任意保険に入っていないとどうなる?未加入のまま事故を起こしたときの対処法も解説


任意保険は比較的高額な保険料が設定されているため、あえて加入していない人も一定割合存在します。
しかし、任意保険に加入していなければ、損害賠償の支払いや示談交渉などに関して保険会社からサポートを受けられないので、大きな経済的・時間的損失が生じることになります。
実際に任意保険に加入してない状態で事故を起こし、今後どうなってしまうのか不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
そこで、本記事では任意保険に入っていないデメリットや、任意保険未加入時の事故をできるだけスムーズに処理するためのポイントなどを解説します。
本記事を読めば、任意保険に未加入で事故を起こしてしまった場合の対処法を知ることができるので、ぜひ参考にしてください。
任意保険に入っていない人はどれくらい?1割程度は未加入となっている
損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」によると、任意保険の自動車保険の加入率は約75%です。
自動車共済保険も含めると、約88%の方が加入しています。
また、過去の統計をみても同程度の加入率であり、多くの方が事故のリスクに備えて、任意保険に加入しているのが実情です。
そのため、ほとんどの自動車が任意保険の自動車保険か自動車共済保険に加入していることになります。【任意保険の加入率・未加入率】
時期 | 加入率(普及率) | 未加入率 |
---|---|---|
2018年3月末 | 88.0% | 12.0% |
2021年3月末 | 88.4% | 11.6% |
2022年3月末 | 88.7% | 11.3% |
2023年3月末 | 88.4% | 11.6% |
加害者が任意保険に入っていない場合の4つのデメリット
次に、加害者が任意保険に入っていない場合のデメリットを紹介します。
- 保険会社が提供する示談代行サービスを利用できない
- 自賠責保険の限度額を超える賠償金は自己負担になる
- 物損事故における賠償金は全額自己負担になる
- 自分のけがや車両に対する補償が受けられない
任意保険に加入していない状態で事故を起こすと、経済的にも精神的にも大きな負担がかかってしまうことを覚えておきましょう。
1.保険会社が提供する示談代行サービスを利用できない
任意保険に加入している場合、被害者との示談交渉は、基本的に任意保険会社が全ておこなってくれます。
しかし、任意保険に加入していないと、被害者との示談交渉を加害者自身でしなければなりません。
被害者や相手の任意保険会社と何度もやりとりをしなければならず、大きな労力を要することになるでしょう。
また、当事者双方が負う責任は示談交渉の進め方次第で変わってきます。
法的な知識や交渉の経験がない場合は、相手方の保険会社に言いくるめられ、不利な条件を飲まされる可能性もあります。
2.自賠責保険の限度額を超える賠償金は自己負担になる
交通事故の加害者が任意保険に加入していない場合、自賠責保険の限度額を超える賠償金は加害者自身の自己負担となります。
自賠責保険は交通事故の被害者に対する最低限の補償を目的とした保険であり、損害を全て補償してくれるわけではありません。
自賠責保険には、傷害、後遺障害、死亡にそれぞれの限度額が設定されています。
損害の分類 | 含まれる項目 | 限度額 |
---|---|---|
傷害 | 治療費通院交通費義肢等の作成・購入費用診断書等の取得費用休業損害入通院慰謝料 | 1人につき120万円 |
後遺障害 | 逸失利益後遺障害慰謝料 | 後遺障害等級に応じて異なり、後遺障害等級1級に対する3,000万円(要介護なら4,000万円)が最高額 |
死亡 | 葬儀費逸失利益死亡慰謝料(本人、遺族) | 1人につき3,000万円 |
これらの上限を超えた請求に対しては、加害者の自己負担となります。事故の内容にもよりますが、自賠責保険の限度額内で賠償できないケースも数多くあることを覚えておきましょう。
3.物損事故における賠償金は全額自己負担になる
物損事故における賠償金が全額自己負担になることも、任意保険に加入していないデメリットといえるでしょう。
自賠責保険の補償対象となるのは、障害・後遺障害・死亡などの人身傷害のみです。
たとえ相手の車を廃車にして多額の損害賠償責任が生じたとしても、自賠責保険を頼りにすることはできません。
物損に対する賠償金は人身に比べると高額にならないケースが多いですが、それでも全額自己負担となると経済的なダメージは大きくなるでしょう。
4.自分のけがや車両に対する補償が受けられない
任意保険に加入していない場合は、自分のけがや車両に対する補償は受けられません。
自賠責保険は、自動車事故の「被害者」救済のための制度です。
加害者自身の治療費や車両の修理費などは、補償の対象から外れます。
もちろん、電柱やガードレールへの衝突といった自損事故に対しても、自賠責保険の補償はありません。
任意保険に入っていない加害者が被害者と示談交渉をする際の大まかな流れ
任意保険に入っていない加害者は、下記のような流れで被害者と示談交渉することになります。
- 事故後に被害者と連絡先を交換する
- 被害者から損害賠償の請求を受ける
- 被害者と示談内容について話し合う
- 合意ができたら示談書を作成する
少しでも円滑に示談交渉を進められるように、大まかな流れだけでも理解しておくことが大切です。
1.事故後に被害者と連絡先を交換する
交通事故を起こした場合は、まず被害者と連絡先を交換することが重要です。
連絡先を交換しないと、交通事故証明書を警察から取り寄せて連絡先を確認することになり、手間がかかります。
連絡先を交換する際には、可能であれば下記の内容を確認しておきましょう。
- 氏名
- 住所
- 電話番号
- メールアドレス
- 保険会社名
- 保険証券番号
ただし、その後被害者と直接連絡を取り合うかどうかはケースバイケースです。
相手方が保険会社や弁護士を代理人として立ててきた場合は、当事者間で連絡を取り合うことは基本的にありません。
2.被害者から損害賠償の請求を受ける
交通事故発生から一定期間が過ぎると、被害者から損害賠償の請求を受けることになります。
請求書は、内容証明郵便で自宅に届くケースが一般的です。
交通事故の損害賠償請求は、物損と人損に分けられますが、通常、物損については車両の修理費用が明らかとなった段階、人損については、けがの治療が終わった段階で請求します。
人損についていつまでも請求書が届かないケースでは、治療が長引いており、高額な損害賠償を受ける可能性が高いといえるでしょう。
請求書が届かないからといって安心せず、早期に弁護士に相談して、被害者と連絡をとってもらうことをおすすめします。
3.被害者と示談内容について話し合う
治療費や修理代などの損害賠償請求が届いたら、その内容を踏まえて被害者との示談交渉が始まります。
示談交渉では、被害者からの請求に対して加害者側が再提案をし、お互いの意見をすり合わせていくのが基本的な流れです。
支払い金額や支払い方法など、少しずつ歩み寄り、合意に近づけるようにします。
被害者からの請求が相場よりも明らかに高額な場合には、そのまま受け入れないことが重要です。
必要に応じて弁護士に相談し、適正金額を算出してもらいましょう。
4.合意ができたら示談書を作成する
示談の内容にお互いが合意できれば、示談書を作成します。
口約束で済ませてしまうと、あとで水掛け論になるおそれがあるので、合意内容は必ず書面に残してください。
示談書には、被害者との間で合意した内容に加えて、清算条項を入れるようにしましょう。
清算条項とは、示談書に記載されたもの以外に、当事者間において何らの債権債務が存在しないことを確認する条項です。
清算条項を定めておかないと、被害者から再び損害賠償請求を受けるおそれがあります。
とはいえ、示談書の作成には法的な知識が必要になるため、弁護士に作成を依頼するのがおすすめです。
任意保険に入っていない加害者が交通事故後に弁護士に依頼するメリット
ここでは、任意保険に入っていない加害者が交通事故後に弁護士に依頼するメリットを紹介します。
- 代理で被害者と示談交渉をしてくれる
- できる限り有利になるよう進めてくれる
- 刑事責任を問われた場合に対応してくれる
あとで後悔しないように、できるだけ早い段階で弁護士にサポートを求めるようにしましょう。
1.代理で被害者と示談交渉をしてくれる
交通事故トラブルを弁護士に依頼するメリットのひとつは、代理で被害者と示談交渉をしてくれる点です。
任意保険に加入していれば、保険会社が示談交渉をしてくれます。
しかし、任意保険に加入していない場合、全ての交渉を加害者自身がしなければなりません。
知識や経験がないなかで適正な損害賠償額を算定し、加害者という不利な立ち場で交渉を進めていくことは簡単ではないでしょう。
また、中途半端に示談交渉をしてしまうと、被害者側の感情を逆なでしてしまい、裁判を起こされる可能性もあります。
そのため、少しでも円滑な解決を望むのであれば、弁護士の介入が必要不可欠です。
2.できる限り有利になるよう進めてくれる
できる限り有利になるように事件処理を進めてくれることも、弁護士に依頼するメリットといえるでしょう。
本来、交通事故の損害賠償は、事故の経緯や被害者の過失、治療経過などを総合的に踏まえて、決定する必要があります。
しかし、被害者側が実態にそぐわない損害賠償を請求してくる可能性も否定できません。
相手の要求を受け入れ続けていると、必要以上の負担を強いられることになります。
その点、弁護士が味方にいれば不当な要求に対しては反論し、少しでも有利な決着をつけられるように動いてくれるはずです。
3.刑事責任を問われた場合に対応してくれる
事故の内容によっては、加害者に刑事上の責任が発生します。たとえば、飲酒運転や無免許運転、危険運転などのケースでは、刑事上の責任が発生する可能性が高いです。
刑事上の責任が発生する場合は裁判にかけられ、罰金刑や懲役刑に科せられることもあります。
有罪判決を受けると前科もついてしまうので、その後の社会生活に大きな支障を及ぼすことになるでしょう。
交通事故の加害者が刑事責任を問われるようなケースでは、早期に弁護士へ相談し、執行猶予付判決や不起訴処分を目指すことが重要です。
任意保険に関するよくある質問
ここからは、任意保険に関するよくある質問を解説します。
Q.1日保険があれば任意保険に加入しなくても問題ない?
多くの場合、1日保険を任意保険の代わりとして利用するのは難しいでしょう。
そもそも、1日保険の対象となるのは家族や友人などから借りた車です。
自己所有の車では1日保険の加入ができないので、事故に備えるなら任意保険に加入する必要があります。
Q.任意保険に未加入で損害賠償金を支払えない場合はどうなる?
任意保険に未加入で損害賠償金を支払えないと、被害者から裁判を起こされて最終的に差し押さえを受ける可能性があります。
差し押さえの対象になるのは、不動産や自動車、預貯金などです。
会社の給与が差し押さえられる場合もあるので、交通事故トラブルを抱えていることが職場にバレるリスクもあります。
損害賠償の支払いが難しいときは、減額や分割払いを打診するなどの対応が必要になるため、まずは弁護士に相談するようにしてください。
Q.任意保険だけでなく自賠責保険にも加入せずにいるとどうなる?
任意保険だけでなく、自賠責保険にも加入せずにいると、法律により罰せられます。
自賠責保険は自動車損害賠償保障法によって加入が義務付けられている強制加入の保険です。
自賠責保険に未加入の状態で運転すると「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、自賠責保険証を所持していなかった場合だけでも「30万円以下の罰金」が科せられます。
さらに、違反点数6点が付され、即座に免許停止処分となります。
無保険状態の罰則は重く、仮に事故を起こした場合には全ての損害賠償責任を自身で背負うことになるので、自賠責保険には必ず加入しておきましょう。
さいごに|任意保険に未加入で事故を起こした場合は弁護士に相談を!
任意保険に未加入で事故を起こしてしまうと、高額な治療費や車両の修理代を負担しなければならないおそれがあります。
また、被害者側との交渉も自力でおこなう必要があり、相場よりも高額な損害賠償の支払いを求められる可能性もゼロではありません。
その点、弁護士に相談すれば、一般的な相場に基づいて被害者側との交渉を進めてくれます。
また、刑事責任を問われそうな場合でも、できるだけ不利益を受けないように今後やるべきことを助言してくれるはずです。
交通事故の内容次第では一生取り返しのつかない事態に陥る可能性もあるので、できるだけ早く頼れる弁護士を見つけましょう。