近くの弁護士・法律事務所を探せる検索サイト

不当解雇されたら弁護士に相談を|目指すべき解決内容・弁護士費用・弁護士の選び方

弁護士監修記事
労働問題
2023年02月14日
2024年11月13日
不当解雇されたら弁護士に相談を|目指すべき解決内容・弁護士費用・弁護士の選び方
この記事を監修した弁護士
阿部 由羅弁護士 (ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

解雇が違法・無効となるケースは、きわめて多いのが実情です。

そのため、会社から一方的に解雇された場合、すぐに弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士への相談により、復職請求や解決金に関する交渉や、労働審判・訴訟を円滑に進めることできます。

複数の弁護士に相談したうえで、信頼できる弁護士に不当解雇事件の対応を依頼してください。

今回は、不当解雇について弁護士に相談すべき理由や、目指すべき解決内容・弁護士費用・弁護士の選び方などを解説します。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ労働問題で
労働問題に強い弁護士を探す

不当解雇とは?

まずは「不当解雇」とは何かについて、労働法の規定を踏まえて整理しておきます。

不当解雇=解雇要件を満たさない違法・無効な解雇

「不当解雇」とは、解雇要件を満たさない違法・無効な解雇のことです。

解雇には「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」の3種類があり、それぞれ要件が存在します。

解雇の種類に対応する要件を満たさない解雇は、違法・無効です。

また、すべての解雇に共通して、「解雇権濫用の法理」(労働契約法16条)に抵触する場合には違法・無効となります。

(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用元:労働契約法16条

懲戒解雇・整理解雇・普通解雇の各要件

「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」の各要件をまとめます。

懲戒解雇の要件

「懲戒解雇」とは、従業員の就業規則違反を理由に、懲戒処分の一環としておこなわれる解雇を意味します。

懲戒解雇の要件は、以下のとおりです。

①就業規則上の懲戒事由に該当すること 少なくとも一つの懲戒事由に該当することが、懲戒解雇の要件となります。
②懲戒解雇に客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当であること 違反行為の悪質性や、改善指導の結果などを考慮して、懲戒解雇の客観的合理性・社会的相当性の有無が判断されます。

整理解雇の要件

「整理解雇」とは、経営不振などを理由に、人員整理(リストラ)の一環としておこなわれる解雇を意味します。

整理解雇の適法性は、以下の4要件を総合的に考慮して判断されます。

①整理解雇の必要性 著しい経営不振により、整理解雇が真にやむを得ない状態にあることを意味します。
②解雇回避努力義務の履行 解雇以外の手段を尽くしてもなお、経営不振を脱却できず、整理解雇しか手段が残されていないことを意味します。
(例)
・経費節減
・役員報酬の減額
・希望退職者の募集
・出向
・一時帰休
・新規採用の削減
③被解雇者選定の合理性 整理解雇の対象者は、客観的に合理的な基準に基づき、公正に選定しなければなりません。
④解雇手続きの妥当性 整理解雇につき、労働者側(本人・労働組合等)にきちんと説明をして、納得を得る努力をすることが求められます。

普通解雇の要件

「普通解雇」とは、懲戒解雇・整理解雇以外の解雇全般を意味します。

普通解雇の要件は、以下のとおりです。

①労働契約上の解雇事由に該当すること 少なくとも一つの解雇事由に該当することが、普通解雇の要件となります。
②普通解雇に客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当であること 解雇事由に当たる事情の深刻さや、解雇以外の方法による改善可能性の有無などによって、普通解雇の客観的合理性・社会的相当性の有無が判断されます。

不当解雇の可能性はきわめて高い

すべての解雇に共通して適用される「解雇権濫用の法理」(労働契約法16条)によって、会社が一方的におこなう解雇は、その多くが不当解雇に該当すると考えられます。

もし会社から突然解雇された場合には、真っ先に不当解雇の可能性を疑い、弁護士へ相談することをおすすめします。

不当解雇された場合、会社に対して主張できること

会社から不当解雇された場合、労働者は交渉・労働審判・訴訟などを通じて、会社に対して以下の内容を主張できます。

 解雇無効の確認・復職、解雇期間中の賃金全額の支払い請求

不当解雇は無効であるため、労働者は会社に対して、解雇が無効であることの確認と復職を主張できます。

さらに解雇期間中に就労できなかったことは、専ら会社の帰責性によるため、その期間中の賃金請求権は失われません(民法536条2項)。

したがって、労働者は会社に対して、解雇期間中の賃金全額を遡って支払うよう請求できます。

 退職を受け入れたうえで、解決金の支払いを求める

不当解雇をするような会社にこれ以上残りたくない場合は、退職を受け入れる選択肢もあります。

その際、不当解雇は本来無効であることを交渉材料として会社に対して解決金(退職金)の支払いを求めることが考えられます。

会社としても、不当解雇を主張されて労働審判や訴訟に発展しては大変なので、解決金の支払いに応じるケースが多いです。

解決金額の相場は、勤続期間や解雇の悪質性の程度などによりますが、おおむね賃金の3~12か月分程度が標準的です。

不当解雇について弁護士に相談すべき理由

不当解雇に関して、会社に対して何らかの請求をおこなう場合には、事前に弁護士へ相談することをおすすめします。

法的な論拠に則って、解雇の無効を正々堂々主張できる

弁護士に相談すれば、解雇の不当性・違法性について法的な根拠を掲げて、労働者としての権利回復に向けた主張を正々堂々と展開できます。

労働基準法・労働契約法の正しい理解を基に、適切な主張を展開すれば、労働者側にとって有利な解決を得られる可能性が高まります

和解交渉の落としどころを適切に見定められる

不当解雇の問題については、まず会社との交渉によって和解を模索するのが一般的です。

しかし、会社から提示される和解案は、必ずしも法律・実務の取扱いや相場観に沿ったものとは限りません。

不当に低い金額を提示される可能性も大いに考えられます。

弁護士に不当解雇の和解交渉を依頼すれば、法的な相場観を踏まえたうえで、会社側提案の妥当性を適切に判断できます。

その結果、不本意な内容で会社と和解してしまう事態を防ぐことができるでしょう。

会社と対等に交渉できる

資金力と組織力に優れた会社に対して、労働者が一人で立ち向かうのは非常に大変です。

弁護士を代理人として会社との交渉に臨めば、法的な知見を裏付けとして、強大な会社とも対等に交渉することができます。

労働審判・訴訟の法的手続きを一任できる

不当解雇に関する会社との交渉が決裂した場合、法的手続きである労働審判や訴訟に場を移して争うことになります。

労働審判や訴訟は、手続きについてのルールが法律で厳格に決まっています。

不慣れな方にとっては戸惑う部分が多く、準備にかなりの時間と労力を要することが多いです。

弁護士を代理人としていれば、労働審判や訴訟へ移行する際にも、手続きへの準備や対応をスムーズにおこなうことができます

特に会社との間で主張内容の乖離が大きく、交渉による妥結が期待できそうにない場合には、弁護士への依頼がおすすめです。

求職活動などに専念できる

不当解雇問題の解決を弁護士に一任すると、労働者(依頼者)本人は、自身の仕事や生活に専念することができます。

特に不当解雇された会社へ戻る気がない場合には、求職活動をおこなうケースが大半です。

弁護士に不当解雇についての対応を任せておけば、求職活動により多くの時間を割けるため、希望に沿った新職場が見つかる可能性が高まります。

不当解雇事件の弁護士費用は?項目ごとの金額目安

不当解雇事件を弁護士に依頼する場合、弁護士費用の金額が心配だという方もいらっしゃるかと思います。

弁護士費用の具体的な金額は、弁護士によって異なりますが、大まかな金額の目安は存在します。

以下では弁護士費用の項目ごとに、目安となる金額やその計算方法を紹介します。

※2004年4月1日以降廃止されている、「日本弁護士連合会報酬等基準」をベースとしつつ、実務の実態を踏まえて内容を調整しています。

不当解雇事件の相談料

正式依頼前の段階で、不当解雇について弁護士に相談する際には、相談料がかかります。

相談料の金額目安は、30分ごとに5,500~11,000円程度(税込)です。

ただし最近では、多くの弁護士が初回無料相談を実施しています。

不当解雇事件の着手金

不当解雇事件の解決を、正式に弁護士へ依頼する際には、着手金を支払う必要があります。

着手金の金額目安は、請求額に応じて以下のとおりです。

請求額 着手金の額(税込)
300万円以下の場合 経済的利益の8.8%
300万円を超え3,000万円以下の場合 経済的利益の5.5%+99,000円
3,000万円を超え3億円以下の場合 経済的利益の3.3%+759,000円
3億円を超える場合 経済的利益の2.2%+4,059,000円

※最低額は10万円

なお解雇無効・復職を請求する場合には、復職による経済的利益を概算的に見積もったうえで、請求額に加算するケースが多いです。

不当解雇事件の報酬金

不当解雇事件が解決した場合には、弁護士に対する報酬金の支払いが発生します。

報酬金の金額目安は、獲得した経済的利益の額に応じて以下のとおりです。

経済的利益の額 報酬金の額(税込)
300万円以下の場合 経済的利益の17.6%
300万円を超え3,000万円以下の場合 経済的利益の11%+198,000円
3,000万円を超え3億円以下の場合 経済的利益の6.6%+1,518,000円
3億円を超える場合 経済的利益の4.4%+8,118,000円

なお復職が実現した場合には、復職による経済的利益を概算的に見積もったうえで、経済的利益の額に加算するのが一般的です。

不当解雇事件の日当

会社との交渉や労働審判・訴訟期日への出席などで、弁護士による出張が発生する場合には、日当の支払いが発生します。

日当の金額は、半日の出張であれば33,000~55,000円程度、1日の出張であれば55,000~110,000円程度(いずれも税込)が標準的です。

不当解雇事件の実費

不当解雇事件への対応に関連して、弁護士の側で費用の支出が発生する場合、その実額を精算する必要があります。

不当解雇事件の実費としては、たとえば以下の費用が想定されます。

  • 郵便費用(内容証明郵便等)
  • 印刷費用
  • 弁護士会照会費用
  • 労働審判の申立て費用
  • 訴訟費用
  • 弁護士の交通費 など

不当解雇事件を依頼する弁護士を選ぶ際の6つのポイント

信頼できる弁護士に代理人就任を依頼することで、労働者側に有利な形で不当解雇事件を解決できる可能性が高まります。

不当解雇事件を依頼する弁護士を選ぶ際には、以下のポイントを頭に入れておくとよいでしょう。

1.労働問題に関する正しい知識をもっている

不当解雇事件へ適切に対応するためには、労働基準法・労働契約法等に関する正しい知識を身につけていることが大前提です。

弁護士であっても、法律の知識には多かれ少なかれ偏りがあり、労働問題に関する知識が正しく定着していないケースも少なくありません。

できれば複数の弁護士の話を聞いたうえで比較し、さらに自身でも労働法上の取扱いを調べるなどして、弁護士の知識が信頼できるかどうかを見極めましょう。

2.労使紛争の解決実績がある

労使紛争の解決実績が豊富な弁護士であれば、交渉や法的手続きのポイントを押さえた対応により、労働者側にとって有利な解決を導いてくれる可能性が高いです。

たとえば労働問題に関する特設サイトを開設している弁護士は、コストをかけて集客を行っている分、労使紛争の解決実績も豊富であることが多いでしょう。

ただし、インターネット上の宣伝を鵜呑みにするのではなく、実際に弁護士に会ってみて信頼性を判断することが大切です。

3.アドバイスの明確さ

依頼者の質問に対して明確に回答してくれる弁護士は、一般的に信頼性が高いと考えられます。

特に労働者として取り得る選択肢と、各選択肢のメリット・デメリットを明確に示してくれれば、依頼後もストレスなく対応を進めることができます。

正式に依頼する前の法律相談の段階で、弁護士に疑問点等を質問してみて、明確な回答を得られるかどうか確認しましょう。

メリット・デメリットについては不当解雇は裁判で解決できる!メリット・デメリットや実際の裁判例も解説をご覧ください。

4.対応の丁寧さ

不当解雇事件において、労働者側に有利な解決を導くためには、弁護士による緻密な対応が求められます。

労働者側にとって有利な交渉材料を網羅的に揃えれば、会社からの譲歩を引き出すことができ、また労働審判や訴訟での請求が認められやすくなるからです。

事実関係を正確に把握するため、依頼者からのヒアリングを丁寧におこなう弁護士は、不当解雇事件を信頼して任せられることが多いでしょう。

5.レスポンスの速さ

弁護士は依頼者の相談役でもあることを踏まえると、依頼者の質問に対してタイムリーに回答してくれるかどうかは重要なポイントです。

多忙または問題の複雑さゆえに、質問に対する返信をすぐに受け取れるケースばかりではありません。

それでも回答時期の目安を示したうえで、比較的短期間で回答を返してくれる弁護士であれば、不当解雇事件の相談役としては適任と言えるでしょう。

6.弁護士費用

前述のとおり、弁護士費用の金額は個々の弁護士によって異なります。

そのため、複数の弁護士に相談したうえで、相見積もりを取得して比較することがおすすめです。

すでに紹介した弁護士費用の金額目安も参考にしつつ、合理的な費用を提示する弁護士に依頼するのがよいでしょう。

もちろん、弁護士費用が安ければよいわけではなく、能力・人柄・仕事への姿勢などと併せて総合的に検討することが大切です。

不当解雇事件を依頼する弁護士にアクセスする方法

不当解雇事件を依頼する弁護士を見つける方法としては、主に以下のパターンが挙げられます。

利用しやすい方法を用いて、不当解雇事件を信頼して依頼できる弁護士を探してください。

①家族・友人などから紹介を受ける 顔見知りゆえに、信頼関係を築きやすいメリットがあります。ただし、その弁護士が不当解雇事件に関する十分な知識と経験を有しているかどうかは、別途チェックが必要です。
②弁護士会・法テラスから紹介を受ける 弁護士との繋がりがない人でも、不当解雇事件を取り扱う弁護士の紹介を受けられます。法テラスの場合、資産・収入の各要件を満たすことを条件として、弁護士費用の立替払制度も利用できます。
③インターネット上で検索する お住まいの近くに拠点を構え、かつ不当解雇事件を取り扱う弁護士を手軽に探すことができます。相談予約についても、サイト経由で手軽に行えます。

まとめ

会社から不当解雇された場合、復職・未払い賃金の支払い・解決金の支払い等を適切に請求するため、弁護士への相談をおすすめします。

知識や実績・相談対応の姿勢・弁護士費用などを総合的に考慮して、ぜひ信頼できる弁護士に不当解雇事件の解決を依頼してください。

またその他の相談先に関しては不当解雇に関するおすすめ相談先5選|無料でよいアドバイスをもらうコツをご覧ください。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ労働問題で
労働問題に強い弁護士を探す
編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
  • ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
労働問題に関するコラム
トラック運転手が知っておくべき残業代の基本|残業代の計算・請求方法を解説
トラック運転手の残業代は、みなし労働時間制や請負契約の場合などでも発生しているかもしれません。荷待ち時間が休憩時間と位置付けられていれば、残業代が発生している可能性もあるでしょう。正しい知識を身につければ、残業代を請求でき、受け取れる可能性があるでしょう。
退職金の未払いは請求できる?|具体的な手順や注意点を解説
予想していた退職金が払われない場合、その後の人生設計に大きな影響が出てしまいます。本記事では、万が一、退職金の未払いトラブルに巻き込まれた場合にどのように会社に請求するか、具体的な手順や注意点について解説します。
労働問題の24時間無料相談窓口|その他の窓口も受付時間別に紹介
24時間無料で労働問題を相談できる窓口のほか、21時や22時など遅い時間まで対応してくれる窓口を紹介します。
パワハラは労災認定される?認定基準・申請手続き・給付金額を解説
パワハラは労災として認定される可能性がありますが、そのためには必要書類や証拠などを準備・作成する必要があります。自力での対応が不安な場合は弁護士に依頼することも検討しましょう。本記事では、パワハラでの労災認定基準や申請方法などを解説します。
もっとみる
地域から弁護士を探す
法律相談を投稿する
離婚・不倫問題 交通事故 相続・遺産トラブル 労働問題 刑事事件 債権回収 借金減額・債務整理 ネット誹謗中傷 企業法務 その他
弁護士の方はこちら