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相続税の申告に必要な通帳は何年分?税務調査との関係と注意点

弁護士監修記事
遺産相続
2025年04月11日
2025年04月11日
相続税の申告に必要な通帳は何年分?税務調査との関係と注意点
この記事を監修した弁護士
菊地 正志弁護士 (江戸川葛西相続法律事務所)
当職は、税理士、公認会計士準会員の資格をもつ、会計に強い弁護士です。相続で株式や不動産の扱いにお困りの方や、遺産分割協議でもめている方は、当職へご相談ください。
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相続税の申告を進める際、故人の通帳を何年分さかのぼって確認するべきか、悩む方は多いでしょう。

相続税申告では、故人の財産や収入を正確に把握する必要があるため、預金通帳は重要な資料となります

基本的に相続財産となる預貯金は亡くなった日の残高ですが、相続税の計算のためには過去の通帳までさかのぼって調査する必要もあるでしょう。

本記事では、相続税申告に必要な通帳の履歴期間や通帳が必要となる理由、税務調査で調べられるポイントなどについて詳しく解説します。

円滑な申告手続きを進めるために、ぜひ参考にしてください。

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相続税申告時に必要な通帳は何年分?

まずは、相続税の申告をする際に何年分の通帳が必要になるのかについて、詳しく見ていきましょう。

できれば10年、最低でも5年分は必要

相続税申告時に故人の通帳が何年分必要かは、税理士によっても意見が異なりますが、できれば10年、最低でも5年分を用意するのがおすすめです。

相続税申告をおこなう際、故人の財産状況を正確に把握するためには、通帳の過去の取引履歴が必要になります。

なぜなら、故人が生前に大きな贈与や資産移動をしていた場合、それが相続税の課税対象に該当する可能性があるからです。

税理士向けに国税庁が作成しているチェックリストにしたがうと、通常は過去5年程度の通帳履歴が求められることが一般的です。

しかし、被相続人が高齢であり、財産形成が長期間に及ぶと考えられる場合や、多額の不明な取引が見つかった場合などでは、10年分以上の履歴が必要になることもあります。

また、令和6年以降は生前贈与のうち相続税の計算に含めるべき期間が7年と延長されたため、今後は5年ではなく7年程度の通帳履歴が必要になる可能性が高いでしょう。

通帳がない場合は取引履歴の開示請求をおこなう

故人の通帳が見つからない場合や、記録が不完全な場合は、金融機関に対して取引履歴の開示請求をおこなう必要があります

ただし、1ヵ月あたり数百円程度の費用がかかるため、実際の申告においてどこまでの期間の履歴が必要なのかは、税理士などの専門家の助言を求めるべきです。

また、開示請求をすると10日程度で通帳の履歴を受け取れるのが一般的ですが、事情によっては開示までに期間を要する可能性もあります

早めに金融機関と連絡を取り、相続税の申告期限に間に合うように手続きを進めることが重要です。

金融機関へ取引履歴の開示請求をする方法

取引履歴の開示請求は、相続人またはその代理人がおこなうことができます。

まず、金融機関の窓口に出向いて必要な書類を提出しましょう。

一般的に、相続関係を証明するための戸籍謄本や故人の死亡診断書、依頼者の身分証明書などが求められます。

金融機関所定の申請書類への記入が必要であるケースも多いです。

なお、取引支店以外でも開示請求に対応してもらえるケースは多いですが、事前に電話などで確認しておきましょう

相続人の通帳が必要な場合も

相続税の申告においては、場合によっては被相続人だけではなく相続人の通帳の開示が求められることがあります。

故人が生前に相続人へ贈与をおこなっていた場合、その贈与が相続税の課税対象となる可能性があるためです。

たとえば、故人からの多額の振込履歴や定期的な送金が確認された場合、それが相続税に関わる贈与であるかを証明する必要があるのです。

また、故人が孫の名義の口座を開設している場合は、名義上は孫の財産であっても相続税の対象になるおそれがあるため、相続税申告の際に通帳の開示が必要になります

相続税申告時に通帳はなぜ必要か?

ここでは、相続税申告時に被相続人の通帳が必要となる理由や、税務調査のポイントなどを紹介します。

お金の動きを確認し、不正をチェックするため

相続税申告時に通帳が必要なのは、故人のお金の動きを正確に確認し、不正や申告漏れを防ぐためです。

たとえば、相続税逃れのために、生前に故人が特定の相続人に多額の贈与をおこなうケースもあります。

しかし、令和5年の税制改正以降は、死亡から7年前までの贈与は相続財産に含まれ、相続税の課税対象となります。

このような、相続税逃れを目的とした不正な財産移動を防ぐために、過去までさかのぼって通帳をチェックされるのです。

最終額面の申告だけでは不十分

相続税申告において、遺産総額の最終的な額面のみを申告するのでは不十分です。

税務署は、故人がどのように財産を蓄積し、どのように運用していたかを重視します。

そのため、通帳を用いて生前の資金の流れを確認し、適切な申告がなされているかをチェックするのです。

たとえば、生前贈与があった場合、相続税の対象となるかどうかを判断するために、贈与の時期や金額を正確に調査する必要があります

また、不動産や有価証券などの購入履歴も通帳から追跡できるケースが多いため、申告に含めるべき財産を見落とさないために、調査がなされるのです。

単に現時点での遺産額を提示するだけでは、税務署に疑念を抱かれ、後の調査が厳しくなる可能性があります。

スムーズかつ確実な申告をおこなうためにも、過去の記録をしっかり提出することが重要です。

税務署が確認するポイント

税務署は、相続税申告時に故人の通帳から主に以下のような点を確認します。

  • 亡くなる直前の引き出し
  • 高額の入出金
  • 相続人などの遺族との資金のやりとり
  • 保険料の支払い
  • 配当金などの受領
  • 貸金庫の利用料
  • 還付金などの入金 他

これらの項目をもれなくチェックすることで、相続税逃れを目的とした資産移動や、申告外の預貯金口座の存在をあぶりだせるのです。

特に、大きな現金の引き出しや第三者への送金がある場合は、理由や目的を詳細に調査されるでしょう

不審な点があれば税務調査がおこなわれる

通帳記録を調査する中で不審な点が発見された場合、税務署による税務調査がおこなわれる可能性があります

不審な点としては、多額の預金引き出しや頻繁な送金、不明瞭な取引の履歴などが挙げられます。

たとえば、故人の死亡直前に多額の現金が引き出されている場合、それが隠匿財産に当たると判断され、税務調査をされる可能性が高いでしょう。

また、贈与の事実が申告されていない場合でも、通帳記録からその事実が明らかになるケースがあります。

死亡前の7年間の贈与は相続税の対象となるため、不審な引き出しや資産移動があれば入念にチェックされるでしょう

税務調査が入ると、追徴課税が課されるリスクがあるため、税理士などの専門家とともに通帳の内容を事前に確認し、正確な申告をおこなうことが重要です。

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相続税申告後に税務調査がおこなわれやすい場合

令和4年度の国税庁の発表によると、毎年3%~10%ほどの相続税申告に対して税務調査がおこなわれています。

とくに、以下のいずれかのケースに該当すると、相続税申告後に税務調査がおこなわれやすいです。

  • 税理士に依頼せずに自分で申告した
  • 申告書に不備がある
  • 相続財産が多額(2億円以上)
  • 相続財産に預貯金が多い、また出し入れが多い
  • 名義預金や暦年贈与が複数ある
  • 国外財産がある
  • 家族の資産が多い
  • 被相続人が上場企業の役員や医者・弁護士などだった など

相続税の申告後に税務調査がおこなわれると、過少申告加算税や延滞税などのペナルティが課され、多額の納税義務が生じる恐れもあります。

適正な申告をして税務調査を回避するためにも、相続が発生した際は必ず税理士へ相談するようにしましょう

相続税の税務調査では何が調べられる?

相続税の税務調査は、亡くなった被相続人の財産が本当はどれくらいあったのかを確認するために実施されます。

ここでは、相続税の税務調査でどんなことが調べられるのかについて解説します。

最も疑われやすいのは名義預金

相続税の税務調査において最も疑われやすく、重点的に調査されるのは「名義預金」です。

名義預金とは、被相続人が子どもや孫などの名義で開設した口座に預けられている預金を指します。

自分が亡くなったあとに資産を残すために、子どもや孫の名義で預金をし、相続発生後に引き継ごうと考える方は多いです。

しかし、相続人にあたる子どもや孫の名義の口座であっても、預金通帳や印鑑を被相続人が管理しており、相続人が自由に出し入れできない状態のものであれば、実質的には被相続人の財産とみなされ、相続税の対象になります

10年以上前の取引が調査されることも

税務調査の際に、10年以上前の取引が調査の対象になる場合もあります。

金融機関の取引履歴の保管義務は、法律上10年間と決められているため、通帳の履歴についても10年以上はさかのぼることができないケースが多いです。

しかし、被相続人が高齢であった場合は、財産形成の期間は10年以上の長期にわたるケースも多いでしょう。

そのため、税務署に記録されている資産税に関する資料や、不動産の登記情報などを参照し、銀行の通帳記録に残っていない資産移動を調査することがあるのです。

10年前までさかのぼった通帳履歴だけを確認すれば適切な相続税の申告ができるというわけではありません。

被相続人が高齢であり、資産が多いと考えられる場合は、税理士に相談したうえで相続税の申告をおこなうのが安心です。

通帳は10年以上前のものでも保管を

一般的に、相続税の申告において税理士から提出を求められる通帳は過去5年~10年分です。

ただし、故人の自宅を整理した際に10年以上前のものを発見した際には、安易に処分せずに保管しておきましょう。

税務署には、資産税に関する資料が10年以上の長期間に渡って保存されており、過去の資産移動についても確認できます。

そのため、10年以上前の資産移動について税務調査の際に指摘される可能性もゼロではありません

その際に、10年以上前の預金通帳が正確な相続税を申告するための適切な証拠となるケースも十分に考えられます。

適切な相続税申告において、昔の通帳を処分することのメリットはあっても、デメリットはありません。

遺産整理で古い通帳が出てきた場合は、処分せずに保管しておくようにしましょう

さいごに|通帳は10年分提出で、相続税申告をスムーズに

本記事では、相続税の申告に必要な通帳の期間や、必要とされる理由などについて詳しく解説しました。

基本的に、適切な相続税申告のためには被相続人の預金通帳の記録は過去10年間にわたるものを用意することが推奨されます。

ただし、必ずしも全ての口座について10年間の履歴が必要とも限りません

通帳の履歴をはじめとして、相続税の申告に必要なものは個々のケースによって異なるため、適切な相続税申告のためには一度税理士に相談するのがよいでしょう

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編集部
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