共有物分割請求とは?財産分与との違いや方法を解説
- 「共有名義の不動産を解消したいが、どうすればよいのかわからない」
- 「共有物分割請求とはどのような手続きなのか」
このように悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
共有物分割請求とは、共有状態にある不動産を解消するために、各共有者が単独で行える法的な手続きです。
一方で、離婚時には「財産分与」という制度も関係するため、それぞれの違いを正しく理解しておくことが重要になります。
本記事では、共有物分割請求の基本的な仕組みや具体的な方法を解説するとともに、財産分与との違いもわかりやすく整理します。
共有不動産の扱いで後悔しないために、ぜひ参考にしてください。
共有物分割請求とは?財産分与とは何が違うの?
まずは、共有物分割請求の基本事項や財産分与との違いについて解説します。
1.共有物分割請求|共有不動産を分割する手続きのこと
不動産に限らず、共有物の各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます。これを、共有物分割請求と呼びます。
(共有物の分割請求)
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。
引用元:民法|e-Gov法令検索
共有者は、自分の共有持分に応じて共有物を使用できるに過ぎません。
たとえば、共有物を売却したり不動産を大規模リフォームしたりするには、自分以外のほかの共有者全員の同意が必要です。
また、共有物を管理するだけでも、その都度、ほかの共有者と協議をする手間を強いられます。
このように、共有関係に組み込まれると、せっかく共有持分を有しているのに、共有物について権利を行使するためにさまざまな制約を強いられるのが実情です。
共有物分割請求は、このような共有関係からの離脱を目的とした権利といえるでしょう。
2.財産分与|婚姻中に築いた財産を公平に分ける手続きのこと
財産分与とは、離婚時に、夫婦の共有財産を公平に分配する制度のことです。
(財産分与)
第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
引用元:民法|e-Gov法令検索
たとえば、預貯金やマイホーム、自動車など、婚姻期間中に夫婦が共同して形成した財産がある場合には、離婚手続きにおいて、どの財産をどちらがどのような割合で受け取るのかについて話し合いをおこないます。
財産分与の割合などについて夫婦間の話し合いがまとまらないときには、調停や審判、裁判によって解決を目指します。
離婚後に不動産の共有物分割請求をおこなうための3つの条件
離婚が成立したあとに、夫婦共有名義状態の不動産の共有物分割請求をするための条件を3つ紹介します。
- 不動産が共有状態になっていること
- まずは協議によって共有物分割請求をすること
- 共有物分割禁止に関する特約が存在しないこと
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
1.不動産が共有状態になっていること
共有物分割請求は、共有状態が生じているときだけ行使できる権利です。
つまり、夫婦の不動産について共有物分割請求を行使するには、不動産が夫婦の共有名義になっている必要があります。
2.まずは協議をおこなうこと
不動産の共有物分割請求手続きは、いきなり裁判所に申し立てをするのではなく、最初に当事者間での協議が必要です。
実際、民法第258条第1項では以下のような規定が置かれています。
(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
引用元:民法|e-Gov法令検索
つまり、裁判所に共有物分割請求を申し立てることができるのは、共有物の分割について共有者である夫婦間での話し合いがまとまらないときや、関係が悪化したりDVのリスクに晒されていたりして協議自体が不可能なときにのみです。
裁判所への共有物分割請求の申し立てを検討しているなら、まずは、夫婦間で不動産の取り扱いをどうするかについて話し合いの機会を設けるようにしてください。
3.共有物分割禁止に関する特約がないこと
共有物については、5年を超えない期間を指定して、分割禁止特約を付することができます。
(共有物の分割請求)
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。
引用元:民法|e-Gov法令検索
そのため、夫婦で共有している不動産について、共有物分割禁止特約が定められている場合には、共有物分割請求をすることはできません。
共有物分割請求権を行使できるのは、共有物分割禁止特約が存在しないときに限られます。
離婚後に不動産の共有物分割請求をおこなう場合の3つの手段
離婚が成立したあと、不動産の共有物分割請求をするときの流れを紹介します。
- 当事者間で共有物分割について話し合う
- 共有物分割調停を申し立てる
- 共有物分割訴訟を提起する
それぞれの流れについて、詳しく見ていきましょう。
1.協議|当事者同士で話し合いをおこなう
まずは、元配偶者との間で、不動産の分割方法などについて話し合いをおこないます。
当事者間で話し合う方法や期間などについて、決まりはありません。
共有物分割請求をして、元配偶者との間で合意に至った場合には、合意どおりに不動産を分割します。
共有物分割に関する合意は口頭でも成立しますが、相手方が約束を破ったときに備えて、合意内容を文書化しておくのがおすすめです。
2.調停|裁判所の調停委員を交えて話し合う
元配偶者との間の直接的な話し合いで共有物分割について合意に至らない場合には、共有物分割調停を利用するのも選択肢のひとつです。
共有物分割調停は、家庭裁判所の調停委員が当事者の話し合いを仲介してくれる手続きのことです。
元夫婦それぞれの意見を聴取したり、提出された証拠を確認したりしながら、和解契約締結を目指してサポートをしてくれます。
調停手続きを経て元夫婦間で合意形成に至った場合には、調停調書が作成されて、その内容通りに共有物が分割されます。
一方、調停手続きを経ても合意に至らないときには、共有物分割訴訟を提起して終局的解決を目指します。
3.訴訟|法廷で争って裁判所に判断してもらう
共有物分割訴訟には調停前置主義が適用されないので、共有物分割請求をする際には、調停を省略して共有物分割訴訟を提起することができます。
共有物分割訴訟を提起すると、複数回の口頭弁論期日を経て、裁判所が共有物分割について判決を下します。
なお、裁判所は以下のうちのいずれかの方法での分割を命じます。
- 現物分割:共有物を物理的に分割して共有者それぞれに単独所有させる方法
- 代償分割:共有者のひとりが共有物を取得する代わりに、ほかの共有者に代償金を支払わせる方法
- 代金分割:共有物を売却して得られた代金を共有者に分配する方法
離婚後に共有物分割請求をおこなう場合の3つの注意点
さいごに、離婚成立後に共有物分割請求をおこなうときの注意点を3つ紹介します。
- 共有物分割請求は解決までに時間を要する可能性が高い
- 希望通りの結果を得られない可能性がある
- 共有物分割請求が権利濫用に該当すると判断されると主張が認められない
それぞれの注意点について、詳しく見ていきましょう。
1.手続きが長引く可能性が高い
共有物分割請求をして当事者間で話し合いがまとまれば、紛争はすぐに終結します。
しかし、離婚が成立したあとの元夫婦間で冷静に建設的な話し合いをするのは簡単ではありません。
離婚原因次第では、相手方と連絡をとったり顔を合わせたりするのも難しい可能性があります。
すると、共有物分割請求をしようとしても、結局は、共有物分割調停や共有物分割訴訟を提起せざるを得ないのが実情です。
もし共有物分割訴訟を提起する事態に発展すると、1ヵ月に1回の頻度でおこなわれる口頭弁論期日を何度も繰り返さなければ判決に至らないので、紛争解決まで年単位の期間を要しかねないでしょう。
2.希望通りの結果にならない可能性がある
共有物分割請求をしても、希望どおりの結果が得られるとは限りません。
たとえば、相手方の共有持分を引き取る目的で共有物分割訴訟を提起したとしても、裁判所が代金分割の判決を下すと、不動産を手放さなければいけなくなります。
希望どおりの結果を得るには、共有物分割協議・共有物分割調停の段階でこちらの意見を受け入れてもらえるように相手方と交渉を進めるしかないので、できるだけ早いタイミングで弁護士に依頼をし、代理人として交渉に対応してもらうべきでしょう。
3.権利濫用に該当した場合には認められない
共有物分割請求が権利濫用に該当する場合には、主張が認められません。
たとえば、共有物分割請求によって相手方が不動産を失うだけなら、権利濫用には該当せず、正当な共有物分割請求権の行使だと認められるのが一般的です。
一方、親権を獲得した元配偶者である妻が怪我や病気で働くことができず、不動産が手元になければ経済的に困窮するのが明らかな状況なら、夫側から元妻側に対する共有物分割請求は権利濫用に該当すると判断される可能性があります。
なお、権利濫用への該当性は、個別事情を総合的に考慮して判断されます。
権利濫用の主張をされる可能性がある場合や、相手方からの共有物分割請求が権利濫用に当たりそうな場合には、速やかに弁護士まで相談しましょう。
さいごに|離婚後の共有物分割請求のことなら弁護士に相談を!
夫婦のペアローンで購入したマイホームが残っている状況で離婚を考えていたり、すでに離婚が成立していたりする場合には、できるだけ早いタイミングで離婚問題に強い弁護士に相談・依頼をしてください。
弁護士に相談・依頼をすれば、離婚協議や共有物分割協議のなかで依頼者の意向を最大限実現できるように交渉を進めてくれます。
また、万が一調停や訴訟に至ったとしても、裁判所の手続きを代理してくれるので、依頼者は手続き対応の負担を感じることなく、有利な結果を得やすくなるでしょう。
ベンナビ離婚では、夫婦間の共有物分割請求などの離婚トラブルへの対応が得意な弁護士を多数紹介中です。
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