事故でむちうちは嘘だと疑われたら?疑われる主な理由と対処法を解説


交通事故に巻き込まれたときの代表的な怪我として「むちうち」が挙げられます。
むちうちは軽微な交通事故でも生じやすく、しびれやめまい、倦怠感などの症状に悩まされるケースも少なくありません。
しかし、むちうちの症状は客観的な診断が難しいため、「被害者がむちうちだと嘘をついているのではないか」と加害者側の任意保険会社から疑いをかけられてしまうこともあります。
結果的に、治療費や休業損害の支払いの打ち切りについて打診をされてしまうケースも多いです。
そこで本記事では、交通事故で負ったむちうちが嘘だと疑いをかけられたときの対処法についてわかりやすく解説します。
交通事故でむちうちは嘘だと疑われやすい3つの理由
まずは、交通事故で受傷したむちうちが嘘だと疑われる理由を3つ紹介します。
1.事故直後に発症しない場合があるから
交通事故によるむちうちが嘘だと疑われやすい理由は、事故から時間がたってから発症するケースが多い点にあります。
交通事故で負った怪我に関する治療代などを請求するには、怪我と交通事故との因果関係を証明しなければいけません。
そのためには、交通事故後、すみやかに病院を受診して診断書を取得する必要があります。
しかし、むちうちは交通事故のあとすぐに発症しないケースも多く、時間がたってから病院へ行くと、事故との因果関係が疑われてしまうのです。
2.画像検査ではわかりにくい症状だから
むちうちの症状は、レントゲン検査やCT検査などの他覚的診断で証明するのが難しく、患者が訴える自覚症状によって診断が下されます。
つまり、加害者側は被害者が本当にむちうちなのかどうかを客観的証拠に基づいて判断できないのです。
そのため、「本当はむちうちではないのに、慰謝料が欲しいから嘘をついているのではないか」と不信感を抱かれてしまうケースが多いでしょう。
3.軽微な事故でむちうちはないと思われているから
車同士の軽い接触など、軽微な交通事故の場合、「この程度の交通事故でむちうちなどの怪我を負うはずがない」という誤解を抱かれる可能性があります。
しかし、実際は軽微な交通事故でもむちうちを発症することは多いです。
たとえば、赤信号で停止しているところに後続車両が低速度で衝突しただけでも、深刻なむちうちになる可能性があります。
むちうちでの通院期間が長期化すると、むちうち自体が嘘ではないかという疑念を抱かれるケースもありますが、症状が続く限りは通院を続けるようにしましょう。
交通事故でむちうちになった際に嘘だと疑われないためのポイント
ここでは、交通事故のむちうちが嘘だと疑われないためのポイントを3つ紹介します。
1.症状が出たらすぐに病院を受診する
むちうちの症状が出たら、できるだけ早いタイミングで病院を受診してください。
なぜなら、交通事故が起きてから受診日までの日数が短いほど、交通事故とむちうちとの間の因果関係が肯定されやすくなるからです。
むちうちの症状があるときは、必ず最初は病院の整形外科を受診しましょう。
むちうちの症状を改善するために、整骨院やカイロプラクティックへの来訪を希望する人は少なくありません。
しかし、整骨院などでは医学的見地に基づく専門的な診断を得ることができず、事故との因果関係を証明できない可能性があります。
なお、実務上は交通事故から3日以内に病院を受診していれば、むちうちが嘘だという指摘を受けずに済む可能性が高くなります。
一方、事故から3日以上が経過してようやく通院をした場合、交通事故との因果関係に疑義を呈されて、治療費などの支払いを受けられなくなる可能性があるので注意しましょう。
2.精密検査や神経学的検査を受けておく
むちうちで病院を受診するときには、できるだけ詳しい検査を受けるのがおすすめです。
他覚的診断がある方が、交通事故とむちうちとの因果関係を証明しやすくなるでしょう。
まず、むちうちが原因で痛みがあるのなら、その箇所のレントゲン検査・MRI検査を受けてください。
怪我について映像の証拠があれば、「むちうちは嘘である」という加害者側の反論を封じやすくなります。
次に、むちうち被害にあったときには、以下の神経学検査もおすすめです。
- ジャクソン・テスト
- スパーリング・テスト
- ショルダーデプレッション・テスト
- ラセーグ・テスト
- ホフマン・テスト
- バビンスキー・テスト
- ワルテンベルグ・テスト
- トレムナー・テスト
- 腱反射テスト
- 筋電図検査
- 徒手筋力検査
- 筋萎縮検査
- 知覚検査
- 握力検査
- 皮膚温検査
自覚症状の証明に役立つ検査を医師に選んでもらいましょう。
3.むちうちの症状を正確に伝えて診断書を作成してもらう
むちうちが嘘ではないとはっきりとさせるには、医師の診察を受ける際にできるだけ自覚症状を伝えて、それを反映した診断書を作成してもらう必要があります。
むちうちの症状のなかには、精密検査・神経学的検査でも証明できないものが少なくありません。
たとえば、日常生活のなかで突然めまいに襲われるような症状は、精密検査や神経学的検査で証明するのは簡単ではないでしょう。
医師によって作成された診断書があれば、加害者側の保険会社から「むちうちは嘘だ」と指摘されたとしても、交通事故が原因で怪我をしていることを主張しやすくなるでしょう。
交通事故が原因でむちうちになったのに嘘だと疑われた場合の対処法
ここでは、交通事故のむちうちが嘘だと指摘されたときの対処法を2つ紹介します。
1.交通事故の様子がわかる映像を保険会社へ提出する
加害者側の保険会社からむちうちが嘘だと指摘を受けたときには、交通事故やむちうちに関する客観的な証拠を提出してください。
たとえば、ドライブレコーダーの映像や診断書、レントゲン画像や実況見分調書など、客観的に交通事故・むちうちを立証できる証拠があれば、むちうちが嘘ではないという主張に説得力が生まれるでしょう。
2.交通事故のトラブル解決が得意な弁護士に相談する
加害者側の保険会社から「むちうちは嘘だ」という指摘を受けたときには、できるだけ早いタイミングで交通事故トラブルを得意とする弁護士に相談してください。
交通事故被害者が弁護士の力を借りることによって、以下のメリットを得られます。
- 加害者側の保険会社からの指摘に対して客観的証拠をもって反論をしてくれる
- むちうち被害の立証に役立つ検査方法や診断書の記載内容についてアドバイスを期待できる
- むちうちが嘘であるとの疑いを避けるために、通院頻度や通院のタイミングなどについてアドバイスを期待できる
- 弁護士が介入することで「弁護士基準」が適用されるので、慰謝料請求の増額を期待できる
- むちうちが原因で後遺症がのこったときに、症状に適した後遺障害等級を獲得するために尽力してくれる
- 加害者側の保険会社との示談交渉が不調に終わったとしても、民事訴訟関係の手続きを代理してくれる
むちうちが嘘ではないかと指摘されたときには、できるだけ早いタイミングで対抗策に踏み出す必要があります。
ベンナビ交通事故では交通事故トラブルを得意とする弁護士を多数掲載しているので、ぜひ一度弁護士へ相談してみてください。
交通事故でむちうちだと嘘をついた場合に考えられる3つのリスク
交通事故に巻き込まれた人のなかには、被害者という立場を悪用して「むちうちになった」と嘘をつく人もいます。
ここでは、交通事故でむちうちになったと嘘をついたときや、むちうちになったという嘘がバレたときに想定されるリスクを3つ紹介します。
1.治療費を打ち切られる
むちうちと詐称して通院を継続していることが発覚すると、治療費の支払いを打ち切られてしまいます。
本当にむちうちの症状が出ているのに、加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを打診されたときには、適切な反論をしなければ治療費の自腹負担を強いられたり、治療継続が困難になったりしかねません。
打ち切りの打診があった時点で医師に相談をして、加害者側の保険会社に治療継続の必要性を説明してもらいましょう。
2.治療費や慰謝料の返還を求められる
むちうちが嘘であったとバレたときには、加害者側の保険会社が支払った治療費・休業損害・慰謝料などの返還を求められます。
支払い済みの治療費などを返還するときには、一括での支払いを求められることが多いです。
とはいえ、人身事故の損害賠償額は比較的高額になるので、一括での返済が難しいケースも少なくありません。
加害者側の保険会社からの返還請求に応じることができなければ、民事訴訟を提起されたり、被害者の財産などが差し押さえられたりする可能性も生じます。
3.最悪の場合は詐欺罪として刑事責任を問われる
むちうちだと嘘をついて保険金を騙し取ったときには、詐欺罪の容疑で刑事訴追される可能性があります。
詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役刑」です。
保険金詐欺は悪質な犯罪類型に分類され、刑事訴追された場合には以下のようなデメリットが生じることも覚えておきましょう。
- 逮捕・勾留によって強制的に身柄拘束されて、数日~数週間社会生活から切り離されてしまう
- 懲役刑が下されて刑期満了まで収監される
- 執行猶予付き判決を獲得できたとしても、執行猶予期間が明けるまでは緊張感のある生活を強いられる
- 懲役刑・執行猶予付き判決のいずれであったとしても、有罪になった以上、前科によるデメリットに悩まされ続ける
さいごに|交通事故によるむちうちを嘘だと疑われたら弁護士に相談!
交通事故でむちうちになったときには、すぐに病院を受診したうえで、必要な検査を受けましょう。
むちうちであることを客観的に証明できる状況を作り出さなければ、加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを打診されたり、支払い済みの保険金の返還を求められたりしかねません。
一般的に、むちうちは比較的軽微な受傷に分類されます。
しかし、適切な治療をおこなわなければ、後遺症が残る可能性もあります。
「軽い事故だから大丈夫」と自己判断せず、まずは病院を受診して体に以上がないか確認してください。
また、むちうちの治療費について加害者側から嘘だと疑われたときは、いち早く弁護士へ相談しましょう。