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パワハラの慰謝料を最大限にする方法|相場と裁判例、証拠の重要性など

弁護士監修記事
労働問題
2023年12月28日
2024年04月22日
パワハラの慰謝料を最大限にする方法|相場と裁判例、証拠の重要性など
この記事を監修した弁護士
齋藤 健博弁護士 (銀座さいとう法律事務所)
女性のセクハラ被害解決を得意とする弁護士。慰謝料請求や退職を余儀なくされた際の逸失利益の獲得に注力。泣き寝入りしがちなセクハラ問題、職場の女性問題に親身に対応し、丁寧かつ迅速な解決を心がけている。
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パワハラを受けると、苦しくてつらい思いをするものです。時にパワハラは、自分が理不尽な状況にいることを認識できない形で継続してしまい、苦しい思いを続ける方も少なくありません。

毎日、不当な圧力に耐えながら仕事に臨んでいたものの、ついに我慢も限界に達し、加害者への慰謝料請求を思いついた方もいるかもしれません。

つらい目に遇った分、できるだけ高額を支払ってもらおうと考える方もいるでしょう。

一般的にパワハラの加害者から支払ってもらえる慰謝料の相場は、50万円~100万円程度です。

しかし、事例によっては相場よりも低くなることもありますし、むしろ倍近くもらえるケースもあります。

今回は、パワハラの慰謝料額と実際の裁判での事例、慰謝料の増額要素や相手に支払わせる方法などについて解説します。

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パワハラの慰謝料はいくらくらいもらえるのか?

パワハラ被害に遭ったら、加害者と企業に慰謝料を請求できる可能性があります。

その請求根拠となるのは、加害者本人には不法行為による精神的苦痛を受けたこと、企業に対しては使用者責任や安全配慮義務違反です。

では、実際に慰謝料を請求すれば、いくらくらい支払ってもらえるのでしょうか。まずは、パワハラによる慰謝料額の相場について紹介します。

パワハラ慰謝料の相場は50万円~100万円程度

パワハラを理由に慰謝料を請求した場合、支払ってもらえる慰謝料の相場は50万円~100万円程度です。

ただし、これはあくまで相場であり、実際の金額は個々のケースによって大きく異なります。

相場よりも低く、数十万円程度しか支払ってもらえない場合もあれば、倍近く認められるケースもあるでしょう。

パワハラの慰謝料についてはパワハラの慰謝料はどれくらい?うつ病になったときの相場や必要な手続きを解説をご覧ください。

パワハラで慰謝料の支払いが認められた裁判例

パワハラによる慰謝料の支払いをめぐって裁判になった際は、パワハラ行為の悪質性や継続性、被害者が受けた精神的苦痛の大きさなどが考慮されます。

ここでは、パワハラを理由に慰謝料の支払いを求めた裁判例と、実際に請求が認められた慰謝料金額について紹介します。

30万円の慰謝料の支払いが認められた事例

派遣労働者として働いていた原告が、派遣先の従業員からのパワハラを理由に退職せざるをえなかった事案です。

裁判では、以下のパワハラ行為があった事実が認められました。

  • 指示どおりに作業をおこなわなかった原告に対して「殺すぞ」と発言した
  • 原告所有の自動車に危害を加えるかのような発言を繰り返しおこなった

一審では企業に対して、使用者責任に基づく慰謝料として50万円、企業の不法行為による慰謝料として30万円の合計80万円の支払いが認められました。

しかし、二審では企業の不法行為は認められず、使用者責任に基づく慰謝料として30万円しか認められませんでした。

慰謝料額が相場よりも低くなった理由には、加害者がもともと荒っぽい言動をする性格であり、被害者もその性格を知っていたこと、人によっては冗談や軽口と捉えるものも含まれていること、加害者に強い悪意は認められないことが挙げられます。

100万円の慰謝料の支払いが認められた事例

会社の先輩従業員からの継続的に暴言、暴行を受けたとして、加害者と会社を訴えた事例です。

裁判では次のようなパワハラ行為により、加害者と会社に対して約100万円の慰謝料の請求が認められました。

  • 加害者は被害者に対し「もう辞めろ」「橋の下でホームレスをやったほうがいい」などと怒鳴りつけた
  • 加害者は被害者の頭部や顔面を殴打する、足首や膝を蹴る、塗料を顔面にふきつけるなどの暴行を加えた
  • 上記のような暴言や暴行は長期にわたって繰り返された
  • 暴行の程度がひどく、被害者は病院で受診せざるをえなかった

150万円の慰謝料の支払いが認められた事例

上司からのパワハラ行為により精神疾患を発症、休職せざるをえず、その後、自然退職扱いとされたことに対して、慰謝料を請求し、150万円の支払いが認められた事例です。

裁判所は、企業が自然退職扱いとしたことについては有効としましたが、上司からのパワハラ行為は不法行為であるとして慰謝料の支払いを命じました。

不法行為にあたるとされたパワハラ行為は、以下のとおりです。

  • 酒を飲めない被害者に対し、飲酒を強要した
  • 体調不良をうったえる被害者に運転を強要した
  • 深夜に被害者の携帯電話に架電し、怒りを露わにしたメッセージを残して、被害者に精神的苦痛を与えた
  • 休暇中の深夜に被害者の携帯電話に架電し、怒りを露わにしたメッセージを残して、被害者に精神的苦痛を与えた

200万円の慰謝料の支払いが認められた事例

被害者女性の直属の上司ではないものの、優位な立場にある加害者が、その地位を利用してパワハラをおこなったとして、200万円の慰謝料の支払いが認められた事例です。

加害者による以下の行為が、パワハラとして認められました。

  • 業務上の必要がないのに、深夜に架電し、通話が長時間に及ぶ場合もあった
  • 会社の業務以外の作業もおこなうよう指示し、被害者がきちんと遂行できなければ怒鳴りつけた
  • 被害者のお茶出しのタイミングなどについて、ほかの役員や社員の前で非難し、怒鳴りつけた
  • 被害者の上司や同僚の前で被害者をおとしめたり、同報のメール内で被害者を非難した
  • 同僚らの前で被害者を激しく罵倒した
  • 社外の飲食店で、役員や同僚らの前で激しく叱責した

パワハラによる慰謝料額の増額要素

パワハラで認められる慰謝料額は、事案に応じて増減します。ここでは、増減の根拠とされる主な要素について紹介します。

加害者の社内での立場

パワハラとは、職場において優位な立場にある人から精神的・肉体的苦痛を与えられることを指します。

そして、その慰謝料額は、加害者と被害者との社内での力関係の差によって増減します。

たとえば、同じような暴言によるパワハラでも、入社年度が数年早いだけの先輩による場合と、役員である上司から受けた場合とでは、後者のほうが慰謝料額が増額する可能性が高いでしょう。

相手が社内における権力者であれば、雇用や給料についての不安なども加わり、精神的苦痛が大きくなると判断されるためです。

被害の内容

被害者が受けた行為の悪質性や、加害者の数も慰謝料額の増減にかかわる要素です。

悪質性の高低の判断は難しいものですが、過去の裁判例を参考に客観的に判断されます。

また、加害者の数が多いほど、被害者に与えた精神的苦痛が大きいとして慰謝料は増額される傾向にあります。

被害に遭っていた期間・頻度

パワハラを受けていた期間が長いほど、慰謝料は増額されます。

また、暴言や暴力が一度や二度ではなく、継続しておこなわれるほど、被害者の受けた精神的苦痛は大きいとされ、慰謝料は増額する可能性が高いでしょう。

会社の対応

パワハラ被害を会社に訴えても、適切な対処をしてもらえなかった場合、使用者責任や安全配慮義務違反などの不法行為として、会社に責任を問えます。

会社が何の策も講じてくれなければ、慰謝料は増額するでしょう。

パワハラによる慰謝料の支払いを認めさせるには

被害者がパワハラの事実を訴え、慰謝料を請求したとしても、無条件に認めてもらえるわけではありません。次のような点に注意する必要があります。

有効な証拠があることが重要

どのような請求も、原因となる事実を立証できる証拠がなければ認められません。

慰謝料を請求する前に、パワハラの事実を証明できる証拠を準備する必要があります。

ほかにも違法行為がないか確認する

パワハラが横行する会社では、ほかにも違法行為がおこなわれているケースも多いものです。

法外残業や残業代の未払い、不当解雇などの違法行為があれば、もしパワハラによる慰謝料の請求が認められなかったとしても、ほかの名目で会社からお金を支払ってもらえる可能性があります。

少しでも疑わしい行為がある場合は、弁護士に確認するなどして、よく調べてみるとよいでしょう。

パワハラによる慰謝料を請求するには

実際に、パワハラ被害による慰謝料を請求する場合、以下の流れで進めます。

まずは証拠を集める

まずはパワハラ被害を受けたことを立証できる証拠を集めましょう。パワハラの立証に有効な証拠の例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • パワハラを受けている場面の録音データ
  • パワハラに該当する内容のメール
  • パワハラ被害について具体的に記録したメモや日記
  • パワハラをされた当日の行動履歴

内容証明郵便で慰謝料を請求する

慰謝料の請求は、口頭よりも書面でおこなうことをおすすめします。

口頭では、記録が残らない分、「言った、言わない」などの不毛な争いに発展する可能性が高いためです。

普通郵便やメールでおこなってもかまいませんが、できれば内容証明郵便を利用するのがよいでしょう。

内容証明郵便とは、郵便局が「いつ」「誰が」「誰あてに」「どのような内容」の文書を送ったのかを証明してくれるサービスです。

さらに配達証明を付けておけば、相手が受け取ったことの証明もできるため、相手方が「そのような請求は知らない」などと言い逃れできなくなります。

加害者や企業と交渉する

内容証明を受け取った相手方が何らかの反応を返してきたら、慰謝料の支払いをしてもらえるよう直接交渉します。

しかし、たとえ企業や加害者がパワハラの事実を認め、慰謝料を支払うといったとしても、こちらの請求額よりも低い額を提示してくるでしょう。

有効な証拠を提示しながら、こちらの請求を認めてもらえるよううまく主張することが大切です。

また、企業に顧問弁護士がいる場合は、弁護士が代理人として対応します。そのような場合は、こちらも弁護士に依頼して交渉してもらうのが賢明でしょう。

弁護士は専門知識を備えているうえ、交渉のプロでもあるため、ご自身での交渉はどうしても不利になる可能性が高いためです。

訴訟を起こす

加害者や会社と交渉をしても、話が平行線を辿る場合は、訴訟を起こして争います。

裁判では、証拠を用いて事実を立証しながら、効果的に法的主張をおこなうことが大切です。

裁判手続きは自分でおこなってもかまいませんが、納得できる結果を得るためには、弁護士に依頼するほうがよいでしょう。

また、加害者本人は訴えず、企業のみを訴えたい場合は労働審判を利用する方法もあります。

労働審判とは、労働者と企業とのトラブルについてのみ利用できる裁判手続きです。原則として3回以内の期日での解決を図れます。

【参考】労働審判の流れを解説|労働審判を活用する際の手続きと解決フロー

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パワハラの慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

パワハラ被害による慰謝料請求は弁護士への依頼がおすすめです。弁護士に依頼すれば、次のようなメリットを得ることが期待できます。

加害者や会社と直接請求しなくてすむ

たとえ退職後であったとしても、つらい目に遇わされた加害者や会社とは直接関わりたくはないものでしょう。

たとえ慰謝料を請求するのであっても、気が重く、諦めてしまおうかと思ってしまう方もいるかもしれません。

そんな方こそ、ぜひ弁護士への依頼を検討してください。弁護士に依頼すれば、そのあとのやり取りは全て任せられます

こちらからの連絡はもちろん、相手方からの連絡も全て弁護士を介することになるため、相手方と直接接触する心配はありません

これにより、かなりの精神的負担を軽減できるでしょう。

慰謝料を支払ってもらえる可能性が高まる

被害者本人が加害者や企業に慰謝料を請求しても、無視されたり、応じてもらえなかったりするケースも多いものです。たとえ交渉に応じてもらえたとしても、減額を強固に主張されることもあるでしょう。

弁護士が代理人となれば、加害者や企業が真摯に向き合ってくれる可能性が高まります。本人がいくら請求しても無視を続けていた相手方が、途端に応じるケースも少なくありません。

さらに、弁護士が法的観点から論理的に交渉すれば、適正な額の慰謝料の支払いを認める可能性も高まるでしょう。

裁判になっても安心

相手方との交渉がまとまらず、裁判所での手続きを利用することになれば、慣れない方にとっては相当な負担に感じられるはずです。

多くの書面を準備、提出しなければならないうえ、主張は法律や過去の判例を調べながらおこなう必要があるため、かなりの労力が必要になるでしょう。さらに、期日には必ず裁判所へ出頭しなければなりません。

弁護士に依頼すれば、裁判手続きを利用することになっても、全て任せられます。書面の準備や提出はもちろん、期日当日の出頭も弁護士がおこなうため、負担なく裁判手続きを利用できます。

また、裁判所への主張も効果的におこなってもらえるため、希望どおりの結果を得られる可能性が高まるでしょう。

パワハラの慰謝料請求を弁護士に依頼する場合の費用相場

弁護士への依頼を考えた際に、何より弁護士費用が気になる、という方も多いでしょう。

ここでは、パワハラで慰謝料請求をする際にかかる弁護士費用とその相場について解説します。

相談料|30分5,000円程度

弁護士に相談のみをおこなう場合にかかる費用です。相談料は30分5,000円程度としている法律事務所が多いでしょう。

ただし、その場で弁護士への依頼を決め、委任契約を締結すればかからないケースがほとんどです。

また、初回30分のみ相談料を無料としているところも多くあります。

着手金|請求額の8%程度

弁護士に事件の解決を委任した際に必ず発生する費用のことです。弁護士が弁護活動を始めることに対するファイトマネーのようなもので、結果にかかわらず返金はされません

相手への請求額の8%程度としているところが多いものの、法律事務所によって金額は異なります

報酬金|経済的利益の16%程度

事件解決時に支払う成功報酬のことです。報酬金の額も法律事務所によって異なりますが、実際に得られた慰謝料額の16%程度を報酬とするところが多いでしょう。

実費・日当

実費とは、事件解決のために実際にかかった費用のことです。相手方に文書を送付するための切手代や、弁護士が裁判所や交渉のために現地へ赴いた際の交通費などが該当します。

金額は事案によって変動し、数千円程度で済む場合もあれば、数万円程度かかることもあるでしょう。

また、日当とは弁護士が事務所以外で活動した際にかかる費用のことです。3万円~5万円程度が相場ですが、遠方に出張しない限り請求しない事務所もあります。

請求される場合は、高額になることもあるため、日当がかかるかどうか、かかる場合の金額は最初に確認しておいたほうがよいでしょう。

まとめ|パワハラの慰謝料請求は弁護士に相談しよう

パワハラによって請求できる慰謝料額は事案によって大きく差があります。その相場は、50万円~100万円程度ですが、相場よりも少なくなるケースもありますし、倍以上になることもあるでしょう。

納得できるだけの金額を支払ってもらうためには、有効な証拠を集めることと、うまく主張して相手に請求を認めさせることが大切です。

納得できる結果を得るためにも、できるだけ早めに弁護士に相談し、弁護士のアドバイスのもと、行動することをおすすめします。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
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