パワハラの慰謝料はどれくらい?うつ病になったときの相場や必要な手続きを解説
厚生労働省の定義によると、パワーハラスメント(パワハラ)とは、以下の内容を含む行為を指します。
- 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であること
- この言動が業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
- この言動により、その雇用する労働者の就業環境が害されること
このように、職場での優越的な関係の下で起こる精神的・身体的な攻撃的な言動を、パワハラと呼びます。
パワハラを受けた被害者は心身に深刻なダメージを負う可能性が高く、うつ病や適応障害などの診断を受け、働けなくなるケースもあります。
その場合、被害者は、パワハラをした上司等や会社(事業主)に対し、慰謝料請求をすることができます。
この記事では、パワハラによってうつ病を発症した場合の慰謝料相場や、慰謝料請求の手続きを解説します。
また、パワハラによるうつ病で労災認定が受けられるのかどうか、についても解説します。
パワハラでうつ病になった場合、慰謝料の相場はいくら?
パワハラによる慰謝料の相場は、事件の悪質性や被害の程度などによって異なります。
比較的軽微なパワハラの場合には30万〜100万円未満で慰謝料額として認められることが多いですが、パワハラによってうつ病を発症し休職するなど、重度の症状を引き起こしたパワハラの場合、慰謝料の額が100万〜500万円程度になることもあります。
以下に事例をいくつかまとめておきますので、慰謝料金額を計算する際の参考にしてください。
【パワハラによってうつ病を発症した場合の慰謝料請求の例】
|
|
|
|
|
|
|
|
パワハラによるうつ病で慰謝料を請求する際のポイント
パワハラによってうつ病を発症した場合、被害者は、加害者や会社(事業者)に対して慰謝料を請求することができます。
ここでは、慰謝料請求をする際のポイントをいくつか紹介します。
退職後も慰謝料請求はできる
パワハラによってうつ病になり、退職した場合でも慰謝料を請求することができます。
ただし、慰謝料請求権(損害賠償請求権)には消滅時効があるため、「パワハラ被害に遭ってから3年以内」を目安に請求することが必要です(民法第724条)。
医師が作成したパワハラの診断書などを手に入れたら、できる限り早く慰謝料を請求しましょう。
慰謝料請求の仕返しに恐れる必要はない
パワハラの被害者は、慰謝料を請求することで「加害者から仕返しを受けるのではないか」と不安になるかもしれません。
しかし、加害者に対して慰謝料を請求することは、民法上認められている被害者の権利であり、仕返しを心配する必要はありません。
ただし、どうしても仕返しが怖い場合は、弁護士に依頼するのもおすすめです。
パワハラでうつ病を発症した場合の慰謝料請求の手順
パワハラを原因とする慰謝料を請求する場合、心理的・時間的に負担が大きいため、できる限り弁護士に依頼することをおすすめします。
しかし、自力で慰謝料請求することもできます。
慰謝料請求の大まかな流れは以下のとおりです。
パワハラの証拠を集める
慰謝料を請求する場合、まずパワハラの証拠を集めることが重要です。
主な証拠には、以下のようなものが挙げられます。
なお、パワハラは突発的におこなわれることが多く、証拠として残すのが難しいものもあるので、パワハラに悩んでいるなら、できる限り早い段階で証拠を集めるようにしましょう。
【パワハラの証明に役立つ証拠の例】
- 暴言、恫喝的な言動など、パワハラのやり取りを記録したメモや録音データ
- パワハラを証明してくれる目撃者などの証言
- メールやチャット上での、加害者と被害者の間で行われたパワハラ的な言動の記録
- うつ病の診断、治療をした医師の診断書 など
内容証明郵便を使い慰謝料請求をする
パワハラの証拠を集めたら、加害者や会社(事業者)に対して慰謝料請求をおこないます。
慰謝料請求は電話やメールでもおこなえますが、請求したことをより確実に記録に残すため、内容証明郵便を利用することをおすすめします。
内容証明郵便を用いると、「誰が、誰宛てに、どのような内容の文書を送ったか」ということを証拠化できるので、パワハラによる慰謝料請求を行ったことを証拠化できます。
加害者や会社と慰謝料の交渉をおこなう
内容証明郵便などで慰謝料を請求したら、加害者や企業(事業者)との交渉が始まります。
加害者や事業者がすぐにパワハラを認めて解決を図れる場合もありますが、そうでない場合は証拠や裁判例などをもとに慰謝料の支払いを求めます。
交渉がまとまったら示談書を作成し、加害者や企業(事業者)から慰謝料が支払われれば終了となります。
交渉がまとまらない場合は専門機関に相談する
交渉が難航している場合や交渉がまとまった場合は、以下のような手段を検討するとよいでしょう。
- 労働問題が得意な弁護士に相談する
- 都道府県労働局、労働基準監督署の総合労働相談コーナーに相談する
- パワハラの労働審判を自ら申し立てる など
このうちおすすめなのは、労働問題が得意な弁護士に相談・依頼することです。
弁護士であれば、被害者(依頼者)の利益が最大になるようサポートしてくれます。
また、妥当な慰謝料金額を計算してくれたり、実際の交渉も任せられたりするため、早い段階で一度、労働問題が得意な弁護士に相談しておくことをおすすめします。
労働局への相談はパワハラは労働局に相談できる?労働局の活用方法やその他の解決方法も紹介をご覧ください。
パワハラによるうつ病は労災認定される?
パワハラによって引き起こされたうつ病は、労働災害として認定される場合があります。
労働災害とは、業務上や通勤途中に生じた事由が原因で労働者が負傷したり、病気にかかったりすることを指します。
労働災害と認められると、一定の給付金を受け取ることができます。
しかし、労災認定を受けるためには、以下の条件を全て満たしていなければなりません。
- うつ病など労災認定の対象となる精神疾患を発症していること
- うつ病の発症前6ヵ月以内に、パワハラによる強いストレスを受けたこと
- 業務外のストレスやそのほかの要因によってうつ病が発症したとはいえないこと
なお、慰謝料と労災保険は両方請求することが可能ですが、労災で給付された給付金以外に慰謝料を請求する場合、慰謝料の額から労災の給付金が差し引かれることとなります。
早めの対応を求める場合には、まずはパワハラによる労災申請をおこなって、労災でカバーされない部分を慰謝料請求するのがよいでしょう。
まとめ|パワハラの被害に悩んだら弁護士に相談を
パワハラは不法行為であり、行為の悪質性や被害の程度などに応じた慰謝料を請求できます。
ただし、慰謝料を請求するには、適切な証拠の収集や実際の手続を把握していることが必要です。
そのため、被害者がひとりで対応しようと思っても、困難なケースが多いといえるでしょう。
適切な慰謝料を受け取るためにも、まずは「ベンナビ労働問題」で弁護士を探して相談を申し込み、具体的なアドバイスを受けることをおすすめします。
慰謝料の相談は慰謝料請求の無料電話相談とは?利用すべき人と注意点を徹底解説!をご覧ください。