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離婚時の年金分割制度|誰でもわかる年金分割の手順と注意点

弁護士監修記事
離婚トラブル
2024年11月19日
2024年11月19日
離婚時の年金分割制度|誰でもわかる年金分割の手順と注意点
この記事を監修した弁護士
寺垣 俊介弁護士 (弁護士法人ネクスパート法律事務所)
弁護士法人ネクストパート法律事務所は、早期釈放・前科回避を目指した迅速対応が特徴。刑事事件における示談交渉や釈放に注力しており、年間相談件数800件以上という実績と経験で、相談者をサポートします。
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離婚時に、厚生年金や共済年金を分割できる制度があることをご存知でしょうか。

専業主婦(主夫)や配偶者の扶養内で働いている方が離婚をした際に配偶者が払っていた厚生年金を分けてもらえる制度になっています。

また、配偶者の扶養には入らずに自分で厚生年金を払っている方に対しても、配偶者よりもらえる年金が少なくなりすぎないような分割方法があります。

なかには、ご自身も厚生年金を払っていた時期があるが現在は配偶者の扶養である場合もあるでしょう。

場合によって分割の方法も変わってきますので、のちほど詳しく説明したいと思います。

年金は老後の大切な生活資金にもなりますので、年金分割制度についてしっかりお考えいただければと思います。

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離婚時における年金分割制度の対象者

年金分割制度は誰でも利用できるわけではありませんので、まずはご自分が対象者であるかを確認する必要があります。

対象者は第2号被保険者と第3号被保険者のみ

年金分割制度を利用できるのは、2号被保険者3号被保険者の方々になります。これは、年金分割の対象になるのが、厚生年金と共済年金だけになるためです。残念ながら、第1号被保険者の方は年金分割制度を利用することができません。

第1号被保険者とは

わかりやすく言うと、国民年金に加入している方が対象です。

具体的には、20歳から60歳未満の自営業者を営んでいる方や農業者とその家族が基本的には第1号被保険者になります。

あとは学生や無職の人、後述する第2号被保険者と第3号被保険者に該当しない方も第1号被保険者です。

 第2号被保険者

国民年金に加入していて、企業勤めの会社員や公務員など、厚生年金や共済にも加入している方を第2号被保険者といいます

ちなみに、老齢基礎・厚生年金、退職共済年金の受給権を持っている人は第2号被保険者ではありません。

ただし、第2号被保険者から第1号被保険者に変わった場合は、第2号被保険者として収めていた時の厚生年金が分割の対象になります。

 第3号被保険者とは

国民年金に加入している方で、厚生年金や共済組合にも加入している第2号被保険者の扶養にあたる人を第3号被保険者と呼びます

年齢は20歳以上60歳未満の配偶者、年収でいうと130万円未満の人が第3号被保険者にあたります。

年金分割制度の対象者であることの確認方法

年金分割制度の対象者であるか確かめるために、自分(扶養であれば配偶者)が支払っている年金の確認をすることで判断できます

自営業の方は確実に第1号被保険者ですが、会社員でも企業が保険に加入していない場合もあるので、給与明細などに保険の項目があるかを見ておくと良いでしょう。

年金分割制度の種類

離婚時の年金分割制度には「合意分割」と「3号分割」の2つがあります。

簡単に2つの違いをご説明します。

合意分割

合意分割とは、2007年4月1日以降に離婚した婚姻期間中に配偶者が納めた厚生年金の標準報酬額について分割することができる制度です。

標準報酬額の50%を限度に夫婦間で分割の割合を決定します。

言葉の通り、配偶者の合意があった場合のみ年金を受け取ることができます。

もし、話し合いでまとまらない場合は調停や審判で年金の割合を決定します。

3号分割

あなたが第3号被保険者の場合に、2008年4月から離婚をするまでの期間内に配偶者が納めた厚生年金の標準報酬額の50%を配偶者の合意なしに受け取ることができます。

これを3号分割といいます。

ただし、3号分割が適用されるのは2008年4月以降に納めた年金分だけですので、それ以前のものは合意分割を利用する必要があります。

年金分割の際にもらえる年金額を確認するには?

年金分割をする前に、どのくらいの年金がもらえるのか確認してみましょう。

50歳以上の場合

年金分割のための情報請求書を提出した後に「年金分割を行った場合の年金見込額のお知らせ」が届けられますので、そちらで確認してみましょう。

また、障害年金を受けている人も同じく見込額を確認することができます。

情報提供に必要な書類
  • 年金手帳・または基礎年金番号通知書
  • 戸籍謄本

50歳未満の場合

50歳未満の場合は、自分で計算をして大まかな見込額を出す必要があります。

1年間の厚生年金の加入で額面月給(ボーナスは月割して加算)の約6.6%が1年間の年金額になります。

実際の計算式は以下の通りです。

夫の額面月給×6.6%×年金分割の割合×婚姻期間=年金見込額

以下の夫婦を例題に計算してみましょう。

妻:専業主婦
夫:ボーナス含め1ヶ月あたりの給料が40万円
婚姻期間:30年

上述の計算式に当てはめると以下のようになります。
40万円×6.6%×50%×30年=396,000円

よって396,000円の年金がもらえることがわかりますね。

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年金分割制度の手順と注意点

合意分割と3号分割、それぞれの手順と注意点をお伝えします。

合意分割の手順

情報提供通知書を用意する

合意分割にて年金分割制度を利用するためには、「年金分割のための情報提供通知書」が必要になります。

情報提供通知書を入手するためには、まず情報提供請求書を作成します。この請求書は日本年金機構のホームページからダウンロードすることができます。

次に作成した情報提供請求書を年金事務所に提出しましょう。

提出には以下のものが必要になります。

  • 年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 夫婦の戸籍全部事項証明書

情報提供請求書を提出してから、1ヶ月程度で情報提供通知書が郵送されてきます。

窓口での受け取りも可能です。

以上で情報提供通知書の用意が完了しました。

按分割合を決定する

情報提供通知書の用意が完了したら、分割する年金をどのくらいにするのか、按分割合(あんぶんわりあい)について話し合いを行いましょう

配偶者の同意がなければ成立はしませんが、出来る限り分割の上限である50%の年金をもらえるように主張しましょう。

無事に年金分割について合意に至った場合は、標準報酬改定請求書を用意しましょう。

標準報酬改定請求書とは年金分割の割合を決定内容の通知書を請求するためのものです。

年金事務所に提出

標準報酬改定請求書の用意ができたら、年金事務所に提出しましょう。

年金事務所には夫婦2人で行かなければなりません

もし、一緒にいくのが難しい場合は委任状を用意すれば代理人を立てることができます。

ただし、代理人が1人、もしくは夫婦の代理人同士が年金事務所に行くことは認められていませんのでご注意ください。

例えば夫が代理人を立てる場合は、妻本人と夫の代理人が一緒に年金事務所に行かなければなりません。

ただし、話し合いで離婚が成立し、公正証書が手元にある場合は一緒に年金事務所に行く必要はありません。

  • 年金分割の同意書
  • 夫婦の戸籍謄本
  • 夫婦の年金手帳

こちらを準備して、標準報酬改定請求書の提出を行ってください。

その後、無事に受理されると夫婦双方に標準報酬改定通知書が届きます。以上が合意分割の手順になります。

話し合いで決定しなかった場合は、調停・審判へ

夫婦間で年金の按分割合を決定できなかった場合は、家庭裁判所に調停の申立てをしましょう

調停委員が夫婦の間に入り、話し合いを行います。

夫婦のそれぞれが納得できるよう、双方の言い分や事情を考慮しながら決定できるように進められます。

また、調停でも決定に至らない場合は、審判に進みます。

お互いの同意は関係なく最終的に裁判官が審判を下すことで按分割合が決定します。

調停離婚・裁判離婚中に決めることもできる

既に調停や裁判離婚中である場合は、その時に年金分割について話し合いが行われます

※調停離婚とは家庭裁判所に申立てをし、離婚に向けて調停委員を交えて話し合うこと。

一方裁判離婚は、調停でも決着がつかなかった場合裁判を起こして離婚が決定することをいいます。

3号分割の場合

2008年以降に結婚した夫婦が離婚に伴い年金分割をする場合は、3号分割を利用します。

夫婦の年金手帳と戸籍謄本を用意して、年金事務所に行きましょう。

この場合は合意分割で用意した情報提供通知書を用意する必要はありません。

2008年4月より前に結婚した夫婦は合意分割が基本

3号分割は夫の同意がなくても利用できる制度に対し、合意分割は配偶者の同意が必要です

それゆえに争いも多いのですが、それなら3号分割をしたほうがいいのでは?と思う方もいるでしょう。

しかし、3号分割は2008年4月以降に始まった制度ですので、2008年4月までに納めた年金を請求するには合意分割も同時に行うことになります。

同時に手続きを行う場合は、合意分割の手続きをするだけで大丈夫です。

2008年以降の分は自動的に3号分割が適用されるとお考えください。

※原則として年金分割制度を利用できるのは離婚成立の翌日から2年以内となっていますのでご注意ください。

専業主婦以外の年金分割の割合

共働き夫婦の場合

例えば、夫も妻も第2号被保険者だとしましょう。

この場合まずは結婚から離婚までの夫と妻それぞれの給与の総額(これを対象期間標準報酬総額と呼ぶ)を比較します。

金額を比較した際に、多いほうから少ないほうへ保険料納付記録が分割されます

分割割合の上限は、分割後の対象期間標準報酬額が夫婦合計額の50%になるまでです。

例えば、夫の対象期間標準報酬額が5,000万円、妻が1,000万円の場合でみてみましょう。

仮に分割割合を50%とすると、夫から妻へ2,000万円を分割。

よって夫婦の対象期間標準報酬額はそれぞれ3,000万円になります。

結婚生活中に共働きから専業主婦になった場合

結婚当初は夫婦のどちらも第2号被保険者だったが、途中から夫(妻)が自営業者になり、妻が第1号被保険者になった場合はどうでしょう。

この場合は、第2号被保険者の時の対象期間標準報酬額をみて、分割の割合を決めることができます。

まとめ

合意分割でも相手の年金の50%を必ずもらえると勘違いしている方が多いようですが、50%というのはあくまで上限が50%になっているだけです。

夫婦によって分割の割合が違うことを理解しておく必要がありますが、妻側は出来る限り上限いっぱいの年金を受け取りたいと考えるでしょう。

分割の割合を50%にできるよう、夫婦でうまく話し合いを行ってみてください

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
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