任意保険入ってない相手にぶつけられたら?割合・リスク・補償の受け方を解説
事故の相手が任意保険に入っていないとわかり、修理代や治療費をどう請求すればいいのか、不安になっていませんか。
任意保険の未加入率は約1割にのぼります。
10台に1台が無保険の車である以上、任意保険に入っていない車と事故に遭うリスクは誰にでもあるといえるでしょう。
ただし、相手が無保険でも、あきらめる必要はありません。
自賠責保険への被害者請求や自分の保険の活用、弁護士への依頼など、被害者を守る手段は複数あります。
本記事では、無保険事故で被害者が直面しやすいリスクから、示談交渉の具体的な流れ、補償を受けるための4つの方法まで詳しく解説します。
自動車保険(任意保険)とは?
自動車保険(いわゆる任意保険)とは、法律で加入が決められている自賠責保険だけでは足りない損害を補ってくれる保険です。
自賠責保険は被害者を助けるための最低限の補償で、人へのけがや死亡についてしか払われません。
ものが壊れた分や高額な支払いには対応できないため、不足分を任意保険がカバーします。
自賠責保険では死亡事故の場合の支払い上限が3000万円までですが、実際の裁判では1億円を超える支払いを命じられることも多く、超過分は任意保険から支払われます。
自賠責保険(強制保険)と自動車保険(任意保険)の違い
| 項目 | 自賠責保険(強制保険) | 任意保険 |
| 加入義務 | 法律で義務付け | 任意 |
| 対人賠償 | 上限あり (傷害120万円・死亡3000万円など) |
無制限に契約で設定可能 |
| 対物賠償 | 補償なし | 補償あり |
| 運転者自身の補償 | なし | 特約等で補償可能 |
自賠責保険は被害者のけがに対する最低限の補償を目的とした、加入が義務の保険です。
一方で、任意保険は自賠責保険の上限を超える損害やものの壊れた分、運転者自身のけがなどを幅広くカバーするために入る任意の保険です。
自賠責保険は自動車損害賠償保障法という法律で補償内容や保険料が全国一律に定められていますが、ものへの補償や運転者自身への補償はありません。
任意保険は各保険会社が独自に商品設計をおこなっており、入る人の希望に合わせて補償の範囲を自由に決められるのが特徴です。
自動車保険(任意保険)の補償範囲
任意保険の補償範囲はとても広く、自動車事故に関わるさまざまな損害をまとめてカバーします。
- 対人賠償・対物賠償(相手への賠償)
- 人身傷害保険・搭乗者傷害保険(自分や同乗者のけが)
- 車両保険(自分の車の修理費用)
さらに、任意保険では上記の基本補償に加えて、弁護士費用特約や個人賠償責任特約などのオプションを組み合わせることも可能です。
例えば、単独事故でガードレールに衝突して骨折し、車も全損した場合でも、人身傷害保険と車両保険で治療費・買い替え費用をまかなうこともできます。
事故相手が任意保険に入っていない割合は1割程度
公道を走る車の約1割、つまり10台に1台は任意保険に入っていない無保険の車です。
損害保険料率算出機構の「自動車保険の概況」によると、任意保険に入っている車の割合は全国平均で約88.6%にとどまっています。
残りの1割強は自賠責保険しか入っていないか、自賠責すら入っていない車です。
相手にお金がなくて任意保険に入っていない、と車をぶつけられてから知るケースはめずらしくありません。
事故相手が任意保険に入っていない場合の3つのリスク
事故の相手が任意保険に入っていないと、被害者自身が思わぬ形で不利な立場に置かれることがあります。
ここでは、無保険の相手と事故を起こした場合に被害者が直面しやすい3つのリスクを紹介します。
1.車の修理代や治療費を自己負担させられる恐れがある
相手が無保険の場合、被害者は自分の車の修理代や、自賠責保険の上限(120万円)を超えた治療費を自分のお金で払わなければならなくなる可能性があります。
自賠責保険にはものが壊れた分の補償が一切なく、治療費や仕事を休んだ分の補償も120万円までしか出ません。
足りない分は加害者本人に請求することになりますが、相手にお金や財産がなければ補償を受けられません。
高い車に乗っていて、相手の信号無視で衝突されたとします。
修理代に300万円かかっても、相手が無保険でお金がなければ、被害者が自分の車両保険を使うか、自分のお金で300万円を払って直すしかありません。
2.保険会社が介入せず、加害者本人と直接示談交渉をする必要がある
相手が無保険の場合、交渉の相手は保険会社の担当者ではなく、加害者本人になります。
通常の事故なら、交渉の相手は加害者が加入している保険会社の担当者であり、事務的なやり取りで手続きを進められます。
しかし、相手が無保険だと担当者が存在しないため、加害者本人と直接交渉しなければなりません。
法的な知識や交渉の経験がない加害者本人とやり取りをすることになるため、不利な条件を飲まされたり、感情的なトラブルに発展したりするリスクもあります。
【関連記事】交通事故の被害者が示談に応じないとどうなる?考えられるリスクや対処法を解説
3.賠償金を受け取れず「泣き寝入り」する可能性がある
相手が無保険の場合、裁判を起こして勝っても、相手にお金や財産がなければ賠償金は1円も支払われず、最終的にあきらめざるを得ないこともあります。
裁判で支払い命令が出ても、相手にお金や財産が実際になければ、回収する術がありません。
加害者が自己破産したり、差し押さえるべき給料や貯金がまったくなかったりする場合、判決だけでは強制的にお金を取り立てられないのが実情です。
任意保険に入ってない相手(加害者)と示談交渉をする流れ
相手が任意保険に入っていない場合、示談交渉は保険会社を介さず、加害者本人と直接進めていくことになります。
保険会社という代理人がいない分、被害者自身が主導して手続きをひとつずつ進めなければなりません。
何から手をつければよいかわからないまま時間だけが過ぎてしまうと、証拠が失われたり請求権を失ったりするおそれもあります。
ここでは、無保険の加害者と示談交渉を進める際の具体的な流れを4つのステップに分けて紹介します。
1. 事故直後に加害者と連絡先を交換する
事故が起きた直後は、必ず警察を呼んだ上で、加害者の名前・住所・連絡先などをしっかり確認し、免許証や車検証の写真を撮らせてもらいましょう。
加害者が任意保険に入っていないとわかった途端に逃げたり、後日連絡が取れなくなったりするケースも考えられます。
身元がわからないままでは、損害賠償を求める手続きすら始められません。
相手が「警察は呼ばずにその場でお金を払うから」と言ってきても応じず、110番通報して事故を届け出てください。
2. 加害者本人に対して損害賠償を請求する
けがの治療が終わって、車の修理代や仕事を休んだ分の損害など、全ての金額がはっきりした段階で、加害者本人に対して内容証明郵便で正式な請求を行います。
金額がはっきりしないうちに示談を急ぐと、後から追加で発生した治療費などを請求できなくなるおそれがあります。
全ての損害を正確に計算し、診断書や修理の見積書といった証拠を添えて、請求の根拠をはっきりさせてください。
請求書を送る際は、次の書類を揃えておきましょう。
- 病院の領収書
- 通院にかかった交通費のメモ
- 勤務先の休業損害証明書
上記とあわせて、支払い総額と期限を明記した請求書を作成し、配達証明付きの内容証明郵便で送ります。
3. 加害者本人と示談内容について話し合う
損害賠償の請求書を送った後は、支払う金額やどちらが悪いかの割合、一括払いか分割払いかといった条件について、加害者本人と直接話し合います。
加害者が「全額は払えないから減らしてほしい」「月々1万円ずつの分割にしてほしい」と言ってくることも多いです。
お互いに譲れるところを見つけて合意できなければ、調停や訴訟といった法的手続に進むことになります。
4. 合意ができたら必ず示談書を作成する
話し合いで条件がまとまったら、口約束で終わらせず、賠償額や支払い方法を書いた示談書を作り、できれば公証役場で公正証書を作成しましょう。
無保険の加害者は途中で支払いを止めてしまう確率が高いです。
公正証書(強制執行認諾文言付き)にしておけば、支払いが滞ったときに裁判の手間を省いてすぐに相手の給料や財産を差し押さえられます。
「毎月末日に3万円を振り込む。
支払いが2回遅れた場合は直ちに強制執行を受ける」といった文言を入れた公正証書を、加害者と一緒に公証役場で作成してください。
任意保険に入ってない加害者と示談交渉をするときのポイント
無保険の加害者との示談交渉は、被害者自身が主導して進める必要があるため、思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。
ここでは、無保険の加害者と示談交渉をする際に押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
1.適切な損害賠償を漏れなく請求する
相手に請求する際は、治療費や車の修理代だけでなく、法律上請求できる項目を全て把握し、漏れなく計算して請求しましょう。
- 慰謝料
- 休業損害
- 通院交通費
- 代車費用
「これを払う」「あれは払う必要はない」と加害者が親切に教えてはくれません。
被害者自身が知識を身につけて証拠を出さなければ、本来受け取れるはずのお金をあきらめることになります。
たとえば、専業主婦であっても、家事ができなかった期間は休業損害として請求できます。
しかし、知らずに治療費だけを請求して示談を済ませてしまうと、原則として後から追加請求することはできません。
【関連記事】交通事故の休業補償はいくらまで?計算方法や休業損害との違いを解説
2.時効が成立する前に示談を終わらせる
損害賠償を求める権利には時効があるため、相手が逃げ回っていても、時効になる前に訴訟などの手続きをおこなう必要があります。
| 損害の種類 | 時効期間 | 起算点 |
| 人身損害(けが・死亡) | 5年 | 事故日(または症状固定日) |
| 物損(車の修理代など) | 3年 | 事故日 |
時効期間を過ぎてしまうと、加害者が「時効だから払いません」と言った瞬間に、一切の請求ができなくなってしまいます。
相手が時効を援用すると、裁判を起こしても時効を理由に負けてしまい、修理代を取れなくなるので注意してください。
3.早めに弁護士へサポートを依頼する
無保険の相手との交渉は、個人でおこなうには限界があり、リスクも大きくなります。
自分だけで解決しようとせず、なるべく早い段階で交通事故に強い弁護士にサポートを頼むのがおすすめです。
弁護士が間に入ることで、財産調査や訴訟といった専門的な手続きを活用しながら交渉できるようになり、適正な金額での賠償金回収が期待できます。
加害者が電話に出ずに逃げていた場合でも、弁護士が給料差し押さえを示唆した内容証明を送ることで、支払いに応じるケースも少なくありません。
相手が任意保険に入ってない場合に補償を受ける方法4つ
相手が任意保険に入っていなくても、補償をあきらめる必要はありません。
自賠責保険や自分の保険、状況によっては公的な制度など、活用できる補償の仕組みはいくつも用意されています。
ここでは、無保険の相手との事故で被害者が補償を受けるための4つの方法を紹介します。
1. 相手の自賠責保険への「被害者請求」
加害者が任意保険には入っていなくても自賠責保険には加入している場合、被害者は「被害者請求」という手続きを使えます。
必要な書類を揃え、相手の自賠責保険会社に直接保険金を請求する方法です。
自動車損害賠償保障法という法律では、被害者が加害者を介さずに、加害者側の自賠責保険会社へ直接保険金を請求できると定められています。
被害者請求を使えば、加害者にお金を払う力や意思がなくても、審査を経たうえで最低限の補償額を受け取れます。
2.自分の「人身傷害保険」
自分が入っている自動車保険の「人身傷害保険」を使えば、加害者から十分な賠償金が取れなくても、実際の損害額の補償を受けることが可能です。
人身傷害保険は相手の有無や過失に関わらず、契約者自身がけがをした事実に対して保険金が支払われる仕組みです。
無保険の車との事故でも頼りになります。
相手が無保険で自分にも2割の過失がある事故でも、人身傷害保険を使えば過失分を差し引かれずに治療費と慰謝料の全額を受け取れます。
3.自分の「搭乗者傷害特約」
自分が入っている保険の「搭乗者傷害特約」を使えば、けがの部位や症状に応じてあらかじめ決まった額の保険金(見舞金)を早く受け取れます。
搭乗者傷害特約は、実際の損害額が決まるのを待つ必要がなく、医師の診断でけがの状態がわかった時点で支払われます。
事故直後の当面の生活費や治療費の足しとして使い勝手が良いのが特徴です。
たとえば、むちうちで通院が必要になった場合、損害賠償の交渉に半年以上かかることも珍しくありません。
通院中も治療費や生活費はかかりますが、搭乗者傷害特約なら通院日数や症状が確定した時点で、人身傷害保険より早く保険金を受け取れます。
4.業務中・通勤中の「労災保険」
事故が仕事中や通勤途中に起きたものであれば、加害者の状況に関わらず、勤務先を通じて国の「労災保険」を申請し、治療費や休業補償を受け取ってください。
労災保険は自賠責保険とは違い、治療費に120万円という上限がなく、被害者自身の過失による減額も一切ありません。
被害者を手厚く守ってくれる公的制度といえます。
営業車での移動中に無保険の車に追突され、治療費が300万円かかった場合でも、労災を申請すれば全額が病院に支払われ、休業中の給料も約8割が補償されます。
任意保険に入ってない相手とのトラブルを弁護士に依頼するメリット
無保険の相手との事故トラブルは、被害者一人で抱え込むと、経済的にも精神的にも大きな負担がかかります。
加害者との直接のやり取りや賠償金の回収に不安を感じている場合は、弁護士への相談がおすすめです。
ここでは、無保険の相手とのトラブルを弁護士に依頼する具体的なメリットを紹介します。
1. 加害者との直接交渉を代行してもらえる
弁護士に依頼するメリットのひとつは、無保険の加害者と自分が直接電話や顔を合わせて交渉するストレスから解放されることです。
弁護士が間に入った時点で、加害者からの連絡は全て弁護士が窓口となって受けてくれます。
加害者が直接被害者に接触することは事実上できなくなり、被害者は安心してけがの治療や仕事に専念できる環境が整います。
2. 泣き寝入りせず適切な賠償金を回収できる
弁護士が間に入ることで、加害者の隠し財産を調べたり、公正証書を作って支払いから逃げられなくしたりできます。
さらに、適切な金額で賠償金を回収できる可能性も高まります。
無保険の相手は「お金がない」とうそをついて支払いをのがれようとするケースが多いです。
しかし、弁護士であれば口座情報の照会や勤務先の特定を行い、強制執行という手段を使って支払いを求められます。
3. 加害者に厳罰を求める刑事手続をサポートしてもらえる
無保険のうえに悪質な運転で事故を起こし、反省もしていない加害者もいます。
加害者が反省していない悪質なケースでは、重い刑事罰を求める被害者参加制度などのサポートも弁護士なら受けることが可能です。
交通事故は民事の争いだけでなく、刑事事件としての側面もあります。
弁護士を通じて厳罰を求める意見書を出したり、被害者自身が法廷に立って意見を述べる手続きを手伝ってもらったりすることで、正当な裁きを求められます。
任意保険に入ってない車との事故で悩んでいるならベンナビで相談
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任意保険未加入の相手との事故に関するよくある質問
任意保険に入っていない相手との事故では、通常の事故にはない疑問や不安を抱く方が少なくありません。
ここでは、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
相手が1日保険を利用していれば任意保険に入っていなくても問題ない?
加害者本人が任意保険に入っていなくても、事故当時に有効な1日自動車保険に入っていれば、その補償の範囲内で賠償金が支払われるため問題ありません。
1日自動車保険は、友人や家族の車を借りて運転するときに一時的に入る自動車保険で、対人・対物への賠償責任も任意保険と同じように補償されます。
友人の車を借りて運転中に事故を起こしたとします。
友人自身は任意保険に未加入でも、運転者本人が事前に1日自動車保険に入っていれば、被害者の車の修理代はその保険から支払われます。
任意保険に入っていない相手が「損害賠償金を支払えない」と言う場合はどうすればいい?
相手が「お金がないから払えない」と開き直った場合は、あきらめず、まずは相手の自賠責保険に被害者請求をおこなってください。
足りない分は自分の人身傷害保険などでカバーし、最終的に弁護士に依頼して相手の財産を差し押さえるのが基本です。
「払えない」というのは相手の言い分にすぎず、支払う義務がなくなるわけではありません。
確実に受け取れる保険からまず回収し、そのうえで、逃げ得を許さない法的手続きを進めてください。
たとえば、加害者が「貯金ゼロのフリーターだから慰謝料は払えない」と言った場合、まずは自賠責から120万円を回収します。
その後、弁護士を通じて裁判を起こし、アルバイト先の給料から毎月数万円ずつ強制的に天引きして回収する方法があります。
相手が任意保険だけでなく自賠責保険にも入っていない場合はどうなる?
相手が自賠責保険すら入っていない完全な無保険車だった場合でも、あきらめる必要はありません。
自賠責保険が使えない場合の受け皿として、国の制度である政府保障事業が用意されています。
被害者は政府保障事業に損害の補填を請求すれば、自賠責保険と同じ水準の最低限の救済を受けることが可能です。
自賠責保険にも入っていない車にひかれて大けがをした場合でも、政府保障事業に申請すれば、治療費や休業損害として最大120万円まで国から支給されます。
まとめ
任意保険に入っていない相手との事故は、修理代や治療費の自己負担、加害者本人との直接交渉、泣き寝入りといったリスクを伴います。
それでも、自賠責保険への被害者請求や自分の保険の活用など、被害者を守る手段は複数用意されています。
大切なのは、知識がないまま交渉を進めて損害賠償を請求しそびれたり、時効を迎えてしまったりしないことです。
加害者との交渉に不安を感じたときは、一人で抱え込まず、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士なら、交渉の代行から適切な賠償金の回収まで力になってくれます。
まずは無料相談から、専門家に話を聞いてみてはいかがでしょうか。
