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死亡保険金は遺産分割の対象にはならない!例外と注意点をわかりやすく解説

弁護士監修記事
遺産相続
2025年04月24日
2025年04月24日
死亡保険金は遺産分割の対象にはならない!例外と注意点をわかりやすく解説
この記事を監修した弁護士
林 奈緒子弁護士 (林奈緒子法律事務所)
どのような事案であっても、依頼者様のご希望を伺った上で、それを考慮した最善の解決方法を一緒に考えさせていただきます。どうぞ安心してご相談ください。
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親や配偶者が亡くなり、死亡保険金を受け取ることになったものの、「ほかの相続人と分けないといけないの?」「どのように扱えばいいかわからない」といった悩みを抱えていませんか?

結論からお伝えすると、死亡保険金は遺産分割の対象にはなりません

ただし、状況によっては遺産分割の対象となる可能性もあるため、ケースごとの対処を知っておく必要があるでしょう。

そこで本記事では、死亡保険金が遺産分割の対象外となるケースや、ならないケースについて詳しく解説します。

死亡保険金の相続でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

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死亡保険金は原則として遺産分割の対象外

死亡保険金は、原則として遺産分割の対象にはなりません。

なぜなら、死亡保険金は被保険者ではなく、受取人がもともともっている財産であると考えられるためです。

ただし、ケースによっては遺産分割の対象になるため注意が必要です。

以下では、ケースごとの死亡保険金の受取額について詳しく見ていきましょう。

死亡保険金の受取方法は、受取人の指定方法によって異なる

死亡保険金は被保険者ではなく受取人の財産になるため、相続財産に該当しません。

ただし、受取人の指定方法によって、以下のように扱いが異なるため注意が必要です。

受取人の指定方法 保険金の受け取り方法
特定の人が指定されている その人が取得する
「相続人」とだけ指定されている 各法定相続人が法定相続分どおりに取得する
指定されていない 約款の定めに従う

まず、特定の人が受取人として指定されている場合は、原則として指定された人だけが保険金を受け取ることができます

以下で例を見てみましょう。

  • 相続人:長男と次男
  • 保険金額:1,000万円
  • 保険金の受取人:長男

この場合、保険金1,000万円は受取人である長男が全て受け取ることになります

一方で、以下のケースにおける受取人はどのようになるのか見てみましょう。

  • 相続人:長男と次男
  • 保険金額:1,000万円
  • 保険金の受取人:相続人

この場合、受取人が「相続人」としか指定されていないため、相続人は法定相続分に応じた保険金を受け取ることになります

兄弟の法定相続は1/2ずつなので、長男・次男はそれぞれ500万円の保険金を受け取ることが可能です。

ただし、保険の約款で受取の割合が定められているときは約款に従って取得し、遺言書があれば遺言書の内容を優先する点に注意しましょう。

また、受取人の指定がなかった場合も約款に従いますが、受取人未指定のケースでは、相続人に支払うよう定められていることが一般的です。

死亡保険金が例外的に遺産分割の対象になるケース

以下のようなケースでは、例外的に死亡保険金が遺産分割の対象になります。

  • 被保険者である被相続人自身が受取人に指定されていた場合
  • 保険金額がとりわけ高額で、特別受益とみなされた場合

それぞれ解説します。

被保険者である被相続人自身が受取人に指定されていた場合

被保険者である被相続人が受取人になっている場合、死亡保険金は被相続人の財産になり、遺産分割の対象となります。

しかし、被保険者と受取人が同一のケースはほとんど存在しないでしょう。

なぜなら、被保険者が亡くなったときに支払われる死亡保険金を、被保険者本人が受け取ることは不可能だからです。

また、死亡保険金の目的は、残された家族の生活を保証することです。

そのため、被保険者の家族や近しい人が受け取るべきといえます。

実際、多くの保険会社では受取人になれる人を以下のように定めており、被保険者と受取人は別に設定しなければならないとされています。

  • 配偶者
  • 一親等の血族(子ども・父母)
  • 二親等の血族(祖父母・兄弟姉妹・孫)
  • 内縁者や事実婚、同性パートナーなど(お互いに未婚・一定期間以上の同居・同一生計などの条件あり)

ただし、被保険者本人が利用することを目的としている入院給付金や解約返戻金などは受取人を被保険者と同一にするケースもあるので注意が必要です。

保険金額がとりわけ高額で、特別受益とみなされた場合

保険金額がとりわけ高額な場合、特別受益とみなされて遺産分割の対象になる可能性があります。

特別受益とは、生前に受けた贈与のことで、生活資金の援助や結婚時に出してもらった費用などが該当します。

特別受益とみなされると、ほかの相続人との不公平を正すため、受け取った分を相続分から差し引くなどの対処がとられるのが一般的です。

保険金額が高額で、ほかの相続人との不公平があまりに大きいと判断されるときは、特別受益とみなされる可能性があるので注意しましょう。

実際に過去の判例でも、ほかの相続人との間に生じる不公平が「民法903条の趣旨に照らし到底是認できないときは特別受益に準じて持ち戻しの対象となる」とした例があります。

(特別受益者の相続分)

第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

引用元:民法第九百三条|e-Gov法令検索

なお、特別受益にあたるかどうかは、保険金額や被相続人と受取人の関係性、相続人の暮らしぶりなどから総合的に判断されます。

たとえば、特別受益に該当する可能性があるのは以下のようなケースです。

  • 相続人:長男と次男
  • 遺産総額:1,000万円
  • 保険金額:3,000万円
  • 受取人:長男

上記の例では保険金額が遺産を大きく上回っており、長男はあわせて3,500万円受け取れるのに対し、次男は500万円しか取得できません。

そのため、「死亡保険金=遺産ではない」とすると、両者の間に大きな不公平が生じます。

このようなケースは特別受益に該当し、死亡保険金が遺産分割の対象になる可能性があることを知っておきましょう。

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死亡保険金の遺産分割についての注意点

死亡保険金の遺産分割については、以下の点に注意する必要があります。

  • 相続放棄をしても、死亡保険金は受け取れる
  • ほかの相続人と分割した場合は贈与になる
  • 受取人が死亡していた場合はその相続人が受け取る

それぞれについて、以下で詳しく解説します。

相続放棄をしても、死亡保険金は受け取れる

相続放棄をしても、死亡保険金は受け取れます

死亡保険金は受取人固有の財産であり、相続人であるかどうかは関係がないからです。

ただし、亡くなった被保険者本人が受取人になっている入院給付金や、生命保険を解約した際に戻ってくる解約返戻金などは相続財産に該当するため、相続放棄をすると受け取れません

ほかの相続人と分割した場合は贈与になる

死亡保険金をほかの相続人と分割する行為は、遺産分割ではなく贈与に該当します。

そのため、分け合った金額が年間で110万円以上を超えると贈与税が発生します。

たとえば、3,000万円の死亡保険金を受け取った長男が次男と三男に1,000万円ずつ分けた場合、次男と三男にはそれぞれ以下の贈与税がかかります。

(1,000万円ー基礎控除額110万円)×税率10%=89万円

【参考元】No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

自分だけが死亡保険金を受け取ると、「ほかの相続人にも分けなければ」と思うかもしれませんが、死亡保険金は相続財産ではないため必ずしも分ける必要はありません

贈与であると認識せず安易に分けてしまうと、高額な税金が発生してしまうため注意しましょう。

保険金額が大きく、ほかの相続人とのトラブルや特別受益に該当する可能性があるときは、弁護士に相談することをおすすめします。

受取人が死亡していた場合はその相続人が受け取る

被保険者が死亡した時点ですでに受取人が死亡していた場合、死亡保険金を受け取る権利は受取人の相続人に移ります

この際、保険金を受け取る権利が相続されるのは被保険者の相続人ではなく、受取人の相続人である点に注意しましょう。

また、相続人が複数人いるときの分け方は、法定相続分どおりではなく頭割りです。

配偶者でも父母でも、立場に関係なく均等に分けます。

実際に、過去の判例でも保険金の権利の割合について「民法427条の規定の適用により平等になる」とした例があります。

(分割債権及び分割債務)

第四百二十七条 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

引用元:民法第四百二十七条|e-Gov法令検索

たとえば、保険金額が3,000万円で相続人が配偶者と父母だった場合、法定相続分に分けると配偶者が2,000万円、父母が1,000万円(それぞれ500万円ずつ)になりますが、頭割りをするとそれぞれ1,000万円ずつです。

死亡保険金は相続税法上「みなし相続財産」とみなされる

死亡保険金は原則として相続財産になりませんが、税法上は「みなし相続財産」とみなされます。

みなし相続財産とは、相続や遺贈のような被相続人がもともと所有していた財産ではなく、被相続人の死亡がきっかけで受け取る財産のことです。

ここでは、みなし相続財産が相続税の課税対象になることや非課税枠について解説します。

「みなし相続財産」は、相続税の課税対象となる

みなし相続財産は、相続税の課税対象になります。

相続財産にはあたらないものの、税法上は相続財産と同様に扱われるためです。

そのため、相続税を計算する際は、みなし相続税も含めなければなりません。

みなし相続財産には、死亡保険金以外にも以下のものが該当します。

なお、中にはみなし財産とは少し違うものもありますが、いずれも相続税が課される可能性がある財産ですので、覚えておいて損はないでしょう。

  • 死亡退職金
  • 生前贈与
  • 弔慰金
  • 個人年金
  • 遺言による債務の免除
  • 家族信託の信託受益権
  • 特別縁故者に対する分与財産
  • 低額での財産の取得

法定相続人の数に応じた非課税枠がある

みなし相続財産には、法定相続人の数に応じた非課税枠があります。

計算方法は以下のとおりです。

死亡保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の人数

 

保険金額の総額が非課税枠を超えると、超えた部分に対して相続税がかかります。

以下で具体的な例を見てみましょう。

  • 法定相続人:配偶者・子ども2人の計3人
  • 死亡保険金:1,000万円

上記の例でいくと、非課税枠は1,500万円(500万円×3人)となり、非課税枠よりも受け取る金額のほうが少ないため、相続税はかかりません

なお、非課税枠を利用できるのは法定相続人だけのため、死亡保険金の受け取り人が第三者の場合や相続放棄をしている場合は利用できません。

死亡保険金の遺産分割についてよくある質問

死亡保険金の遺産分割に関するよくある質問を紹介します。

相続時に死亡保険金を兄弟姉妹で分けると問題になる?

死亡保険金を兄弟姉妹で分けても問題ありません

ただし、保険金を分ける行為は贈与にあたるため、基礎控除額である年間110万円を超えると贈与税がかかる点に注意しましょう。

贈与税がかからないようにするには、ほかの相続人に分ける金額を110万円以下に抑える必要があります。

110万円以下の金額を何年かにわたって贈与する方法もありますが、たとえば100万円を5年にわたって贈与すると、はじめから500万円贈与することが確定していたと判断され、500万円に対して贈与税がかかってしまうため注意が必要です。

なお、死亡保険金は相続財産ではなく受取人固有の財産です。

そのため、死亡保険金をひとりで受け取ったからといって、必ずしもほかの相続人に分ける必要はありません

死亡保険金の受取人が私ひとりで、他相続人から「遺産を独り占めしている」と言われた

死亡保険金は独り占めしても構いません

なぜなら、死亡保険金は受取人固有の財産であるためです。

そもそも、死亡保険金は相続財産にあたらないため、受取人がひとりで全額受け取ったとしても遺産を独り占めしていることにはなりません。

ただし、死亡保険金の金額が高額で、遺産分割を含めて考えたときにあまりにも不公平な状況になると、特別受益とみなされる可能性があります

受取人が死亡していた場合、死亡保険金は遺産分割の対象になる?

受取人が被相続人よりも先に亡くなっていた場合でも、死亡保険金は遺産分割の対象になりません

受取人が亡くなっているならその相続人が死亡保険金を受け取りますが、相続人が複数いるときはそれぞれの法定相続分に関係なく頭割りします

受取人が指定されていなかったら、死亡保険金は遺産分割の対象になる?

受取人が指定されていなくても、死亡保険金は遺産分割の対象になりません

受取人が指定されていないときは保険会社の約款に従うことになっており、約款には受取人が指定されていない場合、相続人に支払うよう定められていることが大半です。

さいごに|遺産分割でトラブルになりそうなら弁護士へ相談を!

本記事では、死亡保険金が遺産分割の対象にならない場合や対象となるケース、注意点について解説しました。

死亡保険金は、原則として遺産分割の対象外です。

死亡保険金は相続財産ではなく、受取人がもともともっている財産として考えるためです。

そのため、死亡保険金をひとりで受け取った場合でも、死亡保険金をほかの相続人に分けたり、受け取ることについて同意を得たりする必要はありません。

もしほかの相続人とトラブルになりそうなときは、ひとりで悩まず相続問題を得意とする弁護士に相談することをおすすめします。

的確なアドバイスをもらうことで、死亡保険金をどのように扱えばよいのかがわかり、問題をスムーズに解決しやすくなるでしょう。

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編集部
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