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遺留分を払わないとどうなる?無視するリスクや請求された場合の対処法を解説

弁護士監修記事
遺産相続
2025年04月14日
2025年04月14日
遺留分を払わないとどうなる?無視するリスクや請求された場合の対処法を解説
この記事を監修した弁護士
藤垣 圭介弁護士 (藤垣法律事務所)
交通事故・刑事事件に注力。「ご依頼者さまの不安を少しでも軽減したい」という思いから、レスポンスの早さにこだわりをもって対応し、速やかな解決を目指している。
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  • 「突然法定相続人から遺留分を請求されたけど、払わずに済む方法はないのか」
  • 「不動産しか受け取っていないため、払えと言われても支払えるだけの現金がない」

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた、最低限の相続財産が保証される権利のことです。

遺留分を侵害された法定相続人は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。

権利のない相続人からの請求であれば応じる必要はありませんが、請求が正当なものであった場合は、支払いに応じなければなりません。

遺留分を払わないと、裁判に発展する可能性があります。

調停や裁判で請求が認められると財産が差し押さえられることもあるため、遺留分侵害額請求に対しては慎重に対処しなければなりません。

本記事では、遺留分の請求を無視するリスクや請求されたときの対処法について解説します。

支払わなくてよいケースや現金がなくて払えない場合の対処法も紹介しているため、ぜひ最後までチェックしてください。

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目次

遺留分を払わないとどうなる?無視してしまうリスク

遺留分を支払わずに済むなら、支払いたくないと思うかもしれません。

しかし、遺留分侵害額請求を無視してしまうと、以下のようなリスクが生じます。

  • 内容証明郵便などで遺留分の支払いを求められる
  • 遺留分侵害額請求調停や訴訟を起こされる
  • 調停や裁判で請求が認められると、財産が差し押さえられることも

遺留分をきっかけに親族との関係性が悪化するケースも多いので、リスクを正しく理解し、適切に対応することが大切です。

内容証明郵便などで遺留分の支払いを求められる

遺留分を支払わず放置していると、内容証明郵便などで遺留分の支払いを求められる可能性があります。

内容証明郵便は、「いつ・誰が・誰に・どのような文書を」送ったかを証明する郵便局のサービスのことです。

相手方が内容証明郵便を利用する主な理由は、「相続開始と遺留分を侵害する遺贈や贈与を知ったときから1年間」の時効がくる前に、遺留分を請求した記録を残すためです。

つまり、内容証明郵便を送ってくるということは、相手も法的な対応を見据えて、本気で遺留分を請求したいということです。

そのため、内容証明郵便を受け取った際に無視するのは得策ではなく、速やかに弁護士へ相談するなど、しかるべき対応を速やかに講じるようにしましょう。

遺留分侵害額請求調停や訴訟を起こされる

内容証明郵便が送られてきてもなお支払いに応じない場合は、遺留分侵害額請求調停や訴訟を起こされる可能性があります。

【遺留分侵害額請求調停とは】
家庭裁判所の調停委員が当事者の間に入り、間接的な話し合いで解決を目指す方法。
中立の立場である調停委員が双方の話を交互に聞きながら協議を進め、当事者が合意すれば調停調書の交付とともに終了する。
【遺留分侵害額請求訴訟とは】
遺留分侵害された財産に相当する金銭の支払いを裁判上で求める方法。
それぞれの主張やその証拠をもとに判決が下されるが、裁判の途中で和解が成立するケースも多い。

調停を起こされ、裁判所から呼び出しを受けた場合でも無視しようと思えば無視できます。

期日に出頭せず欠席すれば、調停は不調に終わるだけです。

民事調停法には、正当な理由なく出頭しなかったときのペナルティとして過料に処される旨の定めがありますが、実際に処されるケースはまれです。

ただし、調停を無視した場合、高い確率で訴訟を提起されると思っておいたほうがよいでしょう。

訴訟になれば、もう無視はできません。

裁判への出席は強制ではありませんが、相手の請求額がそのまま認められる可能性が高くなります。

なお、調停や訴訟に発展すると、両者の関係性が悪くなるおそれがある点にも注意が必要です。

今後も付き合っていく必要のある相手なら、調停を申し立てられる前に解決するのが理想といえます。

調停や裁判で請求が認められると、財産が差し押さえられることも

調停や訴訟で相手の請求が認められたにもかかわらず支払わない場合、強制執行によって財産が差し押さえられることがあります。

例えば、不動産を所有している場合は競売にかけられ、その売却益が遺留分の支払いに充てられます。

預貯金が差し押さえられた場合は、自身の預金口座から相手方に直接送金される仕組みになっています。

なお、給与が差し押さえの対象になる点にも注意が必要です。

手取りの4分の1までと決まっているため給料が丸々とられるわけではありませんが、差し押さえは遺留分を全額回収し終わるまで継続して実行されます。

また、給料を差し押さえられる際、裁判所から勤務先に対して差押命令が送達されるので、トラブルになっていることを勤務先に知られてしまうリスクもあります。

遺留分を請求されても払う必要がない7つの場合

遺留分を請求されても、以下のように支払う必要がないケースもあります。

  1. 時効を過ぎている
  2. 相手に遺留分請求権がない
  3. 相手が相続廃除されていて相続権がない
  4. 相手が相続欠格に該当し相続権がない
  5. 遺留分の金額を上回るような生前贈与を受けている
  6. 遺留分を放棄している
  7. 相手が法外な請求をしている

それぞれのポイントを詳しく解説します。

1.時効を過ぎている

遺留分を請求されても、時効を過ぎている場合は支払う必要がありません。

遺留分侵害額請求の時効は、以下のように定められています。

遺留分侵害額請求権の消滅時効 「被相続人がなくなり、相続が発生したこと」及び「自分の遺留分が侵害されていること」を知ったときから1年
金銭支払請求権の消滅時効 遺留分侵害額請求の意思表示から5年
遺留分侵害額請求権の除斥期間 被相続人が亡くなったときから10年

遺留分の請求者が相続の開始と遺留分の侵害を知ってから1年が経過すると、時効によって請求権が消滅するため、そもそも相手は遺留分侵害額請求ができなくなります。

また、内容証明郵便などで、遺留分の支払いを要求されていた場合の時効は5年です。

内容証明郵便が届いてから5年経っても相手が何も行動を起こさなければ、金銭支払請求権が消滅するため、遺留分を支払う必要はありません。

なお、請求者が相続の開始を知らなかった場合でも、被相続人の死から10年で請求権は消滅します。

遺留分侵害額請求の消滅時効は比較的短いので、遺留分を請求されたときは、まず時効を過ぎていないかを確認するとよいでしょう。

2.相手に遺留分請求権がない

相手に遺留分を請求する権利がないときは、当然応じる必要はありません。

遺留分を請求する権利があるのは、被相続人から見て以下に該当する場合です。

  • 配偶者
  • 子ども(すでに亡くなっているときは孫)
  • 父母(すでに亡くなっているときは祖父母)

兄弟姉妹や叔父叔母、相続人の配偶者などには遺留分が認められていないため、請求権もありません。

中には、相続人であれば遺留分を請求できると勘違いする人もいますが、遺留分が認められている人は限定されているため、言われるがままに支払ってしまわないようにしましょう。

遺留分を請求されたら、まずは本当に請求権があるかどうかを確認することをおすすめします。

3.相手が相続廃除されていて相続権がない

相手が相続廃除されているときは、遺留分を請求されても支払う必要がなくなります。

被相続人を長期にわたって肉体的・精神的に虐待したり、被相続人の預金を無断で使い込んだりしたことで相続廃除をされた人は、相続権そのものを失うためです。

相続廃除の申立てができるのは、被相続人だけです。

被相続人から聞かされていなければ、相続廃除されているかどうかがわからないこともあるでしょう。

相続廃除されているかどうか調べたいときは、戸籍謄本を見ればわかります。

廃除されていれば、戸籍の身分事項欄に「推定相続人廃除」という文字が入っているため、一度確認してみましょう。

なお、相続廃除された人物の代襲相続人には遺留分が認められます。

【代襲相続とは】
相続人になるはずだった人が、相続開始前に亡くなったり相続欠格・廃除などによって相続権を失ったりした場合に、その子どもや孫が代わって相続すること。

代襲相続人から遺留分を請求されれば、結局支払わなければならなくなる場合があります。

4.相手が相続欠格に該当し相続権がない

相手が相続欠格に該当するときも、遺留分を支払う必要がないケースのひとつです。

相続欠格事由に該当すると相続権とともに遺留分の請求権も失うため、遺留分を請求されても応じる必要はありません。

例えば、遺留分を請求してきた相続人が、被相続人を殺害しようとして刑罰を受けたケースや、被相続人を騙して遺言を妨害したようなケースです。

ただし例外もあり、過去の判例には、遺言書の破棄・隠匿が相続に関して不当な利益を得る目的でおこなわれたものでなかった場合、「相続欠格にあたらない」としたものもあります。(最高裁判所・平成19年1月28日判決)

また、弟を殺害した推定相続人を、被相続人である父が生前に許していたとして相続が認められた例もあるため、ケースバイケースであるといえるでしょう。(広島家庭裁判所呉支部・平成22年10月5日審判)

そのほか、相続欠格者の子どもや孫は代襲相続が認められている点にも注意が必要です。

代襲相続人から遺留分を請求された場合は、対応しなければならなくなるおそれがあります。

なお、相続欠格者かどうかを確認することは困難な場合が多いです。

遺留分の請求者が相続欠格者であると証明するためには、以下のような書類を集める必要があります。

  • 刑事裁判の判決書
  • 相続人の地位不存在確認訴訟の判決書

相続欠格者とのやりとりではトラブルに発展することも多いので、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。

5.遺留分の金額を上回るような生前贈与を受けている

相手が遺留分の金額を上回るような生前贈与を受けているときは、遺留分を支払わなくても構いません。

生前贈与によって、相手方は先に遺産を受け取っているものと考えられるためです。

例えば、長男・次男のうち、長男だけが被相続人から生前贈与を受けていたとします。

このとき、長男が遺留分を上回る額の贈与を受けていた場合、被相続人が亡くなったあと次男が遺産を全て相続したとしても、長男は次男に対して遺留分を請求できません。

遺留分の請求を受けたら、相手が生前贈与を受けていないか確認することをおすすめします。

ただし、相手が生前贈与を受けていたことがわかっても、それが遺留分を上回るかどうかの判断は難しいケースも多いので、不明な点がある場合は弁護士に相談しましょう。

6.遺留分を放棄している

被相続人の生前に相手が遺留分を放棄していた場合は、遺留分を支払う必要はありません。

遺留分を放棄することで、遺留分を請求する権利を失うためです。

遺留分を放棄した事実は家庭裁判所から遺留分放棄の申立人に届く審判書でしか確認できないため、相手に審判書を見せてもらう必要があります。

まずは期限を設定したうえで、相手に書面で打診してみることをおすすめします。

なお、ほかの相続人や相手の親族などに確認すると、遺留分を放棄したかどうかくらいはわかるかもしれません。

自力での対処が難しければ、弁護士に相談するとよいでしょう。

7.相手が法外な請求をしている

相手から法外な請求をされた場合、言われた金額どおりに支払う必要はありません。

遺留分の正当な金額は、基礎となる財産とそれぞれの遺留分割合から算出されるものであり、自由に設定できるものではないためです。

法外な金額であることを相手に伝え、金額について交渉を進めるようにしてください。

当事者での交渉が難しければ、弁護士に相談しましょう。

弁護士に依頼すると、相手との交渉を一任できるほか、遺留分の正当な金額も算出してもらえます。

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遺留分を請求された場合の対処法

遺留分を請求された場合の対処法は以下のとおりです。

  • 正当な請求内容か確認する
  • 請求金額は適切か確認する
  • 自分一人の負担になるか確認する
  • 正当な内容であれば支払う
  • 正当な請求内容・請求金額でない場合は相手と交渉する

必要以上の金銭を支払うことのないように、一つひとつのポイントをしっかりと確認しておきましょう。

正当な請求内容か確認する

まずは、相手方からの請求内容が正当であるかどうかを確認しましょう。

確認すべきポイントは以下のとおりです。

  • 相手が遺留分を請求する権利をもっている
  • 遺留分の請求権が時効によって消滅していない
  • 正当な金額を請求されている

上記を全て満たしていれば正当な請求内容といえるため、請求されたとおりに支払います。

しかし、被相続人の兄弟姉妹や甥姪などの請求権をもたない人からの請求だった場合や、すでに時効を過ぎている場合、請求額が明らかに高額な場合は、すぐに支払うのではなくまずは相手と話し合いましょう。

請求金額は適切か確認する

遺留分を請求されたら、請求金額が適切かどうかを確認しましょう。

計算方法は以下のとおりです。

【遺留分の計算方法】
遺留分算定の基礎となる財産額×それぞれがもつ遺留分の割合

遺留分算定の基礎となる財産額とは、被相続人の相続財産の総額をいいます。

相続開始時点の相続財産に相続開始前10年間に生前贈与した財産額を足し、そこから債務を差し引きます。

相続人それぞれがもつ遺留分の割合は、以下のとおりです。

相続人 遺留分
配偶者のみ 1/2
配偶者・子 配偶者1/4・子1/4
子のみ 1/2
配偶者・直系尊属 配偶者1/3・直系尊属1/6
直系尊属のみ 1/3

子どもや父母が複数いるなら、上記の割合をさらに等分します。

たとえば、子どものみが相続するときの割合は1/2ですが、子どもが2人いるなら子ども1人あたりの割合は1/4です。

例をひとつ見てみましょう。

【条件】
・遺留分算定の基礎となる財産:8,000万円
(相続財産8,000万円・生前贈与1,000万円・債務1,000万円)
・相続人:子ども2人

上記の条件で計算した場合、子ども一人あたりの遺留分は以下のとおりです。

(8,000万円×1/2)÷2人=2,000万円

上記は簡素化した例を示していますが、実際の遺留分は計算が複雑になるケースも少なくありません。

不動産や宝石、絵画などが相続財産に含まれる場合は査定が必要になり、時間も手間もかかってしまうので、弁護士に依頼して正確な金額を算出してもらったほうがよいでしょう。

自分一人の負担になるか確認する

遺留分侵害額請求を受けた場合は、自分一人で遺留分を負担しなければならないのかを確認しましょう。

自分のほかにも、遺留分を支払うべき人がいる可能性があるためです。

民法では、以下のように遺留分を支払う順番について定められています。

遺留分の支払義務者 支払う順番
受遺者と受贈者がいる 先に受遺者が支払う
複数の受遺者又は複数の受贈者が同時に贈与を受けた 各受遺者又は各受贈者が受けた利益の割合に応じて支払う
受贈者が複数いる(上記以外のケース) あとにおこなわれた贈与の受贈者から順番に支払う

自分のほかにも遺贈や贈与を受けた人がいる場合は、順番どおりに請求されているかを確認しましょう。

正当な内容であれば支払う

請求の内容が正当なものなら、請求のとおり支払います。

遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた最低限の相続財産を受け取れる権利であるためです。

請求内容が不当であれば言われるまま支払う必要はありませんが、そうでなければ無視したり拒否したりできない点に注意しましょう。

なお、遺留分は現金払いが原則です。

贈与や遺言によって取得した財産が全て不動産でも、現物での支払いは基本的に認められません。

現金で支払えないときの対処法については、次章で詳しく解説します。

正当な請求内容・請求金額でない場合は相手と交渉する

請求内容や金額が正当なものでなければ、相手と交渉してお互いが妥協できるポイントを探る必要があります。

交渉の際は、相手とのやりとりを全て残すようにしてください。

例えば、書面やメールでのやりとりであれば、それがそのまま証拠になります。

口頭で交渉したときは、音声を録音したり話した日時や内容を控えたりしておくとよいでしょう。

相手との交渉がうまくいかない場合や、直接の交渉を避けたい場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

相手が強気な姿勢で接してくるケースでも、弁護士が介入することで態度が変わる可能性があります。

依頼するかどうか決めかねているなら、まずは相談だけでも受けてみるとよいでしょう。

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遺留分を支払いたくても現金がない場合の対処法は?

現金がなくて遺留分が支払えないときの対処法は以下のとおりです。

  • 相手と交渉し、減額や分割払いに応じてもらう
  • 弁護士に依頼し、交渉してもらう
  • 裁判所に期限の許与を訴える
  • 相続財産を現金化して支払う

現金がないからといって放置しているとトラブルを引き起こす可能性があるので、早急な対応を心がけましょう。

相手と交渉し、減額や分割払いに応じてもらう

まずは相手と交渉し、減額や分割払いに応じてもらうよう頼んでみましょう。

相手の同意が得られれば、以下のような例外が認められるためです。

  • 支払う金額を減らしてもらう
  • 分割払いにしてもらう
  • 請求を取り下げてもらう
  • 現金以外での支払方法に変更してもらう

遺留分侵害額請求に対する支払いは、原則として現金払いです。

しかし、相手の同意を得られるなら、不動産や貴金属といった現金以外の財産での支払いも認められます。

ポイントは、できるだけ話し合いで和解することです。

調停や訴訟で決着をつけるケースも多いですが、裁判所が絡む手続きになると手間や精神的な負担がかかります。

請求の取下げは難しいかもしれませんが、交渉次第では減額や分割払いに応じてもらえる可能性もあるため、できる限り誠実な態度で臨みましょう。

弁護士に依頼し、交渉してもらう

以下に該当する場合は弁護士に依頼し、交渉を代わってもらいましょう。

  • 相手が交渉に応じてくれない
  • 交渉がうまくいかず問題が長期化している
  • 相手が調停を申し立てた

相手が交渉に応じてくれなくても、弁護士が間に入ることで態度を変える可能性があります。

交渉が長引いているときも、弁護士の介入が有効です。

相手が調停を申し立てた場合は、すでに相手も弁護士に依頼している可能性が高いです。

弁護士のサポートなしで減額や取り下げに同意してもらうのは、非常に難しいと思っておいたほうがよいでしょう。

知識や経験が豊富な弁護士に相談しておけば、依頼者が不利にならないよう立ち回ってくれるはずです。

弁護士探しの際は、相続問題を得意としており、かつ実績のある法律事務所を選びましょう。

複数の事務所で無料相談を受け、弁護士との相性や費用、対応の速さなどを総合的に考慮したうえで、最終的な依頼先を選ぶことが重要です。

裁判所に期限の許与を訴える

「弁護士に依頼したが、減額や分割払いを拒否されてしまった」というときは、裁判所に期限の許与を求めて訴えを起こすことも検討しましょう。

【期限の許与とは】
遺留分の支払いを猶予してもらったり、猶予期間中の利息を免除してもらったりできる制度のこと。
訴えが認められると、延長された期間内は請求の翌日から発生する「遅延損害金」が発生しなくなる。
相手が訴訟を提起したあとは、その訴訟の中で期限の許与についても訴えられる。

 

期限の許与が認められれば、その間に資金調達ができます。

例えば、不動産を相続したのであれば、担保に借入れをするのもひとつの手段です。

以下のような事情があれば、期限の許与が認められる可能性があります。

  • 受け取った財産のほとんどが不動産
  • もともと自分が所有している財産が少ない
  • 金融機関や賃金業者から借入れできない事情がある
  • 不動産を売却するのに時間がかかる

なお、期限の許与は請求額の一部についてのみ認められるケースもある点に注意しておかなければなりません。

例えば、500万円のうち300万円についてのみ期限の許与が認められた場合、300万円については支払いを待ってもらえますが、残り200万円はすぐに支払う必要があります。

なお、訴えが認められた場合に猶予される期間についても、条文上明確な記載がありません。

資金調達に必要な期間が与えられると考えられますが、裁判官が個々のケースごとに判断するため、一概にどの程度待ってもらえるとはいえない点に注意が必要です。

相続財産を現金化して支払う

遺留分侵害額請求に対して現金を用意できないときは、相続財産を現金化して支払うのもひとつの方法です。

相続した貴金属類・車・不動産などを売却すれば、まとまったお金を工面できることがあります。

とはいえ、不本意に相続財産を処分することはできるだけ避けたいものです。

財産の現金化はあくまでも最終手段としてとらえ、まずは話し合いによる解決を目指しましょう。

遺留分の支払いについてよくある質問

最後に、遺留分の支払いに関するよくある質問を紹介します。

相続した遺産が不動産しかない場合、遺留分の支払いはどうすればいいですか?

遺留分は現金での支払いが原則です。

相続した遺産が不動産しかなければ、相手と交渉して減額や分割払いに応じてもらえないか提案したり、訴訟を提起して支払期限を延長してもらったりする必要があります。

「不動産を手放してもいい」と思っているなら不動産を売却し、売却代金で遺留分を支払うのもよいでしょう。

なお、相手の同意を得られるなら、現物で支払っても問題ありません。

遺留分を認めない遺言があれば、遺留分を支払う必要はないですか?

遺留分を認めない内容の遺言があっても、遺留分の支払いは発生します。

遺留分は一定の相続人に認められた、誰にも奪えない権利であるためです。

たとえ遺言書に「遺留分は認めない」との記載があっても、遺留分の侵害が生じている場合は、正当な金額を支払わなければなりません。

ただし、被相続人から生前贈与を受けていたときは、特別受益として遺留分の計算で考慮されることがあり、その場合は遺留分侵害額請求が認められない可能性も出てきます。

遺留分の支払い期限はいつですか?

遺留分の支払い期限は、金額や支払い方法などとともに、相手との交渉の中で決定します。

交渉がまとまったら合意書を作成し、合意した内容のとおりに支払いましょう。

支払いが難しいときは、相手との交渉で減額してもらったり、裁判所に申立てをして支払い期限を延長してもらったりする必要があります。

状況次第では相続財産を売却し、現金化することも検討しなければなりません。

遺留分を渡さなくてよくする方法はありませんか?

遺留分を渡さずに済む方法には、以下の4つがあります。

  • 法定相続人に遺留分を放棄してもらう
  • 遺言書の「付言事項」に遺留分を渡したくない旨を記載しておく
  • 「相続人廃除」に該当しないか確認する
  • 「相続欠格」に該当しないか確認する

法定相続人に遺留分を放棄してもらえば、その相続人は遺留分を請求する権利を失います。

もちろん強制はできず、自ら権利を手放すとは考えにくいですが、法定相続人が遺留分を放棄した場合は遺留分を支払わずに済みます。

遺言書の付言事項に、遺留分を渡したくない旨を記載しておくのもひとつの方法です。

ただし、付言事項に法的拘束力はないため、結局は法定相続人次第になってしまいます。

そのほか、相続人廃除や相続欠格に該当しないか確認するのもよいでしょう。

もし該当していれば、その相続人には遺留分を請求する権利がありません。

詳しくは、以下の記事で解説しているので、あわせてチェックしてください。

【関連記事】遺留分を渡さなくていい方法は?生前からできる遺留分対策を紹介 | ベンナビ相続

さいごに|請求された遺留分を支払えない場合は弁護士に相談を

本記事では遺留分を支払わないリスクや、請求された場合の対処法について解説しました。

遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた権利です。

相手方からの請求が正当なものであれば、基本的に対応せざるを得なくなります。

ただし、取得した財産が不動産ばかりだった場合や自分の財産が少ない場合などは、すぐに支払えないケースも少なくありません。

そのような場合には、弁護士への相談をおすすめします。

相続問題を得意とする弁護士であれば、的確なアドバイスをしてくれるので、自分ひとりで悩んでいるよりもスムーズに問題を解決できるでしょう。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
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