公文書偽造とは?その定義と偽造の種類や罪の重さについて解説
公文書偽造で本人もしくは知人が逮捕される可能性がある方は、そもそもどのような行為が当てはまるのか、どのくらい重罪なのかが気になりますよね。
本記事では、公文書偽造の種類や事例、罪の重さなどについて解説します。
公文書偽造は重罪となるので、原則として逮捕は免れません。
しかし、行為者が民間人か公務員かで逮捕に至るまでの経緯も異なるので、それぞれチェックしておきましょう。
また、逮捕までの流れや拘束日数、勾留中の対応などについてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
公文書偽造とは?定義と種類
最初に、公文書偽造について解説します。公文書の定義や種類は次のとおりです。
自分の行為が知らないうちに偽造に当てはまるリスクもあるので、きちんと把握しておきましょう。
そもそも公文書とは何か?
公文書とは公務員や公的機関が作成すべき文書や図画のことです。
文書は運転免許証やパスポートのような半永久的に使用する表示で、文字や符号で記載され以下のような物が挙げられます。
- 運転免許証
- パスポート
- 契約書
- 遺言
- 債務者に対する強制執行に服する旨の陳述書
- 住民票
一方、図画は意思や概念を象形的な表示にした物で、以下のような物が挙げられます。
- たばこの外箱
- 地方法務局の土地台帳付属の地図
公文書は公務員や公的機関が目的に沿って作成する必要があり、不正な目的での作成は偽造に該当しかねません。
民間人は当然のことながら、公務員でも本来の目的以外で不正に作成すれば偽造となります。
公文書と私文書の違い
公文書は公務員や公的機関が作成した文書・図画を指すのに対し、私文書はそのほかの立場の者が作成したものです。私文書の例として以下が挙げられます。
- 領収書や借用書
- 入学試験の答案
- 手紙
- 通知書
- 絵画
- イラスト
私文書偽造の例としては、会社の従業員による領収書の水増し請求が挙げられます。
また、契約書や遺言書も私文書に当てはまるケースもありますが、公務員や公的機関が作成するケースもゼロではありません。
私文書は義務・権利・事実証明のために作成するものなので、偽造すれば公文書と同様に罪に問われるでしょう。
たとえば、他人の名前で借用書を作成してお金を借りる行為は偽造になり、すでにある文書の内容を書き換える行為も私文書偽造です。
文書の偽造とは?
文書の偽造とは権限がないにもかかわらず他人名義で文書を作成する行為で、公文書も私文書のどちらも不正な目的で作成すれば偽造行為となります。
偽造とは内容を無許可で書き換えたり、勝手に作成したりする重大な行為で、罰金刑はありません。
つまり、罰金刑がないということは例外なく法定刑に当たるため、非常に重い罪になるといえるでしょう。
また、自分が直接偽造していなくても知人や同僚の偽造行為を手助けしたり、見て見ぬふりをしたりすることで罪に問われるケースもあります。
公文書偽造罪の被害者は必然的に公務員や公的機関となるので、事実が公になると刑事事件は免れません。
反対に、公務員がおこなった場合は組織内での重大な出来事として片付けられる可能性があります。
領収書の宛名を変えるような簡単にできる行為でも、大きな罪になると認識しておきましょう。
公文書偽造にあたる4のケース
公文書偽造を細かくわけると、以下4つのケースになります。ここでは、公文書偽造にあたる4つのケースについて解説します。
有形偽造|文書の作成権限がない人物が他人名義で作成すること
有形偽造とは文書の作成権限がない人物が他人名義で新たな偽造物を作成する行為です。
たとえば、本来運転免許証を作成する権限がない人物が、他人名義で運転免許証を新規作成する行為などが挙げられます。
無形偽造|作成権限がある人物が事実でない内容の文書を作成すること
無形偽造とは文書の作成権限がある人物が事実に反する内容の文書を作成することです。
運転免許証を作成する権限をもつ人物が職権を乱用して、無資格の人物名義で運転免許証を作成する行為などが当てはまります。
変造|もともとある文書に手を加え別の内容にすること
変造とはもともと完成している文書に手を加えて内容を変える行為です。
すでに発行している運転免許証の有効期限や氏名を書き換えると変造に当てはまります。
行使|偽造・変造された文書を本物の文書として使用すること
行使とは偽造・変造された文書を実際に使用する行為です。
有効期限や氏名を変造した運転免許証をまるで有効期限内のように見せかけ、有効な身分証明書として使用する行為などが当てはまります。
原則として偽造した公文書を作成するだけで終えることは少ないので、行使までが一連の流れといえるでしょう。
公文書偽造が罪になるかどうかは、行使の目的の有無に大きく関連しています。
公文書偽造等罪の3つの構成要件
構成要件とは公文書偽造罪が成立する条件のことです。
ここからは、公文書偽造剤の3つの構成要件について解説します。
①公文書の有形偽造または変造であること
文書作成の権限のない民間人が、不正に作成することを有形偽造といいます。
有形偽造もしくは手を加えた変造行為が認められた場合は、公文書偽造の罪の構成要件になります。
また、公文書偽造の加害者になりうるのは、公務員や公務所の関係者以外だけではありません。
公務員や公務所の関係者であっても、本来自分が正式に作成する文書以外を変造すれば罪に問われます。
たとえば、東京都庁職員が埼玉県庁職員が作成すべき文書を不正に作成した場合、偽造罪となります。
また、管轄が同じでも別部署間での偽造が発生する可能性もゼロではありません。
公文書は問答無用で罪になりますが、私文書は行使の目的の有無で罪になるかが変わります。
私文書の行使の目的が認められない場合は、職場内でのペナルティだけで済むケースが多いです。
つまり、公務員よりも民間人のほうが罪に問われるリスクが高いといえます。
②行使の目的を有すること
行使の目的とは自分に有利な条件になる、もしくは不利な状況を回避するためなどに変造した公文書を偽造するケースが当てはまります。
たとえば、現時点で有効な身分証明書がないために所持している有効期限切れの運転免許証の期限を書き換えた場合、行使の目的を有しているといえるでしょう。
ほかにも、架空の領収書を作成した場合は不正に経費を精算するという目的がセットです。
偽造した公文書で実害が出た場合は罪になりますが、行使の目的が認められた時点で実害の有無は問われません。
つまり、偽造した運転免許証や領収書を実際に使用しなかったとしても、公文書偽造罪に当てはまります。
実際の被害がなくても行使による危険性があれば罪になることを抽象的危険犯と呼び、このワードは裁判で耳にする可能性があります。
③公務員等の印章・署名の使用があること
公務員や公務所では、一般的にハンコと呼ばれる印章が使用されます。
稟議の認印や郵送物の受取印として不正に印章を使用した場合は公文書偽造になりますが、公印省略という表記は印章には当てはまりません。
一方、署名は自筆で自分の氏名を文書に記載する行為(またはそのサインそのもの)を指します。
公文書偽造は重罪!1年以上10年以下の懲役
公文書偽造は重罪であり、ケースによっては1年以上10年以下の懲役に問われます。
すでに逮捕されている段階であれば当然のことながら、現時点で公文書偽造・行使をしている場合も弁護士へ相談するなどの対処が必要です。
対処が遅れるほど事態が悪化し罪も重くなるでしょう。公文書偽造によって問われる可能性がある罪として、以下が挙げられます。
- 詔書偽造罪
- 詔書変造罪
- 虚偽詔書作成罪
- 偽造詔書等行使等罪
- 御璽偽造・不正使用等罪
- 有印公文書偽造罪
- 有印公文書変造罪
- 有印虚偽公文書作成罪
- 有印偽造公文書行使等罪
- 公印偽造・不正使用等罪
- 公正証書原本不実記載罪
- 不実記載公正証書原本行使等罪
- 公記号偽造・不正使用等罪
- 無印公文書偽造・変造罪
- 無印虚偽公文書作成罪
- 無印偽造公文書行使等罪
- 免状等不実記載罪
- 不実記載免状等行使等罪
公文書偽造が重罪となる理由として、ほかの罪と併用している可能性が高い点にあり、たいていの場合は公文書偽造は偽造だけでなく行使がセットです。
たとえば、ただ運転免許証の有効期限を変えたり公的身分証明書の情報を書き換えたりするなどの偽造だけで済むケースは多くはありません。
身分や資格を偽って不正な給付金を受給したいなどの行使ありきです。
そのため、知らない間に横領罪や詐欺罪などのほかの犯罪と併用しているという事態になりかねません。
公文書偽造について早急に対応すべき理由としては、偽造した公文書が使用される範囲が広がるほど実害が及ぶ範囲も広くなるからです。
また、一度偽造・行使に成功すると罪悪感が薄れて回数を積み上げてしまう可能性もあるでしょう。
ほかの犯罪との併用は牽連犯と呼ばれ、どちらか重いほうの罪が問われます。公文書偽造が牽連犯になる可能性がある場合、その刑罰への対処も必要です。
そして、公文書・私文書問わず、偽造は必ずバレると理解しておいて間違いないでしょう。
たとえば、領収書へ不正に自分の氏名や金額を書き込んだ場合は本人の筆跡かをチェックされます。
個人事業主や法人が提出した領収書が必要以上に多い場合は反面調査がおこなわれます。
自分が知らないうちに捜査は進んでいるので、いち早く偽造を弁護士などに相談しましょう。
公文書偽造を民間人・公務員がおこなった場合
公文書偽造は行為者が民間人か公務員かで偽造発覚後の流れが異なります。
ここでは、公文書偽造を民間人・公務員がおこなった場合のそれぞれの流れについて解説します。
民間人がおこなった場合|行使罪・詐欺罪などが紐づいて立件される
民間人が公文書偽造をした場合、不正な文書を作った時点では逮捕されません。
不正な文書を行使したあとに裏で警察が調査を進め、あるとき突然逮捕となるケースが少なくないです。
たいていの場合は逮捕まで特に何の前触れもなく、いきなり逮捕される可能性が高いです。場合によっては逮捕前に任意同行を求められるケースもあります。
民間人の公文書偽造は行使の目的を前提として調査が進められるため、原則無罪にはならず行使罪もしくは詐欺罪に問われるケースが少なくありません。
仮に、刑事事件にならなかった場合でも民事事件や懲戒解雇になる可能性は極めて高いといえます。
公務員がおこなった場合|懲戒免職で済む場合もある
公文書偽造罪の被害者は公務員もしくは公的機関なので、公務員が加害者の場合は身内の事件として逮捕されずに懲戒免職だけで済む可能性があります。
逮捕の決め手になるのは行使の目的の有無なので、証明できない場合は単なる重大ミスとして片づけられるケースもゼロではありません。
公務員による公文書偽造は、民間人と比べると処罰が甘い傾向にあります。
公文書偽造で逮捕された場合の流れ
公文書偽造で逮捕される場合、以下のような流れとなります。
ここでは、公文書偽造で逮捕された場合の流れについて解説します。
- 逮捕後は3日間拘束される
- 最長23日勾留され取調べがおこなわれる
- 当番弁護士や家族を呼ぶことが可能
1. 逮捕後は3日間拘束される
基本的に、逮捕後は警察によって最大48時間拘束されます。
そして、検察に身柄を引き渡され、24時間以内に不起訴・釈放・起訴などの処分が決まります。
処分が決まるまで、だいたい3日間は拘束されると考えられるでしょう。
2. 最長23日勾留され取調べがおこなわれる
万が一、逮捕後の3日間で処分が決まらない場合はそのあと最大10日間の勾留と、さらに延長の10日間勾留があります。
つまり、逮捕後には最大23日間は勾留され、取り調べを受ける可能性があるのです。
取り調べの受け答えによって処分が大きく左右される可能性があるので、慎重に対応しましょう。
3. 当番弁護士や家族を呼ぶことが可能
逮捕後から23日間は、一度だけ当番弁護士や家族を呼べます。
仮に、自分で弁護士に依頼することが難しい場合は家族に代理で呼んでもらうことも可能です。弁護士の依頼を家族に託す場合は、逮捕された場所の管轄の弁護士会に連絡しましょう。
刑事事件を得意とする弁護士ではない可能性もある
ただし、弁護士会から派遣された弁護士が必ずしも刑事事件を得意とするとは限りません。
派遣された弁護士によっては一度のチャンスをうまく活用しきれないリスクがあります。
刑事事件を得意とする弁護士に依頼したい場合は当番弁護士や私人弁護士との交代を相談してください。
弁護士へ相談することで以下のメリットが期待できます。
- 不起訴処分を目指せる
- 早期釈放を目指せる
自分だけで対応しようとすれば長期拘束や起訴に繋がるリスクが高まります。
拘束されてからでは弁護士に連絡できる機会が限られるため、早い段階で弁護士に相談しましょう。
従業員が公文書偽造をおこなった場合に会社がとるべき責任
自社の従業員が公文書偽造をした場合、会社にも責任が及びます。
従業員が公文書偽造をおこない、ほかの従業員が指示・教唆した場合は共同正犯・教唆犯になる可能性があります。
また、従業員が公文書偽造をしていると知っているにもかかわらず見過ごしたりサポートしたりすると幇助犯にもなりかねません。
たとえば、従業員が架空の請求書を作成して経費を受け取る行為は偽造の一種で、嘘の領収書と知りつつ承認した従業員も偽造に加担したことになります。
また、不正の領収書で会社が余分な経費申請をした場合は、会社ぐるみでの隠蔽行為になりかねません。
会社は正しい経費を計算・申請し直す必要があり、場合によっては会社の非の有無にかかわらず重加算税を課される可能性もあります。
自社の従業員の公文書偽造によって外部に被害が及んだ場合は、会社にも損害賠償責任が発生します。
その際に会社は使用責任者に該当するため、従業員の公文書偽造の責任からは逃れられないでしょう。
従業員の公文書偽造を見つけたら、責任者へ早急に報告することをおすすめします。
万が一、会社が組織ぐるみで公文書偽造をおこなっている場合は、通報者の安全を守るためにも弁護士へ相談してください。
まとめ
本記事では、公文書偽造の種類や事例、罪の重さなどについて解説しました。
公文書偽造とは権限がない者が文書を作成するだけでなく、権限がある者が不正に文書を作成するような行為です。
たとえば、運転免許証を発行する権利がある立場で、無資格であるにもかかわらず知り合いの運転免許証を発行するような行為が挙げられます。
また、自分が直接偽造行為をしていなくても、誰かの行為をサポート・スルーすることも罪に問われるでしょう。
公文書偽造は不正行使が目的としているケースがほとんどのため、ほかの犯罪と併用で重罪になる可能性が高いです。
偽造行為は調査によって明るみに出る可能性は極めて高く、公務員に見つかり次第逮捕される可能性があるので逮捕前に弁護士への依頼をおすすめします。
また、現時点で逮捕されている場合でも、弁護士に依頼すると不起訴処分や早期釈放にしてもらえるかもしれません。
公文書偽造は時間が経つほど罪が重くなる傾向にあるので、早急に対応してください。