自首の前に弁護士へ相談すべき3つの理由と弁護士に同行してもらう4つのメリット
罪を犯して自首を考えている方は、「どのタイミングで行動に移せばいいのか」「どんなことに注意すべきか」などがわからず、なかなか行動できなかったり、不安に感じたりすることがあるでしょう。
そこで本記事では、自首の定義や成立条件、弁護士に同行を依頼するメリットなどについて解説します。
自分ひとりでも自首することは可能ですが、弁護士に依頼することで、逮捕のリスクが軽減される・早期釈放が期待できるなどのメリットもあります。
また、自首を得意とする弁護士の探し方についても解説するため、警察に行こうかどうかと迷っている方はぜひ参考にしてください。
弁護士に相談する前に知っておきたい自首の基礎知識
警察に問われる前に自ら警察署に行き、罪を犯したと打ち明けることが自首の定義と認識する方は少なくないでしょう。
しかし、自首とみなされるためのタイミングなど、さまざまなルールがあるため、あなたの状況で警察署に行っても、自首が成立するとは限りません。
ここでは、自首の基礎知識を解説したうえで、混同しがちとなる出頭の意味についても説明します。
自首とは | 事件や犯人の特定前に自ら捜査機関に罪を申告し処分を求めること
自首とは事件の犯人が特定される前に、自ら警察などの捜査機関に出向くことです。
自首をすると、次の観点から罪が軽くなる可能性があります。
【自首で減刑される可能性があると考えられる主な理由】
- 犯人の悔い改めによって、事件の責任に対する非難が軽減する
- 捜査の手間や処罰・訴訟の円滑な運用につながったとなどの観点から心証がよくなる
なお、自首をしても、減刑されない可能性もあり、これを、刑の任意的減免事由といいます。
自首が成立する4つの要件
自首が成立すると減刑などのメリットがあります。
ただし、成立するには次に挙げる4つの要件を満たす必要があります。
- 自発的かつ正確に自身の犯罪事実を申告する
- 刑事処分を求めている
- 捜査機関に対して申告する
- 事件の犯人が発覚する前に申告する
このように自首には成立要件があるため、申告内容やタイミングによっては自首と認められず、罪が軽くならない可能性もあるため、注意が必要です。
自首が成立しないケースとは
次のようなケースでは、自首が成立しません。
【自首が成立しないケース】
- 事件の内容・犯人ともに発覚している
- すでに指名手配されている
- 捜査機関以外に申告する
- 代理人が捜査機関に申告する
- 嘘の内容や罪を認めない申告をする
自首は事件の犯人が不明な状態でなければ成立しません。
犯罪の内容のみ発覚しており犯人が不明な場合は自首できますが、両方が発覚していると無効になります。
また、申告先は必ず捜査機関でなければならず、たとえば万引きをして警察ではなく直接店に罪を申告した場合は該当しません。
そのほかにも、本人が直接申告しなかったり、正しい内容を申告しなかったりする場合には、自首は不成立となります。
自首と出頭の違い
自首と混同しやすいものに出頭が挙げられ、どちらも自ら警察などの捜査機関に出向くことを意味しますが、自首と出頭ではタイミングが異なります。
自首は犯行の事実や犯人が特定されていない状態で捜査機関に行くことを意味し、出頭はすでに警察が事件や犯人を知った状態で捜査機関に行くことを意味します。
つまり、すでに警察が犯人や事件の事実を把握している場合は出頭となり、自首はできません。
なお、自首によって罪を軽くしたい場合は、事件の調査が進む前に、できる限り早く警察へ行くことをおすすめします。
自首をする前に弁護士に相談すべき3つの理由
自首にはさまざまなメリットがあるものの、いざ申告するとなると、不安な気持ちは拭いきれないでしょう。
ここでは、自首をする前に弁護士へ相談すべき3つの理由を紹介します。
自首成立の可能性を上げるためにも、ぜひ把握しておいてください。
自首したあとの見通しを教えてもらえる
「自首をしたあと、どのような処分になるか見通しが立たないと不安で動けない」という方もいるでしょう。
そのような状況でも、弁護士に相談すれば自首後の流れについて教えてもらえるので、不安や疑問を解消しやすくなります。
また、取り調べでどのようなことを聞かれるのかについても相談できるため、自首後の適切な対応を知るうえでも弁護士への依頼は有効です。
自首に同行してもらえる
自分ひとりで警察に行く場合、どのような対応をされるのか心配になることもあるでしょう。
そういった場合でも、弁護士に相談し自首に同行してもらえば、適切に対応できるようサポートしてくれます。
弁護士は事前に警察へ連絡を入れてくれるので、警察署に到着した後の流れがスムーズになります。
また、自分ひとりでは不当な捜査をされるとの懸念を拭いきれないこともあるかもしれませんが、弁護士に同行してもらえば、不安を軽減できるでしょう。
捜査機関と交渉してもらえる
弁護士は捜査機関と交渉をしてくれるため、逮捕を免れたり、万が一逮捕された場合でも示談成立のために動いてくれたりなどのサポートをしてくれます。
逮捕に至らない犯罪の場合は、事件の詳細な内容や自首を決意するまでの経緯などを報告書にまとめたあと、在宅事件として捜査が進むため、逮捕を免れます。
なお、逮捕・勾留となった場合でも、弁護士が被害者との交渉や処分の軽減などを求める意見書の作成などを通してサポートしてくれるため、罪が減免される可能性を少しでも高めてくれます。
弁護士は起訴前だけでなく起訴後もサポートしてくれるので、罪が重くなる可能性が高い方は依頼することをおすすめします。
自首後に作成する書類の作成サポートや、弁護活動をしてくれるため、自首をする際には、弁護士に同行してもらうことをおすすめします。
自首する際に、弁護士に同行してもらう4つのメリット
弁護士に相談すると、自首する際の同行も依頼できます。ここでは、弁護士に同行してもらう4つのメリットについて紹介します。
自首をする際に心強い
自首をすると取り調べで事件の内容や経緯などを聞かれますが、どのように受け答えをすればいいかを考えることが精神的ストレスとなったり、不安になったりすることもあるでしょう。
しかし、自首をする際、弁護士に同行してもらえば、取り調べが終わるまで警察署内で待機してもらえるうえ、取り調べ中に不明点が生じた場合には、都度中断して弁護士への相談が可能となります。
自首をする際、弁護士に同行してもらうことで、これらのメリットを感じられる可能性があります。
不安によって自首をするタイミングが遅れるほど、自首が不成立となる可能性や、罪が重くなるリスクが高まります。
反対に弁護士を頼れば不安を軽減でき、より早く自首をしやすくなるでしょう。
また、逮捕される可能性を軽減できる点も、弁護士に同行してもらうことのメリットです。
弁護士の存在が逃亡・証拠隠蔽の可能性が低いと示すことになるので、逮捕のリスクを減らせます。
取り調べを受ける際の不安を軽減できる
取り調べ中に弁護士が別室で待機するメリットには、取り調べを担当する警察官の態度が変わる可能性がある点が挙げられます。
自分ひとりで自首をする場合、高圧的な態度で取り調べされるリスクが懸念されますが、弁護士がいれば度が過ぎた取り調べの防止につながる可能性があります。
取り調べで威圧的に詰問されるのが怖いという方は、早めに弁護士へ相談しましょう。
家族や会社にバレにくくなる
弁護士と一緒に警察へ行くと、そのまま身元引受人となってくれます。
ひとりで自首して逮捕されなかった場合、警察が家族や職場に電話連絡し、身元引受人として迎えにくるよう依頼します。
そのため、家族や会社に警察からの連絡が来た時点で、自首したことは知られます。
また、自首したあとに逮捕という流れになれば報道によって家族や会社にバレるリスクも高まります。
職場に犯罪がバレた時点で解雇される可能性は高く、家族に迷惑がかかる可能性も高いです。
さらに、インターネットなどで拡散されれば今後の就職や結婚などに悪影響を及ぼすことが懸念されます。
一方、弁護士に相談すれば逮捕される可能性をおさえられるため、逮捕報道によって家族や会社へ犯罪が知られるリスクを軽減できます。
弁護活動をよりスムーズに開始できる
自首をする際、弁護士に同行してもらうと、すぐに弁護活動を開始してもらえます。
自首した時点で被害届が出ていれば、弁護士が直接被害者と電話をして示談交渉できるケースがあり、スムーズに示談交渉が進めば早期釈放となる可能性もあります。
万が一逮捕となった場合でも、長期の勾留を回避できる点で、弁護士への相談にはメリットがあります。
自首後に作成する書類の作成サポートや、弁護活動をしてくれるなどのメリットがあるため、自首をする際には、弁護士に同行してもらうことをおすすめします。
自首の前に相談する弁護士を選ぶ5つのポイント
全ての弁護士が自首を得意としているわけではないため、次に挙げる5つのポイントに注目して、より賢く弁護士を選びましょう。
刑事事件に詳しい弁護士を選ぶ
事件は民事と刑事に大別でき、弁護士事務所ごとに得意分野や専門性が異なるため、刑事事件に精通している弁護士を選ぶことが大切です。
刑事事件では弁護士の対応が、逮捕されるかどうか、いつ釈放されるのか、前科がつくかどうかなどの結果に影響します。
そのため、自首をする際に相談する弁護士を選ぶ際には、各弁護士事務所のホームページなどで刑事事件に注力しているかどうかを確認しましょう。
刑事事件の実績が豊富な弁護士を選ぶ
刑事事件を取り扱っているだけでなく、実績が豊富である点も重要です。
弁護士はただ自首に同行するだけでなく、警察や被害者とさまざまなやりとりをしながら、少しでも依頼者が有利になるよう、対応してくれます。
そのためには、示談が成立した理由や事件の性質、再犯防止策などを総合的・客観的に主張し、検察官を説得させる必要があります。
なお、検察官の説得には豊富な知識や経験が必要になるため、力量が高いと思われる弁護士を選ぶことをおすすめします。
具体的には、各弁護士事務所のホームページなどをチェックし、どのような実績があるかなどを確認しましょう。
迅速に対応してもらえる弁護士を選ぶ
自首後に逮捕された場合、迅速に対応しなければ十分な弁護活動がないまま起訴されるかもしれません。
自首の有無にかかわらず、逮捕後は警察に48時間、検察官に24時間と、最長で72時間の身柄拘束を受けたあと、勾留されます。
なお、勾留後は最長23日間の拘束となり、この間に検察官が起訴・不起訴を決めるため、仮に不起訴でも迅速に対応してもらえない場合は、最大で23日間も社会から隔離されてしまうのです。
また、一度不利な判断をされると、挽回して不起訴を勝ち取ることは簡単ではありません。
迅速に不起訴になるよう、適切な対応してくれる弁護士を選ぶことは、起訴のリスクを軽減し、早期釈放を実現するために重要です。
管轄の警察署の近隣の弁護士を選ぶ
自首の前に弁護士を選ぶ際は、管轄の警察署からできる限り事務所が近いところをおすすめします。
警察署から遠い場所に事務所がある弁護士に依頼すると、頻繁に面談をしに来てもらったり、検察官や裁判官と交渉してもらったりすることが難しくなるからです。
遠方の弁護士は近場の弁護士より、迅速に対応しづらい傾向があるため、十分な弁護活動をしてもらえないかもしれません。
さらに、費用面でも遠方の弁護士にはデメリットがあります。
弁護士費用のなかには実費という項目があり、状況に応じて交通費・宿泊費・拘束時間に対する費用を支払う必要が生じるため、遠方になるほど余分なコストがかさみます。
このような理由により、自首の際に弁護士を選ぶときには、できる限り管轄の警察署に近い弁護士を検討することをおすすめします。
コミュニケーションが取りやすい弁護士を選ぶ
弁護士によっては複数依頼のうちの1件でも、依頼者にとって自首は一大事であるため、さまざまな不安や疑問を抱えることは珍しくありません。
また、依頼者が心のうちをさらけ出せるくらいコミュニケーションを取りやすい弁護士であるほど、信頼関係を築きやすいため、不起訴を勝ち取りやすくなるいえます。
特に、自首後に逮捕・勾留されることになると、依頼者にとっては大きな不安になるでしょう。
このときに心強い味方がいるかどうかで、精神的負担をはじめとする状況は大きく変わるといえます。
このような点から、自首の前に依頼する弁護士を選ぶ際は、信頼関係を築けるかどうかに注目しましょう。
例えば、「対面で話した際の印象はよいか」「知識のない方に向け、わかりやすく丁寧に説明してくれるか」「親身になって相談に乗ってくれるか」などに注意することをおすすめします。
なお、自首後は自分に適切な弁護士を1件ずつ探す時間を確保しづらいと考えられるため、複数の弁護士から選ぶ際は、まとまった時間を作るなどの工夫をしましょう。
自首についてよくある疑問
ここでは、自首についてよくある5つの疑問についてまとめています。
自首に関する役立つ情報を得られる可能性があるため、順に見ていきましょう。
自首をすれば絶対に罪が軽くなりますか?
自首は刑法42条で減刑できると定められていますが、必ず罪が軽くなるという意味ではありません。
また、申告した内容が事実と異なる場合や、自分以外が警察に行った場合などは自首に該当しないので注意してください。
なお、自首によって罪が軽くなる可能性を少しでも高めるためには、真実を申告する、刑事処分を求める、自分の意思で警察に行く、定められたタイミングで自首するなどの点に注意が必要です。
自首するタイミングで気を付けることはありますか?
自首が成立するためには、事件の内容が発覚してないタイミング、または事件も犯人も発覚していないタイミングで申告する必要があります。
すでに、犯人がわかっている時点での申告は出頭となり、自首とはみなされないため注意しましょう。
例えば、指名手配として捜査が進んでいる状況や、警察がすでに犯人を把握している状況では、自首とみなされず、出頭扱いになります。
出頭になると、刑が軽くなる可能性が自首のときよりも低くなる傾向がある点も把握しておきましょう。
警察署へ電話で罪を申告しても、自首は成立しますか?
警察への電話は自首のきっかけになりますが、電話での連絡単体で自首が成立するわけではありません。
110番で事件を起こした犯人であると自供したあとは、警察の指示に従う必要があります。
具体的には、警察の指示によって警察署に行かず、その場で待機するように言われた場合、警察の指示に従った点から、自首は成立します。
反対に、電話で警察に自供したあと、指示に従わず逃走した場合などは、自首は成立しません。
自首をしても証拠がない場合はどうなりますか?
自首をしても証拠がなければ刑事事件とはならず、有罪になりません。
そのため、上申書や身分証明書のコピーなどを警察に提出するなどの手続きを求められるのみとなり、逮捕はされないでしょう。
もし、後日に被害届や他者からの証言などによって事件が発覚すれば、刑事事件として扱われ、最初に自供した日に自首したとみなされます。
証拠がなければ出頭せずにやり過ごす方法もありますが、早めに自首することで減刑の可能性が高まるメリットがある点は、理解しておきましょう。
また、早めに自首をすると、被害届が出ていない場合、早い段階で把握できるため、精神的なストレスからも解放されるかもしれません。
弁護士の同行なしで自首しても問題ありませんか?
弁護士なしでも自首をすることは可能ですが、自分ひとりで対応することは簡単ではありません。
その点、弁護士が同行してくれると、早期釈放・精神的なサポートなどが期待できます。
また、弁護士に同行してもらうと、自首後に身元引受人となってもらえるため、家族や仕事の関係者などに自首したことを知られるリスクも回避しやすいです。
これらの理由から、自首をする際には、弁護士へ相談したほうがよいでしょう。
さいごに|自首を考えているなら弁護士へ相談を
本記事では、自首の定義や成立条件、弁護士に同行を依頼するメリットなどを解説しました。
自首は犯人が判明していない段階でなければ成立しないため、警察が犯人を把握している、あるいは指名手配になっているタイミングでは成立しません。
自首には罪を軽くできるというメリットがあるため、検討している方には早めの行動をおすすめします。
ただし、自分ひとりで自首をすると適切な対応方法がわからなかったり、むやみに不安を大きくしてしまったり、長期的に拘束された挙句に起訴されたりするリスクが高まる点には注意が必要です。
そのため、自首を考えている場合は弁護士への相談がおすすめです。
自首をして逮捕・勾留されると、自身の状況などに適した弁護士を探す時間を確保しづらくなるため、自首前に依頼先を見つけておきましょう。