交通事故の過失割合が8対2とされた場合の修理代は?計算方法や注意点を解説


交通事故で生じた修理代や治療費などは、加害者・被害者がそれぞれ過失割合に応じて負担しなければいけません。
たとえば、過失割合8対2で決着がついた交通事故の場合、交通事故で生じた経済的損失の「8割が加害者」「2割が被害者」という負担割合になります。
とはいえ、「治療費や修理代はどうやって負担するの?」「保険に加入している場合はどうなるの?」など、疑問を感じる方も多いでしょう。
そこで本記事では、過失割合8対2の交通事故における治療費や修理代の負担方法や取り扱いについて、詳しく解説します。
過失割合が8対2になりやすいケースについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
交通事故の過失割合が「8対2」のとき、修理代はどうなる?
まずは、過失割合が8対2の交通事故において、修理代がどのように扱われるのかについて解説します。
交通事故の過失割合とは
交通事故の過失割合とは、交通事故当事者がそれぞれ交通事故に対してどの程度の不法行為責任を負っているかを割合で示したもののことです。
交通事故には「加害者」と「被害者」という概念が存在しますが、必ずしも加害者に100%の責任があるわけではありません。
なぜなら、あくまでも交通事故は当事者全員によって引き起こされたものだからです。
つまり、過失割合が大きい当事者が「加害者」、過失割合が小さい当事者が「被害者」と位置付けられるだけであって、「被害者」と称されたからといって賠償責任がゼロであるということにはならないのです。
また、交通事故が起こったときには、当事者双方の過失割合に応じて修理代などの賠償額を負担することになります。
そのため、交通事故においては過失割合が争点になりやすく、訴訟にまで発展するケースも多いのです。
なお、交通事故の実務上は「過失割合10対0」というケースも存在します。
ただし、これはあくまでも「交通事故は当事者全員によって引き起こされたもの」という前提のうえで、「被害者側には一切の過失が存在しない」と認定されたに過ぎません。
修理代の負担も過失割合と同じ「8対2」になる
過失割合が8対2の交通事故では、加害者側が8割、被害者側が2割の割合で損害賠償責任を負担します。
修理代は損害項目のひとつでしかなく、修理代を含む全ての損害額を算出したうえで、過失割合に応じて賠償責任を負担しなければいけません。
たとえば、過失割合8対2の交通事故で、車両の修理代を含めて被害者側に90万円、加害者側に60万円の賠償額が生じたケースについて考えてみましょう。
この場合、交通事故全体で生じた被害総額は「150万円(90万円 + 60万円)」です。
過失割合は8対2なので、被害者側が30万円(150 × 0.2)、加害者側が120万円(150 × 0.8)を負担することになります。
任意保険加入者同士なら相殺前の金額を支払い合うケースが一般的
交通事故で生じた損害賠償責任の清算方法としては、以下2つが挙げられます。
清算方法 | 内容 | メリット | デメリット |
クロス払い | 交通事故当事者がそれぞれ負担する賠償額を相手に支払い合う方法 | ・自分の負担する金額を支払うだけなのでわかりやすい ・相殺しないので相手方の同意がなくても手続きが可能 |
・自分が賠償金を振り込んでも、相手方がお金を支払わない状況になりかねない ・賠償負担額が少額でも振込手続きをしなければいけない |
相殺払い | 交通事故当事者がそれぞれ負担している賠償額を事前に差し引いたうえで残額を支払う方法 | ・一方が相手方に金銭を支払うだけで支払い手続きが終了する ・一方は賠償額を支払ったのに他方が未払いになる不安定な状態を回避できる |
・支払い金額を計算するのが面倒 ・相手方の同意がなければ相殺できない |
交通事故当事者が加入している自動車保険を使うときには、任意保険会社が「クロス払い」で賠償金を支払い合うのが一般的です。
これは、自分側が負担する賠償金が確定した段階で支払いを済ませてしまったほうが、振り込み手続きをスムーズに終えられるからです。
一方、当事者が任意保険に加入していなかったり、任意保険に加入しているものの、自動車保険を使わずに自腹で賠償金を支払う方法を選択したりしたときには、どちらかの方法を選ぶ必要があります。
そのため、クロス払いと相殺払いのメリット・デメリットを総合的に考慮したうえで、支払い方法を決めなければいけません。
交通事故の過失割合が「8対2」のとき治療費はどうなる?
人身事故における損害賠償項目には、車両の修理代だけではなく、治療費や通院交通費なども含まれます。
ここでは、過失割合が8対2の交通事故における治療費の取り扱いについて解説します。
加害者側の保険会社が、一旦病院へ全額支払うのが一般的
人身事故の加害者が自動車保険に加入している場合、まずは加害者側の保険会社が治療費全額を病院に支払うのが一般的です。
ただし、交通事故の過失割合が8対2である以上、加害者側が負担するべき損害賠償責任は「治療費の8割分」でしかありません。
そのため、最終的にその他の賠償額を清算する際に、治療費として加害者側が余分に支出した2割分を差し引くことによって、過失割合が8対2になるように調整されます。
なお、加害者が任意保険に加入していない場合は、加害者側が先に被害者分の治療費まで支払ってくれる可能性は低いでしょう。
その場合は、被害者本人が治療費を全額立て替えたうえで、後日加害者側に直接請求しなければいけません。
加害者に資力がなければ、最悪の場合は治療費が自己負担になる恐れもあるでしょう。
過失割合が「8対2」のとき、相手側から「健康保険を使って欲しい」と言われることがある
被害者が入通院をして治療費がかかったとき、加害者側から健康保険を使うように打診されることあります。
なぜなら、治療の際に健康保険を適用すれば、窓口負担3割分に治療費を減額できるからです。
健康保険を使用すれば、加害者側が負担する8割分の治療費はもちろん、被害者本人が負担しなければいけない2割分の治療費についても減額されます。
また、加害者側が任意保険に加入していないときは加害者本人に対して治療費などを請求する必要がありますが、健康保険を使うことで加害者側の負担額が減額される分、未払いリスクも抑えられるでしょう。
なお、「交通事故による入通院には健康保険は使えない」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、これは間違いです。
健康保険は、疾病・負傷・出産・死亡に関して必要な保険給付をするための制度であり、被保険者が負傷をした原因によって、使える・使えないが分かれるものではありません。
交通事故の怪我で健康保険を使用する場合は、速やかに加入している健康保険機関へ以下の書類を提出してください。
- 第三者行為による疾病届
- 負傷原因報告書
- 事故発生状況報告書
- 損害賠償金納付確約書・念書、損害賠償金納付確約書
- 個人情報の取り扱いに関する同意書
【参考】事故にあったとき(第三者行為による疾病届等について)|全国健康保険協会HP
過失割合8対2でも治療費の自己負担を強いられる可能性がある
過失割合が8対2の交通事故であったとしても、以下のケースでは被害者本人が治療費の自己負担しなければならない可能性があります。
- 交通事故と負傷との間の因果関係が認められない場合
- 過剰診療・高額診療など、必要性や相当性を欠く治療を受けた場合
- 特別な事情が存在しないのに大部屋ではなく個室に入院をした場合
- 担当医の許可がないのに整骨院や整体、カイロプラクティックに通った場合
このようなケースでは、加害者側の保険会社からの支払いは期待できないため、加害者本人に対して直接治療費などについて損害賠償請求をする必要があります。
ただし、加害者本人の資力次第では強制執行をしても治療費などを回収できない可能性があることは覚えておきましょう。
直接請求や強制執行をおこなっても治療費を回収できない場合は、被害者であっても自腹で負担しなければいけません。
交通事故の過失割合が8対2になるケース
交通事故の過失割合は、事故の内容がある程度類型化された「基本過失割合」をもとに個別の事情を考慮して決定されます。
ここでは、基本過失割合が8対2になる交通事故類型を具体的に紹介します。なお、以下の説明では「A:過失割合2(被害者側)」「B:過失割合8(加害者側)」とします。
自動車同士の事故
自動車同士の事故で過失割合が8対2に分類されるのは、主に以下のパターンです。
- 一方通行無違反車Aが交差点を直進中、一方通行違反車Bが交差点に直進で進入して衝突したケース
- 一時停止規制のない道路を走行中のAが交差点を直進中、一時停止の標識があるBが交差点に直進で進入して衝突したケース(同程度のスピード)
- 直進車Aと対向右折車Bがお互い青信号で交差点に進入して衝突したケース
- 信号のない交差点で直進車Aと右折車Bが衝突したケース
- 道路を走行中のAに、駐車場などの道路外からBが道路に左折で進入して衝突したケース
- 駐車場において、通路から駐車区域に進入しようとするAに、通路を進行するBが衝突したケース
- 一方が明らかに広い丁字路交差点において、広路直進車に対して狭路右左折車が衝突したケース など
これらのケースでは、被害者側には道路交通法上の違反行為は存在しません。
しかし、交通事故実務では「道路を走行していた以上、違反車両に注意をしていれば事故は防げたはず」という理屈から、被害車両にも一定の過失割合が認められます。
自動車とバイクの事故
自動車とバイクの事故で過失割合が8対2に分類されるのは、主に以下のパターンです。
- 交差点を直進中のバイクAが先行して左折しようとした自動車に巻き込まれたケース
- 信号のない交差点で直進してきたバイクAと右折車Bが衝突したケース
- 信号のない交差点において、一時停止を守らずに直進してきたバイクBが、徐行で交差点に進入した自動車Aに衝突したケース など
自動車とバイクの事故の場合、自動車側の過失割合が大きくなることが多いです。
自動車と自転車の事故
自動車と自転車の事故で過失割合が8対2に分類されるのは、主に以下のパターンです。
- 直線道路を走行中の自転車Aが進路変更をするために道路中央部に出てきたところ、後方から走行してきた自動車Bと衝突したケース
- 車道を右側走行していた自転車Aと左車線を走行していた自動車Bが正面衝突したケース
- 信号のある交差点内に青信号で直進してきた自動車Aに、赤信号を無視して交差点に進入してきた自転車Bが衝突したケース など
過失割合においては弱者救済の論理が働くため、自動車と自転車の交通事故でも、基本的には自動車側の過失割合が大きくなります。
自動車と歩行者の事故
自動車と歩行者の事故で過失割合が8対2に分類されるのは、主に以下のパターンです。
- 横断歩道や歩道橋が近くにない場所で、道路を直進中の自動車Bの前に歩行者Aが飛び出して衝突したケース
- 自動車Bがバックで駐車などをしようとしているときに、すぐ後ろを通り抜けようとした歩行者Aと衝突したケース
- 信号のある交差点内に青信号で直進してきた自動車Bに、赤信号を無視して道路を横断しようとした歩行者Aが衝突したケース など
自動車と歩行者の交通事故では、明らかに歩行者側が悪いと思えるような事案でも、自動車側の過失割合が大きくなることが多いです。
過失割合8対2とされた事故の修理代に関する注意点
過失割合が8対2の交通事故のように、当事者双方に過失割合が認められる場合の修理代に関する注意点を紹介します。
修理代は自賠責保険の対象外
まず、交通事故が原因で車両などが損傷したとしても、その修理代を自賠責保険・共済で賄うことはできません。
なぜなら、自賠責保険は人身事故の被害者を最低限補償する目的で定められた制度であり、怪我・死亡・後遺障害などによって生じた損害だけが補償対象にされるに過ぎないからです。
そのため、車両の修理代、洋服や自転車などの物的損害は、自賠責保険ではなく任意保険会社の保険金を当てにするしかないでしょう。
加害者側が任意保険に加入していないときには、自分が加入している任意保険から修理代を捻出するか、加害者本人に対して示談交渉・民事訴訟などの法的措置をとる必要があります。
車の時価を超える修理代の請求は難しい
交通事故で自動車が損傷したからといって、修理代が全額支払われるわけではありません。
たとえば、古い年式で状態が悪い車両が事故で壊れた場合、損傷の程度次第では高額な修理代が発生する可能性があります。
しかし、中古車市場で全く値段がつかない車両に、高いお金をかけてまで修理をするのは適切ではないでしょう。
そのため、交通事故で車両が損傷したときの修理代には、原則として「車両の時価相当額」という上限額が設定されています。
時価を超過する修理代が発生するときには、修理をするのではなく買い替えを検討する必要があるでしょう。
相手が対物超過特約に加入していれば、時価を越える修理代が得られる場合もある
交通事故の修理代は、原則として車両の時価が上限額です。
時価を超過する修理代が発生するときには、車両を買い替えるか、超過分の修理代を自腹で負担しなければいけません。
ただし、加害者側が加入している自動車保険に対物超過特約(対物超過修理費用特約/対物超過修理費用補償特約)が付帯されている場合は、時価を超える修理代が得られる場合もあります。
対物超過特約とは、車両の修理費が時価額を上回る場合に、超過分を自動車保険から補償する特約のことです。
「時価を超える修理代を支払ってでも今の自動車に乗り続けたい」と希望する場合には、加害者側の自動車保険の内容を確認したうえで、対物超過特約を使ってもらうように打診をしてみるとよいでしょう。
他方、特約を使うかどうかは相手の判断次第となり特約の使用を強制することはできません。
なお、任意保険会社によって補償内容は異なりますが、対物超過特約にも「50万円」の上限額が定められているのが一般的です。
過失割合が低くても加害者より損害賠償が多くなることもある
過失割合は、加害者と被害者が負担する損害賠償責任の「割合」を示したものでしかありません。
つまり、交通事故において過失割合が8対2の被害者であったとしても、実際に支払う賠償額が加害者側よりも高額になる可能性があるのです。
たとえば、高級車に乗っていた加害者に500万円の損害が、標準的な自動車に乗っていた被害者に10万円の損害が生じたケースについて考えてみましょう。
過失割合は8対2なので、加害者側は「加害者の車両について400万円、被害者の車両について8万円」の賠償責任が発生します。
一方、2割の過失割合を負担する被害者側は「加害者側の車両について100万円、被害者自身の車両について2万円」の負担を強いられます。
つまり、加害者側は被害者側に8万円を支払えば済むのに対して、被害者側は加害者側に対して100万円を支払わなければならないのです。
過失割合は被害者側のほうが小さいのに、実際に支払う修理代などの賠償額は被害者側のほうが高くなります。
そのほかにも、加害者のほうが深刻な怪我・後遺障害を負った場合や、加害者が高所得だった場合なども、被害者側の賠償額のほうが高額になる可能性があります。
過失割合8対2の事故で修理代が支払われるまでの流れ
過失割合が8対2の交通事故に巻き込まれてから、実際に修理代が支払われるまでの流れは以下のとおりです。
なお、以下では事故の当事者双方が任意保険に加入しているケースを想定しています。
- 交通事故の現場で警察に通報をする
- 交通事故現場で警察に連絡を入れて救助活動などを済ませたあとに、加害者・被害者双方がそれぞれ加入している任意保険会社に報告をする
- 任意保険会社同士が連絡を取り合って示談交渉がスタートする
- 任意保険会社の指示どおりに、レッカーや持ち込みの方法で被害車両を修理工場に移動させる
- 修理工場側が車体をチェックして、損傷箇所・修理方法を確認、見積もりを作成する
- 修理工場側と任意保険会社が協議をして見積もり内容を最終決定する
- 修理代以外の損害項目や過失割合などについて任意保険会社同士が示談交渉を進める
- 和解条件について双方の合意が得られた場合には示談が成立(不調に終わったときには民事訴訟などで紛争解決条件が決定される)
- 示談契約や判決内容に従って修理代などが支払われる
交通事故の当事者双方が任意保険に加入している場合、任意保険会社が各当事者の意向を確認しながら、相手方の保険会社との間で交渉を進めていきます。
交通事故の当事者は、自分が加入している任意保険会社の担当者と連絡を取り合うだけですが、それでも実際に修理代が支払われるまでには1ヵ月~2ヵ月程度の期間を要するのが一般的です。
なお、加害者側が任意保険に加入していない場合は、加害者本人との間で示談交渉をする必要があり、示談交渉が難航したり加害者本人に十分な資力がなかったりすると、修理代の受け取りまでにさらに時間を要することがあります。
交通事故の過失割合8対2に納得いかないときの対処法
交通事故において、被害者が加害者側から提示された過失割合に納得できないことも少なくありません。
ここでは、相手方から提示された過失割合に納得できないときの対処法について解説します。
過去の裁判例などを確認する
加害者側から提示された過失割合に納得できないときには、過去の裁判例などを確認するのがおすすめです。
過去の似たような事案の過失割合と加害者側から提示された過失割合に乖離があるときには、これを交渉材料にして過失割合の見直しを求めてください。
交通事故においては、交通事故の類型に応じた基本過失割合をもとにして最終的な過失割合を決定します。
基本過失割合を見直すことができれば、より有利な過失割合を示談条件に設定することができるでしょう。
なお、交通事故の基本過失割合は、日弁連交通事故相談センターが発行している「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(通称「赤い本」)」、「交通事故損害額算定基準(通称「青本)」を参考にするのが一般的です。
一般の方が持っている書籍ではありませんので、弁護士に任せていただいた方がスムーズです。
事故の証拠などを見直して過失割合の修正要素があることを主張する
交通事故においては、基本過失割合を前提としたうえで事故時の個別具体的な状況を考慮して修正を行い、最終的な過失割合が決定されます。
たとえば、基本過失割合が8対2であったとしても、加害者側に著しい過失が存在する場合には、過失割合を修正することが可能です。
過失割合に不満があるときには、交通事故が起きたときの状況や証拠を徹底的に見直し、有利な過失割合を主張する余地がないか検討してください。
片側賠償を求める
過失割合について加害者側との意見が折り合わないときは、「片側賠償」を提案してみるのも選択肢のひとつです。
片側賠償(片賠)とは、交通事故の当事者の片方だけが損害賠償責任を負担する過失割合条件のことです。
「過失割合9対0」や「過失割合8対0」など、当事者の過失割合を合算しても「10」にならない形で決着します。
片側賠償は、当事者間で過失割合などの示談条件がまとまらないときの解決策として活用されることが多いです。
たとえば、加害者側が「過失割合8対2」、被害者側が「過失割合9対1」を主張し合っている事案について考えてみましょう。
まず、加害者側の主張を前提とした場合、交通事故の損害額の8割を加害者側が、2割を被害者側が負担します。
一方、被害者側の主張を前提とした場合は、交通事故の損害額の9割を加害者側が、1割を被害者側が負担する状況です。
この状況における「過失割合8対0」という示談条件は、「過失割合8対2」を前提としつつ、加害者が被害者に対して有する2割分の損害賠償請求権を放棄するということを意味します。
つまり、過失割合を引き下げたいという加害者側のニーズと、損害賠償額の負担を軽減したいという被害者側のニーズの両者を満たす解決策として機能しているのです。
なお、被害者から見た際の片側賠償には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
交通事故の状況や示談交渉の進捗具合を総合的に考慮したうえで、提案するかどうか検討してください。
片側賠償のメリット | ・賠償額の負担がないので、自分の任意保険を使う必要がない ・過失割合事態は負担することになるので、「10対0」の事案とは異なり、保険会社に示談交渉を任せられる ・自分の保険を使わないので、保険等級が下がらず、翌年度の保険料が増額しない ・交通事故当事者がお互いに示談条件を譲歩する形になるので、交渉が難航している事案でも和解契約締結に至りやすくなる |
片側賠償のデメリット | ・交通事故の状況次第では、加害者側から受け取とれたはずの賠償額が手に入らなくなる |
ADRを利用する
加害者側から提示された過失割合に納得できず、当事者間で示談交渉を進めても決着しない場合は、ADR機関の利用を検討してください。
ADR(Alternative Dispute Resolution/裁判外紛争解決手続)とは、裁判所外のADR機関において担当員が話し合いをサポートすることによって早期の和解契約締結を目指す手続きのことです。
当事者だけの交渉が難航しているケースでも、担当員の介入によってお互いが譲歩しやすくなります。
また、ADRを申し込む前の段階で弁護士の無料相談を受けられる場合もあるので、得られたアドバイスを当事者間の示談交渉に役立てることも可能です。
交通事故の過失割合で紛争が生じているときには、交通事故を専門に扱う以下のADR機関を活用するのがおすすめです。
なお、ADR機関によって申し込み方法や手続きの流れは異なります。詳しくは各機関まで直接お問い合わせください。
調停を申し立てる
示談交渉で過失割合条件が折り合わないときには、裁判所の調停手続きを利用するのも選択肢のひとつです。
調停とは、民事訴訟のように判決によって勝ち負けを決めるのではなく、裁判官と調停員が間に入って、和解契約締結を実現できるように後押しをする制度のことです。
管轄裁判所に調停を申し立てると、裁判所から調停期日が指定されます。
当事者双方は調停期日に出席をし、非公開の状況で裁判官などに意見を述べます。
そして、裁判官・調停員が当事者と意見を交わしながら、双方に妥協の余地がないかを確認し、和解契約締結の可能性を探っていくという流れが一般的です。
調停手続きを利用すれば、当事者間だけで話し合いを進めるよりも早期の紛争解決が叶う可能性があります。
誰でも利用できる手続きなので、「裁判所の管轄区域」から管轄裁判所をご確認のうえ、申し立てなどの流れについて直接お問い合わせください。
訴訟を起こす
当事者の話し合いだけでは過失割合や損害賠償項目・金額などについて合意形成に至らないときには、民事訴訟を提起して解決を目指すしか方法はありません。
民事訴訟とは、「判決」という形で私人間の紛争に決着をつける裁判手続きのことです。
複数の口頭弁論期日をかけて証人尋問・証拠調べなどがおこなわれます。
判決が確定すると、紛争当事者は判決の内容に従わなければいけません。
たとえば、「過失割合8対2」の条件で不法行為に基づく損害賠償請求権の存在が確定したときには、その条件どおりに、交通事故加害者は被害者に対して賠償額を支払う必要があります。
なお、民事訴訟を遂行するには、訴状などの必要書類の準備や口頭弁論期日への対応などが不可欠です。
法律の専門知識がなければ有利な解決条件を獲得できないので、民事訴訟を提起する場合には必ず弁護士に相談・依頼をしてください。
過失割合8対2の事故で修理代以外に相手へ請求できる内容
過失割合が8対2の交通事故では、修理代以外にも以下の損害項目を加害者側に請求できます。
- 買い替え費用:物理的全損・経済的全損のケースで車両の買い替えに必要な費用
- 代車費用:修理や買い替えが終了するまでに使用した代車の費用
- 評価損:交通事故が原因で車両の評価額が下がったときの下落分相当額
- 休車損害:交通事故に巻き込まれた車両が営業車などの場合、修理期間中、当該車両を事業活動に使用できなくなることによって生じる損害額
ただし、代車費用の範囲や評価損については争いとなることが少なくありません。
なお、単なる物損事故ではなく、人に死傷結果が生じた人身事故では、以下の項目も形状可能です。
- 治療費
- 入通院交通費、
- 装具・器具購入費
- 付添費用
- 将来介護費
- 入院関係の雑費
- 休業損害
- 入通院慰謝料
- 後遺症慰謝料
- 死亡慰謝料
- 後遺症逸失利益
- 死亡逸失利益
- 葬儀費用 など
交通事故の状況によって、加害者側に請求できる損害賠償項目や損害額は異なります。
加害者側の保険会社の言いなりになると不利な示談条件を強いられる可能性もあるので、可能であれば、一度は弁護士へ相談するのがよいでしょう。
交通事故の過失割合と修理代に関するよくある質問
さいごに、交通事故の過失割合と修理代に関してよく寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。
過失割合が決まる前に修理していた場合はどうなる?
交通事故の過失割合が決定する前に修理をスタートすることは、法的に禁止されているわけではありません。
ただし、過失割合が決まる前、つまり、交通事故に関する示談交渉がまとまる前に勝手な判断で修理をしてしまうと、あとから修理方法や修理代について加害者側から反論されるリスクがあります。
結果として、修理代を支払ってもらえない可能性もあるでしょう。
交通事故の修理代を納得する形で受け取りたいのなら、示談が成立するまで修理を待つことをおすすめします。
なお、任意保険会社同士が交渉をするケースでは、示談成立から1週間~2週間程度で修理代が振り込まれるのが一般的です。
修理代の自己負担分は自腹と保険のどちらで支払うべき?
過失割合が8対2の交通事故では、修理代を含む全損害額のうち2割は被害者本人が負担しなければいけません。
この際、被害者本人が負担する2割分の賠償額を、自身が加入している自動車保険から捻出するのか、自腹で負担をするのかが問題になります。
まず、修理代の自己負担分を保険で支払うか自腹負担するかを判断するときには、自動車保険を使うことによって翌年度以降に増額される保険料を確認してください。
保険会社に依頼すれば計算して教えてもらうことができます。
もし、保険料の増額分が修理代を超えるのならば、保険を使わずに自腹で修理代を負担したほうが、中長期的な視点ではよいでしょう。
一方、保険料の増額分以上の修理代が発生する場合は、素直に自動車保険から修理代を捻出したほうがメリットは大きいといえます。
次に、交通事故トラブルの示談交渉を任意保険会社に任せる場合は、賠償額の大小にかかわらず、自動車保険を使うことを強くおすすめします。
人身事故のように治療費や慰謝料などが問題になるケースでは、被害者本人だけでは損害賠償額を適切に算出できない恐れがあるほか、加害者側との交渉負担を強いられると治療に専念できない可能性もあります。
交通事故の状況次第で、任意保険と自腹負担のどちらが適切かは異なります。
任意保険会社の担当員にシミュレーションをしてもらったり、弁護士へ相談したりして、どのような方法で修理代を支払うのが適切かを判断してもらいましょう。
過失割合8対2の交通事故の修正要素には何がある?
交通事故の過失割合は、基本過失割合をもとに、以下のような修正要素を加味して決定されます。
- 時間帯(早朝、深夜など)
- 天気(雨、晴れ、日差しの方向など)
- 場所(障害物の有無、交差点の形状、歩行者や他の車両の通行具合など)
- 被害者の年齢・属性(年齢、障害の有無など)
- 加害者側の過失の程度(スマホ使用、居眠り、わき見、飲酒、無免許、薬物使用など)
- 車種 など
過失割合が争点になるケースでは、交通事故発生時の個別具体的な事情について丁寧に主張・立証する必要があります。
任意保険会社に一任するだけでは定型的な対応しか期待できないので、必ず交通事故を得意とする弁護士の力を借りるようにしてください。
さいごに | 交通事故の過失割合に関するトラブルは弁護士に相談を!
交通事故の過失割合で揉めたときには一度は弁護士に相談することを強くおすすめします。
なぜなら、交通事故事案に力を入れている弁護士に相談・依頼をすれば、以下のメリットを得られるからです。
- 自分が主張する過失割合を根拠付ける証拠を収集してくれる
- 過失割合について相反する主張をする加害者側とも丁寧に示談交渉を進めてくれる
- 加害者側が任意保険に加入していなくても修理代を回収するための法的措置をとってくれる
- 修理代以外の損害が生じたときも、少しでも有利な示談条件締結を目指してくれる
- 弁護士に依頼をすれば「弁護士基準」で慰謝料が算定されるので、受け取ることができる金額が高額になる
ベンナビ交通事故では、交通事故トラブルを得意とする弁護士を多数掲載中です。
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