弁護士への着手金は後払いできる?対応してもらいやすい場合と注意点
- 「今すぐ弁護士に依頼したいけど、まとまったお金を用意できない」
- 「せめて最初に支払う着手金を後払いできれば…」
弁護士費用は依頼内容によっては高額になる場合もあり、上記のように困っている方もいるでしょう。
弁護士費用のうち着手金については、後払いに応じてくれる場合もあります。
弁護士費用を準備できないからといってすぐに諦める必要はありませんので、自分の場合は後払いができそうかどうか本記事で確認しておきましょう。
本記事では、弁護士への着手金の後払いが認められやすいケースや、後払い以外に弁護士費用の負担を抑える方法、依頼内容ごとの着手金相場などを解説します。
【結論】着手金が後払いできるかどうかは弁護士次第
結論として、着手金が後払いできるかどうかは弁護士次第です。
まずは、着手金の支払い方法について解説します。
着手金の後払いを認めてくれる弁護士もいる
着手金は、弁護士にトラブル解決などを依頼する際に一括で支払うのが原則です。
ただし、なかには支払い方法が柔軟なところもあり、依頼時ではなく案件終了時に報酬金などと一緒に請求してくれる場合もあります。
基本的な手続きの流れとしては、弁護士に着手金の準備が難しいことを伝えて後払いの交渉をおこない、弁護士が認めてくれれば契約を結んだのち対応してもらうことになります。
着手金の後払いに対応しているかどうかは、各事務所ホームページで確認できます。
なお、なかにはホームページ上に記載がなくても対応してくれる場合もあるため、記載がない場合でも一度直接確認してみることをおすすめします。
着手金を後払いにすると費用総額が高くなるおそれがある
着手金を後払いにしてもらう際の注意点として、弁護士費用の総額が高くなるおそれがあります。
料金体系は法律事務所によってバラつきがあり、後払いに応じる代わりに費用総額を高めに設定しているところもあります。
多くの法律事務所では依頼前に見積もりを出してくれるため、着手金を後払いにしてもらう際はおおよその費用総額を確認したうえで契約することをおすすめします。
着手金とは
着手金とは弁護士費用のひとつで、弁護士にトラブル解決などを依頼する際に支払う費用です。
依頼結果に関係なく発生するため、たとえ思うような結果にならなかったとしても基本的に返金されません。
依頼内容によって金額は大きく変動し、詳しくは「【ケース別】着手金の相場」で後述します。
なお、法律トラブルを弁護士に相談・依頼する際は、着手金のほかに相談料・報酬金・実費・日当などの費用もかかります。
ここでは、法律トラブルでかかる弁護士費用の内訳や相場について解説します。
1.相談料|1時間あたり5,000円~1万円程度
相談料とは、法律トラブルについて弁護士に相談する際にかかる費用のことです。
基本的にはタイムチャージ制となっており、1時間あたり5,000円~1万円程度かかるのが一般的です。
なお、法律事務所の中には「初回相談は無料」「何度でも相談無料」というようなところもあります。
2.報酬金|依頼状況によって異なる
報酬金とは、弁護士のサポートによって問題解決した場合にかかる費用のことです。
依頼状況によって金額は大きく変動し、法律事務所によっても料金体系は異なります。
なお、着手金とは違って案件処理が成功した場合のみ発生するため、失敗に終わった場合は報酬金は発生しません。
ただし、成功の定義は法律事務所によって異なることもあり、「どのような状況であれば報酬金が発生するのか」を確認したうえで依頼することをおすすめします。
3.実費|数千円~数万円程度
実費とは、弁護士が案件処理する際にかかった費用のことです。
具体的には以下のようなものが該当します。
- 交通費
- 宿泊費
- 通信費
- 郵送費
- コピー代
- 必要書類の取得費用 など
依頼状況によっても金額は変動しますが、数千円~数万円程度かかるのが一般的です。
支払うタイミングは法律事務所によって異なり、報酬金と一緒にまとめて後日請求されることが多いものの、なかには都度請求されたり前払いとしていたりするところもあります。
4.日当|3万円~10万円程度
日当とは、弁護士が案件処理のために法律事務所を離れる場合にかかる費用のことです。
たとえば、トラブル相手との交渉・裁判所への出廷・警察署への接見などを依頼するようなケースでは、日当が発生する可能性があります。
弁護士の拘束時間によって金額は変動し、半日程度のケースでは3万円~5万円程度、1日のケースでは5万円~10万円程度かかるのが一般的です。
【関連記事】【分野別】弁護士費用の相場はいくら?安く抑える方法・払えない場合の対処法を解説
弁護士への着手金の後払いが認められやすい3つのケース
着手金の後払いは必ずしも認められるわけではありませんが、以下のような状況であれば認められやすい傾向にあります。
- 経済的利益を得られる可能性が高い場合
- 依頼者側に特別な事情がある場合
- 依頼者と弁護士に信頼関係がある場合
ここでは、弁護士への着手金の後払いが認められやすいケースについて解説します。
1.経済的利益を得られる可能性が高い場合
まず一つ目として、経済的利益の獲得が望める状況であれば弁護士費用の回収が見込めるため、着手金の後払いに対応してくれる可能性があります。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 賃金業者に対する過払い金請求
- 企業に対する未払い賃金や残業代の請求
- 十分な証拠が揃っている状態での損害賠償請求
- 交通事故加害者が加入している任意保険会社との示談交渉
- 多額の遺産が残っている状態での遺産分割協議調停・審判 など
2.依頼者側に特別な事情がある場合
次に、依頼者が厳しい状況にあって弁護士のサポートを求めているようなケースでも、弁護士が配慮して着手金の後払いに対応してくれる可能性があります。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 自分が一人で高齢の親を世話しており、ほかの親族は一切サポートしてくれない
- 配偶者によるDVなどの被害に耐え切れず、何も持たない状態で家を出てしまった
- 病気やけがによって働くことができない状態で、予期せぬトラブルに遭ってしまった など
3.依頼者と弁護士に信頼関係がある場合
ほかにも、すでに弁護士と一定の信頼関係が築けているようなケースでも、弁護士が融通を効かせて着手金の後払いに対応してくれる可能性があります。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 過去にも法律トラブルの解決を依頼しており、トラブルなく支払いを済ませている
- 弁護士と友人関係にある、または親族や知人から紹介を受けた弁護士である
- 顧問契約を結んでおり、日常的に相談に乗ってもらっている など
着手金の後払い以外に弁護士費用の負担を抑える3つの方法
弁護士が着手金の後払いに応じてくれずに弁護士費用の準備が厳しい場合は、以下のような方法を検討しましょう。
- 法テラスの民事法律扶助制度を利用する
- 分割払いができないか相談する
- 交通事故の場合は弁護士費用特約を利用する
ここでは、着手金の後払い以外に弁護士費用の負担を抑える方法について解説します。
1.法テラスの民事法律扶助制度を利用する
弁護士費用の準備が厳しい場合は、法テラスの民事法律扶助制度が有効です。
法テラスとは、法律トラブルの解決をサポートしてくれる公的機関のことです。
法テラスでは、経済的事情で弁護士費用を支払えない方に向けて「民事法律扶助制度」というサポートを提供しています。
具体的には「弁護士との無料法律相談」や「弁護士費用の一時立替え」などを実施しており、すぐに着手金を支払えない場合でも速やかに弁護士のサポートが受けられます。
ただし、民事法律扶助制度には資力要件や収入要件などが定められており、具体的な利用条件や手続きの流れなどについては以下の記事をご覧ください。
【関連記事】法テラスの利用条件とは?3つの主なサービスごとに何を満たす必要があるのか解説
2.分割払いができないか相談する
着手金の後払いに応じてくれない場合、分割払いができないか相談するのも有効です。
法律事務所の中には、弁護士費用の分割払いに対応しているところもあります。
基本的な手続きの流れは後払いの場合と同様で、弁護士費用の準備が厳しいことを伝えて交渉をおこない、弁護士が認めてくれれば契約を結んだのち対応してもらうことになります。
3.交通事故の場合は弁護士費用特約を利用する
交通事故トラブルの場合は、弁護士費用特約を利用するのが効果的です。
弁護士費用特約とは自動車保険のオプションのひとつで、加入先保険会社が弁護士費用を一定額負担してくれるというものです。
具体的な補償内容は保険会社によっても異なりますが、最大300万円まで弁護士費用を負担してくれるところが多く、自己負担0円で済むケースもあります。
また、弁護士費用特約の補償範囲は幅広く、本人が加入していなくても同居家族が加入していれば適用対象となることもあります。
交通事故に巻き込まれた際は、周囲の契約状況などもあわせて確認しておくことをおすすめします。
【関連記事】弁護士費用特約とは?弁護士費用を大幅に抑えられる特約の特徴や加入方法を解説
【ケース別】着手金の相場

弁護士費用はトラブル内容によって大きく変動し、参考までに費用総額の目安としては上図のとおりです。
ここでは、法律トラブルでかかる着手金の相場について分野ごとに解説します。
ただし、法律事務所によっても金額にはバラつきがあるため、あくまでも参考程度に留めておきましょう。
1.離婚問題の着手金相場
離婚問題の場合、依頼内容ごとの着手金相場は以下のとおりです。
| 依頼内容 | 着手金相場 |
| 協議離婚 | 20万円~30万円程度 |
| 離婚調停 | 30万円~40万円程度 |
| 離婚裁判 | 30万円~50万円程度 |
2.遺産相続の着手金相場
遺産相続の場合、依頼内容ごとの着手金相場・手数料相場は以下のとおりです。
| 依頼内容 | 着手金相場・手数料相場 |
| 遺産分割協議 | 獲得金額の2%~8%程度 |
| 遺留分侵害額請求 | 獲得金額の2%~8%程度 |
| 遺言書作成 | 10万円~20万円程度 |
| 遺言執行 | 30万円以上 |
| 相続放棄 | 10万円程度 |
3.労働問題の着手金相場
労働問題の場合、依頼内容ごとの着手金相場・手数料相場は以下のとおりです。
| 依頼内容 | 着手金相場・手数料相場 |
| 未払い給与・未払い残業代 | 20万円~30万円程度 |
| 不当解雇 | 30万円程度 |
| ハラスメント・労働災害 | 10万円~20万円程度 |
| 遺言執行 | 10万円~30万円程度 |
| 退職代行 | 5万円~10万円程度 |
4.借金問題・債務整理の着手金相場
借金問題・債務整理の場合、依頼内容ごとの着手金相場・手数料相場は以下のとおりです。
| 依頼内容 | 着手金相場・手数料相場 |
| 任意整理 | 1社あたり2万円~3万円程度 |
| 個人再生 | 30万円~50万円程度 |
| 自己破産 | 20万円~50万円程度 |
| 過払い金請求 | 1社あたり4万円程度 |
5.債権回収の着手金相場
債権回収の場合、依頼内容ごとの着手金相場は以下のとおりです。
| 依頼内容 | 着手金相場 |
| 内容証明郵便の作成・送付 | 1万円~5万円程度 |
| 支払督促 | 3万円~20万円程度 |
| 民事調停・交渉 | 10万円~20万円程度 |
| 訴訟 | 10万円~30万円程度 |
| 強制執行 | 5万円~20万円程度 |
6.交通事故の着手金相場
交通事故の場合、着手金相場は以下のとおりです。
| 依頼内容 | 着手金相場 |
| 交通事故の損害賠償請求 | 獲得金額の2%~8%程度 |
7.刑事事件の着手金相場
刑事事件の場合、着手金相場は以下のとおりです。
| 依頼内容 | 着手金相場 |
| 刑事事件の弁護活動 | 30万円~50万円程度 |
8.インターネットトラブルの着手金相場
インターネットトラブルの場合、依頼内容ごとの着手金相場は以下のとおりです。
| 依頼内容 | 着手金相場 |
| 投稿の削除依頼 | 5万円~20万円程度 |
| 加害者の特定(発信者情報開示請求) | 20万円~30万円程度 |
| 損害賠償請求 | 10万円~20万円程度 |
9.企業法務の着手金相場
企業法務の場合、依頼内容ごとの着手金相場・手数料相場は以下のとおりです。
| 依頼内容 | 着手金相場・手数料相場 |
| 会社設立 | 10万円程度 |
| 事業承継 | 15万円以上 |
| M&A(契約書作成・契約書の確認・デューデリジェンスなど) | 50万円以上 |
| 法人破産 | 54万円以上 |
| 事業再生 | 240万円以上 |
10.医療過誤の着手金相場
医療過誤の場合、着手金相場は以下のとおりです。
| 依頼内容 | 着手金相場 |
| 医療過誤の損害賠償請求 | 70万円~100万円程度 |
11.不動産トラブルの着手金相場
不動産トラブルの場合、着手金相場は以下のとおりです。
| 依頼内容 | 着手金相場 |
| 不動産トラブルの対応 | 10万円~20万円程度 |
12.消費者トラブルの着手金相場
消費者トラブルの場合、着手金相場は以下のとおりです。
| 依頼内容 | 着手金相場 |
| 消費者トラブルの対応 | 10万円以上 |
弁護士の着手金に関するよくある質問6選
ここでは、弁護士の着手金に関するよくある質問について解説します。
1.借金問題で着手金の支払いが厳しくても弁護士に依頼したほうがよい?
借金問題で経済的に苦しい状況では弁護士への依頼を躊躇してしまうかもしれませんが、それでも弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士なら、借金問題の最適な解決方法をアドバイスしてくれますし、債務整理の手続きを代行してくれて借金生活から速やかに抜け出せる可能性が高まります。
自分一人で悩み、何も行動を起こさなければ、事態は悪化の一途をたどるでしょう。
弁護士費用の捻出が厳しければ、後払いや分割払いに応じてくれる弁護士もいるので、借金問題で苦しんでいるなら早いうちに一度相談してみることをおすすめします。
2.債務整理で着手金の後払いを認めてもらっても本当に支払えるか不安です。
弁護士費用を支払えるか不安だとしても、債務整理の場合は法律事務所側も支払方法を柔軟に検討してくれるケースも多くあるのでご安心ください。
弁護士に債務整理を依頼した場合、借入先に対して「受任通知」という書面を送付してくれて、送付後は直接の取り立てがストップします。
取り立てが止まることで債務整理の手続きに専念できますし、返済に充てるはずだったお金を弁護士費用に充てることができ、スムーズな手続きの進行が望めます。
3.専業主婦で離婚問題の弁護士費用が支払えない場合はどうすればよい?
専業主婦で十分な収入がない場合は、法テラスの民事法律扶助制度が有効です。
法テラスなら弁護士費用を一時的に立て替えてくれて、すぐにまとまったお金を準備できなくても弁護士のサポートが受けられる可能性があります。
法テラスに立て替えてもらった分は、あとから返済しなければなりませんが、分割払いであるうえ返済額は無理のないように調整してもらえます。
4.裁判で勝てば弁護士費用を相手に請求できる?
たとえ裁判で勝ったとしても、基本的に弁護士費用は依頼者が負担します。
例外的に、交通事故などの不法行為に基づく損害賠償請求訴訟であれば受け取れることもありますが、それでも基本的には損害額の10%程度です。
状況次第では、弁護士費用のほうが高くついて費用倒れになってしまうケースもあるため、事前に見積もりを出してもらって費用総額を確認してから依頼しましょう。
5.着手金無料と謳っている法律事務所は本当でしょうか?
着手金無料の法律事務所であれば、本当に着手金0円で問題解決のために動いてくれます。
ただし、着手金を無料にしている分、報酬金が高めに設定されていたりして、トータルの弁護士費用が高額になるおそれがあります。
依頼後に予想以上の金額を請求されたりしてトラブルになるような事態を避けるためにも、必ず事前に見積もりを確認しておきましょう。
6.着手金の分割払いは何回まで対応してもらえる?
着手金を分割払いにしてもらう場合、分割回数は12回程度まで対応してもらえるのが一般的です。
ただし、実際のところは弁護士と話し合って決めることになるため、場合によっては12回以上でも認めてもらえる可能性もあります。
まとめ|着手金の後払いに対応している弁護士に早めに依頼しよう
着手金の後払いを認めてくれる弁護士は一定数いるので、弁護士費用を支払えるか不安な方もまずは一度相談してみることをおすすめします。
弁護士が後払いに応じてくれなくても、法テラスの民事法律扶助制度を利用したり、分割払いができないか相談したりすることでサポートが受けられる場合もあります。
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