります。
扶養控除は、ひとりの子どもに対してひとりの納税者にしか適用されず、重複申告があるとどちらかの納税が過少申告と判断されるためです。
重複申告があると、税務署から事実関係の確認や修正を求められ、どちらか一方が修正申告となる可能性があります。
このとき、扶養控除を適用できなかった側には、不足していた税額に加えて延滞税などが課されるおそれがある点に注意しましょう。
追徴課税に納得できないときは、税務署長への異議申立てが可能です。
それでも認められなければ国税不服審判所への審査請求、さらに裁判所への税務訴訟と手続きを進められます。
ただし時間も費用もかかるため、事前に元配偶者と話し合い、どちらが扶養控除を利用するかを明確にしておきましょう。
話し合いが難しければ、重複申告をしてしまう前に弁護士に相談することをおすすめします。
さいごに|養育費を支払っていると扶養控除を利用できる可能性がある!
養育費を支払っている場合の確定申告の要不要や、扶養控除で得するポイントを解説しました。
養育費は原則として非課税になるため、支払う側も受け取る側も、養育費を理由に確定申告をする必要はありません。
一定の要件を満たす子どもがいる場合は、養育費を支払う側・受け取る側のどちらか一方が扶養控除を利用でき、年末調整や確定申告で申告すれば税負担が軽減されます。
ただし扶養控除は、ひとりの子どもに対して二重に申告してしまうと追徴課税のリスクがあります。
そのため、扶養控除を利用する際は事前に元配偶者と話し合い、どちらが扶養控除を利用するかを決めておきましょう。
自分たちでの判断が難しいときは、税理士に相談・依頼することも検討してください。
