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生活保護受給者でも遺産相続は可能!受給資格を失わないための注意点を解説

弁護士監修記事
遺産相続
2025年04月30日
2025年04月30日
生活保護受給者でも遺産相続は可能!受給資格を失わないための注意点を解説
この記事を監修した弁護士
林 奈緒子弁護士 (林奈緒子法律事務所)
どのような事案であっても、依頼者様のご希望を伺った上で、それを考慮した最善の解決方法を一緒に考えさせていただきます。どうぞ安心してご相談ください。
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生活保護の受給中に相続が発生すると、「相続したことで受給資格を失わないだろうか?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、生活保護を受給しながらでも遺産相続をすることは可能です。

ただし、注意すべき点を知らずに受給を続けていると、受給資格を失うリスクがあるのも事実です。

本記事では、生活保護受給者が遺産相続をしても受給資格を失わないケースのほか、遺産相続する際の注意点を紹介します。

本記事の内容をしっかりと理解して、適切に対応するようにしましょう。

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目次

生活保護受給者でも遺産相続はできる

結論からいってしまうと、生活保護を受給していても遺産相続ができます。

相続権は全ての相続人に認められた権利であり、生活保護の受給状況は相続権に影響を与えないからです。

ただし、相続により相続税が発生する場合、生活保護受給者にも納税義務が生じます。

相続税は、遺産の総額が基礎控除額である「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」の金額を超えた場合に課税されます。

不動産などの高額な資産を相続する場合は、遺産の総額が基礎控除額を上回り、相続税が発生することがあるので、注意してください。

生活保護受給者が遺産相続をする際の注意点

生活保護を受けていても遺産相続はできますが、おさえておくべき注意点がいくつかあります。

主な注意点を以下にまとめましたので、しっかりと確認しておきましょう。

相続した遺産の金額によっては受給の停止、または廃止になる

そもそも生活保護制度は、受給者の最低限度の生活を保障するためのものです。

(保護の補足性)
第四条保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護をおこなうことを妨げるものではない。

引用元:生活保護法| e-Gov 法令検索

そのため、遺産を相続することで生活に困窮しなくなったといえる場合には、相続した遺産の金額によって生活保護の受給が「停止」または「廃止」される可能性があります。

受給が「停止」された場合、再び生活に困窮した際に申請をすれば、比較的スムーズに支給が再開されます。

しかし、「廃止」された場合には生活保護受給者の資格を失い、税金の免除などの支援も受けられなくなってしまいます。

再び生活保護を受給するためには、新たに生活保護を申請し直す必要が生じるでしょう。

「100万円までならOK」など、いくらまでなら問題ないかは決まりがない

生活保護の受給を続けられるかどうかは、「100万円までならOK」のように明確な基準はありません。

とはいえ、「生活保護費の6ヵ月分程度」が一つの目安とされています。

相続による臨時収入が発生しても、それが6ヵ月以内に使い切られ、再び最低限度の生活が維持できなくなると予想される場合、生活保護の受給が廃止とならず、一時的な「停止」にとどまる可能性が高いでしょう。

たとえば、1ヵ月の生活保護費が14万円の場合、相続によって得た現預金が80万円であれば、6ヵ月分の保護費の範囲内に収まるため、生活保護が廃止される可能性は低いといえます。

一方、相続額が100万円となると、6ヵ月分の保護費を超えることになるため、生活保護が廃止される可能性が高いです。

相続しても影響がない財産もある

生活保護を受給している場合でも、生活保護の受給に大きな影響を及ぼさない財産や、生計を維持するために直接的に必要な財産は、保有が許されることがあります。

たとえば、以下の財産が該当します。

  • 少額の財産
  • 居住用や事業用として必要不可欠な財産
  • 換金が難しい財産

これらの財産を相続した場合は、問題なく生活保護を受給し続けられるでしょう。

遺産相続をしたら、必ず福祉事務所に報告する

生活保護を受給している方に収入が発生した場合は、速やかに保護の実施機関または福祉事務所長に報告する義務があります。

この義務は、遺産を相続した場合にも適用されるので注意しましょう。

生活保護の受給への影響を懸念して、問題にならないだろうと考え福祉事務所への報告を怠ることは絶対に避けてください。

生活保護が打ち切られないようにする目的で、相続財産を減らすのはNG

生活保護を打ち切られないようにする目的で、意図的に相続財産を減らす行為は避けるべきです。

生活保護は、経済的に困窮し生活が成り立たない人を支援するための制度です。

相続財産を隠したり他人に移転させたりして意図的に収入や資産を減らそうとする行為は、制度の趣旨に反する不正行為とみなされます。

不正行為をおこなった場合、受給していた生活保護費の返還を求められるだけでなく、場合によっては詐欺罪(刑法第246条)に問われ、刑事罰を科される可能性もあります。

生活保護受給者が相続放棄を検討するときに覚えておくべきこと

生活保護は、最低限度の生活を維持するために、利用可能な資産や能力を最大限活用したうえで、それでも生活が成り立たない人を対象に必要な支援を提供する制度です。

そのため、生活保護受給者が相続放棄をするにあたっては、覚えておくべきポイントが何点かあります。

相続放棄自体は可能だが、場合によっては生活保護を打ち切られる可能性がある

生活保護受給者でも、相続放棄をすること自体は可能です。

ただし、正当な理由がないにもかかわらず、生活保護の継続を目的に相続放棄を選び、資産を活用できない状況を意図的に作り出した場合、受給要件を満たさなくなる可能性があります。

生活保護受給者が相続放棄をしても問題ない場合

相続放棄が認められるかどうかは、相続財産の内容や受給者の生活状況を踏まえた総合的な判断が必要になります。

もっとも、以下のような場合には、相続放棄をしても問題ないと認められることが多いです。

  • マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合
  • 処分が困難な遺産が含まれる場合

これらのケースでは、相続によって生活保護受給者の生活がさらに脅かされる可能性があるため、相続放棄が認められる可能性が高いでしょう。

相続放棄をしたいときは、あらかじめケースワーカーなどに相談する

相続放棄が認められるケースに該当するかを個人で判断するのは難しいです。

生活保護受給者が相続放棄を検討する場合は、担当のケースワーカーに相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

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生活保護者が遺産相続をするときに相談できる専門家

遺産相続について少しでも不明点が残るようであれば、専門家に相談してみましょう。

ここから、遺産相続の際に相談できる専門家を紹介します。

専門家によってサポートできる内容が異なるので、自身の状況にあわせて使い分けるのがおすすめです。

弁護士|主に遺産相続のことで不安があるなら

弁護士は、遺産相続に関する法的なアドバイスを提供し、生活保護への影響についても助言してくれます。

また、相続人との交渉や遺産分割協議書の作成、相続放棄の手続きなどの一連の手続きを任せることが可能です。

生活保護受給者にとって、遺産相続はその後の生活に大きな影響を与える可能性があるため、早めに弁護士に相談するとよいでしょう。

ケースワーカー|遺産相続が生活保護にどう影響するかアドバイスしてくれる

ケースワーカーは、遺産相続が生活保護にどのような影響を与えるかについて、具体的なアドバイスを提供してくれます。

普段からのやり取りがあるケースワーカーであれば、プライベートな問題も相談しやすく、安心して話すことができるでしょう。

また、福祉事務所への報告や今後必要となる手続きについても、ケースワーカーから教えてもらうことができます。

生活保護受給者の遺産を相続する場合はどうなる?

反対に、被相続人が生活保護受給者であった場合、遺産を相続する際の取り扱いはどうなるのでしょうか。

以下で詳しく解説します。

預貯金の相続に関しては、一般的な相続手続きと変わらない

生活保護受給者が所有していた銀行口座は、通常の財産と同様に相続の対象となります。

被相続人が亡くなったあと、銀行にその旨を届け出て相続手続きをおこなうことで、預金は相続人へ引き継がれます。

生活保護の受給権は相続されない

生活保護は、受給者個人に対して支給される一身専属権なので、相続の対象にはなりません。

たとえ被相続人が生活保護を受給していたとしても、その保護費を相続人が受け取ることはできません。

保護費の返還を相続人がおこなわなくてはならないことがある

被相続人が何らかの理由で過剰に保護費を受給していた場合、その過剰分については全額または一部を返還する義務が生じます。

返還をおこなわないまま受給者が亡くなった場合や、死亡後に過剰受給の事実が判明した場合、相続人に返還義務が引き継がれることがあります。

返還義務が発生する主なケースは、以下の2つです。

  • 年収や保有する財産の金額について虚偽の申請をおこなっていた場合
  • 実際には十分な資力があるにもかかわらず、生活保護の受給を続けていた場合

相続人に返還義務があるかどうかが不明な場合は、速やかに福祉事務所へ相談してください。

生活保護と遺産相続についてよくある質問

以下、生活保護と遺産相続に関するよくある質問をまとめました。

似たような疑問を持っている方は、ぜひここで疑問を解消してください。

遺産相続をしたことを、申告しないとバレますか?

ケースワーカーは、生活保護受給者の口座情報を確認する権限を持ち、家庭訪問をおこなう義務もあります。

生活保護は公的なお金であり、自治体はその適正な運用を義務付けられているからです。

どの自治体でも不正受給については厳しく監視されており、不正が発覚するのは時間の問題です。

遺産相続する際には、必ずケースワーカーに報告しましょう。

遺産相続をしたことがバレたらどうなりますか?

遺産を相続した事実を届け出ずに生活保護を受給し続けると、不正受給と判断されるおそれがあります。

不正受給が発覚した場合には、不正に受け取った保護費に加えて、最大40%の加算金が徴収される可能性があるので注意してください。

遺産相続の予定があるときに、受給申請をしても問題ありませんか

生活保護は、最低限度の生活を送ることができない方を支援する制度です。

相続によって一定の財産を取得する予定があるにもかかわらず、生活保護を申請した場合は虚偽申請と見なされ、生活保護が即時に廃止されることになります。

また、状況によっては、過去に受給した保護費を遡って返還しなければならなくなり、最悪の場合、刑事責任を問われることも考えられるでしょう。

相続の予定があるときは、早めにケースワーカーに相談し、適切な対応をとってください。

さいごに|遺産相続で不安なことは弁護士へ

相続は生活保護の受給資格や受給額に大きな影響を及ぼすため、適切な対応をしないと生活保護の不正受給とみなされてしまうほか、刑事罰が科されてしまうおそれがあります。

生活保護を受給している状況で遺産相続が発生した場合の対応について、少しでも不安が残るようであれば、弁護士に相談しましょう。

「ベンナビ相続」を利用すれば、お住まいの地域や相談内容によって、自分に合った弁護士を簡単に検索できます。

相談先選びで迷ったらぜひご活用ください。

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編集部
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