窃盗の初犯で逮捕されるとどうなる?逮捕後の流れや罰金・示談金の相場も解説
軽い気持ちから万引きをして見つかってしまったとき、今後がどうなるか非常に不安ですよね。
窃盗の初犯として逮捕された場合、どういった結末を迎えてしまうかは人生計画を立て直すうえで知っておきたいところです。
本記事では、窃盗の初犯で逮捕されるとどうなるか、逮捕後の流れや罰金・示談金の相場はどれくらいなのかを解説します。
また、刑罰を軽くするためにできることについても触れていくので、ぜひ参考にしてください。
窃盗の初犯で逮捕されると下される3つの処分
窃盗の初犯で逮捕されてしまった場合、以下に挙げた処分が下される可能性があります。
自分がどういった状況に陥るリスクがあるのかを把握するためにも、確認・把握しておきましょう。
処分内容 |
前科 |
拘束期間や刑罰など |
微罪処分 |
なし |
最大72時間の身柄拘束 |
不起訴処分 起訴猶予処分 |
なし |
最大23日間の身柄拘束 |
略式起訴されて罰金刑 |
あり |
・最大23日間の身柄拘束 ・罰金支払い義務あり ・罰金を支払えない場合は労役場へ勾留され、強制労働 |
起訴されて罰金刑 |
あり |
・最短1ヵ月以上の身柄拘束 ・罰金支払い義務あり ・罰金を支払えない場合は労役場に勾留で強制労働 |
起訴されて懲役刑(執行猶予あり) |
あり |
最短1ヵ月以上の身柄拘束 |
起訴されて懲役刑(執行猶予なし) |
あり |
・最大10年の身柄拘束 ・刑務所勾留のうえ強制労働 |
微罪処分|被害額が低い場合など
窃盗で微罪処分となった場合、前科はつきません。
処分のなかでも軽い部類となり、警察の判断で身元確認後に釈放されます。
なお、微罪処分で前科がない場合は最大72時間の身柄拘束となります。
初犯で逮捕された際の拘束時間としては最も短く、社会復帰は容易といえる部類です。
刑事訴訟法では、以下のとおり「特別な場合を除き、警察が犯罪の捜査をしたときは検察官へ事件を送致する」と規定されています。
微罪処分は例外に該当することから、事件の捜査が警察の段階で終了するため刑事裁判は実施されません。
第二百四十六条 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
ただし、微罪処分となった場合は窃盗で捜査を受けた記録は残り、これを前歴といいます。
以後、仮に逮捕された際に同種の犯罪前歴がある場合、不利な状況に立たされる可能性がある点は押さえておきましょう。
不起訴処分・起訴猶予処分|立証が難しい場合など
不起訴処分・起訴猶予処分となった場合もまた、微罪処分と同様に前科はつきません。
検察が起訴を見送ると判断すると捜査は終了し、被疑者が身体拘束されている場合は釈放されます。
身柄拘束は最大23日間となることから、社会復帰に差し支えが生じる可能性も否めません。
不起訴処分は立証が困難なときに下され、起訴猶予処分は犯罪の情況によって訴追を必要とせず、公訴を提起しないことができると刑事訴訟法で定められています。
第二百四十八条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
引用元:
起訴処分|初犯でも悪質な場合など
起訴処分となった時点で前科がつき、刑事裁判を受けることになります。
刑事裁判へ進むと99%以上の確率で有罪判決となることから、ほぼ免れないでしょう。
起訴される時点で証拠が揃っており有罪判決が濃厚と判断されているため、このような高い数値となっています。
窃盗においても初犯で起訴される可能性はあり、特に悪質と判断された場合が該当します。
初犯かつ被害額が100万円以下だと略式起訴の可能性も
窃盗が初犯で、かつ被害額が100万円以下の場合は略式起訴の可能性があります。
略式起訴は書面による裁判の手続きで、懲役刑の対象ではありません。
この場合は検察が提出した証拠で処分が下されるため、被告人が事件について主張できる機会は設けられていません。
また、被告人が窃盗の罪を認めており、かつ罰金を支払う意思があることが前提です。
なお、略式起訴に該当するか否かは、勾留期間中に提案されます。
手続き開始から14日以内に完了となり身柄が釈放されます。
罰金刑が言い渡され、支払いが完了すると刑が終わるという流れです。
窃盗の初犯で有罪になると罰金刑・懲役刑の可能性も
窃盗の初犯で有罪が確定すると、罰金刑や懲役刑を言い渡される可能性があります。
では、金額や刑期はどの程度なのか、具体的にみていきましょう。
罰金刑|20万円~30万円が目安
窃盗の初犯で罰金刑を科された場合、相場として20万円から30万円が目安となります。
なお、罰金額は初犯もしくは前科や前歴があるか、被害額はどれくらいか、悪質性があるかなどが判断基準です。
罰金は金融機関での納付となり、郵送にて納付告知書が自宅に届きます。
納付告知書には罰金額と支払先の金融機関、そして支払期限が記載されているため、指示に従って納付してください。
ほかにも、検察庁の徴収係窓口にて納付する方法もあります。
罰金額は原則一括払いとなり、クレジットカードによる支払いは不可です。
分割払いに対応してくれることもありますが、特別な事情がある場合に限られます。
罰金刑は罰金額を支払うと勾留されていても釈放されることから、日常生活にも戻りやすいでしょう。
懲役刑に比べると社会復帰はしやすいものの、前科がつくことを忘れてはいけません。
罰金を払えない場合は資産の差し押さえや強制労働の対象に
仮に罰金が払えない場合は、まずは資産が差し押さえられ、次に身柄が拘束され強制労働となる罰金未納の規定が刑法で定められています。
資産の差し押さえ対象は銀行口座や家財道具で、借金の滞納と同様です。
差し押さえになった資産の総額が罰金額よりも少額となる場合は、身柄が拘束され労役場にて強制労働の対象となります。
強制労働で作業報酬を受け取り、罰金額を支払います。
作業報酬の相場は1日あたり5,000円が相場です。
そして、強制労働により手にしたお金で罰金の支払いが完了すると釈放されます。
なお、罰金を支払えない場合については刑法にて定められているとおりです。
(労役場留置)
第十八条 罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。
引用元:刑法 | e-Gov 法令検索
労役場に移送されるのは判決が出てから最短30日後となっており、本人の同意がなければ執行されないと刑法に明記されています。
(労役場留置)
第十八条
5 罰金については裁判が確定した後三十日以内、科料については裁判が確定した後十日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。
引用元:刑法 | e-Gov 法令検索
そのため、身柄を拘束され労役場での強制労働を避けたい場合は、判決が確定してから30日以内に罰金を支払ってください。
懲役刑|窃盗の刑期は最大10年
懲役刑は前科がつくうえ、身柄が拘束され刑務所に収容されます。
窃盗罪の刑期は刑法で定められているとおり最大10年となっており、初犯の場合は短くなる可能性があります。
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法 | e-Gov 法令検索
悪質な窃盗と判断できる、あるいは被害者の処罰に対する意識が大きい場合は、懲役刑になる可能性が高まる点は押さえておきましょう。
なお、悪質と判断できる要素として、次のものが挙げられます。
- 被害額が100万円を超えている、かつ被害に対して弁償がされていない
- 初犯ではあるものの、逮捕に至るまで複数回窃盗に及んだ
- 住居への侵入・傷害など、窃盗罪と共にほかの犯罪が成立している
あくまで一例に過ぎませんが、刑期が長くなる可能性があるケースについては把握しておいてください。
3年以下の判決では執行猶予がつく可能性も
窃盗罪において、3年以下の判決が出た場合は執行猶予となる可能性があります。
執行猶予は1年から5年の間で言い渡され、前科はつくものの刑務所へただちに入る必要はありません。
第二十七条の二 次に掲げる者が三年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、一年以上五年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。
引用元:刑法 | e-Gov 法令検索
なお、執行猶予となる条件について刑法では次のように定められています。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
三 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
引用元:刑法 | e-Gov 法令検索
窃盗の初犯で逮捕されてからの流れ
窃盗の初犯で逮捕された場合、どのような流れで進んでいくのでしょうか。
ここからは、逮捕されてから量刑が決まるまでの流れを解説していきます。
①警察から取り調べを受ける
逮捕されるとまず身柄が拘束され、警察から取り調べを受けます。
取り調べは留置場や拘置所などに身柄が拘束されて実施され、生い立ち、被害者との関係性、事件の経緯、犯行の動機、余罪などを質問されることが考えられます。
原則黙秘を推奨していますが、供述しても安全だという確信を持てた際は事実を答えましょう。
このとき、取り調べの内容は供述調書に記録されます。
窃盗の被害が小さい場合や初犯の場合、被害の弁済と示談が済んでいる場合は在宅事件として扱われることもあります
取り調べの際に警察へ出頭するため、おおむね普段どおりの生活が送れるでしょう。
②48時間以内に微罪処分か検察に送致されるかが決まる
取り調べでの質問による回答をもとに、警察官は逮捕してから48時間以内に事件を検察官に送るか否かを判断します。
検察官に送るか否かは犯罪事実に基づくところがあり、軽微な場合の扱いは微罪処分となります。
仮に微罪処分となった場合は、検察官に送られず釈放となります。
微罪処分の場合は、拘束時間は最大48時間
警察の取り調べを受けて検察官に送られない微罪処分と判断された場合は、軽微な犯罪に分類されるため拘留期間は最大48時間です。
微罪処分はあまり多くない措置であることから、対象となる犯罪は限定されています。
③検察官から取り調べを受ける|最大20日間
警察から検察へ送られると、検察官による取り調べがおこなわれます。
取り調べに際して、まずは10日間の身体拘束があり、そこから10日間の延長が可能です。
つまり、トータルで最大20日間の拘留が可能です。
④起訴・不起訴・起訴猶予処分が決まる
検察から取り調べを受ける最大20日間に、起訴あるいは不起訴などの処分を決定します。
不起訴処分や起訴猶予処分の場合、身柄は解放されますが、起訴処分であれば身柄拘束は継続して、裁判を待つことになります。
仮に窃盗罪の罪として100万円以下の罰金に相当すると判断された場合は、略式起訴の対象となります。
なお、略式起訴の場合は懲役刑になりません。
略式起訴の場合、検察が提出した証拠だけで判断されるため被告人が主張する機会はない、被告人が罪を認めたうえで罰金を支払う意思があることが前提など、略式起訴の詳細について理解しておきましょう。
手続き開始から14日以内に完了して身柄解放・罰金刑が科され、刑が終わるという流れです。
⑤刑事裁判で量刑が決まる
起訴された場合は刑事裁判の手続きが進められます。
この際の拘留期間は原則2ヵ月となっていますが、1ヵ月ごとの延長も可能なため裁判が終了するまで拘留は継続可能です。
つまり、長期間にわたって拘留される可能性があります。
なお、一般的に刑事裁判は公開法廷で実施され、検察・被告人のそれぞれが証拠を提出でき、裁判官によって量刑が判断されるという流れです。
有罪判決を受けて執行猶予がつかなかった場合は、刑務所に入ることとなります。
窃盗の初犯でも実刑になる?刑罰を軽くするためにできること
窃盗の初犯でも悪質性が高い場合は実刑となる可能性はあります。
そのような事態を避けるためにも、刑罰を軽くする方法は知っておきたいところです。
ここからは、窃盗の初犯で実刑を受けた際に刑罰を軽くするために何をすべきか解説していきます。
①逮捕される前に自首する
窃盗の初犯であれば、逮捕となる前に自首することを意識してください。
自首することで身柄拘束を回避できる可能性に期待がもてるため、不起訴処分を目指すにあたって欠かせない行動です。
自首は刑法でも減刑になる自由として定められていることから、刑罰を軽くするために有効と考えられます。
(自首等)
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
引用元:刑法 | e-Gov 法令検索
ただし、逮捕される前に自ら罪を認めれば全て自首が成立するわけではありません。
自首が成立する要件には、窃盗が捜査機関に発覚しておらず犯罪が認識されていない、あるいは窃盗自体は捜査機関に認識されているものの、犯人は特定されていないという条件を満たしておく必要があります。
仮に窃盗犯として指名手配されていると、自ら出頭して罪を認めても自首とはなりません。
このことからも、少しでも早い段階で自首をするのがよいでしょう。
②早めに弁護士に相談する
刑罰を少しでも軽くすることを目的とした場合、弁護士への相談は必須といっても過言ではありません。
弁護士は法律に関する知識を豊富に有するため、早い段階で相談することで選択肢が増えます。
たとえば、弁護士同行で自首することで逮捕を回避できる期待がもてる、取り調べ時における適切なアドバイスを受けられる、不起訴により前科回避の可能性が高まるなど、さまざまなメリットがあるのです。
③示談交渉をする
窃盗の初犯となる場合、示談成立により不起訴処分となる可能性は高くなります。
実刑か否かを判断する際に被害者の感情や被害の回復を重視する傾向にあるため、被害者が加害者を許していると処分は減刑されるのです。
示談成立を証明するにあたり、有効な示談書を作成して捜査機関に提出します。
その際の示談書には被害者が加害者を許したこと、被害者は加害者への刑事処罰を求めていないこと、被害届を取り下げることなどが記載されていると有効性が高いでしょう。
弁護士に相談した場合は示談交渉を一任できるため、専門的な知識をもとに解決へ導いてくれることが期待できます。
窃盗の示談金相場は盗んだものの金額+α
窃盗の示談相場は盗んだ総額に対して、いくらか加算されると理解しておきましょう。
まず、前提として盗んだ金品分だけの金額を弁済することは当然であり、そこに被害感情への慰謝料、被害者が捜査へ協力した手間・時間などを考慮してプラスする必要があります。
盗んだ金品金額の2倍、盗んだ金品総額に20万円から50万円を加算した額を目安にしておきましょう。
④再犯防止の取り組みをおこなう
再犯防止への取り組みをおこなうこともまた、減刑を望むうえで重要な行動です。
再犯防止への対応としては、家族からのサポートを受けている、病気が原因で窃盗に及んだ場合は治療プログラムを実施しているなどが挙げられます。
なお、弁護士へ相談すると再犯防止に有効と考えられる対策を提案してくれるため、減刑となる可能性は高くなるでしょう。
さいごに|窃盗の初犯で逮捕されたら早めに弁護士に相談を
本記事では、窃盗の初犯で逮捕されるとどうなるか、逮捕後の流れや罰金・示談金の相場はどれくらいなのかを解説したうえで、刑罰を軽くするためにできることなども紹介しました。
窃盗の初犯で逮捕されると微罪処分や不起訴処分など、状況に応じて置かれる立場は異なります。
仮に逮捕されると身柄が拘束されたり、刑務所へ収監されたりと、初犯とはいえ今後の私生活への影響は計り知れません。
なお、被害者と示談をする場合の相場は、盗んだ金品の金額に対して、いくらかプラスされると認識しておきましょう。
刑罰を軽くするためには示談交渉をスムーズに進める、再犯防止の対策を講じるなどがあります。
弁護士に相談するとそれらに対して的確なアドバイスを受けられるため、早めに問い合わせることをおすすめします。