ネットで実名を勝手に晒された!削除の方法や訴訟の弁護士費用の内訳


SNSやネット掲示板はユーザー数が多くさまざまなトラブルが発生しています。
その中でも「実名をWeb上に晒される」といった、個人情報を投稿されるケースは珍しくありません。
実際にインターネット上で実名を晒されてしまったとき、どのように対応すればよいのかが気になる方は多いでしょう。
本記事では、インターネット上で実名を晒すことは違法になるのかを解説します。
削除を依頼する方法や弁護士を利用した際の費用についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
ネットでの実名晒しは違法行為の可能性がある
インターネット上で他人に自分の実名を投稿された場合、その投稿行為は、違法行為に該当する可能性があります。
自身が相手の実名を投稿してしまったときや、実名を晒されてしまった場合でも適切に対応するためにも、どのようなものが違法になるのかを押さえましょう。
ネット上で実名を晒すことはプライバシーの侵害にあたる
SNSやゲームのアカウントなどインターネット上で交流する場では、実名を隠して活動する方は少なくありません。
インターネット上でそのような方の実名を、相手の許可なく晒す行為はプライバシー権の侵害になる可能性があります。
「プライバシー権」は明確に法律などで定義されていないものの、日本国憲法第十三条の「幸福追求権」を根拠に認められると考えられています。
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 引用元:日本国憲法(衆議院) |
刑法上の犯罪でなく民法の不法行為にあたる可能性が高い
インターネット上で実名を晒した場合、刑法上の犯罪ではなく民法709条で定められている「不法行為」に該当する可能性が高いのです。
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 引用元:民法 |
この不法行為に該当すると認められると、損害賠償を請求できる場合があります。
ただし、損害賠償を請求するためには、加害者である投稿者を特定しなければなりません。
一般的に実名を晒すなど悪意がある投稿をする人は、匿名で活動していることがほとんどです。
サイト運営者に情報開示を依頼することもできますが、応じる可能性は低いといえます。
そのため、投稿者を特定するためには弁護士に依頼するなど所定の手続きを踏む必要といえるでしょう。
実名を晒され誹謗中傷された場合は名誉毀損の可能性
実名を晒し、個人を特定できる状態で誹謗中傷された場合には、刑法の「名誉毀損罪」に該当する可能性があります。
名誉棄損罪が成立する要件は次の3つです。
- 社会的な評価・信頼を下げるものであること
- 具体的事実を摘示するものであること
- 公然と行うこと
SNSやネット掲示板などは不特定多数の方がアクセスするため、このような場での投稿は、公然と行うものであると判断されます。
実名をさらしたうえで、このような条件に合致する場合は罪に問われるでしょう。
侮辱罪が成立する可能性もある
侮辱罪は相手を侮辱・蔑視する発言を公然でおこなった場合に問われる犯罪です。
また、誰でも見られる状態・場所で相手を侮辱した場合に成立するため、投稿内容が相手をおとしめるものであれば該当する可能性があるでしょう。
脅されれば脅迫罪が適用されることも
脅迫罪は、相手や相手の親族の生命・身体・自由・名誉・財産に危害を加えることを告げ脅した場合に成立します。
そのため、実名を晒したうえで「自宅に火をつけるぞ」「家に行って家族を殴ってやる」といった内容であれば該当する可能性が高いです。
ネット上に実名以外の個人情報が晒された場合はどうなる?
実名以外に住所や電話番号なども個人情報に該当します。
もしこれらをインターネット上で晒された場合、実名が晒された場合と同様の処理になる可能性があります。
ネット上に住所を晒された場合
インターネット上に住所を晒された場合、投稿内容によっては罪が成立する可能性がありますが、単体では刑事責任には問えません。
たとえば「住所を特定したから今から行く」というようなケースであれば脅迫罪に該当する可能性があります。
そのほかにも、個人を特定できる情報が投稿された場合はプライバシー権の侵害、実名などと一緒に侮辱する内容を投稿された場合は侮辱罪になるでしょう。
ネット上に電話番号を晒された場合
インターネット上に電話番号を晒された場合は、知らない人から電話がかかってくる可能性があります。
生活が脅かされる可能性があるため、プライバシー権の侵害に該当する可能性があります。
ただし、住所を晒されたときと同様に単体では刑事罰を負わせにくいでしょう。
ほかにも、個人ではなく店舗の電話番号が悪意のある内容とともに投稿された場合、いたずら電話の増加が考えられます。
そのことで業務を妨害したことになれば、偽計業務妨害罪になる可能性があります。
ネットでの実名晒しがプライバシーの侵害になる5つの基準
インターネット上で実名を晒され、次の要件を満たすときプライバシーの侵害が成立する可能性があります。
- 事実が公開されること
- 1の事実が私生活上の事実か又は私生活上の事実と受け取られる可能性がある事柄である
- 1の事実が公開して欲しくない情報であると認められる事柄である
- 1の事実が非公開の情報でまだ知られていない事柄であること
- 1の事実を公表されない利益の方が公表される理由よりも優越すること
たとえば、「〇〇は多額の借金がある」「××は△△と交際している」といったように、本名と隠したい情報とセットで投稿される場合などが該当します。
また、個人が特定できる情報として実名以外にも顔写真・犯罪歴・指紋データ・運転免許証の番号・マイナンバーなども同様です。
ネットでの実名晒しでよくあるケース4つ
ここからはインターネット上でよくある実名晒しの代表的なケースを5つ紹介します。
1. 5ちゃんねるなどの大型掲示板に実名を晒された
5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)などの大型の掲示板で実名を晒されるケースは少なくありません。
このような大型掲示板ではさまざまな話題のスレッドが立ち上がり、何か事件やニュースがあると、関連人物を特定し実名などの個人情報や過去の逮捕歴・前科などが晒されることがあります。
場合によっては事件に無関係であるにもかかわらず、他人に公開されたくない過去の逮捕事実を晒されれば、プライバシー権の侵害に該当する可能性があります。
2. YouTubeに実名を晒された
近年ではYouTubeのユーザーが多いことから関連するトラブルは起こりやすいです。
特に個人の顔が特定できるような編集で動画がアップされることがあります。
ほかにも、実名やそれ以外の個人情報が晒されることもあり、基本的に本人の許可なしに動画をアップする行為はプライバシー権の侵害に該当します。
3. インスタグラムに実名を晒された
インスタグラムでは移っている顔写真に文字情報を加えていることがありますが、無断で実名などの情報を紐づけられているケースは少なくありません。
紐づけられている情報が公開されているものであれば問題はありませんが、本人が隠している情報であればプライバシー権の侵害に該当する可能性があります。
たとえば、顔や実名を隠してSNS上で活動しているのにもかかわらず、ほかの人にそれらの情報がわかるように無許可で公開された場合は問題になるでしょう。
4.X(旧Twitter)に実名を晒された
X(旧Twitter)では、実名や住所、顔写真などが投稿されているポストをよく見かけます。
これらの中でも、他人に公開されたくない情報が含まれるとプライバシー権の侵害に該当する可能性があるでしょう。
また、Xではリポスト機能によりほかのSNSよりも拡散性が高いことが特徴であるため、晒された内容が瞬く間に広がってしまう可能性があります。
そのため、プライバシー権の侵害の被害を受けた場合は迅速な対応が求められます。
ネットに実名を晒された場合の対処法2つ
インターネット上で実名を晒された場合、状況によっては迅速な対応が求められるケースもあります。
ここからは実名を晒された場合の対処法を2つ紹介します。
1. SNS・ブログ・掲示板の管理元へ削除依頼をする
まず、インターネット上に実名を晒されたときは、投稿主もしくは対象のSNS・ブログ・掲示板などの管理元に問い合わせし、該当の投稿の削除依頼をします。
投稿主本人に対し削除をお願いしても聞き入れてもらえない場合は、管理元に依頼することで対応してもらえる可能性があります。
一般的に実名以外にも住所・電話番号・銀行口座情報・マイナンバーといった秘匿性の高い情報が投稿されている場合は削除してもらいやすいです。
しかし、個人の趣味嗜好など秘匿性が低い情報は対応してもらいにくく、場合によっては法的な手続きによる削除依頼を検討する必要があります。
不祥事や犯罪に関する情報の削除は不可能に近い
不祥事や犯罪に関する情報の場合、ニュース番組・サイトなどで広く公開されているものであれば削除は不可能に近いため注意が必要です。
過去の逮捕歴などは知られたくない情報であったとしても、犯罪に関する内容は国民の知る権利として高い公益性が認められているため、対応してもらえる可能性が低いのです。
このような場合も個人の依頼ではなく法的な手続きであれば応じてもらえる可能性があります。
2. 実名を晒した投稿者を特定して訴える
実名を晒されたことによりプライバシー権の侵害が成立する場合は、投稿主に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
ただし、これらの手続きに進むためには投稿者を特定しなければなりません。
投稿者を特定するためには、サイトなどの管理者に情報開示を依頼する必要がありますが、任意で応じてくれる可能性は低いです。
この場合も、法的な手続きによる「発信者情報開示請求」が必要になります。
ネットに実名が晒されたときにおすすめの無料相談先3つ
インターネット上に実名が晒されたときにおすすめの無料相談先を3つ紹介します。
1. 法務省|みんなの人権110番・インターネット人権相談受付窓口
法務省ではインターネット上で実名が晒されたときの相談窓口として、「みんなの人権110番」と「インターネット人権相談受付窓口」を用意しています。
みんなの人権110番は差別・虐待・ハラスメントといったさまざまな人権問題の相談を受け付ける窓口です。
問い合わせると最寄りの法務局に繋がり、法務局職員か人権擁護委員に対応してもらえます。
インターネット人権相談受付窓口は、人権相談のインターネットの窓口です。
相談フォームに氏名・住所・年齢・相談内容を記載して送信すると、最寄りの法務省から後日、メール・電話で連絡が来ます。
【みんなの人権110番】
電話番号 |
0570-003-110 |
受付時間 |
平日:8:30~17:15 |
公式サイト |
【インターネット人権相談受付窓口】
公式サイト |
2. 警察|サイバー犯罪相談窓口
インターネット上で実名を晒された場合、警察が管轄するサイバー犯罪相談窓口にも相談してもらえます。
サイバー犯罪対策課はインターネット上での犯罪やトラブル、コンピューターウイルス、ハイテク犯罪などを取り締まる部署です。
インターネット犯罪にも豊富な知識があるため、被害が大きいときに頼れる相談先です。
受付時間 |
平日:8:30~17:15(地域によって異なる) |
公式サイト |
3. 弁護士|削除依頼や実名晒しの犯人特定を依頼できる
弁護士はインターネットのトラブルにも対応しているので、実名晒しの犯人特定に関する法的な手続きなどをおこなえます。
個人では情報開示に応じてもらえない場合でも、弁護士であれば法律に則った手続き・対応が可能であるため、特定しやすくその後の損害賠償請求までスムーズに進みやすいです。
一般的な法律事務所の中には初回の相談を無料で受け付けていることがあります。ほかにも各自治体では弁護士による無料相談を実施していることもあります。
法的な手続きが必要な場合は、まず弁護士の無料相談を利用するとよいでしょう。
ネット上の実名晒しを得意とする弁護士を探す方法4つ
インターネット上の実名晒しを得意とする弁護士を探す4つの方法を紹介します。
1. 弁護士会の弁護士紹介制度を利用する
全国各地には地域の弁護士会が運営する相談センターが設置されています。
最寄りの相談センターを利用することで、抱えている悩み・トラブルに合った弁護士を紹介してもらえます。
利用する際は相談センターのホームページからWeb上で弁護士紹介を予約するか、電話で問い合わせる必要があります。
相談センターで弁護士相談を利用する場合は有償になるケースが多いですが、弁護士紹介自体は無料のケースがほとんどです。
ただし、紹介先の弁護士に相談する際は費用が発生することが多いため注意してください。
2.法テラスで紹介してもらう
法テラスは法務省が管轄する法律相談の窓口です。
一定要件を満たすことで法律相談が3回まで無料になる「民事法律扶助制度」を利用できます。
法テラスには弁護士が在籍しており、実名晒しや誹謗中傷などの被害を受けている場合は相談に乗ってもらえます。
3. インターネットで検索する
自社のWebサイトを持っている法律事務所は多くあるため、インターネットで検索することで自分に合った弁護士を探せます。
Webブラウザで「弁護士 ネット被害」というキーワードで検索すると条件に合致した弁護士がヒットするでしょう。
このとき、自宅や勤務先などの地域を入力すると最寄りの法律事務所が見つかりやすいです。
4. ベンナビITで探す
ベンナビITはインターネットのトラブルを得意とする弁護士が登録されているポータルサイトです。
地域と相談したい内容を入力することで簡単に検索できます。
またWebサイト上には、弁護士への相談と解決までの流れや、依頼前に準備するものなどについても紹介されている点もメリットです。
弁護士に削除代行や訴訟を依頼した場合の費用の内訳と相場
弁護士へ悩みを相談し解決に向けた手続きを依頼した場合、次のような費用が発生します。
- ●相談料
- ●着手金
- ●報酬金
- ●日当
- ●実費
ここからはそれぞれの費用の相場について紹介します。
相談料の相場|30分5,500円程度が相場だが無料相談が可能な事務所も
相談料は依頼前に弁護士へ法律相談をする際に発生する費用です。相場は30分5,500円ほどですが、設定額は法律事務所によって異なります。
また、法律事務所の中には「初回は相談料無料」「3回まで無料」というように、無料相談を受け付けているものもあります。
これらの場合、設定されている時間や回数を過ぎると相談料が発生しますが、その前に声を欠けられることがほとんどなので、突然料金が発生することはありません。
着手金の相場|請求額の8.8%程度
着手金とは弁護士が依頼を受けた際に発生する費用です。
たとえば、実名晒しが民法上の不法行為に該当するとして損害賠償を請求する場合、その請求額の一定割合が着手金になります。
一般的に請求する金額が大きくなるほど割合は小さくなる傾向がありますが、相場は請求額の8.8%ほどです。
報酬金の相場|回収額の17.6%程度
報酬金は弁護士に問題解決を依頼し成功したときに発生する料金です。
これは成果報酬になるため、失敗したときは請求されません。
報酬金も着手金と同様に、回収した金額の一定割合を支払います。割合は法律事務所によって異なりますが、相場は回収額の17.6%です。
日当の相場|1日当たり3万3,000~5万5,000円程度
日当は弁護士が依頼によって拘束された時間に対して支払う費用です。たとえば、相手と交渉するために外出したり、裁判所に代理で出廷したりした際に発生します。
日当の相場は半日で3万3,000円ほどで、1日だと5万5,000円ほどです。依頼内容や法律事務所によって日当の設定は変わるため、事前に確認しましょう。
実費|弁護士が業務をおこなう中で支出する費用
実費は弁護士が業務をおこなう中で支出する費用です。書類を作成・コピーした際の費用や収入印紙代、郵送費などが該当します。
交通費も含まれるため依頼による移動距離が大きくなるほど実費は高額になります。
費用を払えない場合は法テラスへ相談
費用面がネックで依頼をためらっている場合や支払いが難しい場合は法テラスへ相談しましょう。
法テラスでは収入と資産が一定基準以下であれば民事法律扶助制度を利用でき、該当しない場合でも弁護士費用を法テラスが立て替え、利用者が分割で返済することも可能です。
まとめ
実名を無断で晒された場合、民法上の不法行為に該当し損害賠償を請求できる可能性があります。
また実名だけでなく、侮辱する内容が投稿されていれば「侮辱罪」、脅している内容であれば「脅迫罪」などが該当します。
投稿内容に実名が含まれた誹謗中傷であれば名誉棄損になるでしょう。
このような投稿を削除するためには、Webサイトの管理者に削除依頼しますが、実際のところ任意の場合応じる可能性が少ないのが現状です。
このようなときは弁護士に相談し、法的な手続きを進めるとよいでしょう。自分の悩みに合った弁護士を探し、問題を解決してみてください。