退職勧奨とは?解雇・自己都合退職との違いや失業保険への影響を解説
退職勧奨(たいしょくかんしょう)を受けたとき、「これは解雇と同じ?」「拒否したらどうなる?」と不安を感じるのは当然です。あくまで退職勧奨は会社からのお願いにすぎず、同意しない限り退職は成立しません。
この記事では、退職勧奨と解雇・自己都合退職との違いや、会社都合退職にした方がよい理由、失業保険への影響、応じる場合のメリット・デメリットなどを解説します。
また、違法となる可能性が高い退職強要の具体例や判断のポイントも紹介しています。会社から退職勧奨をされて、応じるか否か悩んでいる方は参考にしてみてください。
退職勧奨とは?解雇や自己都合退職との違い
退職勧奨は、会社が従業員に対して「退職してほしい」と働きかける行為です。「退職勧告」と表記される場合もあります。法律上は退職勧奨と退職勧告の違いはほとんどなく、同じ意味で使われる場面が多いです。
近年、退職勧奨に関する相談件数は増加傾向にあります。令和6年に厚生労働省の総合労働相談コーナーへ寄せられた相談件数は25,604件と、前年比1.5%増を記録しました。
また、解雇と混同されがちですが、法的な性質はまったく異なります。以下では、解雇・自己都合退職との違いをそれぞれ解説します。
【参考元】令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況|厚生労働省
退職勧奨は提案であって強制ではない
退職勧奨に応じるかどうかは、労働者自身が決めることです。会社から何度働きかけられても、同意しない限り雇用契約はそのまま続きます。たとえ就業規則に「退職勧奨に従う」といった記載があったとしても、従う義務はありません。
その場での即答も不要です。「一度持ち帰って検討します」と伝えるだけで問題なく、返答を保留する権利は労働者側にあります。上司から「早く結論を出してほしい」とプレッシャーをかけられても、焦る必要はありません。
解雇との違い
退職勧奨と解雇は、似ているようで法的にはまったく異なります。
| 比較項目 | 退職勧奨 | 解雇 |
| 決定権 | 労働者の合意が必要 | 会社が一方的に通知 |
| 法的ハードル | 低い(合意があれば成立) | 高い(合理的理由が必要) |
| 30日前の解雇予告 | 不要(合意退職のため) | 必要(又は解雇予告手当が労働者に支払われる) |
| 再就職への影響 | 会社都合による退職だと説明しやすい | 解雇は選考で不利になる可能性がある |
解雇は客観的に合理的な理由がなければ、裁判で無効と判断されます。解雇権濫用の法理と呼ばれるルールであり、会社が安易に解雇できない根拠になっています。
退職勧奨が多用されるのは、会社側が解雇のリスクを避けたいからです。会社の事情を把握しておくと、交渉の際に冷静に対応できます。
自己都合退職との違い
「自己都合退職」とは、労働者自らの意思で退職することです。対して退職勧奨に応じた場合は、会社側の働きかけによる退職として「会社都合退職」に分類されます。
退職勧奨に応じた場合、離職票には「事業主からの働きかけによるもの」と記載されます。ハローワークでは特定受給資格者として認定され、失業保険を有利な条件で受け取ることが可能です。
| 比較項目 | 会社都合退職(退職勧奨) | 自己都合 |
| 失業保険の給付制限 | なし(7日間の待期期間後すぐに受給可能) | 原則1ヵ月+7日間の待期期間 |
| 失業保険の給付日数 | 90~330日 | 90~150日 |
会社都合であれば給付制限がなく、待期期間の7日間を経るだけで受給が始まります。給付日数も年齢や勤続年数によっては最大330日と、自己都合の最大150日と比べて大幅に長くなります。
退職勧奨を受けた場合は、必ず会社都合退職として処理するよう求めましょう。
【関連記事】失業保険の受給期限は1年|受給期間を少しでも伸ばすための4つの知識
【参考元】基本手当の所定給付日数|ハローワークインターネットサービス
退職勧奨に応じるなら会社都合扱いが絶対条件
退職勧奨に応じると決めたなら、必ず会社都合での処理を約束させてから合意してください。
離職理由が自己都合になると、失業保険の給付開始が遅れるだけでなく、受け取れる日数も大幅に減ります。退職後の生活を守るために、会社都合扱いの確認は絶対に譲れないポイントです。
具体的には、退職合意書に「会社からの退職勧奨による合意解約」と明記させましょう。口頭での約束だけでは、あとからトラブルになるリスクが高いです。
万が一、会社が離職票を自己都合で処理した場合でも、ハローワークに事実を説明し証明できれば、会社都合に変更してもらえる可能性があります。会社都合扱いを確約させた上で、さらに解決金(上乗せ退職金)の交渉をセットで進めるのがおすすめです。
会社が自己都合退職にしたがる理由
会社都合の退職者を出すと、国から受け取っている一部の雇用関係助成金が受給できなくなる可能性があります。会社にとっては金銭的なダメージになるため、自己都合に誘導しようとするケースが少なくありません。
また、対外的なイメージの問題も自己都合退職にしたがる理由のひとつです。本人の意思で辞めた形にして、社内外への影響を最小限に抑えたいという企業心理が働きます。
ただし、会社の都合によって労働者が不利な条件を飲む必要はありません。退職勧奨を受けた事実がある以上、会社都合での処理を求めるのは正当な権利です。
【関連記事】会社都合退職とは?自己都合退職にしてほしいといわれたときの対処法も解説
退職勧奨に応じるメリット・デメリット

退職勧奨を受けたとき、「応じるべきか、断るべきか」は簡単に判断できる問題ではありません。退職勧奨に応じるかどうかを判断する前に、メリット・デメリットの両面を冷静に確認しておきましょう。
退職勧奨に応じるメリット
退職勧奨に応じるメリットのひとつは、通常の退職では得られない解決金(上乗せ退職金)を受け取れる可能性があることです。
交渉次第では、月収の数ヵ月分に相当する金額を上乗せしてもらえるケースもあります。弁護士を通じて交渉すると、より有利な条件を引き出しやすいです。
失業保険も、会社都合扱いになれば待機期間(7日間)終了後すぐに給付が始まります。自己都合の場合は原則1ヵ月の給付制限があるため、受給開始のスピードが大きく変わります。
さらに、有給休暇の完全消化や、会社負担での再就職支援サービスの利用を条件に盛り込める可能性も少なくありません。交渉の場をうまく活用すれば、退職後により有利なスタートを切れます。
退職勧奨に応じるデメリット
一方で、退職勧奨に応じると生じるリスクも、冷静に見ておく必要があります。毎月の安定した収入が途絶えかねない点は、退職勧奨に応じるデメリットだといえます。解決金や失業保険があるとはいえ、次の職場が決まるまでの生活費の心配は避けられません。
在職中に転職活動できる期間が短くなるため、焦りから条件を妥協した就職をしてしまうリスクもあります。再就職先の年収が現職より下がったり、勤続年数がリセットされて退職金の計算が不利になったりするケースも少なくありません。
応じるかどうかは、条件の中身を十分に確認してからでも大丈夫です。その場で即答せず、必要であれば弁護士に相談した上で決断するのがおすすめです。
退職勧奨を拒否するメリット・デメリット

退職勧奨を断る行為自体は、法律上まったく問題ありません。メリットとデメリットの両面を把握した上で、自分にとって何が大切かを判断しましょう。
退職勧奨を拒否するメリット
退職勧奨を拒否するメリットは、毎月の給与と社会保険がそのまま続く点です。生活設計を崩さずに済むため、焦って転職先を探す必要がなく、次のキャリアを冷静に考える時間を確保できます。
退職勧奨の拒否は「理不尽な要求には屈しない」という意思表示です。労働者の正当な権利として、退職勧奨の拒否は認められています。
会社に残り、業務でのパフォーマンスを示して評価を覆すチャンスもゼロではありません。例えば、退職勧奨の理由が能力不足である場合は、改善の余地を示せば状況が変わるケースもあります。
退職勧奨を拒否するデメリット
一方で、拒否した後に職場での居心地が悪くなるリスクは、冷静に見ておく必要があります。
退職勧奨の拒否を理由とした減給や降格など、不利益な取り扱いは法律上禁止されています。ただし、実務上は不利益な扱いを受ける可能性を完全には否定できないのが現実です。
また、上司や人事との関係が冷え込み、仕事の割り当てが減ったり、周囲から孤立したりするケースも少なくありません。毎日緊張した環境で働き続けると、心身への負担が大きくなりがちです。
拒否したあとも、会社が別の手段で退職を迫ってくる可能性があります。能力不足を理由にした厳しい査定、配置転換、昇進・昇給の事実上の停止といった形で、じわじわとプレッシャーをかけてくるケースも考えられるでしょう。
退職勧奨の拒否が正しい選択である場合もありますが、その後の動きを想定した準備が重要です。
退職勧奨に応じるべきかの判断ポイント3つ
退職勧奨に応じるかどうかの判断は、感情だけでするものではありません。条件・環境・資金の3つの軸で冷静に整理して判断すべきです。それぞれ順に確認していきましょう。
提示された条件が自分にとって有利か
まず確認すべきは、会社が提示している条件の中身です。目安として、解決金が月収の3〜6ヵ月分以上あるかどうかがひとつの基準になります。有給休暇を全消化できるか、離職票の退職理由が「会社都合」になっているかも合わせて確認しましょう。
金銭面では、解決金だけでなく未払残業代の清算なども含めた、総額で判断するのがポイントです。
| 確認項目 | チェックポイント |
| 解決金の金額 | 月収の3〜6ヵ月分以上が目安 |
| 離職理由 | 退職合意書に「会社都合」と明記されているか |
| 有給消化 | 残日数を全消化できるか |
| 退職日の設定 | 転職活動の時間を確保できる日程か |
| 再就職支援 | 転職エージェントの費用を会社が負担するか |
提示された条件が十分でないと感じた場合は、署名する前に交渉の余地があります。弁護士に相談すれば、より有利な条件を引き出せる可能性も高まるでしょう。
今の会社でこれ以上の成長や正当な評価が望めるか
退職勧奨に応じるか判断する上で条件と同じくらい重要なのが、「今の会社に残り続ける意味があるか」という視点です。
退職勧奨を受けたあと、仕事を完全に取り上げられていないか、異動や降格を打診されていないかを冷静に確認しましょう。会社が意図的に、退職勧奨を拒否したあなたの居場所を狭めている可能性があります。
努力で評価を覆せる環境なのか、またはすでに信頼関係が破綻しているのかを冷静に見極めなければなりません。
毎日不安を抱えながら働き続けて心身に与えるダメージも、軽視しないよう注意が必要です。将来的な健康やキャリアへの影響まで含めて、長期的な視点での判断をおすすめします。
再就職までの生活資金(失業保険+解決金)が十分か
辞めたあといつまで生活できるかという、資金面のシミュレーションも欠かせません。
失業保険は、会社都合退職の場合、ハローワークで手続き後に7日間の待期期間を経た、約5〜6週間後に振り込まれます。自分の年齢と勤続年数をもとに、総額でいくら受給できるかを事前に試算しておきましょう。
解決金は生活費の補填として使い切るのではなく、資格取得や転職活動の費用など、次への投資として計画的な活用がおすすめです。
無収入になっても半年〜1年は生活できる資金があれば、転職活動に余裕を持って取り組めます。資金面が不安な場合は、退職日を調整して在職中に転職活動を進めるという選択肢も検討してみてください。
退職勧奨に応じる場合の手続き
退職勧奨に応じると決めたら、まず書面で合意内容を残すことを最優先にしてください。口頭での約束はトラブルのもとです。退職日・解決金・離職理由など、全ての条件を退職合意書に明記させてから署名しましょう。
退職日を確定する際は、有給休暇の残日数を全て消化した上での最終出社日と退職日を明確にしておく必要があります。有給は捨てずに、受け取れる権利は全て行使しましょう。
退職後は、離職票が手元に届くまでの日数確認が不可欠です。退職後10日〜2週間以内に届くよう、担当者に手配を確認しておくと安心です。離職票がなければ、ハローワークでの失業保険の申請手続が始められないため、早めに確認しておきましょう。
手続きの流れ

退職勧奨に応じる場合、交渉から退職完了までを段階的に進める必要があります。
退職の条件に合意したら、必ずメールや書面で内容を残しましょう。口頭でのやり取りだけで進めると、あとから言った・言わないのトラブルになりやすいため注意が必要です。
合意内容が固まったら、退職合意書への署名に進みます。会社から「退職届を書いてほしい」と言われても、退職届ではなく退職合意書を優先してください。合意書に「退職勧奨による合意解約」と明記させてから署名すると安心です。
最後に、業務の引継ぎや関係者への挨拶を丁寧におこないましょう。会社都合での退職であっても、円満な退職はその後の転職活動での評判にも影響します。
【関連記事】退職勧奨されたらどうすればいい?拒否する・しない場合の対応方法を解説
準備するべき書類
退職の手続きにあたって、受け取るべき書類と手元に残しておくべき書類を整理しておきましょう。会社から必ず受け取るべき書類は以下のとおりです。
| 書類名 | 使用する場面 |
| 離職票(1・2) | 失業保険を申請するとき |
| 雇用保険被保険者証 | 失業保険を申請するとき 転職先で雇用保険に加入するとき |
| 源泉徴収票 | 確定申告をするとき 転職先で年末調整をするとき |
| 年金手帳または基礎年金番号通知書 | 国民年金へ切り替えるとき 転職先で厚生年金の加入手続をするとき 年金を受給するとき |
また、交渉する際の証拠として手元に保管しておくべき書類も確認してください。
| 書類・データ | 用途 |
| 退職合意書のコピー | 合意内容を証明するため |
| 雇用契約書・給与明細 | 未払残業代の確認・解決金交渉の根拠とするため |
| 退職金規定の写し | 退職金の支給基準を確認するため |
| 面談時の録音・メールの履歴 | 違法な退職強要があった場合の証拠とするため |
書類は退職後にはなかなか入手しにくくなります。在職中に揃えられるものは、早めに手元にコピーを取っておくことが大切です。
退職勧奨に応じるときの注意点
署名する前に、退職届を自己都合で書かされないよう注意が必要です。退職届の提出を求められた場合は、退職届ではなく退職勧奨に伴う合意解約書を作成するよう求めましょう。
その場でサインを急かされても、即答は禁物です。「家族と相談してから返答します」と伝え、一度持ち帰ってください。
退職合意書に清算条項が含まれている場合は注意が必要です。署名前に、未払残業代や各種手当の未払いがないかを必ず確認しましょう。一度同意すると、後から請求できなくなります。
また、同業他社への転職を制限する競業避止義務条項が含まれていないかも確認が必要です。不当に制限する範囲が広い場合は、条項の削除または修正を交渉するのがおすすめです。
違法な退職強要に該当する言動の具体例
退職勧奨はお願いの範囲に留まる限り適法ですが、一線を越えると退職強要として違法になります。具体的には、以下のような言動がある場合は、違法と判断される可能性が高いです。
| 言動の種類 | 具体例 |
| 脅迫的な発言 | 「辞めなければ解雇する」 「降格させる」 「異動させる」 |
| 退路を奪う発言 | 「お前の居場所はもうない」 「拒否する選択肢はない」 |
| 環境による追い込み | 仕事の取り上げ 無視 席の隔離 チームからの排除 |
| 反復・長時間の面談 | 毎日呼び出す 数時間にわたって面談を強いる |
辞めるか辞めないかを選べる状況を保障しない働きかけは、いずれも問題のある行為と判断される可能性があります。
精神的に追い込まれている状況であれば、パワハラに該当するケースも少なくありません。一人で抱え込まず、労働基準監督署や弁護士への相談を検討してください。
自分が受けている勧奨が違法か判断する基準

判断に迷ったら、基準となる3つのポイントを確認してみてください。
まず確認すべきは、面談の回数や頻度です。1〜2回の説明は適法な範囲内ですが、断ったあとも何度も繰り返し呼び出されたり、期限を切って返事を迫られる場合は違法性が疑われます。
次に、発言の内容を振り返りましょう。選択肢を与えず、退職一択に追い込むような言い方は問題のある言動です。
拒否した後の会社の対応も確認してください。仕事を取り上げられた・待遇が急に悪化したといった変化があれば、退職強要のための嫌がらせである可能性があります。
気になることがあれば、面談の内容をメモや録音で残しておきましょう。証拠があると、弁護士への相談時に状況を整理しやすくなります。
退職勧奨に納得できないときの対処法4つ
退職勧奨を受けても労働者に応じる義務はありません。不当な圧力をかけられている場合は、法的な手段を使って対抗できます。退職勧奨に納得できない場合は、4つの対処法を順番に確認してみてください。
退職しない意思を伝える
まずおこなうべきは、「辞める意思はない」という意思表示を、はっきりと伝えることです。落ち着いた口調で「現時点で退職する意思はありません」と、明確に伝えるだけで問題ありません。
能力不足などを退職理由として挙げられた場合は、自分の実績や貢献度を根拠に静かに反論しましょう。感情的な言い合いは避け、具体的な実績や数字で応じるのがポイントです。
しつこく繰り返される場合は、口頭だけでなくメールで拒否の意思を文面に残すのがおすすめです。「退職には応じられません」と明記したメールを送るだけで、拒否の意思を示す証拠になります。
無視したり曖昧な返答を続けたりするのは避けましょう。最終的な意思を明確に伝える姿勢が、自分の立場を守る上で重要です。
退職を強いられた証拠を集める
納得できない退職勧奨を受けているなら、証拠の収集が欠かせません。
退職を強いられた証明として、面談の録音は有効な証拠のひとつとなります。日本では、自分が参加している会話を無断で録音しても、違法にはならないケースがほとんどです。裁判や労働審判の場でも証拠として認められるケースが多いため、録音しておきましょう。
録音が難しい場合は、面談後すぐに面談日記をつけるのがおすすめです。以下のような内容を、できるだけ詳細にメモしておいてください。
《面談日記に記載する主な内容》
- 日時
- 場所
- 発言者
- 具体的な発言内容
- 感じた圧力など
仕事を取り上げられた、無視されるようになったなど、退職を促すための嫌がらせとみられる状況があれば、メールや写真で記録に残しておきましょう。証拠が多いほど、弁護士や労働機関への相談時に状況を正確に伝えやすくなります。
退職金や解雇手当は受け取らない
納得していないのに、会社から退職金や解雇手当にあたるお金が振り込まれていた場合、そのまま受け取るのは危険です。
退職を前提として支払われた金銭を受領すると、退職に同意したとみなされるリスクがあります。受け取った事実が、のちの法的な手続きで不利に働く場合があります。
会社が一方的に口座へ振り込んできた場合は、すぐに弁護士へ相談しましょう。受け取った場合でも「退職には同意していない」という意思を明示した上で返還すれば、同意とみなされないケースもあります。
受け取る前に、その金銭が何の名目なのかを必ず確認しましょう。解決金・退職金・慰謝料など、名目によって法的な意味が異なります。名目不明のまま署名・受領するのは避けてください。
社内窓口や労働基準監督署、弁護士へ相談
職場からの退職勧奨に悩んでいる場合、公的機関や専門家を頼れば、状況を変えられる可能性が高まります。
| 相談先 | メリット | デメリット |
| 社内の相談窓口・コンプライアンス部門 | 上司の言動を内部で申告できる | 会社側の立場であるため中立性に限界がある |
| 労働基準監督署 | 労働法違反の是正指導を求められる | 退職勧奨の適否には直接介入しにくい |
| 労働局の総合労働相談コーナー | 無料で中立的な仲介を受けられる | 強制力はなく、会社が拒否すれば進まない |
| 弁護士 | 代理人として会社と直接交渉してくれる | 費用がかかる(初回相談は無料の事務所も多い) |
退職勧奨が違法な退職強要に該当すると疑われる場合、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士は依頼者の代理人として会社と交渉し、法的な手段で権利を守ってくれます。初回相談を無料で受け付けている事務所も多いため、まずは話を聞いてもらうだけでも、状況の整理に役立ちます。
退職勧奨で困ったら「ベンナビ」弁護士へ相談
退職勧奨を受けて「自分一人で交渉できるか不安」「拒否した後の対応がわからない」という方には、ベンナビの利用がおすすめです。
ベンナビは、労働問題に強い弁護士を検索できるサイトです。退職勧奨・退職強要の対応経験が豊富な弁護士が多数掲載されており、24時間いつでも相談の申し込みができます。
地域・相談内容・費用などで絞り込み検索にも対応しているため、自分に合った弁護士を見つけやすいです。まずは気軽に、弁護士を探してみましょう。
退職勧奨に弁護士が介入した事例をいくつかご紹介します。
※以下事例は本記事監修者が解決したとは限りません。詳細は参照元のベンナビ労働ページをご確認ください。
解決事例1:退職パッケージの交渉に成功した事例
外資系企業に勤務する女性が退職勧奨を受け、弁護士に相談した事例です。高額の給与ゆえに会社が条件の引き上げを渋る状況でしたが、担当弁護士が会社側と直接交渉に臨みました。
交渉の結果、月給5ヵ月分にあたる特別退職金500万円の支払いを獲得しています。さらに在籍期間の1ヵ月延長、確定拠出年金の優遇条件も合わせて引き出す交渉に成功しました。
給与が高いほど会社は条件引き上げを渋る傾向がありますが、弁護士が介入したため、当初提示を大きく上回る条件での解決が実現しました。
【参考元】退職パッケージ交渉に成功(外資系、退職勧奨)|ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)
解決事例2:退職勧奨を停止させることに成功した事例
退職勧奨を拒否し、会社に残り続けられるようになった事例です。
メーカーに勤務する男性が、懲戒処分の可能性をほのめかされながら退職を促される状況に置かれ、弁護士へ相談しました。弁護士のアドバイスのもと、退職の申し出を明確に拒否し、会社に残ることに成功しています。
退職パッケージの提案を受けた場合でも、会社に留まる方がよい選択肢となるケースもあります。弁護士に依頼したことで、圧力に屈せず自分の意思を守り抜いた事例といえます。
【参考元】退職勧奨の停止の実現成功事例(JTC、退職勧奨)|ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)
解決事例3:退職勧奨を拒否したことで解雇され、解決金支払いで和解した事例
金融関連会社でリストラが実施され、部長職にあった方が退職勧奨を拒否したところ解雇されました。弁護士とともに訴訟を起こし、地裁で解雇無効の判決を獲得した事例です。
会社が控訴したため控訴審で和解交渉に移行しています。最終的に、解雇時から解決時までの賃金に加えて3年分の賃金相当額を解決金として獲得する形で和解が成立しました。
復職を希望していたものの会社側が拒否したため金銭解決となりましたが、弁護士が粘り強く交渉することで、実質的な補償を最大限に引き出した事例です。
【参考元】リストラによる退職勧奨を拒否し解雇されたが訴訟提起し解決金支払いで和解した事例|ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)
退職勧奨に関するよくある質問
退職勧奨を受けた方から特に多い疑問をまとめました。会社から退職勧奨を受けて悩んでいる方は参考にしてみてください。
Q1. 退職勧奨に応じると自己都合退職にされてしまいますか?失業保険への影響は?
退職勧奨に応じた場合、原則は会社都合として処理されます。ただし、会社が意図的に自己都合として扱おうとするケースがあるため、注意が必要です。
ハローワークで「会社からの働きかけによる退職」と認められれば、特定受給資格者として扱われます。給付制限なく失業保険を受け取れ、給付日数も年齢・勤続年数によっては最大330日と、自己都合に比べて大幅に有利です。
万が一、離職票に自己都合と記載されていた場合でも、ハローワークに事実を説明すれば会社都合に変更できる可能性があります。失業保険を有利な条件で受け取るためにも、離職理由の確認は退職前に済ませておきましょう。
退職勧奨を受けた面談の録音や、やり取りしたメールが残っていれば、変更を求める際の根拠になります。退職勧奨を受けた段階から、記録を残しておくのがおすすめです。
Q2. 退職勧奨を拒否し続けてもしつこい場合、違法(退職強要)になりますか?
退職勧奨は、労働者の自由な意思を尊重した範囲であれば適法です。しかし、許容範囲を超える執拗な働きかけは、不法行為(退職強要)として違法になります。一般的に、違法性が認められやすいケースは以下のとおりです。
《違法性が認められやすいケース》
- 退職を断ったあとも毎日のように呼び出される
- 面談1回あたり数時間にわたって拘束される
- 「辞めなければ解雇」「居場所はない」など、脅される
- 複数の上司・役員で囲んで圧力をかけられる
違法な退職強要が認められた場合、会社に対して損害賠償(慰謝料)を請求できる可能性があります。退職勧奨に異常性を感じたら、記録を残しながら早めに弁護士へ相談してみてください。
Q3. 能力不足や病気を理由に退職勧奨される人の特徴や、拒否できる基準を教えてください。
退職勧奨の理由が能力不足や、病気(うつ病など)の場合でも、退職を断る権利はあります。退職勧奨の理由に関わらず、拒否しても問題ありません。
能力不足を理由に解雇するには、会社がまず教育・指導・配置転換などの改善機会を与えていた事実が必要です。改善の機会を与えずに解雇すれば、裁判で解雇は無効とされる可能性があります。
病気を理由とした退職勧奨も断れます。就業規則に休職の定めがある場合、原則として会社は、休職させて回復を待つ対応を先に取らなければいけません。納得できない場合は、弁護士に相談した上で判断するのがおすすめです。
まとめ|退職勧奨で困ったら弁護士へ相談
退職勧奨は「辞めてください」という会社からのお願いであり、断る権利があります。
応じると決めた場合でも、退職理由が会社都合になっているかの確認や、解決金の交渉など、やるべきことは少なくありません。一方、拒否する場合も、証拠を集めながら冷静に意思表示を続ける姿勢が重要です。
どちらの選択をするにせよ、早めに弁護士へ相談すれば選択肢が広がり、交渉を有利に進められるケースは多くあります。すぐ決断しなければならないわけではありません。まずは状況を整理するだけでも、次の一手が見えてきます。
退職勧奨に関するお悩みは、ベンナビへの相談がおすすめです。退職勧奨・退職強要の対応経験が豊富な弁護士が多数掲載されています。初回相談を無料で受け付けている事務所も多いです。一人で抱え込まず、弁護士に相談して、自分に合った解決を目指しましょう。
