面会交流を拒否したい!拒絶したときのリスクと認められるには
面会交流の拒否を考えている方は、実際に拒否できるのか、何かペナルティがあるのかなど疑問に感じることは少なくないですよね。
そこで本記事では、面会交流を拒否できる・できないケースや、拒絶した場合のリスクなどについて解説します。
なお、面会は原則として拒否できませんが、なかには例外もあるため、あらかじめ流れを把握しておきましょう。
また、自力ではなく弁護士に相談する場合のメリット・デメリットについても記載しているので、参考にしてみてください。
原則として面会交流は拒否できない
面会交流は子どもが調停や離婚などの理由で子どもと離れて暮らす片方の親と会う権利と考えられているため、原則として拒否できません。
親よりも子どものための権利なので、親の都合で断れないという考え方に基づいています。
なお、面会交流は拒絶できるケースもありますが、次の場合は親の都合とみなされ拒否できないでしょう。
- 自分が相手のことを嫌いで、子どもにも会わせたくない
- 子どもが再婚相手と仲良くするために、相手との交流の機を与えたくない
- 子どもが相手と会ったあとに一緒にいたいといわないか心配している
協議離婚の際には面会交流のルールについても話し合うことが民法で定められているため、後々トラブルにならないようお互い納得しておくことが大切です。
別々に暮らす親とも交流するかは子どもが成人するまで続く権利なので、慎重に取り決める必要があります。
面会交流を拒否した場合の4つのリスク
子どもを優先すべきといえど、親都合で断りたい場合もゼロではないでしょう。
しかし、面会交流を正当な理由なく拒否した場合は4つのリスクがあるため解説していきます。
1.親権者の変更の申し立てがされる可能性がある
長期に渡り面会交流を無視していると、相手から親権者の変更を申し立てられる可能性があります。
実際に親権が母親から父親に変更された事例もあるため、調停や離婚時に親権を得られたからといっても必ずキープできるわけではありません。
親権者の変更が認められた場合は自分が子どもと会えない事態に陥ってしまうため、不必要な拒絶はリスクが高いと認識しておきましょう。
2.損害賠償(慰謝料)請求をされる場合がある
相手が面会交流を拒んだことにより、精神的苦痛を被ったと損害賠償を請求されるリスクがあります。
慰謝料の相場は数十万円程度と決して高くはありませんが、悪質と認められた場合は100万円程度になる可能性もあり得るのです。
子育て費用がかさむなかでの慰謝料の支払いともなれば、経済的に大きな損失となります。
万が一慰謝料請求が認められれば、その後に面会交流に応じても支払いを逃れることはできないので注意しなければいけません。
3.間接強制をされる可能性がある
間接強制とは一定期間以上面会交流を拒否した場合に、1回あたり30,000円から50,000円程度の課金を支払わせ子どもと会う機会を作る手段です。
間接強制は相手が申し立てれば必ず実施されるわけではなく、調停や審判が成立しており面会交流の条件が明確に決められている場合にのみおこなわれます。
しかし、面会交流に応じないことで金銭的なプレッシャーがかかるという点では、間接強制は非常にリスキーといえるでしょう。
4.家庭裁判所に履行勧告される
調停や離婚の際に取り決めたことに反していると、家庭裁判所から履行勧告される可能性があります。
履行勧告とは取り決めた内容を義務として守ることを促すことで、面会交流を強制する力はありません。
しかし、家庭裁判所からの連絡という点で相手に大きなプレッシャーを与えられるでしょう。
ただ履行勧告は相手に罰則を与える効力などもないためスルーされるリスクもあります。
面会交流を拒否できる4つのケース
原則として面会交流は拒否できませんが、例外もあります。
ここからは、面会交流を拒否できる可能性がある4つのケースを解説します。
1.元配偶者が子どもを連れ去るおそれがある
面会交流は一時的に子どもと過ごす手段ですが、なかにはそのまま子どもを同居親へ帰さず連れ去ってしまうケースがあります。
連れ去りは子どもの生活や精神に大きなダメージを与えるため、元配偶者が連れ去る恐れがある場合は断れるでしょう。
ただし、連れ去り防止策として同居親が立ち会うなどの手段が取れる場合は、完全に拒否できない可能性もあります。
2.一定の年齢の子どもが自らの意思で面会を拒否している
小さな子どもが一時的な感情や同居親に対する気遣いで面会交流を拒否した場合は、不当とみなされる可能性があります。
しかし、10歳を過ぎたころから子どもでも自分の意思表示ができると考えられているため、嫌がった場合は拒否できるかもしれません。
なお、15歳以上の子どもは本人の意思を尊重して傾聴することが決められているため、子ども本人の意思で面会交流を断れる傾向にあります。
3.元配偶者が子どもへの虐待をしていた
元配偶者や別居中の親が子どもを虐待していた場合、相手と会うことで子どもに被害が及ぶ危険があるため拒否できます。
ただし、子どもへの虐待の証拠がなければ面会交流を拒否できない可能性があるので、次のものを揃えておきましょう。
- 子どものけがの写真
- 医師の診断書
- 警察や児童相談所への相談履歴
子どもへの暴力の証拠は裁判でも必要となる可能性が高いため、できるだけ明確なものを多く集めておいてください。
4.元配偶者が子どもの監護親へ暴力を振るう
母親または父親が相手から暴力を受けているシーンを目にすることで、子どもが精神的なダメージを受けることが考えられます。
子どもだけでなく元配偶者である同居親へ暴力をふるう場合も、面会交流を拒否できる理由となりえます。
ただし、原則として子どもの意志や安全が考慮されるため、直接子どもに危害が及ばない同居親への暴力は拒否の理由とみなされない可能性があると理解しておきましょう
なお、相手のDVから逃げるために別居している場合は、面会交流によって居場所が知られてしまうリスクがあります。
DV防止法による保護命令が出ている場合は、間接的に子どもとの面会交流を拒否できます。
面会交流を拒否する場合は証拠の提示が必要
面会交流を拒否する理由として相手の暴力やアルコール依存症などが挙げられます。
これは口頭で伝えればいいわけではなく、それらの証拠となりえるものを提示するよう求められます。
たとえば、暴力の証拠としては子どもがけがをした写真や警察への相談履歴、アルコール依存症の場合は飲酒後の様子がわかる動画や音声などが有効です。
なお、調停や裁判の段階で証拠が揃っておらず、どのように用意すればいいかわからない場合は弁護士への相談をおすすめします。
証拠として残しにくい拒否理由であっても、弁護士が立証方法を示してくれる可能性が高いです。
面会交流を拒否したいときの流れ
子どものためなどの理由で面会交流を拒否したくても、唐突に自分の判断だけで実行するにはリスクがともないます。
ここからは、面会交流を拒否したい場合の流れを解説します。
- まずは当事者同士で話し合いをおこなう
- 話し合いが難しい場合は面会交流調停や審判をおこなう
1.まずは当事者同士で話し合いをおこなう
いきなり裁判所や弁護士などの法的な手段を使うのではなく、可能であればまずは当事者同士で話し合いましょう。
やみくもに子どもと会わせたくないと伝えると相手が納得せず泥沼化するリスクが高まるでしょう。
拒否したい理由を冷静に話し、妥協点をすり合わせると解決できる可能性が期待できます。
たとえば、子どもが嫌だといっているからという理由ではなく、面会によって子どもの体調や成績が悪くなっているなどの具体例を添えると納得されやすくなります。
また、子どものメンタルが落ち着くまでは接触を控えたいというように、期間や条件を提示すること大切です。
2.話し合いが難しい場合は面会交流調停や審判をおこなう
当事者間の話し合いは時間やコストを抑えられる点がメリットですが、必ずしもスムーズに解決するとは限りません。
当事者で解決しない場合は、面会交流調停や審判を実施します。
家庭裁判所に面会交流調停を申し立てると、必要に応じて調査官が面会交流拒否の条件やペースなどが適切か調査します。
ただし、調査結果を聞いたあとにも当事者間での話し合いが必要となります。調査終了の段階で拒否できるわけではありません。
面会交流調停で解決しなければ、裁判・審判という流れになります。
面会交流について弁護士に相談するメリット4つ
面会交流について自分だけで判断・行動を起こすことは簡単ではありません。
トラブルを避けて拒否する方法として弁護士への依頼があり、相談することで4つのメリットがあるため解説していきます。
1.調停・訴訟といったトラブルになっても対応できる
調停や訴訟は経験値や専門知識が必要なうえ、時間や労力もかかります。
全て自力で対応することは決して簡単ではないため、弁護士に一任できる点は大きなメリットといえるでしょう。
また、弁護士は調停や裁判に代理出廷してくれるだけでなく有利になるよう動いてくれるので、面会交流を拒否できる可能性も高まります。
2.不利な条件を回避できる
不当な面会交流の拒否は違法ですが、そこを逆手にとって無理な条件を要求されるリスクがあります。
不利な条件は必ず受け入れる必要はありませんが、自分だけでは冷静な判断ができず要求を避けられないという可能性は否めません。
その点、弁護士に相談をすると子どもの生活スタイルを指定するなど不利な条件を示されたときに公平に判断してくれます。
弁護士がいることで、お互いにとって妥当な条件を客観的に判断できるでしょう。
3.冷静な話し合いができる
当事者同士の話し合いは感情的になり収拾がつかない可能性が高いため、弁護士という知識豊富な第三者が介入することで冷静な話し合いができるようになります。
また、暴力やDVにより相手と直接やり取りをしたくない場合は代理で話し合いをしてくれるので、相手との接触を避けたい方にといってメリットとなるでしょう。
4.公正証書作成により将来のトラブル対策ができる
口頭での話し合いだけでは内容が可視化できず、将来的に意見の食い違いが起こるリスクがあります。
そこで、弁護士に依頼し公正証書を作成してもらうと、客観的なデータが残り将来のトラブル対策となるのです。
また、公正証書作成の手続きも弁護士に一任できるので、時間や労力をかけずに済みます。
面会交流について弁護士に相談するデメリット
面会交流について弁護士に相談することでさまざまなメリットを得られますが、一方で3つのデメリットがある点に注意してください。
1.費用がかかる
弁護士への依頼は相談料や成功報酬金、実費などさまざまなコストがかかります。
特に、話し合いが長期に渡り調停や訴訟にまで至ると高額な費用となりかねません。
弁護士費用は数十万円から百万円以上になるケースもあるので、事前に見積もりをチェックして予算と照らし合わせましょう。
2.合意するまで時間がかる
正式な依頼先の弁護士を決めるまでには、相性の善し悪しやコストを比較するなど複数の事務所とやり取りが発生するため時間がかかります。
相談だけで終わってしまうケースも少なくないため、合意までには時間がかかると認識しておきましょう。
なお、依頼先をスムーズに決めるためには事前にホームページをチェックし、実績や費用などを確認しておくことがおすすめです。
3.希望する結果にならない場合もある
弁護士に依頼しても必ず望んだ結果になるとは限らず、残念ながら面会交流を拒否できない可能性もあることは理解しておきましょう。
少しでも断る確率を上げるためには、弁護士に正確な情報を不備なく伝えることが大切です。
離婚・別居に至った経緯や、相手と子どもの関係性などを事前にまとめておきましょう。
まとめ|面会交流の拒否は子どものことも考えて冷静な対応を
本記事では、面会交流を拒否できる・できないケースや、拒否した場合のリスクなどについて解説しました。
原則として面会交流は子どものための権利なので、子どもが嫌がらない場合は実施する必要があります。
親の都合だけでスルーしていると親権変更や慰謝料請求などのリスクがあるため、子どもを第一に考えて冷静に対応しましょう。
なお、別居親が暴力をふるったりアルコール依存症を患っていたりする場合は、例外として拒否できる傾向にあります。
面会交流を拒否する理由を相手に伝えて当事者同士で解決するという対策もありますが、難しい場合は弁護士へ相談してください。
弁護士に依頼をすれば、仲介役となり自分が望む結果に繋がる可能性が期待できます。