内容証明郵便とは|効力や作成方法、送り方や費用を解説


内容証明とは、契約解除通知や損害賠償請求などで使われることが多い郵便サービスです。
日本郵便が「いつ、誰から誰宛てに、どのような文書が送られたか」を証明してくれるため、将来的な法律トラブルや契約トラブルを防止するのに役立ちます。
ただし、裁判などで証拠として扱われるため、内容や書き方などに気を付ける必要があります。
この記事では、法律トラブルに巻き込まれた方に向けて、内容証明の定義や効力、内容証明を利用するのに適しているケース、内容証明郵便の作成方法や送付方法などについて解説します。
また、自力で内容証明を作るのが難しい方に向けて、内容証明の相談ができる専門家や、弁護士に依頼するメリットなどについても紹介します。
相談したい分野から無料相談できる弁護士を探す | |
---|---|
相談料無料、分割払いOK、完全成功報酬の事務所もすぐに見つかる | |
『ベンナビ』は、それぞれの分野を得意とする弁護士を探せるサイトです。掲載弁護士・法律事務所には無料相談に対応している場合も多いので、あなたが相談したい分野に注力している弁護士がみつかります。 | |
離婚トラブル 【対応内容】慰謝料(請求・減額)、財産分与、養育費、親権獲得、その他調停・裁判など |
労働トラブル 【対応内容】未払いの残業代請求、不当解雇、雇い止めなど |
刑事事件 【対応内容】痴漢・わいせつ、詐欺、傷害、薬物、窃盗、暴行、殺人など |
交通事故 【対応内容】慰謝料の増額請求、示談交渉、後遺障害、過失割合など |
遺産相続トラブル 【対応内容】遺産分割、遺留分請求、使い込み返還、遺言書、相続放棄、成年後見など |
ネット上のトラブル 【対応内容】掲示板の投稿削除、発信者情報開示請求、名誉毀損など |
債務整理 【対応内容】借金減額、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など |
債権回収 【対応内容】売掛金、残業代、家賃、養育費・慰謝料、キャンセル代など |
内容証明とは|どのような効力がある?
内容証明(内容証明郵便)とは、「いつ、いかなる内容の文書を、誰から誰宛てに差し出されたか」を日本郵便が証明してくれる制度です(郵便法第48条)。
内容証明自体に法的拘束力はありませんが、配達の事実や配達日を証明できるなどの利点があります。
一般的に、裁判手続きに移行する前の交渉段階で使われます。
郵便法第48条(内容証明) 1 内容証明の取扱いにおいては、会社において、当該郵便物の内容である文書の内容を証明する。 2 前項の取扱いにおいては、郵便認証司による第58条第1号の認証を受けるものとする。 引用元:郵便法 | e-Gov法令検索 |
裁判に発展した際の証拠となる
法律トラブルでは「言った・言っていない」で水掛け論になったり、時効の成立をめぐっていつ通知したのかを争ったりすることが多くあります。
そのような場合に内容証明を利用していれば、「何を伝えたのか」「いつ伝えたのか」などを証明できます。
また、内容証明には強い証拠能力が認められており、裁判でも証拠として扱うことができます。
時効の完成を猶予できる
内容証明で相手方に一定の行為を要求した場合は、法律上の「催告」に相当します。
催告は時効の完成猶予の事由であるため、6ヵ月間は時効の完成を止めることができます。
時効が完成する間際であっても、内容証明による催告をおこない時効の完成を先延ばしにすることで、その間に訴訟や仮処分命令などの手続きを始められます。
民法第150条 (催告による時効の完成猶予) 1 催告があったときは、その時から6ヵ月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。 2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。 引用元:民法 | e-Gov法令検索 |
相手にプレッシャーを与えられる
内容証明そのものには法的拘束力はありませんが、内容証明を送ることで相手方に対して心理的なプレッシャーを与えることができます。
その結果、未払いになっている賃金や慰謝料などを支払ってくれる可能性が高まります。
訴訟などに移行せずに法的トラブルを解決できるため、時間・労力などの負担が少なくて済むでしょう。
内容証明を利用するほうがよい場合
内容証明郵便の利用が特に有効なケースには、未払金の請求、契約解除の通知、損害賠償・慰謝料の請求などが挙げられます。
ここでは、内容証明を利用するほうがよいケースについて確認しましょう。
未払い金の支払い請求
給料・家賃・商品代金・売掛金などが未払いになっている場合、内容証明を利用して金銭を支払うよう請求することがあります。
内容証明を利用した場合、時効の完成猶予ができるほか、遅延損害金の請求や契約の解除などもおこないやすくなります。
このようなメリットもあるため、債権回収の手段として内容証明郵便がよく使われています。
契約解除通知
クーリングオフをはじめ、契約解除を通知する際にも内容証明を利用することが多いです。
内容証明を利用する理由には、契約解除には大きな法的効果を伴うため、あとからトラブルに発展しやすいことなどが関係しています。
内容証明を利用しておけば、「契約解除通知を受け取っていない」などの言い逃れを防止するのに役立ちます。
損害賠償・慰謝料請求
損害賠償や慰謝料を請求する際には、証拠を残すために内容証明を使うことが一般的です。
損害賠償・慰謝料の請求で内容証明を送った場合、相手方の主張や態度などを知ることができます。
そのため、そのまま任意の交渉をおこなうべきか、ADR(裁判外紛争解決手続き)や裁判手続きに移行するかなどの判断がしやすくなります。
内容証明郵便の書き方・作成方法
詳しくは日本郵便の「内容証明 ご利用の条件等」のページに書いてありますが、内容証明には一定の利用条件が設けられています。
また、内容証明は裁判などで証拠として使われることもあるため、文面にも気をつけなければなりません。
ここでは、内容証明郵便の書き方・作成方法について解説します。
内容証明の形式に関するルール
まずは、内容証明の形式面のルールについて確認しましょう。
用紙・枚数に制限はない
内容証明の用紙や枚数に特別な制限はありません。
一般的な便箋やレポート用紙など、どれを何枚使っても問題なく送ることができます。
ただし、内容証明を利用するにあたり、以下の注意点は守るようにしてください。
【内容証明を作成するときの注意点】
- 用紙は5年以上耐えられるものにする
- ページが2枚以上ある場合はホチキスなどで綴じて、つなぎ目に契印を押す
- 同じ文書を3通作成する(差出人、受取人、郵便局がそれぞれ1通ずつ保管する)
文字数は1ページ520文字まで
内容証明の文字数は、1ページあたり520文字までと決められています。
520文字を超える場合は、2枚以上に分けなければなりません。
また、文字数・行数は縦書きと横書きで異なり、それぞれ以下のように指定されています。
【内容証明の文字数・行数の制限】
縦書きの場合 |
1行20字以内、1枚26行以内 |
横書きの場合 |
1行20字以内、1枚26行以内 |
1行13字以内、1枚40行以内 |
|
1行26字以内、1枚20行以内 |
手書きでもパソコンで作成してもOK
内容証明は手書きでも、パソコンでも作成できます。
手書きで内容証明郵便を作成するときのポイントは、文字数の数え間違いを防ぐために、市販の内容証明用紙や400字詰めの原稿用紙などを使うことです。
また、3部とも手書きすると負担が大きいため、1部だけ手書きで作成したら、ほかの2部はコピーで済ませるのがおすすめです。
内容証明の書き方に関するルール
次に、内容証明の書き方のルールについて確認しましょう。
内容証明に記載すること
内容証明の文面には制限がなく、基本的には何でも自由に書くことができます。
しかし、一般的には以下のような構成で作成します。
なお、普通の手紙であれば「拝啓 風薫るさわやかな季節となりました」などのような時候のあいさつを書きますが、内容証明郵便の場合は、時候のあいさつを書かずにいきなり通知内容を書きます。
【内容証明に記載すること】
- タイトル:文書の一番上に通知書、回答書などと表題を書く
- 通知内容:契約解除や損害賠償請求などに関する内容を書く
- 日付:「令和○年○月○日」などと作成した日付を記載する
- 当事者情報:受取人と差出人の住所・氏名を記載する
内容が脅迫文にならないよう注意する
内容証明の文面が、脅迫や恐喝にならないように注意する必要があります。
脅迫とは「~しなければ殺すぞ」「~しないとSNSで拡散するぞ」などのように、他人の生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を加えることを告知する行為を指します。
脅迫や恐喝は犯罪行為に該当するため、場合によっては告訴され刑事罰が科されるリスクがあります。
刑法第222条(脅迫) 1 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。 2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。 引用元:刑法 | e-Gov法令検索 |
内容証明の封筒に関するルール
続いて、内容証明の封筒に関するルールについて確認しましょう。
封筒の住所、氏名は本文と同一にする
内容証明を利用する際は、封筒が必要になります。
封筒は市販のもので問題なく、封筒の表面には受取人の住所・氏名を記載し、裏面には差出人の住所・氏名を記載します。
その際、住所・氏名には必ず本文と同じものを書きます。
なお、郵便局で内容証明の手続きがおこなわれるため、封をしないように注意してください。
文書以外のものの同封はできない
内容証明で送付できるのは、文書1通のみとなっています。
そのため、有価証券、写真、図面、返信用封筒などのような、文書以外のものを同封することはできません。
もし文書以外の資料を送りたいなら、別便で郵送する必要とよいでしょう。
その際、郵便サービスの「配達証明」を付けることで、相手が受け取ったかどうかを確認できます。
内容証明郵便のサンプル
内容証明郵便の横書きと縦書きのサンプルは、それぞれ以下のとおりです。
【作成例(縦書きの場合)】
【作成例(横書きの場合)】
内容証明郵便の送付方法
内容証明郵便を送付する場合は、集配郵便局または日本郵便指定の郵便局に持ち込む必要があります。
また、内容証明を利用する場合は、必要に応じて、速達や配達証明などのオプションを付けるのがおすすめです。
ここでは、内容証明郵便の送付方法について確認しましょう。
ポスト投函不可!限られた郵便局窓口で発送
内容証明を利用できるのは、集配郵便局や日本郵便に指定された郵便局に限られています。
内容証明を受け付けているかどうかは、日本郵便の「郵便局・ATMを探す」ページで探すことが可能です
。一般的な郵便と異なり、郵便ポストに投函したり、指定外の郵便局に持ち込んだりしても内容証明は利用できないので注意しましょう。
配達証明サービスの付加がおすすめ
一般的に内容証明郵便には「配達証明サービス」を付けるのがおすすめとされています。
配達証明とは、一般書留で発送した郵便物を「配達しました」と知らせてくれるサービスのことをいいます。
相手が郵便物を受け取ったら、郵便局から差出人に対して配達証明書が送られます。内容証明郵便の控えとともに、大切に保管しておきましょう。
発送料金について
内容証明の利用料金は、「基本料金」「一般書留の加算料金」「内容証明の加算料金」の合計額となります。
内容証明を利用する際は一般書留として送る必要があるため、一般書留の加算料金を支払わなければなりません。
また、オプションを利用した場合は、別途追加料金を支払います。
それぞれの利用料金の内訳は以下のとおりです。
【内容証明を利用する場合の料金内訳】
区分 |
料金 |
|
基本料金 |
定形郵便物 |
25gまで84円 50gまで94円 |
定形外郵便物(規格内) |
50gまで120円 100gまで140円 150gまで210円 250gまで250円 |
|
定形外郵便物(規格外) |
50gまで200円 100gまで220円 150gまで300円 250gまで350円 |
|
一般書留の加算料金 |
損害要償額が10万円まで:435円 損害要償額が10万円を超える:5万円ごとに+21円 |
|
内容証明の加算料金 |
1枚:440円 2枚:700円 3枚:960円 4枚:1,220円 5枚:1,480円 |
|
オプション料金 |
速達 |
250gまで260円 |
配達証明 |
差し出しの際:320円 差し出し後:440円 |
電子内容証明郵便もおすすめ!自宅で24時間いつでも発送可能
一般的な内容証明郵便では文書や封筒を用意したり、郵便局に持ち込んだりする必要があるため、時間や労力が多くかかります。
そのような負担を軽減したいなら、インターネット上で24時間いつでも内容証明を発送できる「電子内容証明(e内容証明)」の利用がおすすめです。
なお、電子内容証明を利用する際は「日本郵便指定のひな型」を使うなど、一般的な内容証明郵便と異なる部分があります。
以下のページをよく確認してから利用しましょう。
参考記事:e内容証明(電子内容証明) - 日本郵便
内容証明の相談ができる専門家
内容証明郵便は、差出人本人が作成することが可能です。
しかし、裁判などで証拠として扱われたり、書き方を間違えると脅迫文になったりする可能性があるため、できる限り弁護士、認定司法書士、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
ここでは、内容証明の相談ができる専門家のそれぞれの特徴などを確認しましょう。
弁護士
法律の専門家である弁護士は、法律トラブルに関する相談を受け付けており、事件解決に向けた交渉や法的手続きなどにも対応できます。
内容証明についても相談できる可能性が高く、詳細について相談しながら文面を作成してもらえます。
しかし、ほかの専門家に比べると、依頼費用が高いというデメリットがあるので注意しましょう。
認定司法書士
登記の専門家である司法書士の中でも、法務大臣から認定を受けた「認定司法書士」であれば、内容証明に関する相談に対応できます。
ただし、認定司法書士が扱えるのは、請求金額が140万円以下の事件に限られます。
高額な事件に関する相談はできない点と、そもそも内容証明だけの相談を受け付けている可能性が低い点には注意が必要です。
行政書士
書類作成の専門家である行政書士にも、内容証明の相談ができます。
行政書士の場合、文面の相談はできますが、法律トラブル自体の相談はできません。
また、相手方との交渉や裁判手続きなどにも対応できないため、行政書士に依頼する際には注意が必要です。
なお、弁護士や認定司法書士に比べると依頼費用は安い傾向があります。
弁護士に内容証明の作成・送付を依頼するメリット
内容証明の作成を依頼できる専門家には弁護士、認定司法書士、行政書士がいますが、この中でおすすめなのは弁護士です。
弁護士であれば、法律的に正しい内容の内容証明を作成してくれますし、その後の交渉や法的手続きなども任せられます。
ここでは、弁護士に内容証明の作成・送付を依頼するメリットについて確認しましょう。
法律的に正しい内容の文書を作成してもらえる
内容証明を作成するためには、法律トラブルに関する知識も必要です。
たとえば、配偶者の不倫相手に内容証明を送る場合、「謝罪を要求したいのか」「慰謝料を支払ってもらい、穏便に事件を解決したいのか」で文面は変わります。
また、適切に請求できていなければ、慰謝料を受け取れなかったり、その後の交渉が不利になったりするなどのデメリットもあります。
その点、弁護士に依頼すれば相談者の希望を踏まえつつ、法律的に正しい内容証明を作成してくれるでしょう。
弁護士名で送ればより強いプレッシャーを与えられる
弁護士が代理人になった場合、弁護士の名前で内容証明を作成・発送してくれます。
弁護士の名前で内容証明を送ることで、受取人に対してより強い心理的なプレッシャーを与えることが可能です。
その結果、受取人の態度が軟化して、賃金や慰謝料などの支払いに応じたり、相手方から「交渉したい」と連絡が来たりする可能性が高まります。
その後の対応も任せられる
内容証明は、債権回収や慰謝料請求などのような、法的トラブルの解決に使われることも多くあります。
しかし、必ずしも相手方が内容証明に従い、支払いなどに応じるとは限りません。
そのような場合には、状況に応じて示談交渉、調停、訴訟などの手続きが必要になります。
弁護士に依頼している場合は、これらの手続きにも代理人として対応してくれます。
これにより、相談者は少ない負担で法律トラブルを解決できるでしょう。
弁護士に内容証明の作成・送付を依頼した場合の費用
内容証明郵便の作成の目安額は、弁護士事務所によって異なります。
ただし、従来の基準であった「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」を参考にしている事務所も多く、内容証明の作成費用の目安は以下のとおりです。
なお、実際に弁護士に内容証明の作成を依頼する場合は、事前に「料金がいくらになるのか」を確認しておきましょう。
【内容証明郵便の作成費用の目安】
弁護士名の表示なし |
1万~3万円の範囲内 |
弁護士名の表示あり |
3万~5万円の範囲内 |
まとめ|内容証明郵便の作成・発送は弁護士に依頼がおすすめ!
内容証明は債権回収、契約解除、損害賠償・慰謝料請求など、さまざまなシーンで役立つ手続きです。
しかし、内容証明には、法的拘束力はありませんし、文書内容を保障する制度でもありません。
そのため、内容証明を利用する際は、弁護士などの専門家に相談して、法律的に正しい文書を作成する必要があります。
まずは「ベンナビ」でご自身の悩みに合った弁護士事務所を探して、内容証明を使うか、文面をどうするかなどを相談するとよいでしょう。
相談したい分野から無料相談できる弁護士を探す | |
---|---|
相談料無料、分割払いOK、完全成功報酬の事務所もすぐに見つかる | |
『ベンナビ』は、それぞれの分野を得意とする弁護士を探せるサイトです。掲載弁護士・法律事務所には無料相談に対応している場合も多いので、あなたが相談したい分野に注力している弁護士がみつかります。 | |
離婚トラブル 【対応内容】慰謝料(請求・減額)、財産分与、養育費、親権獲得、その他調停・裁判など |
労働トラブル 【対応内容】未払いの残業代請求、不当解雇、雇い止めなど |
刑事事件 【対応内容】痴漢・わいせつ、詐欺、傷害、薬物、窃盗、暴行、殺人など |
交通事故 【対応内容】慰謝料の増額請求、示談交渉、後遺障害、過失割合など |
遺産相続トラブル 【対応内容】遺産分割、遺留分請求、使い込み返還、遺言書、相続放棄、成年後見など |
ネット上のトラブル 【対応内容】掲示板の投稿削除、発信者情報開示請求、名誉毀損など |
債務整理 【対応内容】借金減額、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など |
債権回収 【対応内容】売掛金、残業代、家賃、養育費・慰謝料、キャンセル代など |