土地の贈与税の計算方法!できる限り節税したいなら税理士に相談しよう


所有している土地を他人の名義に変更した場合や、安価で譲渡した場合、は他人の土地の持分割合を増加させた場合には、土地の「贈与」があったとみなされます。
贈与と見なされた場合、贈与税が発生しますが以下のような悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
- 「土地の贈与税の計算方法が複雑でわかりにくい…」
- 「できるだけ節税したいけど、難しい計算に自信がない…」
贈与税算定の計算式は、誰に贈与するかによって異なることもあり、とくに初めて土地を贈与する方にとってはわかりにくいでしょう。
また、贈与税をできるだけ抑えるためには、特例制度や控除の知識が欠かせません。
場合によっては、税理士に相談すべきといえます。
そこで本記事では、土地の贈与税の計算方法をわかりやすく解説するとともに、節税のポイントや税理士に相談するメリットを紹介します。
土地の贈与について悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
土地の贈与税の計算式|(受贈額の合計額-110万円)×税率-控除額
贈与税の課税方法には、暦年課税と相続時精算課税があります。
暦年課税制度とは、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与に対して適用される課税方式のことです。
この制度は、贈与者や受贈者の制限なく、誰でも利用することができます。
贈与財産の種類にも制約はなく、不動産・現金・預貯金・有価証券などのあらゆる財産が対象です。
相続時精算課税は、一定の条件を満たした場合のみ選択できるので、基本的には歴年課税を元に計算します。
暦年課税の基本的な計算式は、以下のとおりです。
(受贈額の合計額-110万円)×税率-控除額 |
なお、110万円の根拠は「基礎控除」です。贈与税には基礎控除という仕組みがあり、誰でも一律で年間110万円までは非課税となります。つまり、贈与総額が110万円を超える場合のみ、贈与税が発生するのです。
計算式を用いて計算するにあたっては、次の2点がポイントになります。
- 「受贈額の合計額」はどのように算定するか?
- 「税率」と「控除額」はどの数字が適用されるか?
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
土地の評価額の算出方法|路線価方式または倍率方式で求める
暦年課税の計算式内の「受贈額の合計額」を把握するには、土地の評価額を算出する必要があります。
土地の評価額を算出するためには、「路線価方式」または「倍率方式」を用いるのが通常です。
どちらの方法を使うべきかは、土地の所在地や条件によって異なります。
以下、それぞれの計算方法について具体的に解説します。
路線価方式を使った土地の評価額の計算方法
路線価方式は、路線価があらかじめ定められている地域で用いられる評価方法です。
路線価とは、道路に面した土地の1平方メートルあたりの評価額を指します。
路線価は、国税庁のホームページにある「路線価図・評価倍率表」を使って確認可能です。
たとえば、渋谷区の路線価図・評価倍率表は、以下のとおりになります。
引用元:国税庁|財産評価基準書
その後、路線価図で評価したい土地の位置を特定し、その土地が面している道路に記載されている路線価を確認します。
路線価方式を使ったときの、土地の評価額のおおよその計算式は下記のとおりです。
土地の相続税評価額=正面路線価×地積(㎡) |
なお、正面路線価とは、評価対象地の正面に接する路線に設定されている路線価をいいます。
2つ以上の路線価に接している場合、路線価が高いほうが正面路線になることが多いです。
たとえば、上記の路線価図をみると、「渋谷消防署 渋谷消防団本部」の正面路線価は「3170(,000)円」となります。
渋谷消防署 渋谷消防団本部の土地の面積が仮に「1,000㎡」だとすると、相続税評価額は「3170(,000)円×1,000㎡=31億7,000万円」程度になるでしょう。
倍率方式を使った土地の評価額の計算方法
倍率方式は、路線価が定められていない地域で用いられる評価方法です。
計算式は、以下のとおりです。
土地の相続税評価額=土地の固定資産税評価額 × 国税庁が場所ごとに定める評価倍率 |
固定資産税評価額は、毎年送付される納税通知書や、市区町村役場の窓口で確認できます。
評価倍率は、路線価と同じく国税庁のホームページに掲載されている「路線価図・評価倍率表」から確認可能です。
土地の贈与税の税率と控除額|一般贈与と特例贈与の違い
暦年課税の計算式内の「税率」と「控除額」は、対象となる贈与が「一般贈与」に該当するか、「特例贈与」に該当するかどうかで異なります。
以下、一般贈与と特例贈与の違いを詳しく解説します。
一般贈与の場合|通常の贈与の場合に使う税率・控除額
一般贈与とは、特例贈与に該当しない、通常の贈与をいいます。
具体的には、以下のような贈与が対象となります。
- 兄弟姉妹間での贈与
- 夫婦間での贈与
- 親から満18歳未満の子への贈与
一般贈与の場合に適用される税率と控除額は、以下のとおりです。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
例えば、基礎控除後の課税価格が590万(贈与財産の価額は700万円-基礎控除額110万円)の場合、贈与税額は、以下のようになります。
590万円 × 30% -65万円 = 112万円 |
特例贈与の場合|親から18歳以上の子どもへの贈与などに使う税率・控除額
特例贈与とは、直系尊属(親や祖父母)から満18歳以上の子どもや孫に対しておこなわれる贈与をいいます。
特例贈与に適用される税率と控除額は、以下のとおりです。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
【参考】国税庁|No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
例えば、基礎控除後の課税価格が590万(贈与財産の価額700万円-基礎控除額110万円)の場合、贈与税額は以下の様になります。
590万円 × 20% -30万円 = 88万円 |
特例贈与の場合、一般贈与に比べて贈与税額が低くなるケースがほとんどです。
土地の贈与税のことはあらかじめ税理士に相談するのがおすすめ!
土地を贈与する場合、贈与税の計算や申告が必要になるだけでなく、できるだけ節税するための方法も知っておく必要があります。
ただ、贈与税の節税については専門知識が必要な分野のため、あらかじめ税理士に相談したほうがよいでしょう。
以下、税理士に相談する主なメリットを3つ紹介します。
1.贈与が良いか相続が良いか判断してくれる
親族に土地を贈与する場合、「生前贈与」とするか、「相続」とするかを決める必要があります。
「生前贈与」の場合は贈与税がかかり、「相続」の場合には相続税がかかり、どちらを選択するかで税額が異なるからです。
できるだけ税負担が少ない手段を選択すべきですが、どちらの税負担が少ないかは、保有する資産の内容や受贈者・相続人との関係性によって異なります。
その点、税理士は、贈与税や相続税の制度を熟知しているので、相談者の財産状況や家族構成をもとに、どちらの方法がより有利かを的確に判断してくれるでしょう。
2.土地の減額要素について検討してくれる
税理士に相談することで、贈与する土地が減額要素の対象となるか判断してもらえるのもメリットです。
減額要素とは、土地の評価を下げて計算することができる要素のことを指します。
ひと口に土地といっても、利用しやすい土地と利用しづらい土地があるため、後者の場合は市場価値よりも評価を下げて土地の価値を計算することができるのです。
具体的には、以下のような項目に当てはまる場合は減額要素の対象となり可能性があるでしょう。
- 道路より高い位置にある宅地または低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
- 地盤に甚だしい凹凸のある宅地
- 震動の甚だしい宅地
- 1から3までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの
【参考】国税庁|No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価
ただし、減額要素の対象になるかどうかは素人では判断が難しいのが実情です。
そのため、税理士に相談することで、評価を下げて計算できるか判断してもらう必要があるでしょう。
3.贈与税の制度などを有効活用してくれる
土地の贈与税の節税するにあたっては、暦年課税のほかにも活用できる制度が存在します。
制度名 | 概要 |
---|---|
相続時精算課税制度 | 60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫に対しておこなわれた贈与では、2,500万円までは非課税となる。 |
贈与税の配偶者控除(おしどり贈与) | 婚姻期間が20年以上の夫婦間での居住用不動産などの贈与では、2,000万円までは非課税となる。 |
これらの特例を活用することで、節税額を増やせることがあります。
ただし、控除を適用するにあたっては条件を満たす必要があるほか、「相続時清算課税制度」を利用した場合、暦年課税へ変更できないなどの注意点もあります。
その点、税理士に相談することで、事案に応じた制度の有効活用に関するアドバイスをもらうことができるでしょう。
土地の贈与税の計算に関するよくある質問
以下では、土地の贈与税についてよくある質問をまとめました。
似たような疑問を持っている方は、ぜひここで疑問を解消してください。
Q.そもそも贈与税がかからないケースはあるのか?
たとえば、親が所有する土地の一部を借りて、子どもが家を建てる場合、その土地が親名義のままであれば、贈与税は発生しません。
なぜなら、この場合は親が子どもに無償で土地を貸しており、法律上では「使用貸借」に該当するため、「贈与」とはならないからです。
そのほか、法人から個人に土地を贈与した場合にも、贈与税はかかりません。
贈与税は、「個人から財産を譲り受けた場合」にかかる税金だからです。
Q.土地の購入代金を現金で贈与した場合はどうなるか?
贈与税の対象に現金も含まれる以上、土地の購入代金として贈与した現金も贈与税の対象となります。
ただ、この場合には、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例」を利用可能です。
特例を受けた場合、省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となります。
なお、特例の適用対象になるためには、2024年1月1日から2026年12月31日までの間に、父母や祖父母から贈与を受けた取引であるほか、一定の条件を満たす必要があります。
さいごに|土地の贈与税の計算は難しいため税理士に相談しよう
土地の評価額の算定、贈与税額の算定、利用できる特例の判断などは、専門的な知識や正確な計算が求められます。
計算を間違えたり、利用できる特例を活用しなかったりすると、余分に税金を支払ってしまうおそれがあるでしょう。
税理士に相談することで、ミスを減らすことができるほか、自分で計算をする手間を省けます。
自分で贈与税を算定するのが難しいと感じた場合には、まずは税理士に相談してみましょう。