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パワハラの示談金相場はどのくらい?請求手順と示談金増額のための3要素を解説

弁護士監修記事
労働問題
2023年06月27日
2024年04月22日
パワハラの示談金相場はどのくらい?請求手順と示談金増額のための3要素を解説
この記事を監修した弁護士
(アシロ 社内弁護士)
この記事は、株式会社アシロの『ベンナビ編集部』が執筆、社内弁護士が監修しました。

パワハラの被害を受けた場合、加害者に対して示談金を請求できます。

また、会社に相談しても対処してくれなかったなら、会社の責任も追及できるでしょう。

示談金の相場は50万円から100万円程度といわれており、受けた被害に比べて決して高くはないといわざるを得ません。

ただし、被害者を自殺や精神疾患に追い込むような悪質なパワハラには、100万円以上の示談金が認められることもあります。

この記事では、パワハラに対する示談金の相場と増額されるための要素、具体的な請求手続きについて解説します。

また、示談金が請求費用に見合わないのではと心配する方に向け、弁護士費用の相場もお伝えします。

パワハラ対処法を選ぶ際の参考にしてみてください。

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パワハラの示談金の相場は?

パワハラの示談金は、50万円から100万円程度だといわれています。

ただし、パワハラの内容や状況等によってはさらに高額になったり、反対に低い額になったりします。

以下は、状況による大まかな示談金の相場ですので、参考にしてみてください。

民事訴訟での損害賠償金相場

  • 同僚の前で執拗にミスを責められた
  • 大声で何度も怒鳴られた
  • 謝罪や反省文を強要された

このように、パワハラの内容が精神的な攻撃による被害のみであれば、民事訴訟を提起して争った場合でも、示談金の相場は数万円から数十万円程度でしょう。

実際に、職場で「意欲がない、やる気がないなら会社を辞めるべきだ」など、送られたメールの内容がパワハラにあたるとして訴え、慰謝料5万円が認められたケースがありました。

このケースでは、メールの内容は不適切な表現で名誉毀損にあたるが、パワハラの意図までは認められない、と判示しています(東京高裁平成17年4月23日判決)。

暴行、脅迫などを伴なった場合の示談金相場

パワハラが精神的な攻撃だけでなく、実際に暴行や傷害を伴うものだった場合には、精神的な被害よりも比較的高くなる傾向があります。

けががあった場合や、継続的な暴行があれば、100万円以上の示談金が認められるケースも多いでしょう。

加害社員(上司)が被害者の胸ぐらをつかみ、頭部や背中などを壁やロッカーに複数回打ち付ける暴行を加えたことに加え、別の社員が被害者に対し、「ぶち殺そうか、お前」等といった発言をした事件において、裁判所は、会社及び加害社員に対し、連帯して約230万円の支払いを命じました(名古屋高判平成20年1月29日判決)。

被害者が自殺に至るなど、深刻なケース

パワハラによって被害者が追い詰められ、自殺に至った場合、パワハラと自殺の因果関係が認められれば、2,000万円以上の金額が認められるケースもあります。

たとえば、ある金属加工会社の従業員が会社役員2名から日常的な暴力やパワーハラスメント、退職勧奨等を受けたことが原因で自殺したケースでは、遺族の訴えにより合計5,400万円余りの損害賠償命令が下されました(名古屋地裁平成26年1月15日判決)。

パワハラの示談金を増額できる要素とは?

一口にパワハラといっても、精神的な攻撃から物理的な暴力を伴うものもあります。

そのため、示談金の相場もパワハラの内容によって異なります。

パワハラの示談金を増額させる要素には、以下のようなものがあります。

パワハラの内容が悪質

パワハラの内容が悪質であるほど被害者のダメージは大きくなるため、示談金は増額される傾向にあります。

特定の職員1人からのみパワハラを受けている場合より、複数人から受けている場合や、絶対的に逆らえない者から受けている場合には、示談金は高くなるでしょう。

また、精神的なパワハラだけでなく、暴力を伴う場合にも示談金増額が認められやすいでしょう。

パワハラ行為の頻度が多く、長期間に及んだ

パワハラの頻度が高い、または長期間パワハラ行為が継続している場合にも、示談金は高くなる傾向があります。

数日間のみパワハラを受けた場合よりも、数ヶ月、数年間繰り返しパワハラを受け続けている方がダメージも大きくなるため、示談金も高くなるでしょう。

また、1週間のうちに何度も暴力を振るわれるなど、パワハラの頻度が高い場合も示談金の増額が認められやすくなります。

被害者の被害が大きい

精神的な攻撃でも、それによって被害者がうつ病に罹患したり、暴力を伴うパワハラで重傷を負ったりした場合などには、示談金は増額される傾向があります。

最悪自殺に至ったりした場合などは、逸失利益なども合わせて、示談金が数千万円に及ぶこともあるでしょう。

パワハラで損害賠償金を得た実際の裁判例

以下では、実際に損害賠償金の支払いが命じられた裁判例を紹介します。

慰謝料等計25万円を獲得した事例

【事例】

鉄道会社Yの現場労働者であり、労働組合の組員だったXが、勤務時間中に労働組合のマーク入りのベルトを着用していました。

これに対し上司Aが就業規則に反するので取り外すよう指示したものの、Xが応じなかったことを理由として、AはXに対し、就業規則の書き写しを命じたというケースです。

【判決】

上司Aが労働者Xに対して就業規則等の書き写しを命じたことは、目的や態様においても不当で、Xに精神的・肉体的苦痛を与え、人格を侵害する違法なものであると判示し、慰謝料20万円、弁護士費用5万円の合計25万円の支払いが命じられました(仙台高裁秋田支部平成4年12月25日判決)。

慰謝料150万円を獲得した裁判例

【事例】

個品割賦事業部と旅行事業部からなるY社が、旅行業廃業に伴い、旅行事業部所属だったXを整理解雇しました。

これに対しXは解雇無効を争い、X自身が上司と男女関係にあるという噂が流布されたこと、Xの業務が多忙を極めたにも関わらず、他の労働者に支援させなかったこと、資料置き場になっていた場所に席を移動させられたことなど、一連のいじめを受けたとしてY社と代表取締役および専務を訴えました。

【判決】

いじめに対して対処しなかったY社の責任を認め、精神的苦痛に対する慰謝料150万円および休業損害の支払いを命じました(東京地裁平成14年7月9日判決)。

慰謝料合計350万円を獲得した裁判例

【事例】

21歳の海上自衛隊員が、上官から継続的に「お前は三曹だろ。三曹らしい仕事をしろよ。」「お前は覚えが悪いな。」「バカかお前は。三曹失格だ。」などの執拗な誹謗を受けていたことでうつ病に罹患し、自殺したケースで、両親が国に対し慰謝料支払いを命じた事件です。

【判決】

上官の行為は本人に過度に心理的負担を蓄積させるもので、指導目的であったとしても相当性を欠くとして、上司に過失があったことを認定しました。

さらに、使用者である国にも安全配慮義務違反があったと認め、合計350万円の慰謝料の支払いが命じられました(福岡高裁平成20年8月25日判決)。

またパワハラの慰謝料についてはパワハラの慰謝料はどれくらい?うつ病になったときの相場や必要な手続きを解説をご覧ください。

パワハラの示談金請求する際の弁護士費用

パワハラで示談金を請求したいと思ったら、労働問題に詳しい弁護士に相談しましょう。

自力で請求しようとした場合、逆に不利益な取り扱いを受けてしまう可能性もあります。

ただし、弁護士に依頼するとなると、弁護士費用が心配になるでしょう。

弁護士費用は各弁護士によって異なります。

ただし、2004年までは弁護士会で報酬基準が統一されていたため、現在でもその基準によって金額を決めている事務所も多くあります。

旧弁護士会報酬基準による、パワハラ事件に対する弁護士費用は以下のとおりです。

  • 相談料:30分あたり5,000円~
  • 着手金:事件の経済的利益の額が300万円以下の場合8%程度(最低10万円)
  • 報酬金:事件の経済的利益の額が300万円以下の場合16%

たとえば、加害者に対し200万円を請求して、結果100万円の示談金を獲得した場合には、以下のようになります。

  • 着手金=200万円×8%=16万円
  • 報酬金=100万円×16%=16万円

その他、実費や日当などがかかる可能性もあります。

また、訴訟になった場合には、別途弁護士費用や訴訟費用がかかります。

パワハラで示談金を請求する流れ

パワハラの示談金は、以下のような流れで請求します。

パワハラの証拠を集める

相手に示談金を請求する場合には、前もって必ずパワハラの証拠を集めておきましょう。

パワハラの証拠は、任意で示談金を請求する際にも訴訟になった場合にも必要です。

パワハラの証拠には、以下のようなものがあります。

  • 音声データ
  • パワハラメールなどの画像
  • パワハラの被害記録
  • 会社の窓口などに相談した記録
  • 同僚等の証言

相手に示談金を請求する際、証拠がなければパワハラがあったことを証明できません。

相手があくまでもパワハラはなかったと反論してきた場合の対抗策として、日ごろから記録を遺しておくようにしましょう。

会社の窓口に相談する

特定の職員からパワハラを受けている場合には、まず会社のハラスメント対策窓口に相談してみましょう。

改正労働施策総合推進法、通称パワハラ防止法により、事業主に対してパワハラの対策や予防の措置を講じることが義務づけられました。

窓口担当者が加害者と利害関係のない立場であれば、必要な対策を講じてくれるかもしれません。

まずは会社に相談して解決を計りましょう。

ただし、パワハラの加害者が事業主など社内で立場の強い者だった場合には、社内の相談窓口では解決が見込めない場合もあるでしょう。

それでも相談した記録を残しておくだけでも、会社が隠ぺいを図ったり対応を避けたりした場合の証拠になります。

労働局・労働基準監督署に相談する

会社の所在地を管轄する労働局や労働基準監督署には、パワハラの相談ができる「総合労働相談コーナー」という窓口があります。

相談することで、解決に必要な情報提供を受けられるでしょう。

労働局への相談はパワハラは労働局に相談できる?労働局の活用方法やその他の解決方法も紹介をご覧ください。

弁護士に相談する

それでも解決できない場合には、弁護士に相談して法的手続きを検討しましょう。

弁護士に相談するのは最後の手段ではありません。

会社や労働局の窓口に相談する前に弁護士に相談するのも有効です。

相談することで、どのような証拠を集めておくべきか、パワハラを受けた際にどのような態度を取るべきかなど、具体的なアドバイスをもらえるでしょう。

また、訴訟になった場合の費用や、請求できる慰謝料額についても具体的に教えてもらえます。

慰謝料の相談は慰謝料請求の無料電話相談とは?利用すべき人と注意点を徹底解説!をご覧ください。

まとめ

パワハラに対する示談金の相場は、内容や加害者の立場、被害の大きさによって変わります。

特に悪質なものでは数百万円から数千万円の請求が認められることもあるでしょう。

しかし、一般的な相場は50万円から100万円とそれほど高くはありません。

弁護士費用を考えると、それほど手元に残らないかもしれません。

パワハラの被害を受けているなら、会社や労働局などの相談窓口で解決方法を探る方法もあります。

また、弁護士に対処方法を相談するのもいいでしょう。

まずはパワハラ問題を自分がどのように解決したいのかを考え、それに合った対処方法を選ぶことをおすすめします。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
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