離婚で慰謝料を請求できるのはどんなとき?相場や請求方法、注意点も解説
離婚時の慰謝料は離婚原因によって数十万~数百万円と大きく異なります。
しかし、適正な離婚慰謝料を請求するためには、証拠の確保や裁判例をふまえての検討が必要です。
知識がないまま交渉を進めてしまうと、適正金額より大幅に低くなってしまうおそれがあります。
離婚慰謝料を最大限請求したい方は、弁護士に相談するのがおすすめです。
この記事では、離婚慰謝料の基本的な知識から、請求できるケースや相場、手続きの流れなどを詳しく解説します。
慰謝料に関する不安を解消し、自分の今の状況で次に何をすべきかを明確化するためにも、ぜひご一読ください。
離婚慰謝料とは?
離婚慰謝料とは、配偶者の不法行為や暴力によって離婚せざるを得なくなったことや、その行為自体によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。
離婚における慰謝料は「離婚原因慰謝料」と「離婚自体慰謝料」の2つに分けられます。
| 慰謝料の種類 | 概要 |
| 離婚原因慰謝料 | 不倫や暴力、モラハラなどの、離婚原因となる行為で受けた精神的苦痛に対する慰謝料。 |
| 離婚自体慰謝料 | 離婚することで、配偶者の地位を失うために生じた精神的苦痛に対する慰謝料。 |
なお、実際に離婚慰謝料を請求する際は、離婚原因慰謝料と離婚自体慰謝料は区別されることはほとんどありません。
2つを合わせて「離婚慰謝料◯円」と請求することが一般的です。
離婚慰謝料を請求できる6つのケース

ここでは、離婚慰謝料を請求できる可能性が高い代表的なケースを6つ紹介します。
自分の状況が当てはまっているかを確認してみてください。
①不貞行為があった場合
不貞行為とは、いわゆる不倫や浮気のことを指しており、離婚慰謝料を請求する原因として典型的です。
法律上の不貞行為とは「配偶者以外の異性と自由な意思で肉体関係を持つこと」を指します。
不貞行為と判断されやすい行為、されにくい行為をまとめたので、参考にしてみてください。
【不貞行為と判断されやすい行為】
- 性行為に類する行為
- ラブホテルに二人で出入りするなど、肉体関係を強く推認させる行為
- 二人で宿泊を伴う旅行をしている
【不貞行為と判断されにくい行為】
- 二人きりで食事やデートをする
- 手をつなぐ、キスをするといった行為
- LINEやメールなどでやり取りをしている
ただし、不貞行為が始まった時点ですでに夫婦関係が破綻していたと判断される場合は、慰謝料請求が認められない可能性もあるため注意が必要です。
②DVがあった場合
DV、すなわち配偶者からの身体的暴力は、心身に深刻なダメージを与える許されない行為であり、慰謝料請求の正当な理由となります。
DVは、夫婦喧嘩の延長線上のものではないため、暴力性や継続性、被害の程度によって高額な慰謝料が認められる傾向にあります。
【DVの具体例】
- 殴る、蹴る、髪を引っ張る
- 物を投げつける
- 突き飛ばす
- 包丁などの凶器を突きつけて脅す
DVを理由に慰謝料を請求する場合、暴力があったことを客観的に示す証拠が重要です。
暴力を受けたら、以下のような証拠を残しておくことが後の手続きを有利に進められる可能性が高まります。
- 医師の診断書
- けがやアザ、壊された物の写真
- 警察や配偶者暴力相談支援センターへの相談記録
- 暴言や暴力の様子を録音・録画したデータ
とはいえ、DVは命の危険も伴うため、まずは身の安全を確保することを最優先に考えましょう。
③モラハラがあった場合
モラハラとは、言葉や態度によって相手の尊厳を傷つけ、精神的に追い詰める行為です。
身体的な暴力と違い、目に見える傷が残らないため軽視されがちですが、DVのひとつであり、慰謝料請求の対象となる立派な有責行為です。
【モラハラの具体例】
- 「役立たず」「誰のおかげで生活できているんだ」といった人格を否定する暴言を日常的に浴びせる
- 理由もなく長期間無視を続ける
- 友人との交流や外出を過度に制限し、行動を監視する
- 生活費を極端に制限したり、まったく渡さなかったりする
モラハラは配偶者からだけでなく、親族(義父母など)からおこなわれるケースもあります。
配偶者が親族からのモラハラを見て見ぬふりをする、一緒になって攻撃するなどであれば、夫婦の協力義務違反として、配偶者に対する慰謝料請求も認められる可能性があります。
④悪意の遺棄があった場合
悪意の遺棄とは、夫婦の義務である「同居・協力・扶助」を、正当な理由なく放棄することです。
これは民法770条1項2号で定められた法定離婚事由のひとつであり、慰謝料請求の原因にもなります。
ここでの「悪意」とは、「婚姻関係が破綻しても構わない」という積極的な意思を意味します。
単身赴任や病気療養のための別居など、正当な理由がある場合は悪意の遺棄にはあたりません。
【悪意の遺棄の具体例】
- 明確な理由なく一方的に家を出て、連絡も取れなくなる
- 病気の配偶者を置き去りにし、生活費を送らない
- 経済的に支えてくれた配偶者を置いて家を出て、離婚を求めてくる
上記のような、夫婦としての最低限の協力や扶助などを怠り、婚姻生活を意図的に破綻させる行為が該当します。
⑤長期間にわたる性交渉の拒否があった場合
いわゆるセックスレスも、離婚慰謝料を請求できる可能性があります。
夫婦間には貞操義務があると同時に、お互いに性的な要求に応じる義務もあると考えられているためです。
ただし、単に性交渉がないという事実だけでは慰謝料請求は認められません。
請求するには、夫婦の一方が性交渉を求めているにもかかわらず、もう一方が理由なく拒み続けている、セックスレスの理由が不貞行為によるもの、などの理由がなければいけません。
したがって、妊娠中や仕事による極度の疲労、夫婦のどちらも性交渉に積極的でないなどの理由がある場合、慰謝料請求は難しい可能性があります。
離婚慰謝料を請求して認められるのかが気になる人は、無料相談を実施している弁護士に相談してみるのがおすすめです。
⑥借金があった場合
配偶者に借金がある場合も、慰謝料を請求できる可能性があります。
ただし、借金は借りた本人の個人的な問題のため、配偶者に借金があるという事実だけでは、慰謝料を請求することは難しいでしょう。
借金による慰謝料請求が認められるケースは、以下のとおりです。
【借金を理由に慰謝料請求ができるケース】
- パチンコや競馬などのギャンブル、浪費のために借金を繰り返し、生活費を渡さない
- 借金返済を配偶者に強要したり、そのことで暴言を吐いたりする
- 無断で連帯保証人にされた、勝手に名義を借りて借金をしていた
上記のように、婚姻関係を破綻させる行為の場合、離婚慰謝料を請求できる場合があります。
離婚慰謝料を請求できない3つのケース
一方で、離婚にいたったからといって、必ずしも慰謝料を請求できるわけではありません。
慰謝料はあくまで「相手の有責行為による苦痛」への賠償だからです。
配偶者の行為に違法性と故意または過失が認められる場合に、はじめて離婚慰謝料を請求することができます。
ここでは、慰謝料の請求が原則として認められない、または認められにくい代表的なケースを3つ紹介します。
①性格の不一致である場合
離婚理由に多い「性格の不一致」ですが、これだけを理由に慰謝料を請求することはできません。
価値観が合わない、金銭感覚が違うといった理由は、どちらか一方にだけ責任があるとは言えないためです。
性格の不一致は、夫婦双方に原因があると考えられ、どちらか一方の不法行為とはみなされないため、慰謝料の請求は認められにくいのです。
ただし「性格の不一致」の背景に、相手のモラハラや悪意の遺棄といった有責行為が隠れている場合は、その行為を理由として慰謝料を請求できる可能性があります。
②お互いに要因がある場合
夫婦のどちらにも婚姻関係を破綻させた原因がある場合、慰謝料の請求が難しくなります。
例えば、以下のようなケースです。
- 夫の不貞行為が発覚したが、実は妻も別の相手と不貞行為をしていた
- 妻が夫からのDVを主張しているが、妻も夫に対して日常的に暴言を吐くなどのモラハラ行為をしていた。
上記のような場合、慰謝料を請求できても双方の慰謝料によって相殺される可能性があります。
もし、双方の有責性の度合いが同程度と判断されれば、慰謝料請求はどちらも認められず、結果として誰も慰謝料を受け取れないことになります。
③宗教上の理由がある場合
夫婦間で信仰する宗教が異なる、宗教活動への考え方の違いがあるなどを理由として、慰謝料を請求することは難しいといえます。
相手が常識的な範囲内で真摯に宗教活動をおこなっている場合、それを理由に慰謝料を請求することは認められません。
ただし、以下のように宗教活動が度を越しており、それが原因で夫婦関係が破綻したといえる場合には、慰謝料が認められる可能性があります。
- 入信や宗教活動への参加を執拗に強要する、拒否すると罵倒する
- 家族に相談なく、家計を圧迫するほどの高額な寄付を繰り返す
- 宗教活動にのめり込むあまり、家事や育児を一切放棄する
宗教そのものではなく、それに付随する行為が「モラハラ」や「悪意の遺棄」といった有責行為に該当すると判断されれば、慰謝料請求の対象となる可能性があります。
離婚慰謝料の金額相場は?シミュレーション付きで解説

離婚慰謝料を請求する上で、最も気になるのが「いくら受け取れるのか」という金額の問題でしょう。
結論として、離婚慰謝料には法律で定められた明確な金額基準はありません。
原因となった行為の悪質性や期間、婚姻期間の長さ、未成年の子の有無など、さまざまな要素を総合的に考慮して判断されます。
ここでは、原因別の慰謝料相場と、具体的なケースを想定したシミュレーションをご紹介します。
自身の状況に近いものを参考に、おおよその目安を掴んでみてください。
不貞行為による離婚慰謝料の金額相場・シミュレーション
不貞行為が原因となって離婚に至る場合、離婚慰謝料の金額は100万円~300万円程度が目安となります。
<不貞行為による離婚慰謝料の増額要素>
- 婚姻期間が長い
- 未成熟の子どもがいる
- 不貞行為の累計回数が多い
- 不倫相手に対して多額の経済的利益を与えた
- 不貞行為をきっかけとして家に寄り付かなくなった
- 発覚するまで不貞行為が続いていた
- 発覚して以降も不貞行為が続いている
- 不貞行為について反省の態度が見られない など
<不貞行為による離婚慰謝料の減額要素>
- 婚姻期間が短い
- 未成熟の子どもがいない
- 不貞行為の累計回数が少ない(1回~数回程度)
- 発覚する前に、自発的に不貞行為をやめた
- 不貞行為について深く反省しており、償いの態度が見られる
- 不貞行為の当時、婚姻関係が破綻に近い状態にあった など
<シミュレーション>
| 【状況】 ・相談者: 30代女性(専業主婦) ・相手方: 30代男性(会社員・年収600万円) ・状況: 婚姻期間10年、小学生の子どもが1人。夫が職場の部下と約2年間不貞関係を続けていたことが発覚。 夫は不貞の事実を認め、離婚に応じる意向。 |
| 【慰謝料の目安】約250万円 婚姻期間が10年、不貞の期間が2年と長期にわたり、幼い子どもがいるにもかかわらず不貞に及んだ点は、精神的苦痛を増大させる要因と評価されます。 慰謝料額は相場の中でも高めになる可能性があり、約250万円での解決がひとつの目安となるでしょう。 |
DVによる離婚慰謝料の金額相場・シミュレーション
DV(暴力)が原因となって離婚に至る場合、離婚慰謝料の金額は50万円~300万円程度が目安となります。
<DVによる離婚慰謝料の増額要素>
- 暴力の程度が著しい
- 頻繁に暴力が振るわれた
- 長期間にわたって暴力が振るわれた
- 被害者が重傷を負い、治療に長い期間と多額の費用を要した
- 未成熟の子どもがいる
- 暴力について反省の態度が見られない など
<DVによる離婚慰謝料の減額要素>
- 暴力の程度が軽く、被害者がけがをするには至らなかった
- 暴力が振るわれた回数が少なかった(1回~数回程度)
- 暴力が恒常的ではなく、頻度が低かった
- 未成熟の子どもがいない
- 暴力について深く反省しており、償いの態度が見られる など
<シミュレーション>
| 【状況】 ・相談者: 20代女性(パート) ・相手方: 30代男性(会社員・年収500万円) ・状況: 婚姻期間5年、子どもなし。 結婚当初から夫の暴力が断続的にあり、数ヵ月前に激しい口論の末に殴られ肋骨を骨折。 病院の診断書も取得済み。夫の暴力に耐えきれず離婚を決意。 |
| 【慰謝料の目安】約200万円 肋骨骨折という重い傷害を負っており、医師の診断書という客観的な証拠により暴力の悪質性が高いと判断され、慰謝料は高額になる可能性があります。 過去の裁判例などから、約200万円の慰謝料が認められることが見込まれます。 |
モラハラによる離婚慰謝料の金額相場・シミュレーション
モラハラ(侮辱や精神的な嫌がらせなど)が原因となって離婚に至る場合、離婚慰謝料の金額は50万円~250万円程度が目安となります。
<モラハラによる離婚慰謝料の増額要素>
- あまりに酷い侮辱や嫌がらせがおこなわれた
- 頻繁に侮辱や嫌がらせがおこなわれた
- 長期間にわたって侮辱や嫌がらせがおこなわれた
- 被害者が大きな精神的ダメージを負い、精神疾患を患った
- 未成熟の子どもがいる
- モラハラについて反省の態度が見られない など
<モラハラによる離婚慰謝料の減額要素>
- 客観的に見て、侮辱や嫌がらせの程度が酷いとまでは言えず、被害者の受け取り方や性格による部分が大きかった
- 侮辱や嫌がらせの回数が少なかった(1回~数回程度)
- 侮辱や嫌がらせが恒常的ではなく、頻度が低かった
- 未成熟の子どもがいない
- 暴力について深く反省しており、償いの態度が見られる など
<シミュレーション>
| 【状況】 ・相談者: 40代女性(専業主婦) ・相手方: 40代男性(会社員・年収800万円) ・状況: 婚姻期間15年、中学生の子どもが2人。 夫から10年以上にわたり日常的に「お前は頭が悪い」「誰のおかげで生活できているんだ」といった暴言を浴びせられ続けた。 精神的に追い詰められ、うつ病と診断された。 暴言の録音データや日記を記録している。 |
| 【慰謝料の目安】約200万円 10年以上のモラハラにより、うつ病を発症しているという具体的な被害が生じています。 診断書や録音データといった客観的証拠も揃っているため、約200万円の慰謝料が目安です。 |
悪意の遺棄による離婚慰謝料の金額相場・シミュレーション
悪意の遺棄が原因となって離婚に至る場合、離婚慰謝料の金額は50万円~300万円程度が目安となります。
<悪意の遺棄による離婚慰謝料の増額要素>
- 婚姻期間が長い
- 未成熟の子どもがいる
- 生活費の不払いや無断別居の期間が長い
- 被害者が経済的に深刻な苦境に陥った
- 生活費の不払いや無断別居をやめる意思がなく、反省していない など
<悪意の遺棄による離婚慰謝料の減額要素>
- 婚姻期間が短い
- 未成熟の子どもがいない
- 生活費の不払いや無断別居が一時的な短い期間にとどまった
- 生活費の不払いや無断別居の期間中も、被害者には十分な資力があったため、問題なく生活できた
- 自発的に生活費の不払いや無断別居をやめた
- 生活費の不払いや無断別居について深く反省しており、償いの態度が見られる など
<シミュレーション>
| 【状況】 ・相談者: 30代女性(パート・年収120万円) ・相手方: 30代男性(会社員・年収400万円) ・状況: 婚姻期間3年、子どもなし。 夫が一方的に「しばらく実家に帰る」と言って家を出てから1年が経過。 その間、生活費は一切振り込まれず、電話やLINEにも応じない。 |
| 【慰謝料の目安】約150万円 婚姻期間は比較的短いものの、正当な理由なく1年間も同居・協力・扶助の義務を放棄し、生活費を渡さないという態様は悪質と評価されます。 妻が経済的に困窮したという実態も考慮され、150万円前後の慰謝料が認められる可能性があります。 |
性交渉の拒否による離婚慰謝料の金額相場・シミュレーション
合理的な理由のない性交渉の拒否が原因となって離婚に至る場合、離婚慰謝料の金額は50万円~150万円程度が目安となります。
ただし、相手が不貞行為をしている場合には、300万円程度まで慰謝料が増額する可能性があります。
<性交渉の拒否による離婚慰謝料の増額要素>
- 性交渉の拒否の期間が長い
- 再三にわたって性交渉を求められたにもかかわらず、合理的な理由なく拒否した
- 子どもを設けることについて幾度となく話し合いがおこなわれたにもかかわらず、頑なに意見を曲げず、性交渉を拒否し続けた
- 不貞行為をしている など
<性交渉の拒否による離婚慰謝料の減額要素>
- 性交渉の拒否の期間が短く、比較的早期に離婚が決まった
- 性交渉を求める頻度が少なかった
- 子どもを設けることについての話し合いがほとんどおこなわれなかった など
<シミュレーション>
| 【状況】 ・相談者: 30代女性(会社員) ・相手方: 30代男性(会社員・年収700万円) ・状況: 婚姻期間7年、子どもなし。 妻は結婚当初から子どもを望んでいたが、夫が明確な理由なく5年以上にわたって性交渉を拒否し続けている。 話し合いを求めてもはぐらかされるため、夫婦関係が完全に冷え切り、離婚を決意した。 |
| 【慰謝料の目安】約50万円 子どもを望んでいるにもかかわらず、長期間にわたり一方的に性交渉を拒否されたことは、大きな精神的苦痛となりえます。 約50万円が一つの目安となるでしょう。 |
借金による離婚慰謝料の金額相場・シミュレーション
配偶者の借金が原因で「悪意の遺棄」や「モラハラ」といった婚姻関係を破綻させる行為があった場合、離婚慰謝料の相場は、100万~300万円程度が目安となります。
<借金による離婚慰謝料の増額要素>
- 配偶者に無断で多額の借金を作っていた
- 借金の原因が浪費やギャンブルなど、夫婦の共同生活とは無関係な個人的なものである
- 借金の発覚後も改善が見られず、借金を繰り返した
- 借金によって夫婦の家計が破綻し、生活に重大な支障が生じた
- 借金の返済を配偶者に押し付けた など
<借金による離婚慰謝料の減額要素>
- 借金の金額が比較的少額だった
- 借金が夫婦の共同生活のためにやむを得ず生じたものだった
- 借金について配偶者に隠さず報告し、夫婦で解決しようと努力した
- 借金が発覚後、反省して改善の努力が見られた など
<シミュレーション>
| 【状況】 ・相談者: 40代女性(パート) ・相手方: 40代男性(会社員・年収600万円) ・状況: 婚姻期間18年、子ども2人(高校生・大学生)。 夫が妻に内緒で、ギャンブルのために消費者金融から500万円の借金をする。 給料のほとんどを返済に充てている約2年間、家庭に生活費をほとんど入れず、妻はパート代で家計を支え、子の学費にも困るほど困窮した。 |
| 【慰謝料の目安】約150万円 ギャンブルのための借金返済を優先し、扶養義務を放棄した行為は「悪意の遺棄」と評価されます。 長年の婚姻生活の基盤を揺るがし、子どものいる家庭を経済的困窮に陥れた精神的苦痛は大きいと判断され、約150万円が目安となるでしょう。 |
離婚慰謝料の請求に必要な証拠は?
離婚慰謝料を請求するには、相手の有責行為によって精神的苦痛を受けたことを客観的に証明する必要があります。
「つらかった」という感情だけでは、法的な請求は認められないため、第三者が見ても納得できる「証拠」を用意しなければなりません。
離婚原因別に、有効とされる証拠の例を以下にまとめたので、参考にしてください。
何が証拠になるのか判断が難しい場合は、離婚問題を得意とする弁護士に相談すると、的確なアドバイスをもらえます。
無料相談を活用して、相談してみてください。
離婚慰謝料を請求する方法
離婚慰謝料を請求し、実際に支払いを受けるまでの手続きは、いくつかの段階にわかれています。
まずは当事者同士の「話し合い(協議)」から始め、まとまらなければ家庭裁判所での「調停」、それでも解決しなければ最終的に「裁判(訴訟)」へと進んでいくのが一般的です。
それぞれの段階でどのようなことをおこなうのか、順番に解説します。
①慰謝料を請求する
まず最初のステップは、相手に対して「慰謝料を支払ってほしい」という意思を明確に伝えることです。
請求方法に決まりはなく、口頭や電話、メール、LINEなどでも構いません。
しかし、後々のトラブルを避け、こちらの本気度を伝えるためにも「内容証明郵便」を利用して請求書を送付するのが確実です。
内容証明郵便を利用すると「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が公的に証明してくれます。
また、慰謝料請求権の時効の完成を6ヵ月間猶予させる効果があります。
内容証明によって「そんな請求は受けていない」と言い逃れされるのを防げるだけでなく、相手に心理的プレッシャーを与えることもできるため、できるだけ活用してください。
内容証明郵便について、さらに詳しく知りたい人は以下のページを参照ください。
【関連記事】【例文付き】内容証明郵便とは?効力・書き方・出し方をわかりやすく解説
②話し合いをおこなう(協議離婚)
請求の意思を伝えたら、次は慰謝料の金額や支払い方法などについて、夫婦間で話し合いをおこないます。
話し合いでは、感情的にならず、集めた証拠をもとに冷静に交渉することが重要です。
もし話し合いで慰謝料の支払いについて合意ができた場合は、必ずその内容を書面に残しましょう。
口約束だけでは、後になって「言った、言わない」の争いになったり、支払いが滞ったりするリスクが非常に高いためです。
合意内容は、離婚協議書として作成し、公正証書にしておくのがおすすめです。
公正証書に「強制執行認諾文言」を付けておけば、万が一支払いが滞った場合に、裁判を起こすことなく、直ちに相手の給与や財産を差し押さえる強制執行の手続きが可能になります。
離婚協議書の書き方や公正証書にする手順については、以下のページで詳しく解説しています。
【関連記事】【サンプル付】離婚協議書の書き方と記載すべき内容|公正証書にする方法も解説
③離婚調停をおこなう
当事者間の話し合いで合意に至らない場合や、相手が話し合いに一切応じない場合は、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てます。
離婚調停とは、調停委員が間に入り、双方の意見を聞きながら中立的な立場で話し合いによる解決を目指す手続きです。
離婚調停は、感情的になりがちな当事者同士でも冷静に話し合いを進めやすいというメリットがあります。
なお、DVやモラハラがひどく、直接の話し合いが困難または危険な場合は、最初の協議を飛ばして、いきなり離婚調停を申し立てることも可能です。
④離婚裁判をおこなう
離婚調停でも合意できず不成立となった場合、家庭裁判所に離婚裁判を提起することになります。
調停のような話し合いの場ではなく、お互いの主張と証拠に基づき、裁判官が法的な判断として「判決」を下します。
慰謝料を請求する側は、相手の有責行為の事実や、それによって受けた精神的苦痛の程度を、証拠によって裁判官に証明しなければなりません。
裁判は手続きが複雑で、法的な専門知識も必要となるため、弁護士に依頼して進めるのが一般的です。
はじめに慰謝料を請求する時点で弁護士に相談しておけば、後々に裁判となってもスムーズに手続きをおこなえます。
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適正な離婚慰謝料を請求・回収するための3つのポイント
離婚慰謝料を請求する際は、感情的になりがちなため、冷静かつ戦略的に進めると後悔のない解決を実現できる可能性が高まります。
ここでは、相手から適正な金額の慰謝料を回収するために、重要な3つのポイントを解説します。
①裁判例を踏まえた金額を請求する
離婚慰謝料として請求する金額を決めるに当たっては、過去の裁判例が参考になります。
慰謝料の発生原因に応じて、類似の裁判例でどのような金額の慰謝料が認められているかを確認し、適正な金額による請求をおこないましょう。
裁判例に基づく離婚慰謝料の目安についても、弁護士に相談すれば大まかな見込みを教えてもらえます。
②弁護士を通じて請求する
弁護士を通じて請求することで、適正額の離婚慰謝料をスムーズに獲得できる可能性が高まります。
法的根拠に基づいて請求をおこなうことができるほか、論点の整理された冷静な話し合いにより、早期妥結に至りやすいからです。
夫婦同士の離婚慰謝料に関する話し合いがまとまらない場合には、弁護士に依頼して、離婚慰謝料請求を代行してもらうのがよいでしょう。
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③離婚公正証書を作成する
離婚慰謝料の支払いについて、夫婦間で合意に至った場合には、合意内容をまとめた離婚公正証書を作成しておきましょう。
離婚公正証書に「強制執行認諾文言」を記載しておけば、万が一離婚慰謝料の不払いが発生した場合に、訴訟をせずに直ちに強制執行を申し立てられます。
強制執行認諾文言とは、債務不履行が生じた場合には、直ちに強制執行に服する旨の債務者の陳述のことです。
離婚慰謝料の回収を確実なものとするためにも、財産分与や子に関する事項など、ほかの離婚条件についても、離婚公正証書にまとめておきましょう。
離婚慰謝料を請求する際の4つの注意点
離婚慰謝料を請求する際、感情的になったり焦ったりして、あとで後悔するような判断をしてしまうことがあります。
自身の権利を正しく主張し、納得のいく解決を目指すために、これからお伝えする4つの注意点をぜひ心に留めておいてください。
①安易に同意しない
相手から慰謝料の金額を提示された際、早く離婚を成立させたい、これ以上揉めたくないという気持ちから、その金額が妥当かどうかを検討せずに同意してしまうケースがあります。
相手が提示する金額は、必ずしも法的に妥当な相場とは限りません。
むしろ、相場よりも意図的に低く提示されている可能性も十分に考えられます。
感情に流されず、提示された条件が本当に自分が受けた精神的苦痛に見合うものなのか、一度立ち止まって冷静に判断することが重要です。
合意書にサインをする前に、必ず弁護士に相談し、客観的な意見を求めるようにしましょう。
②一括での支払いを求める
離婚慰謝料を分割にすると、何年にもわたって元配偶者と関わり続けなければならないというデメリットがあるため、できる限り一括での支払いを求めましょう。
また分割払いは、支払いが途中で滞ってしまうリスクがあります。
離婚当初は約束通り支払われていても、相手の経済状況の変化や、再婚して新たな家庭を築いたことなどを理由に、支払いが止まってしまうケースは少なくありません。
未払いが発生した場合、改めて相手に支払いを催促したり、場合によっては裁判所に強制執行の手続きを申し立てたりする必要があります。
どうしても分割払いにせざるを得ない場合は、必ず強制執行認諾文言付きの公正証書を作成してください。
③自分で請求せず弁護士に依頼する
離婚慰謝料の請求は、当事者同士でおこなうことも可能ですが、有責行為をおこなった相手と直接交渉することは、精神的に大きな苦痛を伴います。
感情的になってしまい、冷静な話し合いができないことも少なくありません。
相手が話し合いに真摯に応じなかったり、法的な知識がないことにつけ込んで不当に低い金額を主張してきたりする可能性もあります。
精神的な負担を減らし、より有利な条件で解決するためには、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼すれば、交渉や手続きを代理人としておこなってくれるため、相手と顔を合わせる必要がなくなり、精神的な負担が大幅に軽減されます。
法律の専門家が法的な根拠に基づいて交渉するため、適正な慰謝料額を獲得できる可能性が格段に高まります。
自分で請求するよりもメリットが大きいため、ぜひ弁護士に依頼してください。
④慰謝料請求権には時効がある
離婚慰謝料を請求する権利は、永久に認められるわけではありません。
民法で時効が定められており、期間を過ぎてしまうとたとえ相手に明らかな有責行為があったとしても、慰謝料を請求できなくなってしまいます。
離婚慰謝料の請求権が時効するまでの期間は、以下のとおりです。
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
引用元:e-GOV法令検索|民法
自身のケースの時効がいつなのかを正確に把握し、期限内に適切な手続きを取ることが重要です。
離婚時に請求できる慰謝料以外の3つの金銭
配偶者と離婚する際には、慰謝料以外にも、以下の金銭を請求できる可能性があります。
弁護士に相談しながら、請求可能な金銭の内容・金額を検討し、漏れのないように請求をおこないましょう。
①財産分与
財産分与とは、離婚時に夫婦の共有財産を分けることを意味します(民法768条1項)。
婚姻中に取得した財産であれば、夫婦どちらか一方の名義であっても、基本的には共有財産とみなされます(民法762条2項)。
自己の名義で所有する夫婦の共有財産が少ない側は、多く所有する側に対して、原則として共有財産が2分の1ずつになるまで財産分与をおこなうことを請求できます。
特に、婚姻期間中の収入が配偶者よりも少ない場合には、多額の財産分与を請求できる可能性がある点に留意しておきましょう。
財産分与の相談に関しては離婚の財産分与を無料相談できる3つの窓口と弁護士選びのポイントをご覧ください。
②婚姻費用
離婚の前に配偶者と別居する場合、離婚時に婚姻費用(民法760条)の精算が発生します。
婚姻費用の精算は、裁判所が公表している婚姻費用算定表に基づいておこなわれるのが一般的です。
夫婦の収入バランス・子の人数や年齢に応じて、収入の多い側から少ない側に対して婚姻費用が支払われます。
【参考元】平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所
③養育費
夫婦の間に子どもがいる場合、養育費の支払いについても離婚時に取り決めておくべきです。
子どもと同居しない側は、親としての扶養義務(民法877条1項)を果たすため、同居する側(親権者)に対して養育費を支払います。
養育費の金額は、裁判所が公表している養育費算定表に基づいて計算するのが一般的です。
夫婦の収入バランス・子の人数や年齢に応じて、標準的な養育費の金額が計算されます。
【参考元】平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所
なお、養育費算定表に基づき計算される養育費には、生活費・学費・医療費などのうち基本的な費用しか含まれていません。
たとえば私立学校の学費や留学費用、突発的に発生する多額の医療費などは含まれておらず、これらは別途特別費用として請求することになります。
養育費の相談に関しては養育費の相談窓口を悩み別に7つ紹介|相談前に準備しておくことをご覧ください。
離婚の際の慰謝料に関するよくある質問
ここまで離婚慰謝料について詳しく解説してきましたが、ほかにも細かな疑問や不安がある人もいるでしょう。
ここでは、慰謝料請求に関して特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
自身の状況と照らし合わせながら、参考にしてください。
離婚をしなくても慰謝料はもらえますか?
結論から言うと、離婚をしなくても慰謝料を請求することは可能です。
例えば、配偶者の不貞行為が発覚したが、反省を促して夫婦関係を再構築したい場合、不貞行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償として慰謝料を請求することはできます。
ただし、現実的な問題として、慰謝料を請求した相手とその後の婚姻生活を円満に続けていくことは決して簡単ではありません。
慰謝料請求がきっかけで夫婦関係がさらに悪化し、結局は離婚に至ってしまうケースも少なくないのが実情です。
関係修復を目指すのか、それとも離婚を視野に入れるのか、自身の気持ちを整理したうえで慎重に判断する必要があるでしょう。
不貞行為の場合、離婚慰謝料は不倫相手にも請求できますか?
離婚の原因が不貞行為の場合、配偶者に加えて、不倫相手にも離婚慰謝料を請求できます。
この場合、配偶者と不倫相手は被害者に対して、連帯して慰謝料を支払う義務を負うため、双方に対して慰謝料全額の支払いを請求することが可能です。
なお、不倫相手に対して慰謝料を請求する場合、離婚協議などとは別個に請求を進める必要があります。
煩雑な準備・対応が要求されますので、弁護士にご依頼ください。
離婚慰謝料の請求できる期間に時効はありますか?
離婚慰謝料を請求する権利には時効があり、期間を過ぎると請求できなくなります。
民法第724条では、不法行為による損害賠償請求権の時効について、以下のように定められています。
- 損害および加害者を知った時から3年間
- 不法行為の時から20年間
「離婚後の生活が落ち着いてから」と考えていると、あっという間に時効が成立してしまう恐れがあります。
請求を考えている場合は、早めに行動を起こすことが重要です。
証拠集めで相手のスマホ(携帯)を見ても不利になりませんか?
相手のスマートフォンに残されたLINEのやり取りや写真は、不貞行為などを証明する非常に有力な証拠になります。
しかし、無断で見る行為は、プライバシーの侵害や不正アクセス禁止法に該当するため、自身が不利な立場に置かれる可能性もあるので注意が必要です。
違法行為を理由に、相手から逆に損害賠償を請求されたり、慰謝料の減額を強く求められたりする恐れもあります。
裁判において、違法に収集した証拠だからといって、その証拠能力が直ちに否定されるわけではありません。
とはいえ、余計な争点を増やしてしまうリスクがあることを考えると、安易におこなうべきではないともいえます。
証拠集めの方法に迷ったら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
相手に支払い能力がない場合でも慰謝料は請求できますか?
慰謝料を請求すること自体は可能ですが、実際に支払いを受けられるかどうかは別の問題です。
相手に支払い能力がなければ、たとえ裁判で高額な慰謝料が認められても、それを回収することは難しくなります。
しかし、分割払いや親族への協力要請をしたり、財産分与で調整したりするなどの方法もあるため、どのような回収方法が適切か、弁護士からアドバイスを受けてみてください。
「ベンナビ」を活用し、まずは無料相談で意見を聞いてみましょう。
まとめ|離婚の慰謝料を請求するなら弁護士との無料相談を活用しよう
本記事では、離婚慰謝料を請求できるケースや金額の相場、手続きの流れ、注意点などを解説しました。
離婚慰謝料は、相手の有責行為によって受けた精神的苦痛に対する正当な賠償です。
しかし、その権利を適切に主張し、納得のいく金額を確実に受け取るためには、法的な知識と有効な証拠、そして冷静な交渉が不可欠となります。
慰謝料の問題は、感情的な対立も絡み、当事者だけで解決しようとすると、心身ともに大きな負担がかかります。
後悔のない解決を目指すためにも、早い段階で弁護士に相談しましょう。
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