パワハラの被害を無料相談できる窓口9つ|弁護士に相談しておくメリットも解説
Job総研 「2022年 ハラスメント実態調査」によると、パワハラの相談件数は未だに増加しており、ハラスメントの中でもパワハラが占める割合は64%に上ることがわかっています。しかし、パワハラを受けたと感じている方の中には、相談相手がなかなか見つけられず、一人で抱え込む人も沢山いらっしゃいます。
パワハラを受けている場合はすぐにでも解決を図るべきですが、以下のような疑問や不安も生まれるでしょう。
- ●パワハラの悩みはどこに相談したらよい?
- ●パワハラを相談したら仕返しされない?
- ●24時間いつでも相談できる窓口はある?
- ●パワハラの加害者に慰謝料を請求できる?
- ●パワハラはどうやって立証したらよい?
パワハラは「言った・言わない」の水掛け論になったり、加害者に隠ぺいされたりする可能性があるため、できるだけ早めに対処しなければなりません。
本記事では、パワハラの無料相談窓口や証拠の集め方などを解説しますので、パワハラ被害に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
パワハラ被害者が相談できる9つの無料窓口
パワハラの被害に悩んでいる方は、以下の無料相談窓口を利用してみましょう。
自分に合っている相談方法を選び、少しでも心の負担を軽くしてください。
会社のハラスメント相談窓口|社内でパラハラを解決したい方向け
2020年6月1日からパワハラ防止法が施行されたので、会社によっては社内外にハラスメント窓口を設置しています。
社内のハラスメント窓口は人事部や総務部などに設置されており、担当者は同じ会社に勤める社員ですが、原則として相談者のプライバシーは守られます。
また、会社が法律事務所と委託契約を結び、社外にハラスメント相談窓口を設置しているケースもあります。
「パワハラを解決したいが、あまり大きな問題にしたくはない」という方は、社内の相談窓口を利用してみましょう。
ただし、社内の相談窓口を利用すると、加害者にも相談したことが伝わってしまい、パワハラがエスカレートする恐れがあるので要注意です。
会社には秘密で専門家に相談したいときは、社外の相談窓口を利用してください。
労働条件相談ほっとライン|電話でパワハラの被害を相談したい方向け
労働条件相談ほっとラインは厚生労働省の委託事業になっており、株式会社東京リーガルマインドが運営している電話専用の無料相談窓口です。
パワハラなどの労働問題を相談したいときは、以下のフリーダイヤルに電話してみましょう。
- ●電話番号:0120-811-610
- ●利用時間:12月29日~1月3日を除く平日の17時00分~22時00分
土日や祝日は9時00分~21時00分
労働条件相談ほっとラインを利用すると、専門知識のある相談員が法的な解決手段などをアドバイスしてくれるので、次に取るべき行動がわかります。
会社や加害者に対する指導はしてもらえませんが、パワハラを解決する糸口が見えないときや、社内に相談窓口がないときは利用してみるべきでしょう。
【参考元】労働条件相談ほっとライン
総合労働相談コーナー|専門家によるあっせんを利用したい方向け
総合労働相談コーナーとは、各都道府県の労働基準監督署や、労働局内に設置された無料の相談窓口です。
パワハラの被害も相談の対象になっており、解決方法のアドバイスを受けられますが、「あっせん」を利用するケースが一般的でしょう。
あっせんとは、弁護士や社会保険労務士などの紛争調整委員が当事者の間に入り、双方の主張を聴き取った上で、話し合いによる解決を目指す方法です。
調停や訴訟よりも解決までの期間が短く、相談者のプライバシーも守られるので、専門家に介入してほしいときはあっせんを利用してください。
ただし、あっせん期日に当事者が参加しなかったときは打ち切りとなり、調停や訴訟などに移行するケースもあります。
また、あっせんは民事上の和解に過ぎないため、加害者に慰謝料を支払わせるなどの強制力はありません。
労働局|会社への助言や指導をおこなってほしい方向け
各都道府県の労働局もパワハラの無料相談を受け付けており、会社に対して助言や指導をおこなってくれます。
ただし、あくまでも自主的な解決を促すための助言・指導なので、パワハラの根本的な解決は期待できません。
被害者の味方になってくれるわけでもないため、助言や指導で解決できなければ、専門家による「あっせん」を利用することになるでしょう。
みんなの人権110番|パワハラの悩みを打ち明ける人がいない方向け
身近にパワハラの悩みを打ち明けられる人がいないときは、みんなの人権110番の無料相談を利用してみましょう。
みんなの人権110番は法務局や地方法務局内の常設相談所になっており、以下の受付時間で電話の無料相談に応じています。
- ●電話番号:0570-003-110
- ●受付時間:平日8時30分~17時15分
相談内容によっては、会社に対してパワハラ防止を是正勧告してくれる場合があります。
また、法務省はインターネット人権相談受付窓口も設置しているので、夜間しか時間を取れない方でもパワハラの悩みを相談できます。
【参考元】インターネット人権相談受付窓口(法務省)
各自治体の無料相談|ひとまず相談だけでもしておきたい方向け
各自治体では身近な法律問題の無料相談を受け付けており、パワハラなどの労働問題も相談できます。
利用者は同じ市区町村に住民票がある方や、在勤・在学中の方に限られますが、弁護士などの専門家が相談に乗ってくれるので、適切なアドバイスを受けられるでしょう。
相談日や時間帯、予約の有無などは各自治体によって異なるので、市区町村役場のホームページや広報誌などを確認してください。
相談会場では弁護士との委任契約を結べないため、アドバイスのみになりますが、ひとまず相談だけでもしておきたい方にはおすすめです。
法テラス|経済的な余裕がない方向け
法テラスとは、法務省管轄の法律相談窓口です。
経済的な余裕がない方は法テラスの民事法律扶助制度を利用できるので、収入や資産要件を満たすと、30分×3回の無料相談や弁護士費用の立替払いを利用できます。
たとえば、 単身者の場合は月収が18万2,000円以下、預金などの資産が180万円以下であれば、民事法律扶助制度の要件を満たします。
相談方法は電話・メール・直接面談の3種類ですが、各地方事務所に弁護士が常駐しているとは限らないため、まずサポートダイヤルやメール相談を利用してみましょう。
- ●サポートダイヤル:0570-078374
- ●利用時間:平日9時00分~21時00分、土曜日9時00分~17時00分
なお、法テラスは弁護士を選べないので、パワハラに詳しい弁護士が担当するとは限らない点は注意しましょう。
【参考元】法テラス
警察や病院|パワハラで傷害を受けた方向け
パワハラのエスカレートで暴行や傷害を受けたときは、必ず警察へ通報し、病院の診察も受けてください。
加害者の暴力は暴行罪や傷害罪に問われる可能性があるため、警察に介入してもらい、加害者を拘束しなければならないケースもあるでしょう。
また、病院の診察を受けていると医療記録が残るので、法的措置でパワハラを解決する際には有力な証拠になります。
弁護士|法的措置でパワハラを解決したい方向け
法的措置でパワハラを解決したい方は、必ず弁護士に相談してください。
裁判の判決文には強制力があるので、勝訴すればパワハラの根本的な解決につながり、加害者には慰謝料も請求できます。
ただし、訴状の作成や口頭弁論への対応、有効な証拠も提示しなくてはならないため、弁護士のサポートがなければ訴訟手続きを進められないケースが一般的です。
ほとんどの弁護士は初回の相談料を無料にしているので、まず相談からスタートしてみましょう。
なお、弁護士にはそれぞれ専門分野があるので、ネットで法律事務所を検索し、何を専門に扱っているか確認してください。
労働問題の解決実績が豊富な弁護士であれば、心強い味方になってくれます。
パワハラ被害を相談するときのポイント
パワハラを社内や社外の窓口に相談するときは、以下のポイントを押さえておきましょう。
感情論で被害を訴えても解決の方向には進みにくいので、パワハラを客観的に証明できるかどうかが重要なポイントになります。
事実を正確に伝える
パワハラの悩みを相談するときは、事実のみを正確に伝えてください。
オーバーな表現は事実をゆがめることになるため、加害者は必要以上に重い処分を受ける可能性があります。
事実が発覚したときは自分自身の信用も失くし、処分を下した人を巻き込むばかりか、パワハラの解決にすら至らない状況になるでしょう。
労働問題は事実に基づき、厳正に対処しなくてはならないため、虚偽内容の相談は禁物です。
パワハラの経緯を整理しておく
パワハラの経緯を整理すると、原因分析から対処法の決定までがスムーズになります。
たとえば、ノルマ未達をきっかけとした上司からのパワハラであれば、ひとまず配置転換で当事者を切り離し、後でじっくり社員教育する手段もあります。
自分自身の連続ミスがパワハラのきっかけとなった場合、加害者への指導も必要ですが、処理工程を見直さなければ同じ被害が繰り返されるでしょう。
仕事の手順や環境面に問題があると、パワハラとは無縁だった人が加害者になる可能性もあるため、安易に「対人関係の問題」と判断しないことが重要です。
また、訴訟を起こした場合、口頭弁論では論理的な主張を展開しなければならないため、パワハラの経緯を正確に把握しておく必要があります。
パワハラの証拠を集めておく
パワハラの被害を相談する場合、電話の相談窓口以外では確実に証拠を求められます。
社内の相談窓口や労働局、弁護士などにパワハラを相談しても、証拠がなければ加害者を追求できません。
証拠の種類は後述しますが、あっせんや調停、訴訟の際にも証拠が重要視されるので、大切に保管しておきましょう。
パワハラに該当するかチェックしておく
パワハラは以下のように分類されているので、加害者の行為が該当するかどうかをチェックしてください。
- ●身体的な攻撃:殴る、蹴るなどの暴力
- ●精神的な攻撃:「死んでしまえ」などの人格を否定する発言
- ●人間関係からの切り離し:別室で仕事をさせるなど、仲間外れにする行為
- ●過大な要求:達成不可能な営業目標や事務処理スピードなどを要求する行為
- ●過小な要求:能力に見合わない単調な作業などを要求する行為
- ●個の侵害:飲み会に参加しない理由をしつこく聞くなど、プライバシーを侵害する行為
遅刻を繰り返す社員へきつく指導するなど、一般常識の範囲であればパワハラには該当しないので、自分が過剰反応しているかどうかもチェックしておきましょう。
パワハラの被害者が集めておくべき証拠
パワハラの被害者になったときは、以下の証拠を集めてください。
被害があったかどうかは自分で立証しなければならないため、できるだけ早く対処しておきましょう。
加害者からのメモやメール
パワハラの裏付けになるメモやメールがあれば、被害を立証しやすくなります。
加害者からのメモに「もう来なくていい」などと書かれていたときは、捨てずに保管してください。
メモや付せんなどを保管するときは、日付を書いたノートに挟んでおくなど、いつ被害を受けたのかわかるようにしておく工夫も必要です。
また、パワハラに該当する暴言がメールに書かれていた場合は、自宅のパソコンやスマートフォンに転送し、証拠を保全しておきましょう。
動画や音声データ
暴言や暴力などのパワハラが繰り返されているときは、タイミングを見計らって録画や録音をおこなってください。
加害者の上司から呼ばれたときや、上司の機嫌が悪いときなど、パワハラの被害を受けやすい状況になったらすぐに録画・録音をオンにしておきましょう。
「お前はたるんでいる」「君はやる気があるのか」など、個人名で呼ばれないときは誰が被害者かわかりにくいので、あえて自分の声も入れるようにしてください。
目撃者の証言
朝礼やミーティングで罵倒されるなど、ほかの社員もいる場でパワハラを受けている場合、証言に協力してくれる人が見つかるかもしれません。
このようなケースでは、「いつ自分が被害者になるかわからない」と誰もが思っているので、複数の人が協力してくれる可能性もあるでしょう。
スマートフォンなどの通信機器を持ち込めない職場や、パソコンを扱わない職種の場合、目撃者の証言だけが有力な証拠になるケースもあります。
パワハラでよくある相談例
上司との関係やパワハラの発生状況は個別に異なりますが、以下のような相談はよくある事例です。
- ●仕事でミスをする度に朝礼で全員に謝罪させられる
- ●終業間際に大量の仕事を押し付けられ、自分だけ定時退社させてもらえない
- ●本来の業務ではない資料整理やコピーばかりやらされる
- ●未婚や離婚の理由をしつこく聞かれた
- ●ものを投げつけられた、胸ぐらを掴まれた
- ●常態的に「ばか」や「あほ」などと呼ばれている
- ●全員参加のミーティングにも関わらず、自分だけ別の仕事をさせられた
- ●育児休業の申請時に「気楽に休めていいな」などと嫌味を言われた
同様の事例に該当する方は、メンタルを病んでしまう前に相談窓口を利用してください。
パワハラに関するよくある質問
パワハラの被害に悩んでいる方は、以下の「よくある質問」も参考にしてください。
慰謝料がいくらになるのか、仕返しされたらどうするかなど、疑問に感じていることはすべてクリアにしておきましょう。
加害者から仕返しされたときはどうする?
加害者から仕返しされたときは、社内の相談窓口や弁護士に相談してください。
パワハラは人材流出や社員のモチベーション低下など、さまざまなリスクがあるので、会社側も放置はできないでしょう。
ただし、実効性のある対処をしてもらえなかったときは、弁護士に解決を依頼してください。
弁護士が代理人になったことを加害者に伝えておけば、加害者も「裁判を起こされるのでは?」と警戒するため、高確率で仕返しがストップします。
パワハラの加害者は必ず処分される?
加害者の処分はパワハラの程度や会社の裁量次第です。
加害者が十分に反省していれば口頭指導や文書注意程度ですが、被害内容によっては降格や減給、懲戒解雇もあり得ます。
ただし、証拠が不十分だったときは、解雇が当然といえるパワハラであっても、注意程度の処分で終わる可能性があるでしょう。
軽い処分になった場合、パワハラが再発する確率が高いので、人事部などに異動を願い出た方がよいケースもあります。
会社によってはパワハラに対する仕組みが不十分で、会社自体がパワハラ体質になっているところも少なくありません。その場合は転職も検討し、懲戒規定にパワハラの定義が明記されているなど、具体的な対策をおこなっている会社に転職することをおすすめします。
パワハラの慰謝料はいくらが相場?
パワハラの慰謝料は50万~100万円程度が相場です。
慰謝料は被害の程度に応じて変わるので、以下のような状況であれば高額になりやすいでしょう。
- ●パワハラが何度も繰り返されている
- ●パワハラの期間が長い
- ●暴力によるパワハラで後遺症が残った
- ●被害者がうつ病になり仕事の継続が難しくなった
なお、あってはならないことですが、被害者が自殺に至った過去の判例では、裁判所が数千万円や1億円以上の慰謝料を認めたケースもあります。
24時間体制の無料相談窓口はある?
法律事務所によっては24時間体制で無料相談に応じています。
事前予約すると早朝や深夜でも相談できる法律事務所があるので、ネット検索で調べてみましょう。
事前にメールやLINEで被害状況などを送信すると、面談の際にはスムーズに話が進みます。
会社にいられなくなるのでは?
パワハラの加害者に何らかの処分が下されても、被害者が退職する必要はありません。
ただし、パワハラを受けたことでモチベーションが下がり、職場への愛着も失ってしまったときは、転職も視野に入れておくべきでしょう。
労働条件や給与面の条件、キャリアを活かせるかどうかなど、転職に関する情報が必要なときは、「総合転職・キャリアアップステージ」のコラムも参考にしてください。
さいごに|パワハラは1人で悩まずに無料相談窓口を利用してください
パワハラの被害を我慢し続けると、精神的ダメージが蓄積されてしまうため、うつ病を発症する可能性があります。
精神疾患になると仕事の継続が難しくなり、転職も困難になるので、収入が断たれてしまう恐れもあるでしょう。
最悪の場合は自殺に至るケースもあるため、パワハラの被害を受けたときは1人で悩まず、早めに無料の相談窓口を利用してください。
精神的苦痛を補償してほしいときや、法的措置でパワハラを解決したいときは、弁護士にも相談しておきましょう。