音信不通の相手から債権回収する方法!個人で回収するときの注意点とは
お金を貸した相手と音信不通になった場合、回収方法がわからないと悩んでいる方は少なくないでしょう。
相手が引っ越しをしてしまい現住所を把握できていないとなると、さらに不安は大きくなってしまいますよね。
このような状況でも、適切に対応すれば債権を回収できる可能性は十分にあります。
本記事では、お金を貸した相手と音信不通になったときの対処法を解説します。
また、個人で回収するときの注意点などについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
音信不通の相手から債権回収するための方法
お金を貸している相手と連絡が取れなくなったとき、債権を回収するための主な方法は次の通りです。
- 相手に催告状を送る
- 支払督促を送る
- 訴訟を検討する
ここからは、それぞれの方法について詳しく紹介します。
1. 相手に催告状を送る|内容証明郵便でおこなうことも検討
お金を貸している相手が電話をしても出ず、音信不通の状態になった場合、まずは書面で貸金を請求する意思を示すことが重要です。
一般的には、借金を返してもらいたい旨を記載した「催告状」を送付します。
この催告状には「〇月〇日までに、下記口座への振り込みをお願いします。」といったように、返済期限や振込先を明記します。
また、相手が対応しない場合は法的な措置を取る旨を記載することで、お金を貸している相手に対しプレッシャーを与えることも有用です。
相手の返済意思がみえないなど債権回収が難しいことが明らかな場合は、「内容証明郵便」の送付も検討しましょう。
内容証明郵便は、郵便局が差出人・宛先・内容を証明する制度で、郵便局にも送付した情報が記録されることから、相手側の「知らない」「受け取っていない」という言い訳が通じなくなります。
なお、お金を貸している相手に対して催告状などの書面を送る際は、今後の裁判手続きも見据えて、事前に弁護士に相談しておくことを推奨します。
その際に、裁判所の名前や提起する訴訟の名称などを具体的に記載することで、より相手にプレッシャーを与えられるでしょう。
2. 支払督促を送る|書類審査のみで利用可能な法的手続き
催告状・内容証明郵便を送っても効果がなく連絡が取れないなど、相手が支払いに応じる意思を示さないときは法的な手続きを検討しましょう。
この場合は、訴訟ではなく「支払督促」を用いると効果的です。
手続きはお金を貸している相手の住所地を管轄する簡易裁判所でおこない、書類審査のみで利用可能なため、訴訟よりも手間と費用がかかりません。
手続きに不備がなければ、支払督促を送る本人ではなく、裁判所の書記官がお金を貸している相手に対し支払いを命じる文書を送付します。
すると、裁判所から通知が届くため、催告状・内容証明郵便の送付と比較してより強いプレッシャーを与えられるでしょう。
この支払督促を送ってからお金を貸している相手が2週間以内に異議を申し出さなければ、「仮執行宣言」を付けてもらえます。
この仮執行宣言により、支払督促を無視した相手の財産を差し押さえることができます。
お金を借りている側としても財産の差し押さえは避けたいと考えるため、その前にお金を返してもらえる可能性は高まるでしょう。
ただし、支払督促に対して異議を出されてしまうと訴訟手続きに移行してしまいます。また、相手の住所がわからない場合も利用できません。
たとえば、お金を貸してから長い期間が経過しており、引っ越しなどで相手の住所を把握できない場合などには、ほかの方法を考えるしかないため注意しましょう。
3. 訴訟を検討する|簡易的な訴訟手続をおこなうことも可能
支払督促に応じない場合は訴訟を起こすことを検討します。
実際に、支払督促に対して異議が出されると訴訟手続きに移行するため、そのような状況が想定される場合ははじめから訴訟提起を検討したほうがよいでしょう。
さらに、金額が60万円以下の場合は少額訴訟という簡易的な続きも可能です。
また、訴訟であれば相手の行方・現住所がわからない場合でも「公示送達」により対応できます。
「公示送達」とは裁判所の掲示場に書類を受け取るように貼り出してもらう手続きです。
なお、お金を貸している相手が書類を受け取りに来なかったとしても、2週間が経過すると送達されたことになります。
ほかにも、お金を貸している相手の住所がわかっていても受け取りを拒否されることがありますが、その場合は差置送達・就業場所送達・付郵便送達などの手続きにより、送達を完了させることが可能です。
差置送達 |
訴訟上の書類を、送達名宛人がいる場所に置く方法 |
就業場所送達 |
職場に書類を送達する方法 |
付郵便送達 |
発送した時点で送達した扱いにする方法 |
送達の効力が生じた後、相手が答弁書を提出せず、裁判にも出席しない場合には、擬制自白として、原告の主張を相手(被告)が認めたことになります。
なお、公示送達の場合では擬制自白は認められないものの、相手が反論してこない可能性が高いため勝訴の可能性は高いといえるでしょう。
このように、相手が争ってこない場合は比較的短期間で判決が出る可能性があります。
音信不通の相手から債権回収するときの注意点3つ
お金を貸している相手と連絡が取れなくなった場合でも、対処法によってはこちらが不利になることもあるため注意してください。
ここからは、音信不通の相手から債権回収するときの3つの注意点を紹介します。
1. 自宅や会社に執拗に電話をしない
債権回収にあたり、お金を貸している相手が連絡を無視して返済に応じない場合でも、自宅や勤務先へ執拗に電話をしてはいけません。
電話での連絡・督促は手軽なため、債権回収の方法として検討する方は多いでしょう。
実際に、常識の範囲内であればまったく問題はありません。
しかし、何度も電話で連絡をすると相手が怯えてしまい、態度が硬化してしまう可能性があります。
その結果、今までよりも状況が悪化する可能性はゼロではありません。
刑法249条1項が定める恐喝罪に問われる可能性もあります。
また、相手の勤務先に過度に連絡したり、相手の家族などにも連絡した場合には、プライバシーの侵害や名誉毀損になるケースもあり得ます。
2. 違法な業者に依頼するなど強引な回収はしない
貸したお金を返してもらえないとき、債権回収を専門におこなうサービサーという業者があます。
サービサーは、「債権管理回収業に関する特別措置法」という法律で定められた特定の金銭債権(金融機関等が有する(有していた)貸付債権や、クレジット、リース債権など)についてのみ、債権管理回収業務をおこなうことができます。
したがって、原則として個人がサービサーに債権回収を委託することはできません。
また、そもそも、債権回収業務は、弁護士法72条、73条により厳しく制限されており、原則として弁護士以外がおこなうことは法律によって禁止されています。
【参考】債権回収と弁護士法の関係|悪徳業者を識別する為の事前知識
弁護士法に違反している債権回収業者に依頼してしまった場合には、依頼者側も刑罰(2年以下の懲役又は300万円以下の罰金)に科される可能性があり、加えて、業者から高額な手数料を取られてしまうこともあります。
弁護士法に違反した法的手続きの効力は無効となる可能性も高く、結局債権回収を図ることは出来ないばかりか、新たなトラブルのきっかけとなりかねませんので、まずは弁護士にご相談ください。
3. 債権の消滅時効を理解しておく
債権回収で押さえたいポイントとして、債権の「消滅時効」が挙げられます。
債権には時効があり、一定期間に返済がない場合は時効により債権が消滅することがあります。
たとえば、2020年4月1日以降の借金問題であれば、時効期間は原則として、権利を行使できると知った時から5年、権利を行使することができる時から10年です。
つまり、支払日が定められている一般的な借金であれば、時効は支払日から5年になります。
借金が返済されていないことに気づき、返してもらいたいときでも、時効が完成していると、権利が消滅する場合がありますので、注意してください。
債権回収の時効の完成猶予は可能?
貸金の返済を求めるにあたって時効の完成が迫っている場合には、次の方法により時効を完成させない方法が考えられます。
- ●裁判上の請求
- ●支払督促
- ●訴え提起前の和解(民事訴訟法)
- ●調停(民事調停法・家事事件手続法) など
また、時効が完成する前に催告書を送るなどの「催告」により、時効が完成するまでの期間を6カ月間延長することもできます。
ただし、催告によって時効の完成が猶予されることはあくまで一時的なものなので、より確実に時効を完成させないためには、訴訟を提起する必要があります。
音信不通だった相手と連絡がとれた場合の対応方法
音信不通だった相手と連絡がとれた場合でも、ここで気を緩めてはいけません。
適切な方法で対応しなければ債権を回収できない可能性があります。
ここからは、連絡がとれた場合にとるべき2つの対応方法を紹介します。
1. 返済しやすい方法を相手と話し合う
まずは、債務者と返済方法や期日について話し合いましょう。相手にとって一括返済が難しい場合は、支払いやすい方法を提案してみてください。
たとえば、一括返済を求めるのではなく分割での支払いを提案したり、確実に返済できるよう支払期限を延ばしたりする方法も考えられます。
また、再度相手が音信不通になることも考えられます。
トラブルを避ける意味でも、この時点からでも弁護士に相手との交渉や支払い方法について相談し、債権回収を依頼してもよいでしょう。
2. 債務弁済契約書を作成するなど書面化しておく
お金を貸していた相手と連絡がとれ、返済額・返済期限などの弁済方法について合意をとれたら、その内容を書面に残しておくことを強くおすすめします。
口頭でも合意は成立するものの、何かに記録しておかなければ、言った・言わないの水掛け論になり、余計なトラブルに発展しかねません。
返済方法を書面にすることは、裁判に発展した際にもお互いが合意したことを立証するための手段・証拠として有用です。
なお、債権者・債務者間における借金返済に関する合意をまとめた書面を「債務弁済契約書」といいます。
また、債務弁済契約書は、「公正証書」によって作成することもひとつです。
公正証書は、法務大臣に任命された公証人が作成する公文書で、強制執行認諾文言を公正証書に記載すれば、債務者の返済が滞った際に、直ちに強制執行を申立てることができます。
なお、公正証書の作成には公証人手数料や印紙代などが発生する点に注意してください。
作成した書面を公証役場に持ち込むと対応してもらえるため、返済に不安を感じる方は検討しましょう。
個人での債権回収が難しい場合は弁護士に依頼する
個人間の借金問題でもトラブルに発展することで回収が難しくなるケースがあるため、自力で解決・回収が困難なときは弁護士に依頼しましょう。
ここからは、個人での債権回収が難しい際に弁護士へ依頼するメリットを紹介します。
1.早く債権回収ができる
個人で債権回収を試みても、相手とトラブルになったり、余計に連絡が取れなくなったりするため解決までに時間がかかりやすいです。
催告書の作成や裁判の申立ては個人でも可能ですが、専門的な知識が必要になるため想定以上に時間や労力、費用がかかることは珍しくありません。
そのようなときに弁護士へ依頼すると、債務者の住所の特定や法的な手続きを一任できるので、スムーズに進むことから解決までの時間を短縮できます。
また、弁護士に依頼していることが伝わるだけで、相手の態度や行動が変わるケースも少なくありません。
2.無理だと思っていた債権も回収できる
法律の専門家である弁護士が対応することにより、相手の所在が判明したりプレッシャーを与えられたりします。
そのため、無理だと諦めていた債権を回収できるケースも多くあります。
たとえば、家賃や診療費の未払いなどは、債務者が引っ越しをしてしまい、住所がわからなくなることは珍しくありません。
賃貸トラブルの場合、連帯保証人に請求するといった方法によることで回収をできることがあります。
料金の未払いの場合も、契約書・領収書といった証拠があれば回収できる可能性があるため、直ちにあきらめるのではなく、弁護士の法律相談を活用してみましょう。
3.臨機応変な債権回収ができる
債権回収にはさまざまな方法があります。
これらを熟知している弁護士に依頼することで臨機応変な対応が可能です。
たとえば、債権回収には書面・直接交渉・法的手続きの利用といった方法がありますし、法的手続きについても、強制執行(財産開示手続など)を見据えて、様々な回収方法が考えられます。
弁護士であれば、これらの様々な回収方法から、状況にあわせて最適な方法を提案・選択できます。
もちろん、自力でも裁判を対応することは可能ですが、借金の全額回収を目指す、少しでも多く回収したい場合は債権回収の専門家である弁護士への相談がおすすめです。
4.自分で回収するよりも債権を回収率が高い
弁護士に債権回収を依頼すると、自分で行動を起こすよりも回収率が高くなる期待がもてる点は大きなメリットです。
債務者側からすると弁護士の登場により法的な手続きに踏み切られてしまうといったプレッシャーを感じるため、債務者側と連絡がつきやすかったり交渉に応じやすくなったりします。
また、裁判や強制執行を回避したいという心理が働きますし、弁護士から催告することで返済を拒否しにくくなる傾向があります。
実際に、今まで返済にまったく応じなかった相手でも、弁護士が介入しただけで回収できた事例は珍しくありません。
5.債権回収する相手と会わずにすむ
弁護士に債権回収を依頼することで、お金を貸している相手と会わずにすむ点も大きなメリットです。
たとえば、相手との人間関係が崩れている場合は、相手と会ったり交渉したりすることが精神的なストレスになることがあるでしょう。
弁護士に依頼をすれば、相手との交渉を代行してもらえるため、自分は直接会う必要はなくなるので、精神的な負担を抑えられます。
債権回収に関するよくある質問
最後に、債権回収に関するよくある質問をいくつか紹介します。
Q.10年ほど音信不通の相手から債権回収は可能ですか?
お金を貸している相手と連絡が取れない状態でも、弁護士からの連絡には反応するケースは珍しくありません。
また、携帯電話が繋がらなくなってしまった場合でも、現住所や以前の住所がわかれば調べられます。
このように、弁護士であれば、相手の電話番号や現住所がわからないケースでも対応可能です。
ただし、債権には時効が存在しているため、10年の間に何もしていなければ時効の完成により債権が消滅する恐れがある点には注意してください。
Q.借用書はないのですが債権回収は可能ですか?
お金を貸す際に、借用書・契約書といった書面を残していない状態でも債権回収は可能です。
たとえば、相手との連絡がついていたときにやりとりをした記録、発注書や請求書、振込み履歴などがあれば証拠として利用できる可能性があります。
メールなどのメッセージ履歴が残っていたり、借金について把握している知人の証言があったりする場合にも債権を回収できる可能性があるため、一度、弁護士に相談してみましょう。
Q.返せるお金がないといわれましたが債権回収は可能ですか?
現時点で相手に返済できるお金がない場合は、すぐに一括返済を求めるのは難しいかもしれません。
その際は、分割払いや返済期限を調整するなどの方法により債権を回収しやすくなります。
また、「お金がない」といっても生活に困っているわけではない、あるいは不動産・預貯金などの財産を持っているケースは珍しくありません。
このような状況でも適切に対応できるよう、弁護士に相談してみましょう。
まとめ
本記事では、お金を貸した相手と音信不通になったときの対処法を解説しました。
お金を貸した相手と音信不通になっても、弁護士の力を借りることで適切に回収できる可能性が高まります。
また、状況に応じて自分で作成した催告書を内容証明郵便にて送ることで、相手が応じるきっかけになりえるでしょう。
自分での対応が難しい場合は、債権回収を得意とする弁護士に相談すると最適な解決策を提案してもらえます。
債権回収に悩んでいる方は、状況にあった弁護士を探し、お早めに相談してみてください。