退職後にボーナスを返せと言われたら?対処法や違法かどうか、相談先を解説
ボーナスを受け取ってからすぐに退職すると、会社からボーナスを返せと言われることがあります。
しかし、いったん支給されたボーナスを返す必要はありません。
今回は、ボーナスを返せと言われることを心配している方に向けて、次の内容を解説します。
- ●退職してもボーナスを返す必要はない
- ●ボーナスを支給された後に退職しても問題はない
- ●会社にボーナスを返せと言われた際の対処法
- ●会社にボーナスを返せと言われた際の相談先
会社にボーナスを返せと言われてお困りの方、ボーナスを貰ってからの退職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
退職してもボーナスを必ず返す必要はない
冒頭でお話しした通り、退職後にボーナスを返せと言われても、返還する必要はありません。
その理由を、以下で説明していきます。
ボーナスは労働基準法上の「賃金」
まずは、ボーナスに関する法的な位置づけに関して、基本的な内容を解説します。
賃金に関する労働基準法の記載を見ると「賃金とは、会社が社員に対して労働の対償として支払うすべてのもの」ということが分かります。
また、以下の法文にある通り「名称の如何を問わず」と書かれているので、ボーナスも法律上の賃金に含まれます。
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
引用元:労働基準法|e-GOV法令検索
会社に規定があればボーナス支給をしなければならない
そもそもボーナスの支払いは会社に必ずしも義務付けられているものではありませんが、労働契約や就業規則にボーナスに関する記載がある場合、労使間で合意があればその内容に従うことになります。
つまり、ボーナス支給規定が定められている場合は、会社はボーナスを支払わなければならないということです。
そして、一度支払ったボーナスを返すよう義務付けることは、労働基準法に違反することになります。
そのことに関して次の項目で解説します。
会社がボーナスを返せというのは労働基準法違反
一度支払ったボーナスを強制的に返還させる行為は、違法行為です。
このことは、以下の文章にも書かれている通り、労働基準法に定められています。
(賠償予定の禁止)
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
引用元:労働基準法|e-GOV法令検索
たとえば会社の規定に「ボーナスを支給されてから3ヵ月以内に退職した場合、ボーナスの返還をしなければならない」などと書かれていれば、上記の法律に反して違法となる可能性があります。
よって、会社からボーナスの返還を要求されても従う必要はないといえます。
ボーナスの性質によっては一部返還が必要な場合も
一度支払われたボーナスは返還対象とはなりませんが、ケースによってはボーナスの減額が認められる可能性があります。
そもそもボーナスは、以下3つの要素を考慮したうえで支給されます。
- 従業員の会社に対する功績
- 会社の業績
- 従業員の将来への期待
たとえば、退職予定がある従業員にボーナスが支払われた場合、将来への期待に値する金額を減額されることがあります。
就業規則でボーナスの計算方法に「将来への期待」にあたる記載が明確になされている場合、その計算方法に基づいて支払われた部分のみ返還を認められる可能性があるからです。
そのほか、有給休暇の取得をしている場合も、ボーナスを減額されることがあります。
ただし、あくまでも「将来への期待」に該当する金額なので、全額返還は基本的に認められません。
ボーナスを支給されたあとに退職しても問題はないのか?
結論からお伝えしますと、ボーナスを受け取ってから退職しても問題ありません。
むしろ、受け取るタイミングは退職届を出す前の方が良いでしょう。
ただし、ボーナスを意識しすぎて退職する本来の目的を見失うと、退職後に苦労することになります。
たとえば、退職の原因が心身の不調によるものだった場合、無理にボーナスを受け取ろうと在職期間を長引かせるあまり、病状が悪くなる可能性があります。
そのような場合は焦って退職しようと考えず、まずは体の休養を先決する方が良いでしょう。
また、退職後に転職先が決まっていないと、せっかくもらったボーナスも無駄になってしまう可能性が高いです。
退職後に収入が無い期間が長引かないために、転職はボーナス受け取りありきで考えないことも大切です。
そのほか以下では、ボーナスの支給後に退職する際に確認しておきたいことについて解説していきます。
支給日に在籍していればボーナスは支給される
ボーナスの支給条件でよく見られる内容に「支給対象期間に勤務し、支給日に在籍していること」というものがあります。
つまり、支給対象期間に勤めていても、支給日に在職していなかった場合はボーナスを受け取れないこともあるということです。
この条件は、あくまでも規則に明記されていることが大切なので、勤めている会社のボーナスに関する支給規定は事前に確認しておきましょう。
支給対象期間に在職していたのに、ボーナス支給がなくても問題ないとした判例
過去に大和銀行事件と呼ばれる裁判があり、結果として、訴えた従業員は支給日に在籍していなかったため、ボーナスをもらわなくても問題ないという判決が出ました。
この従業員は支給対象期間に勤務しており、支給日より前に退職していました。
従業員の主張は、対象期間に勤務したのだからボーナスはもらいたいというものです。
これに対し銀行側は、従来から支給日に在籍している従業員にのみボーナスを支払っていました。
また、従業員が退職するより前に「支給日に在籍していることを要件とする」ことを定めるため就業規則を改訂し、全従業員に周知していました。
よって裁判では「改訂された就業規則は、労働組合の要請によって慣行を明文化したものであり、内容については合理性がある」として、従業員にボーナス受給資格はないとしたのです。
【参考元】賞与の支給日前に退職した者が当該賞与の受給権を有しないとされた事例
退職予定を伝えている場合にはボーナスが減額される可能性も
退職前にボーナスを受け取るには、会社で定められたボーナス支給要件の確認が何よりも大切です。
なぜなら、就業規則によっては「退職予定者」に対するボーナスは減額の対象となると明記されているところもあるからです。
退職を検討しながら働いている場合は、基本的に退職の意向・転職活動などは伏せておき、ボーナス支給後に退職の旨を伝えるようにしましょう。
ただし、支給後すぐに退職すると会社側にも良い印象を持たれないので、2週間ほどは期間を空けて引継ぎなどもきちんとおこなってから退職する方がよいでしょう。
退職後にボーナスを返せと言われた場合の対処法
ここからは、実際にボーナスを返せと言われてどうすればよいのか、具体的な対処法を解説します。
ボーナスの支給条件を満たしていることを確認する
まずは、労働契約や就業規則にボーナス支給に関する記載があるかどうか確認しましょう。
見るべきポイントは、主に以下の要件です。
- そもそもボーナス支給の定めがあること
- ボーナスを受け取るためには、支給日に在籍している必要があること
- 一定の条件下でボーナスの減額を定めていること
規則に支給の定めがある場合は、全額返還に応じる必要はありません。
また、減額に関しても記載があるかどうかを確認し、妥当かどうかを判断する必要があります。
分からない場合は弁護士や労働基準監督署などの窓口に相談しましょう。
任意の返還には応じないことを明確に伝える
ボーナスの返還要求の中には、従業員に対して任意でボーナスを返せと主張するケースがあります。
このような行為は、場合によっては公序良俗に反する行為に該当するため、必ずしも返還に応じる必要はありません。
万が一会社から任意で返還しろと強制された場合、すぐに応じず一度弁護士に相談することをおすすめします。
また、すでに任意でボーナスを返還することに同意してしまった場合でも、裁判で取り返すことが可能な場合もあります。
とはいえ、裁判になると新たに時間やお金を浪費することになるので、まずは任意の返還に応じないことが大切です。
退職後にボーナスを返せと言われた場合の相談先
退職後にボーナスを返せといわれた場合、自分一人で会社と話し合っても解決はしづらいでしょう。
困った場合は、以下の窓口に相談してください。
労働基準監督署
労働基準監督署は、労働基準法に反する問題に対して行政指導を行うことができます。
各都道府県に窓口が設置されており、相談も無料です。
自分では就業規則の内容からボーナスの減額の判断がつかない場合や、退職後にボーナス返還を迫られているという場合も法的な視点からアドバイスしてもらえるでしょう。
とりあえず基本知識を教えてほしいという場合に利用してみましょう。
弁護士
会社からのボーナス返還の要求に対して、自分一人ではどうすべきかわからない場合の相談先は弁護士がおすすめです。
たとえば、退職後に自宅にボーナス返還を指示する書類が届いていたり、「ボーナスの振込みは誤りなので全額返金して欲しい」などの電話が入っていたりする場合は、すぐに弁護士に相談するべきです。
ただし相談する弁護士は誰でもよいわけではないので、気をつけてください。
弁護士によっても専門とする分野が分かれているので、労働問題を得意とする弁護士を選ぶようにしましょう。
労働問題を得意とする弁護士の探し方
労働問題を得意とする弁護士を探す場合は、以下の方法があります。
- ●日本労働弁護団
- ●ポータルサイト(ベンナビ)で弁護士を探す
日本労働弁護団は日本全国に展開されており、労働問題を得意とする弁護士が相談にのってくれます。
また、弁護士事務所を紹介するポータルサイトの利用もおすすめです。
特にベンナビでは、無料相談やオンライン面談、休日対応の有無など細かい条件を絞って、自分に合う弁護士を探すことができます。
法律事務所のホームページがある場合は、解決実績や事例を参考にして、労働問題に詳しいかどうかを判断してください。
さいごに|会社にボーナスを返せと言われても必ず返す必要はない
一度支払ったボーナスを返還させる行為は違法となる場合もあるので、必ずしも応じる必要はありません。
ただし、場合によってはボーナスを減額される可能性もあるでしょう。
ボーナスを受け取ってから退職したいと考えている場合は、基本的にボーナス支給日を過ぎるまで退職の旨は伏せておくのがよいでしょう。
会社が執拗に返せと要求してくる場合や、退職後にボーナスを返すように繰り返し連絡してくる場合は、弁護士に相談して対応策を考えることをおすすめします。