自己破産は自分でできる?自分で進める手順とデメリット
自己破産の手続きを、自分だけで進めようと考えていませんか?
結論からいえば、自己破産の手続きは自分だけでも進められるものの、おすすめはできません。
なぜなら、自己破産の申立てには多くの書類や手続きが必要になるからです。
なかには、法律や自己破産の知識がない人では困難な場合もあります。
本記事では、自分で自己破産を進める手順や費用と合わせて、弁護士に依頼するメリットについて解説します。
自己破産は自分でもできる?
自己破産の手続きは、弁護士に依頼しなくても個人で裁判所に申し立てできます。
ここではまず、自分で手続きをおこなう場合の必要書類と費用について確認していきましょう。
- 自己破産を自分でおこなう場合の必要書類一覧
- 自己破産を自分でおこなう場合の費用
自分で自己破産の手続きをおこなうには、準備しなければならない書類や支払う費用について理解しておく必要があります。
自己破産を自分でおこなう場合の必要書類一覧
自己破産を自分でおこなう際には、以下に記載する申立書類と添付書類が必要です。
なお、以下に記載する書類は、提出書類の全てを網羅しておらず、また、提出書類は個々のケースによって異なりますので、ご留意ください。
- 申立書
- 陳述書
- 債権者一覧表、滞納公租公課一覧表
- 資産目録
- 家計状況表
- 給与明細、源泉徴収票、確定申告書、課税証明書
- 住民票
- 賃貸借契約書・不動産の登記事項証明書
- 退職金支給明細書・退職金規定
- 預金通帳や車検証・保険証券
- 保険解約返戻金証明書
- (相続が発生している場合)相続関係図、遺産分割協議書等
- 債務名義に関連する書面(判決、差押命令等)
実際に必要となる書類は裁判所によって異なる場合があります。
申立てをする前に、管轄裁判所のウェブサイト等を参照の上、ご自身のケースにおいて必要となる書類をご確認ください。
全ての書類を自分で用意するには手間と時間がかかるため、申立て前には書類の準備期間を確保しておくとよいでしょう。
自己破産を自分でおこなう場合の費用|弁護士に依頼するよりも安い?
自己破産を自分でおこなう場合、手続きに最低限かかる費用はおおむね以下のとおりです。
- 収入印紙代(申立手数料):1,500円(個人の場合)
- 郵便切手代:約3,000円~1万円程度
- 予納金:約1万円~50万円
予納金は自己破産手続きの種類によって金額が大きく異なり、同時廃止事件であれば1万円~3万円程度、通常管財事件であれば50万円程度です。
管財事件になるような事案であっても、弁護士に依頼すれば少額管財手続き(通常管財手続きと比べて簡易・迅速な管財手続き)となるケースが多く、その場合の予納金は20万円程度で済みます(ただし、少額管財事件方式を採用しているか否か、どのような場合に少額管財事件となるかは裁判所ごとに方針や運用が異なります。)。
なお、自分で破産申立てをする場合には、少額管財事件として申立てをすることができないため、通常管財事件の予納金(50万円程度)を納める必要があります。
そのため、弁護士に報酬を支払って申立て手続きを依頼した場合と結果的に同程度ないしそれ以上の金額を準備しなければならない可能性もあります。
自己破産を自分でおこなう前の確認ポイント
自己破産を自分でおこなう場合には、申立てをする前に確認しておくべきポイントが大きく2つあります。
- 自分の財産状況を把握する
- 本当に自己破産すべきか検討する
自己破産の手続きに失敗してしまうと、借金の免責が受けられなくなってしまう可能性もあります。
以下で重要なポイントを解説するため、確認したうえで慎重に検討しましょう。
自分の財産状況を把握する
自己破産を申し立てる前にまず、自分の財産状況を正確に把握することが重要です。
ご自身が抱えている債務の契約書や返済履歴だけでなく、以下のような所有財産も漏れなく確認してください。
- 預金残高
- 現金
- 不動産
- 車両
- 株式、有価証券等(手形、ゴルフ会員権等)
- 退職金の権利
- 保険契約の解約返戻金
- 貸付金・売掛金等
- 積立金(社内積立等)
- 貴金属・美術品など高価な動産類
- (相続が発生している場合)相続財産
- 過払金 など
債務整理の事前準備として、手続きを検討するための情報を整理しましょう。
本当に自己破産すべきか検討する
自己破産は借金問題を解決する方法のひとつですが、必ずしも全ての人に適しているとはいえません。
自己破産をおこなうと、信用情報に長期間影響を及ぼすうえに、財産を失う可能性もあります。
そのため、自己破産の手続きを進める前に、任意整理や個人再生、特定調停などほかの債務整理で解決したほうが良いかどうかも検討しましょう。
自己破産を自分でおこなう場合の手順
自己破産の手続きを自分で進める際の基本的な手順は、次のとおりです。
- 裁判所への破産申立て
- 破産事件受理証明書の送付
- 裁判官との面接(債務者審尋)
自己破産の手続きは、裁判所を通じておこないます。
手続きの各工程について、以下で順を追って確認していきましょう。
裁判所への破産申立て
自己破産を自分で進める場合、まずは裁判所への破産申立てをおこないます。
申立てに必要な書類や費用は裁判所によって異なるため、裁判所の指示に従って準備しましょう。
申立書と添付書類、必要な費用などの準備ができたら、裁判所に持参して申立てをおこないます。
破産事件受理証明書の送付
裁判所に破産申し立てが受理されると、破産事件受理証明書が発行されます。
破産事件受理証明書を入手できたら、証明書のコピーを債権者に送付しましょう。
破産事件受理証明書のコピーを送付することによって、これ以降債権者からの取り立てがストップします。
裁判官との面接(債務者審尋)
自己破産の手続きでは、申立て書類が受理されたあとに裁判官との面接がおこなわれます(債務者審尋)。
面接では、主に提出書類の内容確認や債務の発生原因、現在の生活状況、資産の有無などを質問されます。
その後の手続きを決定するための重要な面接であるため、正直かつ具体的に自分の状況を説明しましょう。
この面接を経て、裁判官によって同時廃止事件と管財事件のどちらかに決定されます。
裁判官との面接後|同時廃止の場合
裁判官との面接後、同時廃止と判断された場合は、以下のような流れで手続きが進みます。
- 裁判官による免責審尋
- 免責の許可・不許可の決定
- 免責許可確定後、免責許可決定通知書を取得
同時廃止では破産手続きは省略され、そのまま免責手続きに移行します。
免責許可決定が出たら、その証明として裁判所から免責許可決定通知書が送付されます。
裁判官との面接後|管財事件の場合
裁判官との面接後に管財事件と判断された場合、手続きは以下のような流れで進められます。
- 破産管財人との面談
- 裁判所での債権者集会
- 裁判所での免責審尋
- 配当
- 免責許可の決定
管財事件では破産管財人が選任され、申立人の財産管理・処分、免責不許可事由等の調査、債権者への配当などをおこないます。
申立人は破産管財人と連携して手続きを進めていく必要があり、同時廃止と比べると免責許可決定までに時間がかかるのが一般的です。
自己破産を自分で進めるデメリット
自己破産の手続きは個人でもできるとはいえ、実際には以下のような多くのデメリットが伴います。
- 書類を全て自分で揃える手間がかかる
- 裁判所とのやり取りを自分でおこなわなければならない
- 管財事件の場合は、通常管財事件になり、少額管財事件にならない
- 免責不許可事由がある場合に裁量免責が許可されにくい
- 手続きが長引く可能性がある
- 抜け漏れでトラブルになる可能性がある
- 弁護士に依頼するよりも費用が高くなるケースもある
自分で手続きを始める前に、どのようなデメリットがあるかも確認しておきましょう。
自己破産を自分で進めるデメリットについて、それぞれ解説していきます。
書類を全て自分で揃える手間がかかる
自己破産の手続きでは多くの書類が必要となり、全てを自分で揃えるとなると、膨大な手間と時間がかかります。
多くの人にとって、初めておこなう手続きであるため、どのような書類が必要なのか、どのようにして準備すればいいのか悩む状況も多いでしょう。
また、申立て時に必要書類が不足していたり、不備があったりしたときに、自分で修正や追加提出などの対処をしなければならないのもデメリットといえます。
裁判所とのやり取りを自分でおこなわなければならない
裁判所の裁判官や書記官とのやり取りを自分でおこなわなければならない点も、自己破産を自分で進める際のデメリットといえます。
申立て時に提出書類に不足や不備があった場合には、書記官から指摘を受け、書類の提出のために何度も裁判所に足を運ぶことになるかもしれません。
また、自己破産の手続きには申立て後、裁判官との面談、債権者集会、免責新人期日への出頭など、複数回裁判所へ出向かなくてはなりません。
裁判官との面談は平日の日中に指定されるため、仕事をしながら手続きを進めていくのは負担が大きくなりやすいと想定されます。
弁護士に依頼した場合にも、破産者本人が債権者集会や免責審尋期日など裁判所に行く必要はありますが、裁判所とのやり取りは弁護士に任せることができるため、負担は相当軽減されます。
管財事件の場合は通常管財事件になり、少額管財事件にならない
自己破産の申立てをした場合、ケースによっては管財事件に該当する可能性もあります。
管財事件とは、債務者に一定以上の財産がある、債務者が個人で事業を営んでいた、またはギャンブルや浪費で借金をした場合など免責不許可事由があると判断された際に適用される手続きで、同時廃止事件の手続きよりも時間と費用がかかります。
裁判所によっては、管財事件よりも費用がかからない少額管財という手続きもありますが、弁護士に申立代理人を依頼しなければ少額管財にならないため注意が必要です。
裁量免責が許可されにくい
裁量免責が許可されにくいのも、自分で自己破産手続きをおこなうデメリットです。
破産法には、免責不許可事由が定められており、例えばギャンブルや浪費行為で借金をした場合は、原則として免責が許可されず、債務の免除を認めてもらえません。
自己破産と免責許可の申立てを行ったとしても、免責許可決定が下りなければ、債権者に対して債務を負い続けることになってしまいます。
しかし、免責不許可事由に該当するような場合でも、裁量免責として裁判所の裁量で免責される可能性があります。
自分で自己破産をおこなった場合は適切に手続きを進めるのが難しくなるため、裁量免責が許可されにくい可能性があります。
手続きが長引く可能性がある
自分で破産手続きを進める場合、弁護士に依頼するよりも時間がかかるケースが多いです。
とくに、書類の不備による修正や追加提出が必要になった際は、速やかに対応しなければその後の手続きを進められません。
結果として免責許可が下りるまでの期間も長引き、経済的な立て直しも遅れてしまう可能性があります。
抜け漏れでトラブルになる可能性がある
自己破産の手続きを自分で進める場合、債権者の抜け漏れなどによってトラブルが生じるリスクがあります。
申し立て時には債権者一覧表を提出する必要がありますが、個人で作成すると債権者の一部を記載せずに提出してしまう可能性もあるでしょう。
裁判所から免責許可が下りたあとに債権者の抜け漏れが発覚した場合には、その債権者と裁判に発展するケースもあるため注意が必要です。
弁護士に依頼するよりも費用が高くなるケースもある
自己破産を自分で進める場合、弁護士に依頼するよりもかえって費用が高くなるケースもあります。
とくに手続きが管財事件となった場合は、裁判所に50万円程度の予納金を支払わなければなりません
弁護士に依頼した場合には少額管財事件として処理される可能性があるため、裁判所に予納する金額を抑えることができます。
弁護士に支払う報酬を考慮したとしても弁護士に依頼する方が得策といえます。
自己破産を弁護士に依頼するメリット
自己破産の手続きを弁護士に依頼すると、次のようなメリットがあります。
- 早急に催促を止められる
- 書類作成を依頼できる
- 手続きを代行してもらえる
- 免責許可決定を得やすい
- 弁護士に依頼しなければ受けられない制度がある
法律の専門家である弁護士は、複雑な自己破産の手続きを適切に進められるため、自分でおこなうのに比べて負担を軽減できます。
弁護士に依頼すると具体的にどのようなメリットを得られるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
早急に催促を止められる
自己破産を弁護士に依頼するメリットのひとつは、早急に債権者からの催促を止められる点です。
弁護士に債務整理を依頼すると、通常、数日のうちに債権者へ受任通知が送られます。
受任通知送付後は債権者から債務者に直接取立てをすることができなくなるため、取立てから解放されます。
自分で手続きすると、裁判所から発行される破産事件受理証明書を送付するまで督促を止められないため、早い段階で督促がストップできるのは大きな利点といえます。
書類作成を依頼できる
自己破産を弁護士に依頼すると、書類作成を依頼できます。
自己破産手続きでは多くの書類を揃えなければならず、個々のケースによって必要書類も異なります。
弁護士に依頼した場合、弁護士から提出書類のアドバイスをもらって準備をすることができるため、過不足なく準備を進めることができます。
また、申立書、陳述書、債権者一覧表、資産目録等の書類も弁護士に作成を依頼することができます。
弁護士への依頼によって、手続きの遅延や書類不備によるリスクを最小限に抑えられるでしょう。
手続きを代行してもらえる
自己破産を弁護士に依頼すると、申立書の作成や提出のほか、裁判官との面接、破産管財人とのやり取りなど多くの手続きを代行してもらえます。
弁護士は必要な書類や破産手続きの進め方を熟知しているため、自己破産をスムーズに進められる可能性が高くなります。
また、自分で書類を作成する必要がなくなり、ストレスや負担を大幅に軽減できるでしょう。
免責許可決定を得やすい
裁判所の免責を受けやすくなるのも、弁護士に自己破産を依頼するメリットです。
とくに免責不許可事由に該当しうる場合、裁量免責を受けられるかどうかが非常に重要となります。
裁判所の判断基準を理解している弁護士に依頼すれば、免責を受けやすくするためのアドバイスを受けられるでしょう。
弁護士に依頼しなければ受けられない制度がある
自己破産手続きには、以下のような弁護士に依頼しなければ利用できない制度が存在します(裁判所によって制度の有無や運用方針は異なります)。
- 少額管財
- 即日面接制度
少額管財は、管財事件よりも簡略化された手続きで、通常の管財事件よりも裁判所へ支払う予納金が安く済みます。
また即日面接制度は、自己破産申し立ての当日、もしくは申し立て後の休日を除く3日以内に裁判官と面接できる制度です。
弁護士に依頼するとこれらの制度が利用できるため、通常の管財事件の場合よりも安く、時間をかけずに手続きを進められる可能性が高くなります。
自己破産の弁護士費用が足りない場合
自己破産の手続きを弁護士に依頼する際、多くの人が懸念するのが費用の問題です。
弁護士に依頼する費用が捻出できない場合には、以下のような方法を検討しましょう。
- 分割払いができる弁護士に相談する
- 法テラスで立て替えてもらう
弁護士費用が足りないときの対策について、以下で詳しく解説していきます。
分割払いができる弁護士に相談する
弁護士費用を一括で支払えない場合には、分割払いができる弁護士に相談するのがおすすめです。
分割払いの対応は弁護士事務所によって異なるので、まずは依頼費用の分割が可能か相談してみるといいでしょう。
分割払いができれば、弁護士費用を数回にわけて支払えるため、一度に大きな金額を用意する必要がなくなります。
法テラスで立て替えてもらう
法テラスで弁護士費用を立て替えてもらうのも、ひとつの手段です。
法テラスでは、経済的に余裕がない人に向けて、無料法律相談や弁護士費用の立て替えサービスを提供しています。
費用の立て替えをしてもらうには、収入・資産額などの条件を満たしている必要があるため、利用を検討する前に条件を確認するようにしてください。
さいごに|自分で手続きを進める前に一度無料相談から
自己破産は自分でおこなうことも可能ですが、適切に手続きを進めるためには弁護士のサポートが必要となるケースが多いです。
自己破産を検討しているのであればまず、借金問題に注力している弁護士へ相談してみることをおすすめします。
法律事務所によっては初回の法律相談を無料で受け付けているため、無料相談を活用してご自身の状況に応じた債務整理の方法を相談してみてください。