不当解雇になる条件を7ケース解説|弁護士への相談費用や慰謝料・解決金の相場も紹介
会社から突然「解雇する」と告げられた場合、まず確認すべきなのは「その解雇が法律上有効かどうか」という点です。
日本では、使用者が自由に労働者を解雇できるわけではありません。労働契約法第16条により、合理的な理由のない解雇は無効とされています。
この記事では、不当解雇の定義から解雇の種類、解雇予告のルールまで、知っておくべき基本知識を整理します。「自分のケースが不当解雇にあたるのか」を判断するうえで、参考にしてください。
- 不当解雇とは?定義と正当な解雇との違い
- 不当解雇になる条件とは?該当する7つのケース
- 法律で禁止されている解雇|違反すると不当解雇になるケース
- 就業規則の手続違反で不当解雇となるケース
- 雇用形態別の不当解雇4パターン
- 不当解雇されたらやるべきこと5つ
- 不当解雇の相談先5つ
- 不当解雇の慰謝料・解決金・損害賠償の相場
- 不当解雇に関する裁判・労働審判の流れ
- 不当解雇における裁判の勝率
- 不当解雇の時効|請求権の消滅に注意
- 不当解雇を弁護士に相談する場合の費用相場
- 不当解雇のお悩みは「ベンナビ」で弁護士に相談
- 不当解雇で会社が受けるダメージとリスク
- 不当解雇に関する代表的な裁判例3選
- 不当解雇に関するよくある質問
- まとめ|不当解雇は泣き寝入りせず早めに弁護士へ相談を
不当解雇とは?定義と正当な解雇との違い
不当解雇とは、法律上の要件を満たさずに行われた解雇のことです。労働契約法16条では、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」の解雇は無効であると定めています。会社側が辞めてほしいと思うだけでは、解雇の理由になりません。
(解雇) 第十六条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用元:労働契約法 | e-Gov 法令検索
解雇が争われた場合、「解雇には正当な理由があった」と証明できなければ、解雇は無効と判断されるケースも多いです。
解雇の3つの種類|普通解雇・整理解雇・懲戒解雇
解雇には「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の3種類があります。それぞれ法的な要件が異なるため、どの種類に該当するかで対応方針も変わります。
| 解雇の種類 | 内容 | 要件 |
| 普通解雇 | 能力不足や協調性の欠如、勤務態度の問題など、労働者側の事情を理由とする解雇 | ・客観的に合理的な理由があること ・解雇が社会通念上相当であること ・改善指導の機会を与えていること |
| 整理解雇 | 企業の経営上の理由(いわゆるリストラ)による解雇 | ・人員削減の必要性があること ・解雇回避努力をしたこと(配置転換・希望退職の募集など) ・人選の合理性があること ・手続きの妥当性があること(労働者・組合への十分な説明を実施) |
| 懲戒解雇 | 横領・暴力・重大な服務規律違反など、労働者の非行を理由とした制裁的な解雇 | ・就業規則に懲戒事由・手続きの定めがあること ・行為の重大性と処分の均衡が取れていること ・弁明の機会を与えていること |
解雇予告のルール|30日前の通知と解雇予告手当
使用者が労働者を解雇する場合は、30日前までの予告が必要です。
予告なしで即日解雇する場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。15日前に予告した場合であれば、不足する15日分の解雇予告手当を支払うことで解雇が認められます。
解雇予告手当の計算は、直近3ヵ月の賃金総額を暦日数で割った平均賃金をもとに算出します。支払いは解雇と同時におこなうのが原則です。
例外として、採用から14日以内の試用期間中・日雇い・季節的業務(4ヵ月以内)の労働者は予告不要です。予告手当が支払われなかった場合は違法となるため、解雇通知を受けたら予告日と手当の有無を必ず確認してください。
不当解雇になる条件とは?該当する7つのケース
解雇が不当かどうかは、解雇理由そのものより、会社の対応で判断されるケースが多いです。
以下では、よくある7つの場面ごとに、不当解雇に該当するケースとそうでないケースを対比して解説します。自分の状況に近いものを確認しながら読んでみてください。
能力不足・成績不良を理由とする解雇
能力不足を理由とする解雇は、不当解雇と判断されやすいケースのひとつです。「仕事ができない」という事実だけでは、解雇の正当な理由にはなりません。会社が十分な指導・教育をおこなったか、改善の機会を与えたか、という点が厳しく問われます。
不当解雇に該当するケース
入社して間もない新卒・未経験の社員に対し、ろくに指導もせず「使えない」と判断して解雇した場合は、不当解雇と判断される可能性が高いです。
会社側が教育・研修の機会を与えず、早々に解雇の結論を出した場合、裁判所は「会社の責任を果たしていない」と判断しやすくなります。
また、成績評価の基準が不透明だったり、ほかの社員と比べて不合理な低評価を押しつけられていたりする場合も問題です。
「成績が悪い」という名目でも、評価自体に客観性・合理性がなければ、解雇の理由として認められません。目標の設定方法や評価の根拠に疑問がある場合は、記録を残しておくことが重要です。
不当解雇にならないケース
一方、会社側が繰り返し改善指導をおこない、配置転換などの対応も試みたにもかかわらず、改善されない場合は、解雇が有効と判断される可能性があります。
口頭での注意にとどまらず、書面による指導や業務改善計画(PIP)の実施など、会社が誠実に対応してきた実績があるかどうかが問われます。
また、即戦力として採用されたにもかかわらず、求人票や面接で示された前提スキルが著しく欠如していたケースも、解雇が認められやすいです。
たとえば、特定の資格や実務経験を条件に採用したのに、入社後に虚偽が発覚した場合などが該当します。ただし、解雇が認められやすい場合でも、即日解雇が認められるかどうかは状況によります。
協調性の欠如を理由とする解雇
協調性がないという理由だけでは、解雇の正当な根拠にはなりません。業務に重大な支障が生じており、会社が改善に向けた対応を尽くしたうえで、改善が見られない場合に初めて解雇の正当性が問われます。
企業側が解雇の有効性を示すには、問題行動の記録(日時・内容・関係者)、注意・指導の経緯を示す書面、業務への具体的な悪影響を示す記録などを揃えることが重要です。
不当解雇に該当するケース
「上司と合わない」「チームに馴染めない」という理由で解雇した場合、不当解雇と判断される可能性が高いです。相性の問題を労働者個人の責任として解雇に結びつけるのは、法的に相当とはみなされにくいです。
また、会社が人間関係の調整に向けた努力をしていない場合も問題です。労働者の環境調整を試みることなく、いきなり解雇の結論を出した場合は、手段として重すぎると判断されやすくなります。
「なんとなく職場に合わない人材だから」という曖昧な理由で解雇を告げられた場合は、まず弁護士への相談を検討してください。
不当解雇にならないケース
一方、問題行動が繰り返されており、会社が記録・指導を積み重ねてきた場合は、解雇が有効と判断されることがあります。
たとえば、同僚への暴言や威圧的な態度が複数回にわたって記録されており、注意・指導をおこなっても改善がなく、周囲の社員が業務を続けることが困難になっている場合です。
感情的な印象ではなく、具体的な被害が記録として残っていれば、解雇の相当性が認められやすくなります。注意指導の記録も、口頭だけでなく書面で残しておくことが重要です。
遅刻・欠勤の頻発を理由とする解雇
遅刻や欠勤が多いことを理由に、段階的な指導や懲戒処分を経ないまま解雇した場合、不当解雇と判断されるケースは少なくありません。
とくに、体調やメンタル面での不良が原因の場合は、まず休職制度の活用や配慮ある対応が必要です。休職の機会を与えずに解雇をおこなった場合、不当解雇と認定されるリスクがあります。
不当解雇に該当するケース
会社が口頭での注意すらおこなわないまま、遅刻や欠勤を理由に解雇した場合、不当解雇と判断される可能性が高いです。
実際、高知放送事件の判例では、2週間のうち2回寝坊・遅刻があったことを理由とした解雇が不当と認められています。
また、欠勤の背景に会社のパワハラや過重労働があった場合も問題です。欠勤の原因が会社側にある可能性があるにもかかわらず、労働者だけの責任として解雇した場合、正当性は認められにくくなります。解雇を告げられた際は、欠勤原因も記録しておくことが大切です。
【参考元】高知放送事件|全国労働基準関係団体連合会
不当解雇にならないケース
一方、会社が段階的な対応を踏んだうえで解雇に至った場合は、有効と判断されることがあります。具体的には、書面による警告、減給などの懲戒処分、面談での改善指導といったプロセスを経たにもかかわらず、正当な理由のない遅刻・欠勤が繰り返されるケースです。
指導をおこなった日時・内容、本人への通知書面、改善が見られないことを示す出勤記録など、客観的な証拠が揃っていれば、解雇の相当性が認められやすくなります。一度や二度の問題行動ではなく、継続的かつ改善の見込みがない状況であることが前提です。
業務命令への違反を理由とする解雇
業務命令への違反を理由とした解雇が有効かどうかは、命令そのものが合理的かどうかが前提になります。業務上の必要性が認められ、かつ労働者への不利益が過大でない命令に限り、拒否した場合の解雇が正当と判断されます。
命令の内容が不合理であったり、違法性がある場合は、拒否したことへの解雇は不当解雇になりえます。
不当解雇に該当するケース
命令の目的が退職に追い込むことにある場合、業務命令の体裁をとっていても、不当解雇と判断される可能性があります。特定の社員だけに過剰な業務量を割り当てる、明らかな嫌がらせとして不合理な配置転換を命じる、といったケースです。
命令に従わせることが目的ではなく、自己都合退職に誘導することが目的と認定された場合、解雇の正当性は認められません。
また、命令の内容自体が違法であった場合も同様です。労働者が従う義務のない命令を拒否したことを理由に解雇するのは、不当解雇にあたります。命令に従わなかったという事実があっても、命令の適法性が問われます。
不当解雇にならないケース
業務上の必要性が明確にあり、内容も適法な命令を、正当な理由なく繰り返し拒否した場合は、解雇が有効と判断される可能性があります。担当業務の変更や、新たな職務への従事命令・職場内のルールへの服従といった、通常業務の範囲内の命令が該当します。
一度断っただけでなく、複数回にわたって拒否し、改善の見込みもないと客観的に判断できる状況であれば、解雇の相当性が認められやすくなります。会社が命令の目的と必要性を説明したうえで、拒否が続いたというプロセスが記録に残っているかどうかが重要です。
口頭のみのやり取りでは証拠として弱いため、業務命令書・面談記録・書面による警告といった記録の積み重ねが、解雇の正当性を裏付けます。
転勤拒否を理由とする解雇
転勤を拒否したことを理由とする解雇は、一律に有効とも無効とも言えません。転勤命令の有効性や、従業員側の個別事情の重さを比較して判断されます。
東亜ペイント事件の最高裁判決では、就業規則に転勤条項がある場合、会社には原則として裁量権があるとされています。ただし、転勤によって生じる不利益が、甘受すべき程度を著しく超える場合は、命令が無効になる余地があります。
不当解雇に該当するケース
転勤が物理的・生活上きわめて困難な事情がある労働者に対し、事情を無視して転勤を命じ、拒否を理由に解雇した場合は、不当解雇と判断される可能性があります。
典型的なのは、要介護状態の家族を抱えるケースや、育児中で転居が著しく困難な状況です。子どもの保育や親の介護を一人で担っており、転勤先では代替手段がない場合は、転勤命令自体が権利濫用とみなされることがあります。
会社が事情を把握していながら代替案の検討すらしなかった場合も問題です。会社が労働者の状況に配慮する努力をしたかどうかが、解雇の有効性を左右します。転勤を断った経緯や、会社とのやり取りは記録として残しておきましょう。
不当解雇にならないケース
一方、就業規則に転勤条項が明記されており、業務上の必要性も高く、会社側が転勤に際して一定の配慮をおこなっているにもかかわらず拒否した場合は、解雇が有効と認められる可能性があります。
たとえば、転勤手当や引越費用の支給、赴任先での住居の手配など、会社側が生活上の負担軽減に向けた対応をとっているケースです。
就業規則の記載内容と、会社が提示した条件を確認したうえで、自分の拒否理由が客観的に見て相当と言えるかを弁護士に相談してみることをおすすめします。
パワハラを理由とする解雇
パワハラ行為が明確に立証されれば、解雇の正当な理由になりえます。ただし、事実確認が不十分なまま解雇した場合は、不当解雇と判断されるリスクが高いです。
2020年に施行されたパワハラ防止法(労働施策総合推進法)により、企業には問題が発生した際の適切な調査と対応が義務付けられています。調査プロセスを省いた解雇は、手続き上の問題として解雇無効の根拠になりやすいです。
不当解雇に該当するケース
「パワハラがあった」という申告だけを受け、十分な事実確認をおこなわないまま解雇した場合は、不当解雇と判断される可能性があります。
一方の話だけで判断した場合、両者の言い分が反映されていないことになります。裁判では「会社が適切な調査をしたか」が厳しく問われるため、調査記録のない解雇は無効とされやすいです。
また、過去に指導歴や懲戒処分がないにもかかわらず、1回目の行為を理由に解雇した場合も問題です。パワハラの内容が重大でない限り、初回の行為で解雇というのは処分の重さとして釣り合いません。段階的な対応を経ていないことが、解雇無効の根拠になります。
不当解雇にならないケース
会社が当事者双方へのヒアリングや証拠収集を通じて事実確認をおこない、パワハラが認定された場合は、解雇が有効と判断されることがあります。
さらに、過去に口頭注意・書面警告・減給などの懲戒処分を受けたにもかかわらず、パワハラ行為を繰り返している場合も、解雇の相当性が認められやすいです。段階的な対応の積み重ねが、解雇の正当性を裏付ける証拠になります。
調査記録・懲戒処分の通知書・被害者の証言など、客観的な証拠は判断を左右します。「また同じことをした」という事実が書面で証明できれば、解雇の有効性はより認められやすいです。
経営難による整理解雇
整理解雇は、要件を満たしていなければ不当解雇と判断されるリスクが高いです。
解雇回避努力は、解雇が不当かどうかを判断する重要な要件となります。解雇を避けるために最大限の努力を事前に講じたかどうかが、解雇の正当性を左右します。
不当解雇に該当するケース
経営が苦しいからといって、回避努力を尽くさないまま即座に解雇した場合は、不当解雇とみなされる可能性が高いです。役員報酬の見直しや希望退職の募集すらおこなわず、一般社員の解雇に踏み切った場合、裁判所は「まだ取れる手段があった」と判断しやすいです。
また、解雇対象者の選定が客観的な基準に基づいていない場合も問題となります。経営者の個人的な好き嫌いや、組合活動への参加状況などを理由に対象者を選んだ場合、人選の合理性がないとして解雇が無効になるでしょう。
「なぜ自分が選ばれたのか」に合理的な説明がつかないケースは、弁護士への相談をおすすめします。
不当解雇にならないケース
整理解雇が有効と認められるには、4つの要件を順を追って満たしていることが必要です。
《整理解雇の要件》
- 人員削減の必要性があること
- 解雇回避努力をしたこと(配置転換・希望退職の募集など)
- 人選の合理性があること
- 手続きの妥当性があること(労働者・組合への十分な説明を実施)
4つの要件が全て揃って初めて、整理解雇の有効性が認められやすくなります。たとえば、先に希望退職を募り、応募が定員を下回った段階で初めて指名解雇に踏み切ったケースでは、回避努力と手続きの両面が評価されます。
法律で禁止されている解雇|違反すると不当解雇になるケース
解雇には不当解雇として争えるケースに加えて、法律で明確に禁止されているケースがあります。
労働基準法・男女雇用機会均等法・育児介護休業法・労働組合法などが、特定の状況下での解雇を直接禁じています。各法律の禁止規定に違反した解雇は、裁判で無効と判断される可能性が極めて高いです。
以下では、とくに問題になりやすい禁止事由を個別に解説します。
業務上の傷病による休業期間中とその後30日間の解雇

仕事中のけがや病気で休業している期間と、その後30日間は、原則として会社は労働者を解雇できません。
業務上の傷病を負った労働者を保護するための規定です。療養中に解雇の不安を抱えることなく回復に専念できるよう、法律上の解雇制限が設けられています。
ただし、例外として、治療開始から3年経過しても治療が終わらないときは、会社が労働者に対し、打切補償として平均賃金1,200日分を支払うことで、解雇制限が解除され解雇が認められます。
また、通勤中のけがは業務上の傷病には含まれません。通勤災害は労災保険の対象であり、解雇制限の保護を受けられない点に注意しましょう。
産休期間中とその後30日間の解雇

産前6週間・産後8週間の産前産後休業期間と、その後30日間の解雇は、禁止されています。
産後すぐは身体的な回復が必要な時期であり、解雇できません。「産休を取ったら解雇された」というケースは、不当解雇として争える可能性が高いです。例外が認められるのは、天災や事変などによって事業の継続が不可能になった場合に限られます。
また、妊娠・出産を理由とした解雇も禁止されています。「妊娠したら退職を求められた」「産休後に戻る席がなかった」といったケースは、早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。
労働基準監督署への申告を理由とする解雇
未払い残業や違法な労働環境について労働基準監督署に申告したことによる、報復としての解雇は無効です。
労働者が申告権を行使することで不利益を受けることがないよう、法律で保護されています。申告を理由とした解雇だけでなく、降格・減給・不当な配置転換なども、不利益取扱いとして禁止されます。
解雇を無効化するには「申告したから解雇された」という事実を証明する必要があります。申告後に会社の態度が変わったと感じたら、日時ややりとりの内容を記録に残しておくことが重要です。
妊娠・出産を理由とする解雇
妊娠中または出産後1年以内に解雇された場合、会社が妊娠・出産とは無関係の理由による解雇だと証明できない限り、解雇は無効とみなされます。解雇だけでなく、降格・減給・不本意な配置転換なども原則禁止です。マタニティハラスメント(マタハラ)に該当します。
「妊娠を報告したら態度が変わった」「産休から戻ったら閑職に異動させられた」といったケースも、法的に争える余地があります。妊娠・出産に関連して不利益な扱いを受けた場合は、早めに弁護士へ相談しましょう。
労働組合活動を理由とする解雇
労働組合に加入したことや、正当な組合活動をおこなったことを理由とした解雇は、無効となります。労働者の団結権を侵害する行為に該当します。
不当労働行為を受けた場合は、労働委員会への救済申し立てが可能です。行政手続で解決を図るため、費用・時間の面で利用しやすい制度といえます。都道府県労働委員会に申し立てをおこない、認定されれば原職復帰や解雇以前の状態への回復命令が出ることがあります。
解雇の時期が組合加入や団体交渉の直後と重なっている場合、上司から組合活動への不満が示されていた記録がある場合などは、実質的に不当労働行為である可能性があります。組合活動が原因だと感じたら、記録を保全したうえで弁護士や労働委員会に相談してください。
育児休業・介護休業の取得を理由とする解雇
育児・介護休業の取得や申出を理由とする解雇、降格、減給などの不利益取扱いは、法律で厳格に禁止されています。
男性の育休取得を妨げるパタニティハラスメントも重大な権利侵害とされており、男女問わず不利益な扱いは違法です。「復職後に居場所がない」「取得を伝えたら解雇を示唆された」といったケースは法律違反として争えます。
2025年4月施行の改正法では、子の年齢に応じた柔軟な働き方の拡充や、育休取得状況の公表義務が従業員300人超の企業へ拡大されるなど、企業の責務が一段と強化されました。休業取得を理由とした解雇や不当な扱いには、これまで以上に厳しい目が向けられています。
【参考元】育児・介護休業法について|厚生労働省
就業規則の手続違反で不当解雇となるケース
解雇の理由が正当であっても、就業規則に定められた手続きを怠れば無効と判断されるケースがあります。たとえば、懲戒委員会の審議を経ずに解雇した場合、重大な問題行動があっても手続きの不備により解雇が無効になる可能性が高いです。
本人に弁明の機会を与えない一方的な処分も、正当性を欠くとみなされます。反論の機会がないまま解雇を告げられるのは、手続違反の典型です。
解雇の有効性を判断する際、就業規則の規定は重要な基準となります。定められた手続きが実際に履行されたかを確認することが不可欠であり、労働者には就業規則の閲覧やコピーを請求する権利が認められています。
雇用形態別の不当解雇4パターン
契約社員・アルバイト・パート・派遣社員のいずれの雇用形態でも、労働契約法などの解雇規制は適用されます。
雇用形態ごとに固有の保護ルールがあり、不当解雇をされた場合は争うことが可能です。ここでは、雇用形態別の論点を整理します。
契約社員の雇止め・解雇
契約社員への解雇は、正社員と比べて難しいです。契約期間の途中で解雇する場合は、やむを得ない事由が必要であり、正社員よりもハードルが高くなります。
一方、契約期間が満了後に更新しない雇止めは、解雇とは異なります。また、無制限に認められるわけでもありません。
繰り返し契約を更新しており、雇用継続が期待できる場合は、雇止めが制限されます。正当な理由がなければ、雇止めが成立しません。
また、同一企業で通算5年を超えて契約した場合は、無期労働契約への転換を申し込む権利が発生します。無期転換後は正社員と同様の解雇権濫用法理が適用されるため、安易に解雇は認められません。
試用期間中の解雇(本採用拒否)
試用期間中だからといって、会社が自由に解雇できるわけではありません。試用期間中の解雇にも、合理的な理由が必要です。
三菱樹脂事件では、試用期間は、本採用前に適格性を見極めるための留保解約権付き労働契約であると判決が下されました。通常の解雇よりも広い裁量が認められる一方で、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当でなければ本採用拒否も無効となります。
本採用拒否が認められやすいのは、採用時に前提としていたスキルが入社後に著しく欠如していることが判明した場合や、試用期間中に重大な問題行動があった場合などです。
解雇予告については、採用から14日以内であれば解雇予告なし・手当なしで解雇できます。ただし14日を超えると、通常の解雇と同様に30日前の予告か解雇予告手当の支払いが必要です。
【参考元】三菱樹脂本採用拒否事件|全国労働基準関係団体連合会
アルバイト・パートの不当解雇
アルバイトやパートであっても、労働契約法の解雇規制は正社員とまったく同じように適用されます。バイトだから仕方ないと泣き寝入りする必要はありません。
パートタイム・有期雇用労働法では、雇用形態を理由とした不利益取扱いも禁じています。「パートだから」という理由の解雇は、正社員の場合と同様に不当解雇として争える可能性が高いです。
また、シフトをほぼゼロに削減することは、形式上は解雇でなくても、実態として解雇に等しいと判断されるケースがあります。突然シフトが入らなくなった場合は、状況を記録しておくことが重要です。
相談窓口としては、労働基準監督署やハローワークが利用できます。費用をかけずに状況を相談したい場合は、まずこれらの機関への相談から始めるのがおすすめです。
派遣社員の解雇・雇止め
派遣社員の場合、「派遣先からの契約打ち切り」と「派遣元からの解雇」は別問題として整理する必要があります。
労働契約を結んでいるのは派遣元(派遣会社)です。派遣先が派遣契約を打ち切ったとしても、派遣元は派遣社員を解雇できるわけではありません。
派遣切りとして問題になるのは、派遣先の都合による中途解約をそのまま派遣社員への解雇の理由にされた場合で、不当解雇として争えます。派遣先の事情だけを理由に解雇された場合は、派遣元の対応が適切だったかどうかを確認することが重要です。
2015年の派遣法改正により、派遣元には雇用安定措置の義務が課されています。同じ組織での派遣就労が3年を超える見込みの場合、派遣元は派遣社員に対して派遣先への直接雇用の依頼や新たな派遣先の提供などをおこなわなければなりません。
不当解雇されたらやるべきこと5つ
解雇を言い渡されたとき、最もやってはいけないのは、その場で退職届を書くことです。
感情的になりやすい場面だからこそ、まず落ち着いて次の5つの行動を取りましょう。
解雇理由証明書を請求する
解雇を告げられたら、解雇理由証明書の交付を請求してください。解雇された労働者は使用者に対して、解雇理由を記載した証明書の交付を求める権利があります。
会社が主張できる解雇理由は証明書に記載された内容に限定されるため、法的な争いに備えるうえで必ず取得しておきたい書類です。
請求は口頭でも可能ですが、書面またはメールで記録を残しながらおこなうことをおすすめします。
なお、解雇理由証明書と「解雇予告通知書」は別物です。解雇予告通知書は解雇の日時を通知するもので、解雇の理由は記載されていません。通知書のみ受け取っている場合でも、解雇理由証明書を別途請求する必要があります。
会社が交付を拒んだ場合は、労働基準法違反になります。拒否された事実もメモに残しておいてください。
退職届に署名・押印しない
「解雇する」と言われた直後に退職届を渡してくる場合もありますが、すぐにサインしてはいけません。退職届や退職合意書に署名・押印すると、労働者が自ら合意して退職したことになります。解雇ではなく合意退職として扱われるため、不当解雇を争うことが困難です。
「退職します」と口頭で答えてしまった場合でも、書面に署名する前であれば撤回できる余地があります。その場で結論を出さず、「持ち帰って検討します」と伝えることが重要です。
一方、退職条件の上乗せ交渉を検討する場合は、署名前のタイミングが交渉力を持てる唯一の機会です。退職金の上乗せや残業代の精算、守秘義務条項の内容確認など、署名前に弁護士へ確認してもらうことで、より有利な条件を引き出せる可能性があります。
証拠を確保する
不当解雇を争うためには、証拠が欠かせません。解雇を告げられた場合は、できるだけ資料を手元に残してください。確保しておきたい証拠は主に以下のとおりです。
| 証拠の種類 | 具体的な内容 |
| 解雇通知書 | 解雇を告げた書面・メール |
| 業務上のやり取り | メール・チャット・指示の記録 |
| 就業規則・雇用契約書 | 解雇手続に関する規定 |
| 給与明細・タイムカード | 未払い残業・賃金の証拠にも |
| 指導・評価記録 | 改善指導の有無を示す書類 |
| 上司・同僚の発言記録 | 日時・場所・内容をメモ |
社内のメールシステムへのアクセスやタイムカード、就業規則のコピーなどは、在職中にしか取得できません。解雇を告げられた段階で、すぐに手元にあるものをコピー・保存しておくことが重要です。
失業保険(雇用保険)の手続き
解雇による離職は、会社都合退職に分類されるため、自己都合退職より有利な条件で失業保険を受給可能です。
自己都合退職では原則2〜3ヵ月の給付制限期間があるのに対し、会社都合退職では制限なしで給付が始まります。また給付日数も、会社都合の場合は長く設定されているのが特徴です。

失業保険を受け取っても、原則として解雇を認めたことにはなりません。失業給付の受給と解雇の有効性は、別の問題として扱われます。ただし、和解交渉や労働審判の状況によっては影響が出るケースもゼロではないため、受給前に弁護士に状況を確認しておきましょう。
ハローワークでの手続きは、離職票を持参して管轄のハローワークに行くことから始まります。一般的に、退職後10日前後で会社から送られてきますが、遅い場合はハローワークに相談すれば対応してもらうことが可能です。
【関連記事】
不当解雇されたらどうする?労基署に相談するだけではダメな理由
会社都合退職とは?自己都合退職にしてほしいといわれたときの対処法も解説
不当解雇の相談先5つ
不当解雇に遭った場合、相談できる窓口は複数あります。ただし、それぞれ対応できる範囲が異なるため、状況に合わせた使い分けが重要です。
不当解雇された場合の相談先として主な窓口を5つ紹介します。
弁護士|交渉・裁判まで一貫して対応できる
不当解雇を本格的に争うなら、弁護士への相談が最も有効です。解雇の有効性の法的分析から、会社との交渉代理、労働審判・訴訟の対応まで一貫して任せられます。
弁護士を選ぶ際は、解雇・労働問題の取り扱い実績が豊富かどうかで判断しましょう。事務所のWebサイトに解決事例が掲載されているか、労働問題を得意とする弁護士が在籍しているかを確認するのがおすすめです。
費用面で不安がある場合は、初回無料相談の活用も検討してみてください。多くの事務所が30〜60分の無料相談を提供しており、費用をかけずに見通しを聞くことができます。複数の事務所に相談して比較することも、遠慮なくできます。
【関連記事】労働問題が得意な弁護士の選び方!選ぶポイントや依頼できる内容を解説
労働基準監督署|法律違反がある場合に有効
労働基準監督署は、労働基準法違反への対応に注力する行政機関です。解雇予告手当の未払いや、解雇手続の違法性など、労基法に違反する事実がある場合に相談するのが向いています。
労働基準監督署は対応できることと、できないことがあるため、把握しておきましょう。
| 対応できること | 以下のような労働基準法違反の申告 ・解雇予告手当の未払い ・残業代・賃金の未払い ・就業規則の法令違反 |
| 対応できないこと | 解雇の有効性の判断 解雇の撤回・復職の交渉 |
管轄の労働基準監督署に直接出向くか、郵送・電話で相談を申し込むことから始まります。申告が受理されると、監督官が会社へ調査・指導をおこないます。ただし、行政指導は会社に対する改善勧告であり、強制的に解決させる権限はありません。
【関連記事】労働基準監督署で不当解雇について相談してもいい?不当解雇の対処法3つも解説
総合労働相談コーナー|無料で相談できる行政窓口
都道府県労働局に設置されている総合労働相談コーナーは、予約不要・無料で利用できる行政の相談窓口です。職場内でのトラブルについて、幅広く話を聞いてもらえます。相談員に話すことで、自分の状況が整理され、次に取るべき行動が見えやすくなります。
総合労働相談コーナーでは、個別労働紛争解決制度によるあっせんの申請も受け付けています。あっせんとは、都道府県労働局長が指定した第三者が間に入り、解決を促す手続きです。
ただし、あっせんには強制力がないため、会社が拒否した場合、手続きが成立しないまま終了します。また、合意できなかった場合は労働審判や訴訟に移行する必要がある点も理解しておきましょう。
【参考元】総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省
法テラス|収入要件を満たせば無料で弁護士に相談できる
法テラス(日本司法支援センター)は、経済的に余裕がない方向けに、無料の法律相談と弁護士費用の立替制度を提供している公的機関です。
利用するには収入・資産に関する要件があります。要件を満たせば、弁護士への法律相談を3回まで無料で受けられます。
| 人数(※1) | 手取り月収の基準(※2) | 家賃または住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額(※3) |
| 一人 | 182,000円以下 (200,200円以下) |
41,000円以下 (53,000円以下) |
| 二人 | 251,000円以下 (276,100円以下) |
53,000円以下 (68,000円以下) |
| 三人 | 272,000円以下 (299,200円以下) |
66,000円以下 (85,000円以下) |
| 四人 | 299,000円以下 (328,900円以下) |
71,000円以下 (92,000円以下) |
※1:申請者と、家計に貢献している同居人の合計人数
※2:東京や大阪などの生活保護一級地に居住している場合は()内の金額が適用
※3:東京都23区内に居住している場合は()内の金額が適用
| 人数(※1) | 資産合計額の基準(※2) |
| 一人 | 180万円以下 |
| 二人 | 250万円以下 |
| 三人 | 270万円以下 |
| 四人 | 300万円以下 |
※1:申請者と、家計に貢献している同居人の合計人数
※2:医療費や教育費などの出費が確定している場合は相当分が控除される(無料法律相談の場合は3ヵ月以内の出費のみ対象)
また、弁護士費用の立替制度を利用すれば、着手金・実費などを法テラスが立て替え、あとから分割で返済できます。しかし、費用立替の審査に時間がかかる場合があり、急ぎで対応が必要なケースでは手続きのスピードに注意が必要です。
また、基本的に法テラスの無料相談は、担当弁護士を自分で指定できません。労働問題の経験が豊富な弁護士に当たるとは限らないため、案件の性質によっては相性の問題が生じることも理解しておきましょう。
【参考元】無料法律相談のご利用の流れ | 無料法律相談・弁護士等費用の立替 | 法テラス
労働組合・ユニオン|団体交渉で解決を目指せる
「会社に労働組合がない」「自分一人では交渉できない」という場合は、社外の合同労組(ユニオン)への加入が選択肢になります。
合同労組とは、企業や業種を超えて一人でも加入できる労働組合です。加入後は組合員として、会社に対する団体交渉に参加できます。組合を通じて交渉することで、会社側には応じる義務が生じます。解雇の撤回・解決金の支払いなどを求める場面で一定の効果を発揮します。
ただし、労働組合への相談が有効なケースとそうでないケースがある点を理解しておくことが重要です。
| 労働組合への相談が有効なケース | 解雇の撤回交渉 労働条件の改善 ハラスメントへの対応など |
| 労働組合への相談が有効でないケース | 解雇の法的有効性を争う 損害賠償の請求 |
労働組合への相談が有効でない場合は、弁護士へ併せて相談することも検討してみましょう。
不当解雇の慰謝料・解決金・損害賠償の相場
不当解雇で請求できる金銭には、大きく分けて以下の3種類があります。
- バックペイ
- 慰謝料
- 解決金
それぞれ発生する場面と計算方法が異なるため、混同しないよう整理しておくことが重要です。
実際に受け取れる金額は、解雇の状況・在職期間・解決までの期間・個別事情によって大きく変わります。以下はあくまでも目安として参照してください。
バックペイの相場
バックペイとは、不当解雇がなければ本来受け取れていたはずの賃金のことです。解雇日から解決日(判決・和解)まで発生し続け、全額を請求できます。
計算の基本式は「月額賃金 × 解決までの期間」です。基本給だけでなく、役職手当・賞与相当分・昇給分が含まれる場合もあります。他社で収入を得た場合、平均賃金の6割を超える部分しか控除の対象にならないため、生活費を稼ぎながら会社と争えます。
月給30万円・他社からの収入がないケースにおけるバックペイの金額目安は、以下のとおりです。
| 解決手段 | 解決までの期間目安 | バックペイの総額目安 |
| 労働審判 | 3ヵ月〜6ヵ月 | 90万円〜180万円 |
| 裁判上の和解 | 6ヵ月〜1年 | 180万円〜360万円 |
| 判決(訴訟) | 1〜2年以上 | 360万〜720万円以上 |
金額を最大化するうえで重要なのは、解雇直後に「復職する意思があること」を書面やメールで会社に伝え、記録として残しておくことです。就労意思の証明が、バックペイの請求を裏付ける根拠になります。
慰謝料の相場
不当解雇における慰謝料の相場は、50万〜100万円程度が目安です。ただし、解雇の態様が悪質だった場合や精神的被害が大きい場合は、数百万円に及ぶケースも少なくありません。
バックペイによって経済的損失が補填されている場合、精神的苦痛もある程度回復されたとみなされるため、別途の慰謝料は認められにくくなります。
一方、以下のような悪質性が認められる場合は、慰謝料が高額になる傾向があります。
- 転職を勧誘しておき短期で解雇
- 権利行使(育休・組合活動など)を理由とした解雇
- 名誉毀損を伴う解雇(社内に虚偽の情報を流すなど)
また、解雇によってうつ病を発症し、就労不能期間が生じたケースや、治療費が発生したケースでは、精神的損害への慰謝料が上乗せされる可能性があります。医療機関への受診記録や診断書は、証拠として欠かせません。
【関連記事】不当解雇による支払い請求には時効がある?|解雇無効の主張と解決金の違い
解決金の相場
不当解雇を和解で解決する際に支払われる解決金は、給与の3ヵ月〜6ヵ月分が相場の目安です。復職を希望せず、金銭での解決を選ぶケースでよく使われます。
解決金は、バックペイや慰謝料など複数の請求をまとめて清算するための一括支払いです。労働審判の調停や裁判上の和解で合意した金額を解決金と呼ぶのが一般的で、和解金と呼ばれることもあります。
労働審判での解決金は、数十万〜数百万円の幅があり、勤続年数・月収・解雇の悪質性・解決までの期間によって、金額は大きく変動します。
また、解決金のうち、退職に伴う一定額については退職所得として扱われ、課税が軽減される場合があります。一方、バックペイ相当分は給与所得として課税対象になるのが原則です。受け取る前に税理士や弁護士に確認しましょう。
不当解雇に関する裁判・労働審判の流れ
不当解雇を法的に争う手段は、主に労働審判と訴訟(裁判)の2つです。
労働審判は原則として約3ヵ月で解決できる迅速な手続きで、金銭による解決が中心となります。
訴訟は判決まで1年以上かかることが多い一方、証拠調べを尽くした法的判断が得られます。どちらの手段も、途中で和解に至るケースが多いです。
労働審判の流れ|約3ヵ月で決着できる
労働審判は、裁判所が原則3回以内の期日で解決を目指します。決着するまで約3ヵ月で、迅速に進めることができる手続きです。
裁判官1名と労働審判員2名で構成される審判委員会が、労使双方の話を聞きながら解決策を提示します。公開の法廷ではないため、プライバシーを守りながら進められます。手続きの流れは次のとおりです。
- 申し立て(管轄の地方裁判所に申立書を提出)
- 第1回期日(双方が主張・証拠を提出)
- 調停(話し合いによる合意を模索)
- 調停不成立の場合は審判(委員会が解決案を提示)
多くのケースは第1回・第2回期日の間に調停が成立し、解決金によって決着します。
審判に対していずれかの当事者が異議を申し立てた場合、自動的に訴訟へ移行します。早期解決を目指す場合は、弁護士と相談しながら十分な準備をしておくことが重要です。
訴訟(裁判)の流れ|判決まで1年以上かかることも
訴訟は、解雇の有効性について裁判所が法的に判断を下す手続きです。判決まで1年〜1年半程度を要するのが一般的とされています。証拠調べを尽くしたうえでの判断が得られるため、解雇の不当性が明確なケースでは有効な手段です。
手続きは、一般的に以下の流れで進行します。
- 訴状の提出
- 口頭弁論(双方が主張・反論を書面で提出)
- 証拠調べ・証人尋問
- 判決
訴訟と並行して活用できるのが、仮処分という手続きです。労働者としての地位保全と、賃金の仮払いを裁判所に求めることで、判決前の段階でも賃金の一部を受け取れる可能性があります。
判決が出た後も、地裁判決に不服があれば高裁へ控訴、さらに最高裁へ上告可能です。ただし上告まで進むと解決まで数年かかるケースもあるため、勝訴・敗訴のリスクを考慮し、和解に至るケースは少なくありません。
不当解雇における裁判の勝率
不当解雇の紛争では、労働者が解決金を得る割合は極めて高いです。労働審判の約7〜8割が調停(和解)で成立し、労働者側が金銭を得て終結しています。
ただし、横領や暴力などの重大な規律違反がある場合や、証拠不足の場合は敗訴リスクが生じます。
有利な解決を導く鍵は、解雇直後からの証拠確保です。解雇通知書や業務メールなどに加え、解雇直後に復職の意思を内容証明で送付した記録が、バックペイ請求の重要な根拠となります。
まずは労働問題に強い弁護士に証拠を評価してもらい、現実的な見通しを確認することが最善のステップです。
不当解雇の時効|請求権の消滅に注意
不当解雇の争いには期限があります。解雇無効の確認自体に形式上の時効はありませんが、長期間放置すると「解雇を認めた」とみなされ、権利が消滅するリスクが高まります。
金銭面では、バックペイの時効は3年間です。解雇から時間が経つほど、古い月の給与から順に時効で消えていくため、早急な着手が不可欠となります。
また、不法行為に基づく損害賠償請求は3年、債務不履行に基づく場合は5年が目安です。時効を一時的に止めるには内容証明郵便による「催告」が有効ですが、6ヵ月限定となります。
時効が迫っている、あるいは解雇から数ヵ月経過している場合は、速やかに弁護士へ相談し、時効中断の手続きを取りましょう。
不当解雇を弁護士に相談する場合の費用相場
弁護士費用の相場は、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 | 費用相場 |
| 相談料 | 弁護士へ相談するための費用 | 1時間あたり 5,000円~1万円程度 ※初回相談無料の場合もある |
| 着手金 | 正式に依頼するための費用 | 20万円~30万円程度 |
| 成功報酬 | 相手に金額を請求できたときに支払う費用 | 請求額の15%~20% |
| 実費 | 弁護士が事務所を離れて作業する際に生じる交通費・印刷代・切手代など | 数万円程度 |
初回無料相談を実施している事務所は多く、初回相談費用を抑えた相談が可能です。経済的に余裕がない場合は、法テラスの費用立替制度を利用してもよいでしょう。
多くの事務所が柔軟な料金体系を提示しています。費用面で諦める前に、まずは無料相談で見積もりを取り、獲得予想額とのバランスを確認することが大切です。
【関連記事】労働審判の弁護士費用はどのくらい?|弁護士なしで対応できるかも解説
不当解雇のお悩みは「ベンナビ」で弁護士に相談
不当解雇を争いたい方、解雇の正当性に疑問を感じている方はベンナビを活用して、弁護士に相談するのがおすすめです。ベンナビは、全国各地の弁護士を検索できるポータルサイトです。
労働問題・不当解雇に強い弁護士を地域・条件別で検索できます。初回無料相談に対応している事務所が多数掲載されており、費用の心配をせずに複数の弁護士を比較することが可能です。
「自分の解雇は不当なのか」「何を請求できるのか」という段階から、具体的な見通しを弁護士に直接確認できます。
不当解雇で会社が受けるダメージとリスク
不当解雇が認められた場合、企業が負うダメージは金銭面だけにとどまりません。長期的な経営リスクにまで波及する可能性があります。
金銭的ダメージのなかで最も規模が大きくなりやすいのがバックペイです。裁判が1年以上長引けば、月給の12ヵ月分以上の賃金が積み上がります。弁護士費用を含めると、総額で数百万円に達するケースも珍しくありません。
解雇に関するトラブルがSNSや口コミサイトに拡散するケースは増えており、採用活動や企業ブランドへの影響が長期化します。在職している社員の士気の低下や離職につながりやすいです。
企業がリスクを回避するためには、解雇の前段階での準備が欠かせません。就業規則の整備・指導記録の作成・弁明機会の付与など、適正な手続きを踏む必要があります。解雇を検討する段階で労働問題に詳しい弁護士に相談し、手続きの適法性を事前に確認しましょう。
不当解雇に関する代表的な裁判例3選
不当解雇の判断基準を理解するうえで、実際の裁判例を参照することは有益です。どのような事情があれば解雇が有効・無効と判断されるか、具体的なイメージを持てるようになります。
以下では、不当解雇に関する代表的な裁判例を3つ紹介します。
判例①:能力不足を理由とする解雇が無効とされた事例
セガ・エンタープライゼス事件は、労働者の能力不足を理由とした解雇の有効性が争われた代表的な事案です。
ゲーム会社に中途採用された管理職の社員が、入社後の業務遂行能力が会社の期待水準を下回るとして解雇されました。会社側は「採用時に前提としたスキルが備わっていなかった」と主張しましたが、労働者側は解雇の不当性を訴えました。
裁判所は解雇を無効と判断しました。採用後の業務成果が期待を下回ったとしても、会社側がどの程度改善の機会を与えたかが問われます。
本件では、指導・教育が不十分なまま解雇に至ったと認定され、能力不足の事実だけでは解雇の正当性として認められませんでした。
【参考元】セガ・エンタープライゼス事件|全国労働基準関係団体連合会
判例②:整理解雇の4要件が争われた事例
東洋酸素事件は、整理解雇の有効性を判断するための4要件が確立された先駆的な判例として広く知られています。
業績悪化を理由にガス販売部門の従業員を整理解雇した会社に対して、労働者側が解雇の無効を主張しました。会社は経営上の必要性を根拠としましたが、裁判所はその内容を詳細に審査しています。
東京高裁はこの判決で、整理解雇が有効となるための、以下4つの判断基準を明示しました。
- 人員削減の必要性(経営上、削減が真に必要な状況か)
- 解雇回避努力(役員報酬のカットや希望退職募集など、解雇を避けるための手段を尽くしたか)
- 人選の合理性(解雇対象者の選定基準が客観的か)
- 手続きの妥当性(労働者・組合への誠実な説明・協議をおこなったか)
4要件は整理解雇の有効性を判断する基準として実務に浸透しており、労働契約法の解釈にも影響を与えています。
【参考元】東洋酸素事件|全国労働基準関係団体連合会
判例③:妊娠を理由とする解雇が無効とされた事例
広島中央保健生活協同組合事件は、妊娠を機とした不利益取扱いに関して最高裁が重要な判断を示した事案として知られています。
理学療法士として働いていた女性が、妊娠を機に軽易な業務への転換を申し出たことで、管理職(副主任)から降格させられました。均等法の禁止する不利益取扱いにあたるとして争われた事案です。
最高裁は、妊娠・出産・産前産後休業の取得を「契機として」おこなわれた降格は、原則として男女雇用機会均等法に違反する不利益取扱いにあたると判示しました。
「例外的に有効となるのは、本人が自由な意思に基づいて同意した場合、または業務上の必要性からやむを得ないと認められる場合に限られる」という厳しい基準が示されています。
【参考元】広島中央保健生活協同組合事件|全国労働基準関係団体連合会
不当解雇に関するよくある質問
不当解雇について、よくある質問をまとめました。
Q1:不当解雇の慰謝料で「1000万円」をもらうことは可能ですか?
慰謝料単体で1000万円が認められるケースは極めてまれです。ただし、バックペイを合算した解決金の総額として1000万円を超えることは、十分に起こりえます。
不当解雇の慰謝料相場は50万〜100万円程度です。一方、バックペイは「解雇日から解決日までの賃金全額」が請求対象になります。年収500万円の方が裁判で2年間争えば、バックペイだけで1000万円に達する計算になります。
「慰謝料で1000万円もらえるか」よりも「トータルでいくら請求できるか」をシミュレーションするほうが実態に即しています。弁護士への初回相談で、自分のケースで請求できる金額の見通しを具体的に確認してみてください。
Q2:解雇のショックで「うつ病」を発症しました。慰謝料は増額されますか?
解雇とうつ病発症の間に因果関係が認められれば、損害賠償額が増額される可能性があります。加えて、解雇に至る過程でのパワハラがあった場合や、解雇の通告が執拗かつ侮辱的だった場合、精神的苦痛の程度が大きいとして慰謝料の算定に影響します。
また、うつ病によって就労不能期間が生じた場合は、その期間の損害(治療費・休業損害)も請求の対象になりえます。
ただし、「解雇が原因でうつ病になった」という因果関係の立証が必要です。医師の診断書、解雇前後の業務状況の記録、パワハラの証拠(メール・録音など)が有力な証拠になります。客観的な記録が揃っているほど、請求できる金額の幅が広がります。
さらに、職場環境が原因のうつ病は「労災」として認定される可能性もあります。労災申請が認められれば、療養給付や休業補償給付を受けることが可能です。
Q3:労働基準監督署(労基署)に駆け込めば、解雇を撤回させてくれますか?
労働基準監督署には、労働基準法違反を監督する行政機関であり、解雇を無効にする権限はありません。
解雇予告手当の未払いや、産休中など法律で禁止された時期の解雇には指導・調査をおこないますが、解雇理由が正当かどうかという民事上の判断はおこなえない点に注意が必要です。解雇撤回や金銭補償を目指すなら、弁護士へ相談しましょう。
ただし、労働基準監督署への相談は無意味ではありません。解雇の経緯を公的な窓口に記録として残すという意味では有効な場合があります。労働基準法違反の事実がある場合は、労働基準監督署への申告と並行して弁護士に相談することをおすすめします。
Q4:会社から突然「クビ(強制解雇)」と言われました。その日から給与はどうなりますか?
不当解雇を争う場合、解雇日以降も就労の意思があることを示し続ければ、給与を遡って請求できます。会社が一方的に出勤を拒否している状態では、労働者の賃金請求権は消えません。就労意思を持ち続けている限り、会社はその期間の賃金を支払う義務を負います。
「解雇には同意しない」「引き続き就労する意思がある」ということを、メールや内容証明郵便で会社に伝え、記録として残してください。バックペイ請求を裏付ける証拠になります。
失業保険は、会社都合退職(解雇)として申請できれば給付制限なしで受給が始まります。バックペイの請求と失業給付の受給は原則として両立可能ですが、受給前に弁護士へ確認しておくと安心です。
まとめ|不当解雇は泣き寝入りせず早めに弁護士へ相談を
不当解雇かどうかを判断するうえで重要なのは、解雇の理由だけではありません。指導プロセスの有無や、法律で禁止された状況かどうかなどを総合的に見る必要があります。
不当解雇と認められた場合、バックペイ・慰謝料・解決金の請求が可能です。解雇後に時間が経てば経つほど、請求できる範囲が狭まるため、早期に動くことが選択肢を広げることにつながります。
不当解雇の相談は、労働問題に強い弁護士への依頼が最も有効です。ベンナビでは、不当解雇に対応する弁護士を地域・条件で検索でき、初回無料相談に対応した事務所も多数掲載されています。不当解雇で悩んでいる方は、気軽にご相談ください。
