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労働基準監督署で不当解雇について相談してもいい?不当解雇の対処法3つも解説

弁護士監修記事
労働問題
2024年05月21日
2024年05月21日
労働基準監督署で不当解雇について相談してもいい?不当解雇の対処法3つも解説
この記事を監修した弁護士
藤田 大輔弁護士 (梅田日輪法律事務所)
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厚生労働省が公表する「令和3年労働争議統計調査の概況」によると、解雇反対や被解雇者の復職に関する労働争議は以下のようになっています。

  1. 経営・雇用・人事に関する争議96件のうち、解雇反対や被解雇者の復職は57件
  2. 対前年差で16件の増加
  3. 対前年増減率は39.0%

解雇理由に正当性がなく、不当解雇になった場合は撤回を求めるべきですが、会社との関係が悪化していれば、和解交渉がストレスになってしまうでしょう。

本記事では、労働基準監督署に不当解雇を相談した場合、どのように対応してくれるのかわかりやすく解説していきます。

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労働基準監督署に不当解雇を相談したときの対応

労働基準監督署に不当解雇を相談した場合、対応は以下のようになります。

労働基準監督署には会社に対し不当解雇を是正指導する権限がないため、実効性のある対処は期待できません。

労働基準監督署は基本的に不当解雇の相談ができない

労働基準監督署は基本的に労働基準法など労働基準関係法令の違反に対応しており、逮捕権も有していますが、警察と同じく民事不介入です。

解雇理由に正当性がなくても、会社が労働基準法を遵守しており、労働災害も発生していなければ、労働基準監督署は不当解雇の相談を受け付けてくれない可能性が高いです。

解雇撤回などの交渉はしてもらえない

労働基準監督署に不当解雇の相談をしても、解雇撤回などの交渉はしてもらえません

不当解雇に当たるかどうかは民事上の問題になるため、労働基準監督署は判断できないことになっています。

解雇の手続きに問題があるときは相談できますが、復職のサポートではなく、「正当な手続きを経て解雇するように」といった指導になる可能性があります。

労働基準監督署は解雇予告除外を認定するケースもある

労働者の勤務態度に問題があった場合、労働基準監督署は解雇予告除外を認定するケースがあるので注意してください。

会社が労働者を解雇する場合、原則として解雇予告しなければなりません。

ただし、労働者の勤務態度が著しく不良であり、会社側が指導しても改善されない状況を労働基準監督署が認めると、即時解雇される恐れがあります。

労働基準監督署には何を相談できる?

労働基準監督署は労働問題全般を扱っているように思えますが、以下のように相談できる内容が限られています。

会社の行為が労働基準関係法令に違反していないときは、別の相談窓口を案内してもらいましょう。

労働基準法違反の是正

労働基準監督署の対応範囲は以下のようになっており、労働基準関係法令に違反した会社の指導や、是正勧告などが主な業務です。

  1. 労働基準法に関する管轄内企業の監督・指導および各種届け出などの受け付け
  2. 安全衛生面や労働者の健康に関する指導や審査
  3. 労働災害の認定や労災保険の給付など

不当解雇のみの相談には乗ってもらえませんが、長期的な給料未払いや、労災隠しなどがあれば、迅速に対応してくれる可能性があります。

ただし、労働基準法違反の証拠を提示しなければ、相談には乗ってもらえない可能性があるので注意してください。

不当解雇を相談できる窓口などの案内

労働基準監督署に不当解雇を相談した場合、署内または労働局に設置された「総合労働相談コーナー」や、自治体の相談窓口などを案内されるでしょう。

総合労働相談コーナーに相談すると、話し合いによる解決手段の「あっせん」を利用できるので、専門家が介入したうえで会社と和解できる可能性があります。

ただし、あっせんには法的拘束力がないため、会社が従わなければ不当解雇は解決できません。

不当解雇されたときの対処法3つ

会社から不当解雇されたときは、以下のように対処してください。

継続して働きたいときは会社へ解雇を撤回してもらうことを目指さなければなりませんが、復職する気になれないときは、転職を考えておくべきでしょう。

不当解雇を主張して撤回を求める

復職を望む場合は不当解雇を主張し、会社に解雇撤回を求めてください。

解雇は理由が合理的なものであるだけでなく必要な手続きを踏む必要があるので、会社が正式な解雇の手続きを踏んでいなければ雇用契約は継続しています。

また、労働基準法には解雇について以下の定めがあります。

  1. 入社時には解雇理由を書面で明示すること
  2. 労災事故によるけがや病気、産前産後の休業中およびその後30日間の解雇はできないこと
  3. 労働基準監督署などへの申告や、有給休暇の取得を理由とした解雇はできないこと
  4. 解雇する日の30日前には解雇予告すること

解雇に関する細かなルールは就業規則にも記載されているので、正当理由がない解雇は無効にできます。

解雇に対する解決金を請求する

不当解雇は無効となりますが、復職を希望しないときは会社側に解決金を請求することも検討しましょう

解決金の相場は「給料の3~6ヵ月分+慰謝料」ですが、解雇された日から長期間経過していた場合、給料の部分は6ヵ月分超を支払ってもらえる可能性があります。

また、パワハラやセクハラで精神的苦痛が生じていたときは、慰謝料の増額も認められる可能性もあるでしょう。

解決金の請求は書面を内容証明郵便で会社に送付し、会社が支払いに応じるようであれば、具体的な金額を交渉してください。

退職して再就職に専念する

不当な理由で解雇された場合、退職して再就職に専念したほうがよいケースもあります。

一度争った会社側とは良好な労使関係を築きにくいので、解雇撤回で復職できたとしても、居心地の悪さを感じてしまうでしょう。

会社側が訴訟を避ける目的だけで解雇を撤回した場合、復職後に遠方へ異動させられるなど、不当な扱いを受ける可能性も考えられます。

復職を望まないときは、キャリアを活かせる再就職先を探しましょう

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不当解雇の撤回を求めることができるケース

会社が労働者を解雇する場合、解雇理由が合理的であることが必要となります。

以下のようなケースは不当解雇にあたるため、解雇撤回を要求できます。

解雇理由に合理性がない場合

解雇理由には合理性が必要なので、以下のような理由では労働者を解雇できない可能性が高いです。

  1. 配置転換などの措置をおこなわないまま、協調性なしと判断して解雇する
  2. 十分な指導なく、能力不足として解雇する
  3. 十分な指導なく、遅刻や欠勤を理由として解雇する
  4. 不合理な上司の命令に従わないことや、正当な転勤拒否を理由に解雇する

十分な指導もなく、単に「仕事ができない」といった理由で解雇した場合、不当解雇に該当する可能性が高いです。

「言うことを聞かない社員だ」などの理由で解雇するケースもありますが、業務命令に合理性がなければ正当な解雇理由にはならないので、解雇撤回を求めましょう。

法律上の解雇禁止が適用される場合

労働基準法だけではなく、男女雇用機会均等法や労働組合法、育児介護休業法などに違反した解雇は無効になるため、会社に撤回を要求してください。

産前産後や介護のための休業などを理由に解雇した場合、労働基準法違反になるため解雇は無効です。

また、労働組合に加入していることや、労働基準監督署に申告したことを理由とした解雇であれば、法律上の解雇禁止が適用されるので覚えておきましょう。

解雇の手続きに違反がある場合

必要な手続きを踏まず解雇した場合も不当解雇に該当します。

この場合、解雇理由に正当性があっても無効です。

就業規則に定めのない理由による解雇

解雇理由については就業規則に定めておく必要があります。

たとえば、「注意や指導をおこなっても協調性に改善がみられない場合」などの規定がなければ、協調性の欠如を理由とした解雇ができない場合があります。

ただし、社会通念と照らし合わせて勤務態度が著しく不良だった場合、解雇が有効となる可能性があります。

経営状態の悪化を理由とした解雇

会社の経営状態が悪化している場合、人員整理のために解雇するケースがあります。

いわゆるリストラですが、解雇したあとも求人募集しているときや、財務状況を開示せずに「会社の危機だ」といって解雇した場合、不当解雇に該当する可能性があります。

整理解雇をする場合、会社は希望退職者を募集する、または解雇する労働者を公正な基準で選定するなど、解雇を避けるための努力をしていたかどうかが問われます。

経営者側の一方的な都合による解雇

「相性が合わず、気に入らないから解雇する」などの解雇理由であれば、経営者側の一方的な感情による合理的な理由がなく、解雇は無効となる可能性が高いです。

単なる好き・嫌いの感情論では解雇できないので、必ず不当解雇を主張してください。

その他の解雇理由

一部の社員から職務怠慢などの報告を受け、本人に事情聴取することなく解雇した場合も、不当解雇に該当する可能性が高いです。

また、正当な解雇理由になる欠勤を繰り返していても、Aは解雇されたがBは指導のみだったなど、公正な処分になっていなければ不当解雇になる可能性があります。

不当解雇を主張するときのポイント

会社に不当解雇の主張をする場合、以下のポイントをよく理解しておく必要があります。

不当解雇かどうかはすぐに判断できないので、退職の意思表示には注意してください。

就業規則や服務規程を確認しておく

就業規則や服務規程を確認すると、会社が決めたルールに違反していたかどうかを判定できます。

就業規則などは入社時に手渡されることがありますが、変更があった場合は周知のみになるケースが多いので、必ず現行版を確認してください。

解雇通知書や解雇理由証明書を請求する

会社から解雇を言い渡されたときは、必ず解雇通知書を請求してください。

解雇理由証明書には、解雇理由が記載されているので、不当解雇に該当するかどうかの判断資料になります。

解雇通知書は「就業規則の○○に違反している」など、具体性のない理由が書かれているケースが多いため、不当解雇を追求する証拠になります。

また、解雇理由証明書は労働基準法の規定により、会社は請求を拒否できません。

不当解雇の証拠を少しでも多く集める

不当解雇を主張するときは、以下の証拠も集めておきましょう。

  1. 賃金規定
  2. 人事評価書
  3. 勤務成績表
  4. 給与や賞与の明細書
  5. 業務上のメール
  6. 解雇に関して会社側とやりとりしたメモなど

不当解雇かどうかは総合的な判断が必要になるため、証拠は少しでも多いほうが有利です。

退職に応じる意思表示はしない

解雇理由に合理性がないときは、退職に応じる意思表示をしないように注意してください。

会社から退職合意書を提示されても、解雇理由に納得できなければ署名する必要はありません。

なお、「もう来なくていい」と言われても通常どおり出勤して構いませんが、職場から締め出されるなどした場合はひとまず引き下がった方がよいでしょう。

さいごに|不当解雇の撤回を求めるときは証拠を押さえておきましょう

解雇理由に正当性がない場合、会社に残る場合であっても退職する場合であっても不当解雇を主張するには証拠が必要です。

不当解雇の証拠を押さえると、解雇を撤回してもらえる確率が高くなり、退職する場合は解決金を請求できる可能性が高くなります。

不当解雇の証拠収集が難しいときは、同僚社員や総務・人事の担当者など、協力してくれる人を探しておきましょう

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
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